人狼物語 三日月国


184 【R-18G】ヴンダーカンマーの狂馨

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【独】 隻影 ヴェレス

/*
みんな丸太は持ったな!!
行くぞォ!!!
(-3) Saint-Exupéry 2022/11/07(Mon) 2:46:16

【人】 隻影 ヴェレス



 
──── 大禍刻


  [夕刻を告げる鐘が鳴る。
   緻密な計画の元、全ての運命は狂っていく。]


 
(33) Saint-Exupéry 2022/11/08(Tue) 0:29:55

【人】 隻影 ヴェレス

 

 [観測手達は北の空を観る。
  魔導レンズを通して見た夕暮れの空は確かに、
  空気の流れに乗せて赤黒い煙を広げている。

  中央図書館の真上に立つ学星院より北方には、
  ブランドンの有する二つの邸の内の一つがある。

  彼が第二夫人を娶った際に与えた別邸。
  事実上の隔離先として建てた鋼の檻だ。


 
────その、三階の、南側の窓が割れている。
]


 
(34) Saint-Exupéry 2022/11/08(Tue) 0:30:11

【人】 隻影 ヴェレス



  この家には刃物がない。
  調理器具の類から、枝切り鋏に至るまで
  全てが使用人達によって厳重に管理されている。

  私は長らく腕に留まっていた
赤い布

  顔を覆うようにして固く結び目を作った。

  自室の書架から分厚い辞典を一つ取り出すと、
  それを思い切り窓目掛けて投げ付けた。

  北側に位置する邸宅の周囲は既に混沌に包まれており、
  外から飛び込んでくる喧騒がそれを伝える。

 
(35) Saint-Exupéry 2022/11/08(Tue) 0:30:25

【人】 隻影 ヴェレス




  [飛び散った硝子の一欠片が肌を裂く。
   最早そこに痛みは、驚きはない。

    血液の代わりに零れ落ちるのは煌めく赤い石。
    母子が『宝石の魔人』と呼ばれるその所以。]


 
(36) Saint-Exupéry 2022/11/08(Tue) 0:30:48

【人】 隻影 ヴェレス



  影の存在である事は幸運だった。
  欲望に狂う大衆は、私を気に留めることがない。
  堅牢な鉄門をこじ開けてまで侵入しようとする者は
  既に知性を失った者達の中に居ないのだから。

  …………そう、重要な『用事』でも無ければ。

  興味本位でほんの少し鼻先を大気に晒すと、
  多肉性の花が腐った様な異臭が掠める。

  私は自室の扉も、廊下の扉も全て開け放って
  階下へと降りていく。
 
(37) Saint-Exupéry 2022/11/08(Tue) 0:31:05

【人】 隻影 ヴェレス



 「ヴェレス様! 今の異音は!?」


 [使用人の一人が大慌てで階段を駆け上がった。
  丁度、二階の踊り場で主人と鉢合わせるように。]


        敷地内に暴徒が……
         部屋に石を投げ込まれた!


 [怪我はないことを示す少年と、駆け出す使用人。
  その腰に提げられている鍵束をそっと盗み取る。]


   ( ……もっと早くこうすれば良かったんだ。
       全ての期待を裏切られる、その前に。 )


 
(38) Saint-Exupéry 2022/11/08(Tue) 0:31:28

【人】 隻影 ヴェレス

 

 [屋敷の一階の物置の鍵を開け、内側から掛け直す。
  並んでいるのは庭木の手入れ道具や、

  
────『赤い宝石』を生産する為の道具の類。

 
  爪を捩じ切る為のペンチ。
   足の指を折り取る為のニッパー。
    皮膚を剥がす為のクレーパーに至るまで。


   “彼等”の血肉は何処も余すこと無く価値となった。

 世界中で開拓が進み、知恵の民たる地人の国家が乱立し
      それ故に彼等は滅びを迎えた。

  価値故に、『楽園』になり得なかったのである。



  少年の手が、その中から小ぶりな刃物を選び取る。
  それから幾つかの古びた魔道具を懐に忍ばせた。]

 
(39) Saint-Exupéry 2022/11/08(Tue) 0:32:10

【人】 隻影 ヴェレス

 

 [上階ではひっきりなしに靴音がしている。
  慌ただしく右往左往する使用人達。
  当然ながら庭園に侵入した暴徒など居るはずもない。

  それらがひとつ、またひとつと止む。
  薄気味悪いまでの沈黙が屋敷中に染み渡る。

  少年は小さなナイフを手に物置を出る。*]
 
(40) Saint-Exupéry 2022/11/08(Tue) 0:32:28
隻影 ヴェレスは、メモを貼った。
(a9) Saint-Exupéry 2022/11/08(Tue) 0:35:00

