人狼物語 三日月国


84 【R18G】神狼に捧ぐ祀【身内】

情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 エピローグ 終了 / 最新

視点:


【独】 忘れ屋 沙華

祭事の最終日、最も艶やかなる日。

選ばれた者達が奉納の舞台へと並ぶそのすこし前。

神涙島中では焼き焦げた
のようなものが宙に踊っていた。
舞うは彼岸花の残骸、赤・赫・黒と散り朽ちる焼夷物。


-今日選ばれし贄はたれそや?贄とはなんぞであったか?何へ捧ぐものであったか?-
-されど皇は告げていた、そうだ皇は号令を告げられていた。-

『左右の舞手を共に舞台へ持て』



その日の島人達の様子はこぞって奇妙だっただろう、
木の腕輪を巻いた神への刺客達を除いて・・・。
(-2) Sanpatu Tea 2021/07/28(Wed) 10:24:33

【独】 忘れ屋 沙華

一方、狼たちのみ知る隠れ宿の前。


「へェェ...はァ..へっはっはっはっは.......。」
身をあちこち黒く染めた男が地べたに一人。
落ち延びた忘れ屋は、弱り切り、それでいて勝ち誇った顔で仰向けのまま嗤う。

「一世一代の仕込みだ‥‥ちったあ効いたかよ。」

生ける人格の一部を、精確に焼き捨てなければならぬ忘れの術。
施術の後は絶対の安静を欠くべからず。
それは外法の術者とて同じこと。


「島長の狼狽顔が目に浮かぶぜ...ふくくく...」

「さあ・・・、あとは奴等に次第だあな・・・今だけは神託も無かった事になった。」
「一時的に忘れているだけ・・前後が繋がってくれば記憶は修復される、長くはもたねえ・・・。」

「直接神が空に弾ける無様を拝めないのは僅かに惜しいが・・。」
「やっと俺の番は終わるんだな‥‥。」


「嗚呼・・・奪って消すだけだった俺にも残せる物があった・・・・十分だ、ユヅル・・・。・・・シラサワ....。」


望まぬ客人を迎える準備は出来ていた。
(-3) Sanpatu Tea 2021/07/28(Wed) 10:26:06

【秘】 奉公人 ユヅル → 忘れ屋 沙華

望まぬ客人
は、現れただろうか?

焼き焦げた匂いが満ちる空気が漂う中、
遠くより地を蹴り沙華に駆け寄る音がする。
子どもよりは重く、島の大の男達にしては軽い足音。
あなたの周りに島の手先が居ても、居なくとも。
愛子が躊躇うことは無い。

「沙華さま!!」

息を整えながら、すぐ側に座り、その顔を覗き込む。
身体を伝う黒いものを、白い指先が掬い取った。

「殆どの方々が神託を忘れていらっしゃいました。
 全て、沙華さまのお力によるものですね。
 此の様なご無理をなさるとは………」
(-9) dome 2021/07/28(Wed) 18:51:13

【秘】 忘れ屋 沙華 → 奉公人 ユヅル

それは
意外な来客だった。


「ユヅ・・・・ッ!」
自分が最も目にかけてきた相手があらわれる、
一瞬は最期の幻想かとも過るが、その声に意識を引き戻す。

ユヅルが沙華の下へ辿り着くのに前後し、空を切る異音。
二人のすぐ傍に矢が射かけられる。

「そう・・・俺の、仕掛けだよ、連中に目に物見せてやれただろう。」
その証拠に奴らはご立腹さ。


「だけどユヅル、ここに来てしまったのは、すこし、お利巧すぎたね・・・。」
「今なら、まだ‥‥」

自分だけで清算するつもりだった、
それが最愛の弟分を巻き込んでしまうとは。

いや、まだ命運が決したわけでは無い。
『俺に微かでも悪運が残っているとつうなら・・・・』


「ユヅ、ル。お前は何処へ行きたい?」

「お前が選ぶ道なら、俺は・・・それを誰にも邪魔させねえ。」

膝に手を掛け強引と立ち上がる。
周囲に凶手が迫っている、猶予はあまり残されていない。
(-10) Sanpatu Tea 2021/07/28(Wed) 19:29:29

【秘】 奉公人 ユヅル → 忘れ屋 沙華

「あの様な弓の扱い方では決して私には当たりません。
 ……沙華さまにも、当てさせません」

月を思わせる金の瞳が、矢が放たれた方向を鋭く睨む。
微動だにしない奉公人の横を矢が過ぎ去る。
三日三晩、神託の御手すら此の身を掠めなかった。
魔除けの願掛けは、幻ではなく其処に在ると証明されている。
長くは続かないが、言葉を交わす猶予程度は稼いでくれるだろうか。

