人狼物語 三日月国


246 幾星霜のメモワール

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視点:


【秘】 白昼夢 ファリエ → 薄荷 アンジュ

「たっ、試すだけですから!
 その言葉は薬がちゃんと完成してからにしてください……」

居心地悪そうに両手を胸の前でぶんぶん振ってかけられた言葉をお返し。
孤児院で人生の殆どを費やした女は商売はもちろん、単純な駆け引きというものに疎くなっていた。
なればこそあなたの瞳に溜まった雫をきっとそうだと思い込んで疑わなかった。
信じたかった"救う"という言葉をも嘘にしたくなかった。

痣にかける思いも、この薬に託す願いも。
こんなにもどうしようもなくすれ違ったままに取引は成立してしまった。

「では帰ってからで構いませんか?
 飲むだけなら自分でできると思いますし」
(-40) shionsou 2024/02/09(Fri) 20:03:13

【墓】 白昼夢 ファリエ

>>4:20 エミール

「はあ。釈然としませんけどその通りみたいです」

否定するのも無駄な努力だと分かっている。
今回はこちらの負け。
してやったりと得意げに笑う顔は、あなたらしからぬ雰囲気を覚える。
それでもあなたを朴念仁だとは思っていない。
今まで見たことが無かったというだけであなたの一面なのだろう。

拗ねるように頬を膨らませている自身の子供っぽいところもまた、同じような一面なのだろう。
可能性なんて昨日に忘れてきてしまったように思い込んでいた。
もしかすると見えていなかったのか、もしくは見ようとしていなかっただけなのかもしれない。

「……好きにしたら良いじゃないですか」

痣に対する考え方と、それから突拍子もない提案に対して告げた。
座ったまま背を丸めて手慰みに指を絡ませながら、覗き込むように顔だけ横を向く。
分からないだらけの現状でも不思議と答えは決まっていた。

「これが祝福かどうか、エミールの答えを待っていますから」
(+8) shionsou 2024/02/09(Fri) 20:16:27

【秘】 白昼夢 ファリエ → 聖女 リッカ

「そんなに?よかったね。
 確かに私もあんな風にお祭りを回ったのは初めてだったかも」

孤児の世話をするのと一見同じように見えた時間は、女の予想に反していた。
姉妹ごっこという、たったそれだけの違い。
ラベルを張り間違えた同じ飲み物を口にしたら口当たりが違うように、確かにあの時間は未知の体験だった。
楽くなかったと言えば嘘になる。

「じゃあリッカにとってはあれが一番なんだ」

だのに口から漏れ出る声音は一向に晴れない。
幸せを拒絶するように。
楽しさを否定するように。
祝福を享受できない。

一度暴れだしそうになった感情に鞭打つように歯噛してから、うなじを覆っていた手を下ろす。
ぼんやりと下から照らされた女の顔は、やつれていて幽鬼のようにも見えたかもしれない。
(-41) shionsou 2024/02/09(Fri) 20:45:11

【秘】 白昼夢 ファリエ → 聖女 リッカ

「…………もう知ってるんでしょ。
 私はもう、願いを叶えられないんだって。
 本当はそれがあるから、楽しそうに笑ってられるんじゃないの?」

飾り気のない顔が醜く歪むのが自分でもわかった。

「滑稽だった?結局は
聖女様
の掌の上。
 箱庭で踊る愚かな道化みたいに、楽しませられたかな」
「何が──祝福だって?本当に笑っちゃう」

聖女が何かなんて知らない。
守り神でも、創造神でも、奇妙な子供でも、何も変わらない。
もう元の世界に帰ることができないという事実は覆らない。
他ならぬあなたが決めたルールであなたが刻んだ
呪い
だ。

「いつまでもいい子ぶってないでさ、本音を言ってよ。
 帰ってほしくないんでしょ?
 自分は何も関係ないみたいに、無邪気に笑ってるの見てたらどうにかなっちゃいそう。
 私達はあなたを喜ばせる人形なんかじゃないんだよ」
(-42) shionsou 2024/02/09(Fri) 20:47:08

【秘】 白昼夢 ファリエ → 聖女 リッカ




「────姉妹になんてなれっこないずっとひとりぼっちだ


(-43) shionsou 2024/02/09(Fri) 20:54:43

【秘】 薄荷 アンジュ → 白昼夢 ファリエ

「お、おぉぉ……そうですね……。気が早かったです」

興奮冷めやらぬ気持ちを押さえて、間延びした声と共に深く深呼吸。

……この祭りで痣が光らなかった者は忽然と消えるという噂があった。
その理由も、どういった人間が消えるかも薄々理解してはいるのだけど。
あなたはそうなのかもしれないし、そうでないのかもしれないけれど。
どちらにせよ自分にとって、あなたたちは真に救うべき存在だ。
目を潤ませる雫も、あなたに渡した努力の結晶もすべては本意だし、本気で取り組んだからこそだ。