【人】 隻影 ヴェレス

 


  母が故郷の神々を想って付けた名Velesよりも、
  父がくれた祖先の名
Eldred
を気に入っていた。

  それが叡智の為、自ら実験に身を捧げて死んだ
  狂信的な研究者の名前だと知らなければ。
  膨大な図書の中に埋もれた目録からその項目を
  見つける事がなければ、運命は違っていたのか。


(49) Saint-Exupéry 2022/11/08(Tue) 3:49:30

【人】 隻影 ヴェレス



  幼い頃は憧れだった、顔を合わせる事の無い父。
  疑念が一つ増えたところで直接尋ねればいいと。
  その為に学星院に加わって登り詰めればいいと。

  ただその一心で、どれだけの分野を学んだのだろう。
  
生傷の絶えないこんな身体
では通学など出来ないから、
  出入りを許された図書館の蔵書を幾つも漁ったものだ。

  
  兄ばかりが学会で持て囃されるようになり、
 「病弱な弟に捧げる発明」という新聞の見出しを見た時
  疑念は二つに増えた。


 
(50) Saint-Exupéry 2022/11/08(Tue) 3:49:50

【人】 隻影 ヴェレス



  何度傷付けられても、血を流しても、
  いずれ痛覚すら遠のいて大切なものを失くしても、
  それが父に必要なものだと信じ続けた。 



  信じていたのに、調べずにはいられなかった。
  突き止めてしまった、秘匿された計画の一部。
  あなた方が⬛︎を殺し、それに成り代わるための。



  私にひた隠しにして来た計画の中に私は居ない。
  なのに、何も知らない儘に保護され
  狂う事さえ赦されないなど。どんな形でもあなたの役に立ちたかった


  
  私達を傷付けて剥ぎ取り、生み出した資金の使い道が
  余所者を招き入れてこの島を実験台に変える
  摂理に逆らった試みだと知ってしまえば。



  疑念は、……疑念は、もはや…………嗚呼。


 
(51) Saint-Exupéry 2022/11/08(Tue) 3:50:09

【人】 隻影 ヴェレス

 


諢帙@縺ヲ諢帙@縺ヲ諢帙@縺ヲ諢帙@縺ヲ

  
「ヴェレス様、ああ」

  
迥ッ繧キ繧ソ繧、迥ッ繧キ繧ソ繧、迥ッ繧キ繧ソ繧、迥ッ繧キ繧ソ繧、

          
「此方に居らしたのですか」

           
郢九′縺」縺ヲ郢九′縺」縺ヲ郢九′縺」縺ヲ郢九′縺」縺ヲ


 [階段を覚束なく降りて来る使用人の面々。
  彼等もまた、あえて若く未熟な個体として選ばれ、
 
魔人の特性を研究する為に投入された憐れなる命。


   渦を巻く、渦を巻く、呼び起こされた思惑。
   誰もが理性で縛り付けて来た本音。
   封じながら、良心を果てもなく傷付けられながら
   命令を遵守し少年の肉体を損ない続けてきた。]

 
(52) Saint-Exupéry 2022/11/08(Tue) 3:50:32

【人】 隻影 ヴェレス




  其処に憐れみはない。怒りもない。
  軽蔑も、嫌悪も、惜別も、憂鬱も、ありはしない。

  ただ私は、父上と同じやり方で。
  手段を問わずにあなた方の罪をなぞるだろう。
  そして全てを███にするのだ。


  ────あの人を舞台装置のとして死なせたように。       
本当に死にそうなほど辛かったけどね。


 
(53) Saint-Exupéry 2022/11/08(Tue) 3:51:13

【人】 隻影 ヴェレス




  虚弱で外を出歩けない次男坊とは
偽り
である。
  名誉ある研究助手としての未来は
嘯き
である。
  無気力で籠の鳥じみた少年の姿は
欺き
である。

   
おまえたちには日頃から感謝していたよ。

   
(何もかも無価値だったと気付かせてくれてありがとう)

 


 
(54) Saint-Exupéry 2022/11/08(Tue) 3:51:34

【人】 碧き叡智 ヴェレス





  
 おいで。最後に一曲、踊ってあげよう────


  [幕を上げろ。慟哭のワルツを鳴らし、擾乱で彩り、
   人生の終末、一夜限りの狂気を永遠の一秒へ。]


