合議に区切りがついた頃、ぽんぽんぽんとメッセージが送られてきた。

>>t17

『どういたしまして、こちらこそありがとう。
　もどかしいだろうなぁ。
　だから話す気もなかったことだ、これは』



『どうしようもないよ。
　でもさ、違うことなら脚本お兄さん、
　俺に対して出来ていることがあるんだ』

『あの。あのね？』

『脚本お兄さんに、
　俺を自分の糧にするって言われたの、うれしかった。
　「ああ、愉召怪のコタくんが、俺が外に行けるな」
　って思ったんだ。存在に意味が生まれた』

『愉召怪のコタくんはここ限定のつもりで、
　俺っていうものはここで消えてなくなるものだと思っていた』


『というわけで脚本お兄さんにならなんでも話してあげよう。
　でもスリーサイズは分からないから答えられない、ごめんね』

　なんて送信して、画面の向こうでふふっとわらった。

『ステルス機能、個別に対象をオンオフ出来たら
　周りから見るとひとりで遊んでいる
　脚本お兄さんができあがるな』

　まず浮かんだのはそんなくだらないこと。

『いいよ、起きたら一緒に遊びに行こう。
　俺は見ているだけってやつでも、
　一緒に遊びに行くにはちゃんとなるんだ』

　皮肉ではなく、事実の羅列だ。
　それでも、どこに行くにしても彼が「一緒に遊びに行く」ということをたのしみにしているのが君には見えただろう。

『だが朝早くは今から寝ると素直に無理』

　お昼の前か後か、それくらいになるかな？ 君は彼と約束を取り付けられる。その後はそう長引かず、おやすみと送り合うことになっただろう。

　君が端末として利用している物に、メッセージが一件。

『御機嫌よう、愉召怪のコタくんだ。
　こちらふと浮かんだ程度のとりとめのない疑問故、
　お忙しければお答えいただけなくても構いません』

『フカワお兄さんのスリーサイズっていくつ？』

　興味はない。

『おはよう脚本お兄さん』

『広場ね、OK〜〜15分後に行きます』

　絶妙に短くない。君のそわそわを分かっていながら、彼はこの宣言通りに君を待たせることになった。

『知ってる？ 文章って個人宛に送ると
　読まなくてもいいって書いていても
　最後まで読まれるんだぜ？』『この話で言えば正しく海にいる方の鯨だな柚須お兄さん。
　そっちに行きたいって言った空クジラに
　「降りて来ればいいのに」って言った海の鯨だ』『起きていても寝ていても空にいるんだ。
　下に向かって泳いでも向かえないんだ。
　死んでようやく海に落っこちれるんだ』『空クジラとちがって、昔なら透明な選択肢は
　あったかもなって思いはするな。昔ならね』『楽になれなかった柚須お兄さんは、
　結局生きたかったんだろ。大前提の願望があったんじゃん。
　俺も死ぬ選択肢は取りたくないから取らなかったよ。昔はね』『何故こんな話をしたのか分からない？
　知らせたなら知った前提の動きを相手がするからだ』『柚須お兄さんは人生ニアピンの俺に自分の経験や思想を
　伝える事で自分が救われようとしているように見えるなぁ？』『「俺はこう言いましたよ、最後に選ぶのはあなただ」って俺が今いる場所から動けないでいいと思っている人は言わないんだよ。どちらかと言えばこうなった方がいいっていう思想があるからわざわざ口に出す』『この先生きてしまった柚須お兄さんがいたとしたら、
　その柚須お兄さんの方がもっと嫌いになる』『どうでもいいことだろ？ 俺もそれ自体はどうでもいい。
　精々見たくなった景色とやらを見にいければいいと思う』『ハッピーになれるといいなぁ。最初のおまじないからもう嫌がらせなんですよ、出来ないことを気にすると思ったから送ったものだ。そんなだから、俺のあげたものは全部全部なかったことにしてくれて構わない。あったことにして持っていってくれても構わない。一部だけでもね。こういう可能性の提示も思想の誘導になりますよ。こんな柚須お兄さんのことを何も考えてない奴の話を何度も聞いてくれてありがとう。ずっと話していられるね♡』『じゃ、デートしてくる。御機嫌よう』