ゆえに致命的な嘘を隠すのは容易くなる。

……己が伸ばした救いの手は、真に救う薬どころか、刻まれた痣を光らせる毒に過ぎないのだけど。

「もちろんです。しっかり暖かくして寝てくださいね。ご体調になにか変化あれば遠慮なく仰ってくださいね」
(-45) eiya 2024/02/10(Sat) 0:04:14

【秘】 聖女 リッカ → 白昼夢 ファリエ


祭りの喧騒は、遥か遠く。
何も変わっていないはずなのに、ただぼんやりと光るあなたのうなじだけ、確かな変化を示している。

本来、聖女にとってその変化は喜ばしいことのはずだ。
この世界からあなたたちは―――あなたは、出て行かずにいてくれる。


でも、光らずにいてくれても、よかったのだ。
ううん。光らない方が良いのだと、聖女は知っていた。

あなたはそれを、望んでいるんだって。

(-47) oO832mk 2024/02/10(Sat) 10:31:29

【秘】 聖女 リッカ → 白昼夢 ファリエ


「 ………… 」

だから。
あなたの言葉には、ほんの一瞬、言葉を失って。
微かに下がった眉尻。それでも、すぐに力なく、笑って。

……―――"やっぱり"。
どうしても。そう浮かぶことだけは、止められない。


(-48) oO832mk 2024/02/10(Sat) 10:33:45

【秘】 聖女 リッカ → 白昼夢 ファリエ



「 ――― ええ そう。
  ファリエの いうとおり 」


あのときと同じ、諦めを帯びたかお。


「 帰って ほしく なかったわ。
  ずっと。 みんな。 ……誰も 」


何年も。何十年も。何百年も。
聖女祭りが繰り返される毎、いなくなってゆくひとたちの顔は今も忘れない。
誰もがみんな、帰りたいって願っていた。
あなたと、おんなじ。だから、だから聖女は、


(-49) oO832mk 2024/02/10(Sat) 10:36:35

【秘】 聖女 リッカ → 白昼夢 ファリエ


ルールを決めたのは、確かに自分。
決して誰かに強制されたわけじゃない。
すべて、自分の意思。
ううん、本当はひとつだけ、"例外"は確かにあったけれど。



「 でも みんな 帰りたいのよね 。
  みんなは この世界が きらいなの 」


   「 …… だから それなら、
     もっともっと、いい世界にしないと 」


光った痣を、"聖女の祝福"にしてしまって。
みんなから「おめでとう」って言ってもらえたら、悪くないなって思ってくれるかしら。
手伝ってくれる人達暗殺者や樹木子の願いを叶えれば、今よりもっと住み良い世界になってゆくかしら。

帰らなくてもいいって、思ってくれるかしら。


「 ――――…… でないと 」

(-50) oO832mk 2024/02/10(Sat) 10:37:57

【秘】 聖女 リッカ → 白昼夢 ファリエ




「 みんな いなくなってしまうわわたしも ひとりぼっちなの 」



(-51) oO832mk 2024/02/10(Sat) 10:39:38

【秘】 聖女 リッカ → 白昼夢 ファリエ



―――ねえ、ファリエ。
それでも、わたしはやさしいかしら。
みんながほんとうに帰りたいってこと、知っているのよ。
だって行かないで、って言っても、誰もここにいてくれないの。

……わかってるの。わかっているのに。
わたしは、このお祭りを失くしてしまうことができないの。

そうやって、みんなの願い帰りたいを潰えさせてきたの。



(-52) oO832mk 2024/02/10(Sat) 10:42:34

【秘】 白昼夢 ファリエ → 薄荷 アンジュ

「分かりました。
 その時はまた探しに来ますね。
 明日になったらどうなっているのか……楽しみです」

薬を懐に仕舞って頭を下げた。
これから女は孤児院に戻り、言いつけ通りにあなたの特製薬を服用する。
そうして夢見がちな少女のように穏やかな眠りに就いたのだった。


それが夢を絶つ毒とも知らず。
(-55) shionsou 2024/02/10(Sat) 21:51:03

【墓】 白昼夢 ファリエ

>>9 エミール

「忘れちゃだめですよ?」

終わったことはどうにもならない。
現実逃避じみたやり方だとしても、不確定の未来に思考を明け渡してしまえば気は紛れた。

「お手数をおかけしました。
 ……孤児院に行くんでしたよね。今日も子供達をよろしくお願いします」

勢いをつけて立ち上がる。
跳ねた髪が落ち着くころにはもう孤児院の先生としての顔を張り付けていた。
すれば世間話でも交えながら孤児院までの道を辿り、祭りの最中の日常を過ごしたことだろう。
(+19) shionsou 2024/02/10(Sat) 22:00:21