 
(55) Saint-Exupéry 2022/11/08(Tue) 3:52:11

【人】 碧き叡智 ヴェレス




 我先にと、折れたパンプスで階段を駆け下りる女。
 よろこびと、焦燥と、手に汗握るほどの感動に
 今にも息が上がって死んでしまいそうな。

  その手を取って、くるくるとステップを踏む。
  螺子が外れるまで、歯車が止まるまで、
  あなたが人生の絶頂において死を迎えるまで。


            
「ああ、ゆめのよう」
   𑁍
    * .゚   


 私は感涙さえする彼女の頬へ呪布越しの接吻を贈る。
 首に回した腕を引けば、柔らかい首の皮が断ち切れて
 忽ち、それが今際の言葉となる。

  膂力を失った肉体が足元に転がり、物と化す。
  宛ら花のひとつが散るように。

 
(56) Saint-Exupéry 2022/11/08(Tue) 3:52:30

【人】 碧き叡智 ヴェレス



 歌姫として期待されていた魔人の女
 劇場の没落により学星院に買われる
 その最期は甘い声で囀り地に臥した

          若くして故郷を失った逞しい獣人の男
          庭木の手入れが密かな趣味でもあった
          囁いてやれば二重の意味で「果てた」

  下流階級家庭の長子だった地人の女
  魅了に弱く好意を隠せていなかった
  慄いて舞踏と呼べるものでなかった



    お前たちは記録であり手段に過ぎない。
     それも本当に些細な脇役としての。

      私はお前たちの価値を否定する。
    摂理に反した実験を禁忌の儘にする為に。

 
(57) Saint-Exupéry 2022/11/08(Tue) 3:52:42

【人】 碧き叡智 ヴェレス

 


 [出自も種族も異なる七人のモルモット。
  常日頃から魅了性にあてられていながらも
  業務を徹底していた彼等でさえ、衝動を孕んでいる。

   耐え難きに耐えし日々も全てが無に帰す。
   学星院は彼等の生活を、名誉を、意義を焼いたが
   今日この日、与えられた地位さえ無意味になった。]



     
( 滑稽だと思わないか )

     
✟ ♱ ✛ ✚ ✞ ✥ ✢

( 狂ってもなお、私の言葉に操られるなんて )


 
(58) Saint-Exupéry 2022/11/08(Tue) 3:53:08

【人】 碧き叡智 ヴェレス

 

 [血に濡れたナイフを携えたまま、
  少年は他に誰も居なくなった大広間を一瞥する。

  喉を、頸を掻き切られ血の海に沈む幾つもの屍体。
  結界は窓と共に破られ、何もかもが狂い果てた。

  それでも仕事はまだ残っている。
  最後の仕上げをしなくてはならなかった。]
 
(59) Saint-Exupéry 2022/11/08(Tue) 3:53:26

【人】 碧き叡智 ヴェレス




 [────同刻、ブランドンは思わず息を飲む。
  ・・・・・・・
  名状し難い景色の中、子息が何かを叫んでいる。
  魔導レンズの先で唇の動きが見て取れる。]


    「 ……よもや、だ。予想していなかった。
      それはお前が取る選択では無かった筈。
      動機がなければ、効果も不明だ。

       これまでになく、度し難い──── 」


 
(60) Saint-Exupéry 2022/11/08(Tue) 3:53:53

【人】 碧き叡智 ヴェレス




 [ごう、ごう、と音を立てて炎が立ち昇る。
  庭木の白樺から植込みへ、そこから屋敷の壁へ。
  枠組に着火した建築物は最早、狂気に飲まれた街では
  全焼するのをただ待つだけ。

  少年は遠くの空を見る。
  黒煙と呪香に霞む、堆き学星院の塔に向かって
  返り血を浴びた手を振っている。

  もう片方の手に、母親の肖像画を抱えて。

  そして口元に巻かれた赤い布を自ら解くと────]


 
(61) Saint-Exupéry 2022/11/08(Tue) 3:54:06

【人】 碧き叡智 ヴェレス



  お前たちは叡智の代償に、教えを破り神を殺した。
  罰などないと自らの行いで証明してしまったのだ。

  だからこれは一身上の都合による制裁だ。
  我々を資金繰りの為の道具として保護するのなら、
  そんなものは願い下げだ。
  私は私の手で、お前達の全てを台無しにする。



     
「 僕がやった! 」



  嗚呼、だからね────
  本当は神に救いを求めちゃいなかったんだ。
  救えるものなら救ってみせろよ。もっと早く。
  僕は親殺しで、母は台本の為に殺された。
  それ以上でもそれ以下でもないよ。
  
  どんな宗教でも親殺しは重罪だったろう?
  だから、君らの神様方の裁きが「本当に」降りるなら
  僕は地獄に堕ちるだろうね、って。


 
(62) Saint-Exupéry 2022/11/08(Tue) 3:54:34

【人】 碧き叡智 ヴェレス




   この歪んだ命でさえも蒐集品だと云うのなら
   この
苦悩
を証明する権利も手段も無いのなら
   最早あなた方に遣わせるものなど存在しない。

     全て台無しにしてしまいたかった。
  学星院に抱いてきた自らの疑念を人々に植え替え、
    今日この日まで牙を隠して居続けるには
     全ての人に同情される必要があった。

