人狼物語 三日月国


84 【R18G】神狼に捧ぐ祀【身内】

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【秘】 書生 シキ → よろず屋 シラサワ

蒼き空、昏き空を舞い満たすのは、煤けた花弁。

彼岸の色を焼き焦がす朱と黒の帯を纏い
この島に蔓延る忌まわしき祭事の記憶を纏い
その
"塵"
は、おぼろげな想いに浸る青年の瞳を染め行く。

「……これは……」

人と、妖と、神とが寄り交うこの島で
ただ唯一、この腕に巻かれた忌々しき木の腕輪が
その中で暗躍する者たちの繋がりを嘯く。

忘れることなど、ありはしない。
傷付いた男の瞳に満たされた
海の色
を。
その波打ちが奏でる音への情を。

未だこの身に残った熱と安堵は
纏わり付く底見えぬ恐怖の陰りを
後ろ髪引かれるが如く残したままに。


「………あなた、は……」


――その名を知らぬ筈の無い傷付いた男を前にして
ぽつりと零れ落ちたのは、そんな曖昧な返事であった。
(-34) Jagd_Katze 2021/07/31(Sat) 0:00:25

【秘】 書生 シキ → よろず屋 シラサワ

昏い獣たちの餌食となったあの時
知らず内に手放していた記憶の束。

その中に挟まれていた一本の栞。
島の記憶を焼き消して舞い散る花弁に似た色の
煌々とした紅は、その男の姿と声を寄り戻した。

「シラサワさん。」


──燃え乱れる記憶の煤を払いのけ
暗夜の中でなお慈悲の色に満たされた海へ
再び、この身を浸していけるならと。

嗚呼、傷付き尚も在る唯の人よ。
早春を告げし瑞々しき花弁は
今や、黄色の想いで咲き誇っている。


「……俺に、まだ何かできますか」

青年は、暗赤い本を手に取り
それを、胸の前へと掲げて、言葉を紡いだ。
(-36) Jagd_Katze 2021/07/31(Sat) 20:27:36

【秘】 書生 シキ → よろず屋 シラサワ

「………。」

島の裏側で為される神への叛逆は
はたして、その青年の預かり知らぬ事となった。
それは、あなたが空狐に生かされたということも同じ。


「俺は、『先生』の元には帰れません」


"人"
として学びを得るに足るのならば
それが誰の元であろうとも、構いはしない。
それが、己に優しさの色をくれた者ならば、猶更。


「……はい。
 少しでも力になってみます。
 店のことも、シラサワさんのことも」

呟かれる不器用な言葉の端切れは、それでも
青年の内に宿る想いを綴るもの。

どうか、この姿を最後まで見届けてくれるようにと。


青年は顔を上げ、あなたと同じ色を顔に浮かばせた。
(-38) Jagd_Katze 2021/07/31(Sat) 20:51:48