【独】 白昼夢 ファリエ

/*これほまに ほまにどうかえしたらいいんだ……?せいじょ……
(-56) shionsou 2024/02/10(Sat) 22:10:56

【秘】 白昼夢 ファリエ → 聖女 リッカ


「──────何、それ」

あなたが言っていることを聞いて。
女は欲しがった答えを手にしたのに、どうしようもなくこの胸は空虚のまま。

「どうしてそうなるの?」

否定したかった。
この世界を嫌いだなんて、ファリエは一度も
思えなかった

祝福も協力者による"救い"も。
全部あなたの善かれと思った贈り物なのだとしたらあんまりに皮肉だ。
だってそれは縛り付けられた檻の中で与えられる烙印のようなもの。
受け入れられるのなら、きっと初めから帰りたいなんて思わない。
(-57) shionsou 2024/02/10(Sat) 23:28:26

【秘】 白昼夢 ファリエ → 聖女 リッカ

世界がより良くなったとして。
世界に人が住み着くようになったとして。
世界を人が愛するようになったとして。
世界は孤独じゃなくるかもしれない──けれど。

「それじゃあ誰も……リッカを好きになってくれないよ……」

ファリエはただ。
ただ……抱きしめたかった。
怒りも、絶望も、困惑も、ない交ぜになった混沌とした心を置き去りにして。
空気に溶けることもできない身体も脱ぎ捨てて。
すれば残るのは"ファリエ"だけ。

それは全部があなたからもらったもので、確かにあなたが望んだものなんだよ。
あなたに愛されてあなたを愛したファリエを、透明になんてしてしまわないでよ。
(-58) shionsou 2024/02/10(Sat) 23:29:29

【秘】 白昼夢 ファリエ → 聖女 リッカ

「あーあ…………わたしたちって。ひとりぼっちとひとりぼっちで。
 ひとりぼっちになりたくなかったのに」

投げやりに唇を震わせる。
頬を伝う雫に白雪のような煌めきは無いけれど。
冬の静寂でも冷めないあたたかさがあった。
零すべきでは決してないそれは、もはや行き場を失うしかない。

「ひとりぼっちにしかなれなかったんだね……」
(-59) shionsou 2024/02/10(Sat) 23:31:14

【秘】 白昼夢 ファリエ → 聖女 リッカ



──ねえ、リッカ。
私がみんなと違ったらそうはならなかったのかな。

でもね。
あなたもみんなとおんなじ。わがままなんだよ。
誰だって幸せはエゴでしかないから。

だから。
幸せを痛くないかたちにしたかったんだよね。




ほらやっぱり。
私はあなたが好きだやさしいと思うんだ。


(-60) shionsou 2024/02/10(Sat) 23:35:05

【秘】 聖女 リッカ → 白昼夢 ファリエ


誰とも遊んだことなんてないくせに、
見よう見まねで世界ゲームを創った創造者ゲームマスター

みんなと遊びたかっただけ。
みんなと過ごしたかっただけ。
 ―――ひとりぼっちで、いたくなかっただけ。

自分を好きになって欲しいなんて、
きっと、思ったこともなかった。
それ以前の、問題だったから。
(-61) oO832mk 2024/02/11(Sun) 10:37:51

【秘】 聖女 リッカ → 白昼夢 ファリエ


あなたの言葉に、そう思って。
聖女はまたあわく微笑んでいた。

いつか自分も、誰かに愛してもらえるかしら。
でもいまはまだそのときじゃないって。


だけど、聖女はみんなを愛していた。
いなくなったひとりひとりの顔も忘れないほど。

だから、―――ううん、その中でも、聖女は。


(-62) oO832mk 2024/02/11(Sun) 10:39:05

【秘】 聖女 リッカ → 白昼夢 ファリエ


 「 ファリエ 」

濡れた涙に、聖女の指先が
触れた

この冷たい冬の夜空の下、そんなものも感じさせない暖かな手だった。
聖女がそう望んだから。
だからこの手は、そんな、子供みたいな体温の手。




 「 ファリエは ひとりぼっちじゃ ないわ 」

「 ――― だって わたしが いるもの 」  



そのままあなたの頬に手を添え微笑うのだ。
あなただけは。ひとりぼっちじゃないよって。


(-63) oO832mk 2024/02/11(Sun) 10:41:30

【秘】 聖女 リッカ → 白昼夢 ファリエ


星空を見上げた、ちいさな転生者こども
そのすがたに何かを重ねて、聖女はその夜自らの姿を露わにした。

"それ"が、何だか知っていたから。
"それ"は、とても寂しいと知っていたから。
"それ"を、放っておけないと、そう思ったから。

だから、あなたは"聖女のお気に入り"。
 ……あなたと聖女は、おんなじだったから。


 「 わたしが いるわ。 ……ファリエ 」



ダメ押しのようにまた告げて。
ふわりと浮いた身体は、あなたと視線を合わせている。
淡く光る聖女の身体と、あなたの痣と。
その上に、星々が一面に瞬いている。
きっと、あの日とおんなじに。


(-64) oO832mk 2024/02/11(Sun) 10:42:43