   
本当
愛した母の殺害
の哀しみでなくては意味がなかった。
   


(63) Saint-Exupéry 2022/11/08(Tue) 3:54:49

【人】 碧き叡智 ヴェレス



  学星院だけが被害を免れた暴動。
  無惨にも襲撃され、使用人が死に絶えた別邸。
  最後に見付かる、私の亡骸。

  そして早すぎる母の死と、それらを
  世間の人々が結び付けるのに時間はかからない。
  このまま滅びるか、存続したとしても
  立つ瀬を無くすかのどちらでしかないだろう。
  私を嫡子だと広めた見栄と建前が仇になったな。

  さあ、後は…………



  「次はもっと重要なものを奪ってやる」



  何もかも壊して己ごと終わらせてしまいたい衝動と
  普段通りの明日と少しの平穏を望む想いが
  矛盾せず両立するなんて皮肉だね。

  父に裏切られた絶望からなる全てへの悪意も、
  大切な友人と過ごして与えられる安らぎも
  僕にとってはどちらも真実だった。

  ……そのどちらも選び取る手段が、
  どうして一つしか思い浮かばないんだろう。

 
(64) Saint-Exupéry 2022/11/08(Tue) 3:55:11

【人】 碧き叡智 ヴェレス

 

 [再び呪布の結び目をきつく締め直し、
  少年は燃え盛る生家を後にする。

  肩から提げた普段使いの鞄に入っているのは
  彼が副葬品として選んだ品の数々。

   父の眼前で果てるまでの片道切符に等しい物資、
   母の形見、愛用の写真機、心許ない武器、
   ……そして“幸福”或いは“未来”を願った幾つかの写真。


  望まない儘に生み出され、地位を着せられた。
  そしてこの結末に辿り着くまでに抱いてきた感情は
  どれだけ歪んでいたとしても真実に変わりなく。*]

 
(65) Saint-Exupéry 2022/11/08(Tue) 3:55:26

【独】 碧き叡智 ヴェレス

/*
情報量に自分が負けて色々漏らしました

父親の罪が「宝石の魔人の最後の集落を焼いたこと」が入ってない
(-12) Saint-Exupéry 2022/11/08(Tue) 4:05:11
碧き叡智 ヴェレスは、メモを貼った。
(a13) Saint-Exupéry 2022/11/08(Tue) 4:16:06

【人】 碧き叡智 ヴェレス

 


 [燃える、燃え行く、二十余年の記録。
  彼は知った、故に物証に意味はなく。
  彼は去った、故に発明に意義はない。
 
  炎の立てる音、建材の崩れる音。
  灰と化す調度品の数々、過ごした時間、
  何度没収されようと密かに組み上げて来た魔道具たち、
  幾度となく読み返した書物、擦り切れたペン、
  母が編んだ衣服、「兄」と交わした手紙。そして。

  取り残された肖像画、その柔らかな瞳が
  愛する我が子の罪を見据え、見届け、燃え尽きる迄。]

 
(69) Saint-Exupéry 2022/11/08(Tue) 7:52:50

【人】 碧き叡智 ヴェレス




 [それは奇しくも、若き日のブランドンが
  密やかに暮らしていた宝石の魔人の集落を焼き、
  最も美しく無知だった女を連れ去った日の光景と
  何処までも告示していた。


    ────老いた男は溜息を吐く。
        それですら少年の仕草とよく似ている。]


 
(70) Saint-Exupéry 2022/11/08(Tue) 7:53:03

【人】 碧き叡智 ヴェレス

 

 [一片の情も無かったのなら、
  初めから人権を与える事もしなかった。
  我が子であろうと家畜の様に育てた事だろう。

  何処からが過ちだったかなど、遡れど限がない。
  唯一分かっている事は、人間のエゴが引き起こしたこと。

  魔人達の信仰心を根こそぎ折り砕き、神を殺した。
  研究に従わない者は心臓の石を奪い、滅ぼした。
  その過程を記し、最後の生き残りを連れ去り、
  合の子を産ませた挙句、生殖能力を奪う事で
  無知だった女の、世界の全てを掌握した。

  己の罪と向き合うのは恐ろしかったが、
  それ以上に、我が子が成長する程に
  知性、感性、その全てにおいて
  想定外の変化を重ねるのが不穏でしかなかった。]

 
(71) Saint-Exupéry 2022/11/08(Tue) 7:53:20