人狼物語 三日月国


84 【R18G】神狼に捧ぐ祀【身内】

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視点:


ユヅルは、五十鈴の舞を粛々と眺めている。
(a1) dome 2021/07/28(Wed) 9:29:57

【独】 奉公人 ユヅル

「何か、妙な空気が漂っているようですが………」

焦げついた塵が風に流れている。
加えて島の者達の動向が、不可解だ。
舞の場に現れなかった誰かを探して
宿へ走り帰ってきたところだ。

目当ての人物は、やはり部屋に居なかった。
早足で宿中を確認して回る。
普段なら決して床を必要以上に鳴らし廊下を歩くことは無いが、今日ばかりはそうもいかぬようで。

「旦那様、旦那様! 祭事はどうなったのでしょう。
 沙華さまも見当たらず………旦那様?」

心ここにあらず。奉公人の主人は、
窓辺から宙を舞う塵を目で追いかけうわ言を呟く。
贄とはなんぞや。何へ捧ぐもの也や。

記憶が焼け落ちた様なその現象に、覚えがあった。
彼らは祭礼を
"忘れて"
いる。

「っ!!」

そう思い至った矢先には既に身体が動いていた。
儀式用の弓をひっ掴み、外へ駆け出す。

「どうかご無事であってください………!」

切に願う声は、塵を舞わせる風に乗って流れ消えた。
(-7) dome 2021/07/28(Wed) 17:31:26

【秘】 奉公人 ユヅル → 忘れ屋 沙華

望まぬ客人
は、現れただろうか?

焼き焦げた匂いが満ちる空気が漂う中、
遠くより地を蹴り沙華に駆け寄る音がする。
子どもよりは重く、島の大の男達にしては軽い足音。
あなたの周りに島の手先が居ても、居なくとも。
愛子が躊躇うことは無い。

「沙華さま!!」

息を整えながら、すぐ側に座り、その顔を覗き込む。
身体を伝う黒いものを、白い指先が掬い取った。

「殆どの方々が神託を忘れていらっしゃいました。
 全て、沙華さまのお力によるものですね。
 此の様なご無理をなさるとは………」
(-9) dome 2021/07/28(Wed) 18:51:13

【秘】 忘れ屋 沙華 → 奉公人 ユヅル

それは
意外な来客だった。


「ユヅ・・・・ッ!」
自分が最も目にかけてきた相手があらわれる、
一瞬は最期の幻想かとも過るが、その声に意識を引き戻す。

ユヅルが沙華の下へ辿り着くのに前後し、空を切る異音。
二人のすぐ傍に矢が射かけられる。

「そう・・・俺の、仕掛けだよ、連中に目に物見せてやれただろう。」
その証拠に奴らはご立腹さ。


「だけどユヅル、ここに来てしまったのは、すこし、お利巧すぎたね・・・。」
「今なら、まだ‥‥」

自分だけで清算するつもりだった、
それが最愛の弟分を巻き込んでしまうとは。

いや、まだ命運が決したわけでは無い。
『俺に微かでも悪運が残っているとつうなら・・・・』


「ユヅ、ル。お前は何処へ行きたい?」

「お前が選ぶ道なら、俺は・・・それを誰にも邪魔させねえ。」

膝に手を掛け強引と立ち上がる。
周囲に凶手が迫っている、猶予はあまり残されていない。
(-10) Sanpatu Tea 2021/07/28(Wed) 19:29:29

【秘】 奉公人 ユヅル → 忘れ屋 沙華

「あの様な弓の扱い方では決して私には当たりません。
 ……沙華さまにも、当てさせません」

月を思わせる金の瞳が、矢が放たれた方向を鋭く睨む。
微動だにしない奉公人の横を矢が過ぎ去る。
三日三晩、神託の御手すら此の身を掠めなかった。
魔除けの願掛けは、幻ではなく其処に在ると証明されている。
長くは続かないが、言葉を交わす猶予程度は稼いでくれるだろうか。