「賢明であれたなら、
 此処に来ることはなかったかもしれませんね」

島の掟に従うまま、大祭を遂行していただろう。
ひとえに狼達が、共に鳴き合うた者が。
神狼に牙を剥いたから。

「………遅れた反抗期が、来たのでしょうか」

ゆるりと沙華に向き直り、
立ち上がる背を支えながら、口の端を緩めた。
(-12) dome 2021/07/28(Wed) 21:06:27

【秘】 奉公人 ユヅル → 忘れ屋 沙華

『何処へ行きたいか』
そう問う声に、どう返そうかと。
己の望みを聞かれることは稀だったもので。

「……私は、沙華さまと御一緒できれば
 何処であろうと幸せです。
 だから、沙華さまが共に居てくれる場所に、行きたいです」

上手く伝えられているだろうか。
一つ一つの言葉が、零れることなく耳に届くように。
地にある枯れ朽ちた花の中から、
形を保った彼岸花を一輪拾い上げる。

"想うはあなた一人"。

 斯様な花言葉があるそうですね」

拾われた宿にも恩義はある。
だがその恩義以上に、家族のように想える人がいた。

「私の願いを、聞いてくださいますか?」
(-13) dome 2021/07/28(Wed) 21:07:29

【秘】 忘れ屋 沙華 → 奉公人 ユヅル

「そういうからくりか・・・」
沙華とて自分のまじない以外に精通しているわけではない。
効力を見て取ればそこに実質以上の安心を感じただろう。
加えて・・・。

「賢明じゃないと、自覚してだってかい?」
風も揺らさないような、小さな響きで笑う。

「いったい誰に似たやら・・・いや、
一人前になったな
。」

その精悍な顔を見ちまったら、誰しも不安など消し飛ぼうさ。
もう一度こんな輝きを見れる日が来るとは、そして今度はこの輝きが消えないように。
再会を願う、その心は果たされたのだから。

「俺の花を以ってそう言われちゃ、なんでも言う事聞いてやるしかねえな。」
いつものように、ユヅルに肩を預けながら。

起こした身で誓う。
もう俺の掌の内よりずっと大きくなったこの子を、決して。

「俺の瞳の黒いうちは、一緒だ。
    いこうか、俺達も、本当の祭りの舞台へ。」
(-14) Sanpatu Tea 2021/07/28(Wed) 21:48:15

【秘】 奉公人 ユヅル → 忘れ屋 沙華

「神の怒りに触れようと言うのです。
 恐れ知らずでもなければ叶わぬことでしょう」

逸れて地に突き刺さった矢を数本拝借する。
文字通り、一矢報いるには十分だ。

「目をかけてくださる方が、沢山いましたから」

彼岸花の誓いを得れば珍しく、子どものように笑ってみせた。
背負う誇りに恥じぬよう、いつものように背を伸ばし。

「はい、何処までもお供致します。
 参りましょう。一世一代の大舞台へ」

沙華の手を取り、二人で祭りの中心へと。
輝きを続かせる為に、越えねばならぬ舞台がある。
(-16) dome 2021/07/28(Wed) 22:48:00

【置】 忘れ屋 沙華

愛子の肩を頼りながら、追う手から逃れつつその場所を目指す。
汗、冷汗に顔を濡らしながらも立ち止まるまいと進んでいた。

「聞くんだユヅル、五十鈴の覚悟を疑うわけじゃねえが
まともに神狼をまるごと喰らおうなんてしたら、
お次は五十鈴自身が純度十割十分の神狼に化けちまうかもしれねえ。」

あらゆる叛逆により怒り、弱っている神が新たな器を得ようとするのは自然のこと。

「けどな、ここ神鳴の祭りに舞手はひとりじゃない。
五十鈴がその心臓に牙を立てるに至るなら、その心臓を
五分
五分
に別てばどうだ・・・?」

左房と右房へ。人の身のままでもそれを封じることが叶うのではないか。

「刹那ばかりの瞬間、あいつとそこまで息を合わせた事ができるかてのが難題だけれど、ね。」

本当のところその時が来たらどこまでしきたりに、神に抗えたものか分かったものではない。
だが、もう何も諦めたくはないのだというように、闇だけを映していた瞳は足掻くように揺れながら、
光が抜ける余地を探し続けていた。
(L0) Sanpatu Tea 2021/07/29(Thu) 9:38:47
公開: 2021/07/29(Thu) 12:30:00