人狼物語 三日月国


87 【身内】時数えの田舎村【R18G】

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視点:


【人】 枠のなか 卯波

「ああ、夏祭りはやっぱり終わるから、
 綺麗な思い出になるんだなあ」

幾つかの喧騒が遠くに行ってしまう。
それでもまだ花火は上がるし、
盆踊りの楽器の音は続いているけれど。

確かに、夢が終わりへと近づいている。
ここで撮った写真は、現実に持ち帰れないのかなあ、
なんて思ったりして。
(0) backador 2021/08/16(Mon) 22:30:52

【人】 枠のなか 卯波


写真を一枚、一枚と選んでいく。
もし持ち帰れないのならせめて覚えていたくて。

そういえば晶兄に写真見せてもらってないな、
と今更思い出して、たははと笑う。

でもそれは、また会う日までとっておきたいかなと思う。

花火の下、四人で寂しさに揺れている写真、
海で晶兄と二人で飛び込んだ笑ってる写真、
集まったひとりひとりを撮っていった写真、
訪れてまず最初に撮った、田舎の風景写真。

これまでの数日の歩みが全部切り取られて、
お祭りに際して設置された机に並べられる。

「あーあ。これだけあったら、
 コンクール受賞とか間違いなしなのに」

皮肉げに笑った。
慈姑婆ちゃんの癖がうつったみたいだ。
(4) backador 2021/08/17(Tue) 0:02:08

【独】 一人 卯波


結局のところ、真正面からぶつかったり、
追いついた背中を押したりしているうちに、俺は誰の横にも並び立つことはなかった。

晶兄にはどうしても勝てなかった。
それに誰の一番にもなれなかった。

茜ちゃんの一番は晶兄で、
晶兄と瞬兄はお互い一番で、
ずっと、二番以下の一ノ瀬卯波。

四人でひとつなのに、
四角形の中にはいないんだ。

「だから、女の子らしくなんて、
 願っちゃったんだろうなあ……」

時任の兄さんを思い出す。
夢の中でもあの人のように振る舞えたら、また何か違っていたのだろうか。

いや、結局のところ晶兄への嫉妬があった限り、何かが変わったわけじゃあるまい。
(-14) backador 2021/08/17(Tue) 10:04:21

【独】 一人 卯波


一ノ瀬卯波がいなくても、
みんなはきっとうまくやっていける。
俺がいない間も、みんなは、
各々の人生を問題なく歩んでいける。

そんな自分の心の声に負けるのが癪だ。


誰かの一番になれなくったって、
俺がみんなを等しく一番に愛したらいい。
みんなの人生の一番綺麗な部分を、
切り取るのはいつだって俺にしたらいい。

“卯波は写真を撮るのが一番上手な子だった”

それだけは、誰にも負けない、
確かで大切な事実なのだから。

晶兄との勝負だって、負ける気がしない。
(-15) backador 2021/08/17(Tue) 10:12:32

【独】 あなた達の写真家 卯波

愛する友人たちが立ち止まるたびに、
押し寄せる波
≪かれ/かのじょ≫
がその身体を引くでしょう。

例え呼ばれずとも、鬱陶しがられても、
夕焼け色の瀬
≪かれ/かのじょ≫
はどこにでも行くでしょう。

一ノ瀬卯波の夢はまだ形を得たばかりだ。
皆の人生の何処にでもついていって、
大切な時間の中に、一員として身を滑り込ませる。

茜色の空の下
嵐の中、

傘を編む人へ
波は漣漣とする。


それが、一ノ瀬卯波の思う、幸せだ。
(-16) backador 2021/08/17(Tue) 10:21:29

【神】 一人の、あなた達の写真家 卯波










     「じゃあ、みんな、
      撮りますよー!はい、チーズ!」










    
(G0) backador 2021/08/17(Tue) 10:26:26
卯波は、皆の写真を撮った夢を、現実にする。
(a5) backador 2021/08/17(Tue) 10:27:25

卯波は、たった一人だけの。
(a6) backador 2021/08/17(Tue) 10:27:49

卯波は、あなた達の写真家だ。
(a7) backador 2021/08/17(Tue) 10:27:55

(a8) backador 2021/08/17(Tue) 10:38:45

【魂】 あなた達の写真家 卯波

「もう少し、
 カッコつけて言えばいいのに」

いざ、境内に踏み入ってくるならば、
神社の枠の中にそれらを囲うならば、
卯波は、しっかりとその声に応える。

「俺……場違いだと思うんだけどなあ。
 いつも遅れて後ろをついていったり、
 急に先走ってどっかいっちゃったり。

 四人組って枠組みに相応しくないよ。

 それでも、俺の名前も呼ぶなんてさ。
 情けのつもりなのかは知らないけど」

そうして踏み出し、わずかに微笑んで。
意味がない写真をバラバラに引き裂き、

  わーっと、 
     風に乗せて
             遠くに散らした。
(_1) backador 2021/08/17(Tue) 22:06:11

【魂】 あなた達の写真家 卯波


そう。全部意味のないものだ。
それでも撮ってしまったものだから、
こうして、解き放ってあげる。

もう一度、皆を写真に収める日のために、
今、やっと、夢から決別する。

いくつもの写真は、
季節外れの白いカケラに成り果てて。

「でも。やっと気づいてくれたんだ」

そっと、手を差し伸べる。
届く距離にはいないし、ただのポーズだけど。
何度も示してきたから、もう一度。

「手を貸してあげる。
 俺だって、あちこち駆け回って、
 みんなを探しにいくんだもの。

 でも、これは競争ですよ。
 俺は、晶兄より先に見つけて見せる」
(_2) backador 2021/08/17(Tue) 22:11:49

【魂】 あなた達の写真家 卯波

「会いにいってあげて。
 ここでも。ここから帰っても。
 どんなに時間をかけても、絶対」

「その行く末を撮るのは俺なんだから。
 絶対、悲しい写真にはしないでください」

手を戻し、背中を向けて。
顔だけ振り向けば、何がおかしいのか、
にやにやとした笑顔を見せて、

「遅いよ、バカ」

と言い残し、走り去っていった。
(_3) backador 2021/08/17(Tue) 22:18:13