「賢明であれたなら、
 此処に来ることはなかったかもしれませんね」

島の掟に従うまま、大祭を遂行していただろう。
ひとえに狼達が、共に鳴き合うた者が。
神狼に牙を剥いたから。

「………遅れた反抗期が、来たのでしょうか」

ゆるりと沙華に向き直り、
立ち上がる背を支えながら、口の端を緩めた。
(-12) dome 2021/07/28(Wed) 21:06:27

【秘】 奉公人 ユヅル → 忘れ屋 沙華

『何処へ行きたいか』
そう問う声に、どう返そうかと。
己の望みを聞かれることは稀だったもので。

「……私は、沙華さまと御一緒できれば
 何処であろうと幸せです。
 だから、沙華さまが共に居てくれる場所に、行きたいです」

上手く伝えられているだろうか。
一つ一つの言葉が、零れることなく耳に届くように。
地にある枯れ朽ちた花の中から、
形を保った彼岸花を一輪拾い上げる。

"想うはあなた一人"。

 斯様な花言葉があるそうですね」

拾われた宿にも恩義はある。
だがその恩義以上に、家族のように想える人がいた。

「私の願いを、聞いてくださいますか?」
(-13) dome 2021/07/28(Wed) 21:07:29

【秘】 忘れ屋 沙華 → 奉公人 ユヅル

「そういうからくりか・・・」
沙華とて自分のまじない以外に精通しているわけではない。
効力を見て取ればそこに実質以上の安心を感じただろう。
加えて・・・。

「賢明じゃないと、自覚してだってかい?」
風も揺らさないような、小さな響きで笑う。

「いったい誰に似たやら・・・いや、
一人前になったな
。」

その精悍な顔を見ちまったら、誰しも不安など消し飛ぼうさ。
もう一度こんな輝きを見れる日が来るとは、そして今度はこの輝きが消えないように。
再会を願う、その心は果たされたのだから。

「俺の花を以ってそう言われちゃ、なんでも言う事聞いてやるしかねえな。」
いつものように、ユヅルに肩を預けながら。

起こした身で誓う。
もう俺の掌の内よりずっと大きくなったこの子を、決して。

「俺の瞳の黒いうちは、一緒だ。
    いこうか、俺達も、本当の祭りの舞台へ。」
(-14) Sanpatu Tea 2021/07/28(Wed) 21:48:15

【秘】 奉公人 ユヅル → 忘れ屋 沙華

「神の怒りに触れようと言うのです。
 恐れ知らずでもなければ叶わぬことでしょう」

逸れて地に突き刺さった矢を数本拝借する。
文字通り、一矢報いるには十分だ。

「目をかけてくださる方が、沢山いましたから」

彼岸花の誓いを得れば珍しく、子どものように笑ってみせた。
背負う誇りに恥じぬよう、いつものように背を伸ばし。

「はい、何処までもお供致します。
 参りましょう。一世一代の大舞台へ」

沙華の手を取り、二人で祭りの中心へと。
輝きを続かせる為に、越えねばならぬ舞台がある。
(-16) dome 2021/07/28(Wed) 22:48:00

【人】 奉公人 ユヅル

沙華の背を支えて、左方と右方が舞う場へと急ぐ。
祭りの篝火が見えてくる。

「人の身を器にした時、
 神格がその身体に収まるかが問題なのですね」

島民の大多数が神託を忘れ、
遣いたる狼達、舞手も反旗を翻した。
信仰の加護を大きく削がれた神狼の心臓。
其れを更に二つに断てば、或いは。

「望みがあるのなら、それに賭ける価値はあるかと。
 私も、全霊を掛けて助力致します。
 五十鈴さまとであれば、共鳴りによる会話が可能です故、
 合図を用いて息を合わせる事ができるやもしれません」

神を喰らう大業、己にも何が起こるか判らない。
それでも、昏い瞳に金色を映す。
足掻く人の光となれるように。

「此処まで来たのですから。
 きっと、必ず、悲願を成しましょう」
(2) dome 2021/07/29(Thu) 19:26:15