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【独】 摘まれた花 ダニエラ>>-403 >>-404 ことり、と。 窺うような表情に、女は首を傾ける。 「…んー。」 「……んー…。」 言葉を受けて、少しして。 えへ…と力なく笑った。 作り笑顔にしては下手くそすぎるそれは、きっと いつもの と少し違う。「ミネはあ。」 「ふふ。あたしを甘やかすのがあ、じょおず」 額をこつんと、あなたに寄せて。 「…あんねえ。…あたし」 「こわいんだあ。」 甘やかな声。 「お母さんみたいに」 「アレッサンドロさん、いなくなるんだあって」 「…でも」 「ずっと、勝手な上司さんだったしい」 「今更だなあって思うのも、あってねえ」 重ねた手が僅かに、ぴくんと震えた。 (-410) oO832mk 2023/10/01(Sun) 19:17:20 |
【独】 摘まれた花 ダニエラ>>-403 >>-404 >>-410 「だから」 「今1番こわいのは、そのことじゃなくて、ねえ」 ゆっくり、手を返して。握り返す。 「…聞きたいこと、あるんだけどお」 「間に合わなかったり、いやな返事きたら、いやだなあって」 「……そんだけえ。」 ゆっくりと、額を離して。 またへにゃりと。そして。 「だからあ」 「もしそおなったら、…ミーネ」 もう一度。甘えた声。 「いっぱい、いっぱい」 「慰めてねえ。」 困ったような笑顔と一緒に。 …やだなあ。逃げないのって。本当に、やだ。 (-411) oO832mk 2023/10/01(Sun) 19:18:14 |
【独】 摘まれた花 ダニエラ>>-412 >>-413 >>-416 は、と短い息を吐き。 色んな物が遺っているのに、 何もなくなった その港で。「…ミネ……」 ぱちくりと、その大きな声に瞬いて。 あはは、と笑う。…気持ちだけなら、ものすごくよく分かって。 だけど、やっぱり。 我慢とはまた別の話で、同じような文句は出なかった。 そういう人だと分かっていたから。 それを呑み込めてしまうくらいに、聡かったから。 そんな時、ドローンの照らした地面に何か光るものを見た。 見覚えのあるものに、見慣れないものがついている。 …その見慣れないものすら見覚えがあるものだから、また笑えてしまって。 「はーあ。」 「本当に、あの人はあ……」 徐にそれを拾い上げた女は、海に向かって大きく放った。 そうして大きく、息を吸う。 (-418) oO832mk 2023/10/01(Sun) 20:13:34 |
【独】 摘まれた花 ダニエラ>>-412 >>-413 >>-416 >>-418 「忘れ物、ですよおー!」 「…あげたものくらい、大事にしてくださいよお」 「……ほんとおに」 それは大きく放物線を描いて。 ぽちゃん、と。波の間に落ちて見えなくなった。 …まったく。最後の最後まで、結局文句を言わせるんだ。あの人は。 そういう人だった。知っていた。 それでも、本当に、大好きな人だっただけ。 何も見えなくなった昏い海を見守る。 へたり、と女はその場に座り込んだ。 いつの間にかその頬に、また涙が伝う。 暫くの間そうやって、いつかみたいに、その空と海を見つめていた。 (-419) oO832mk 2023/10/01(Sun) 20:14:35 |
【人】 摘まれた花 ダニエラ (136) oO832mk 2023/10/01(Sun) 20:26:47 |
【人】 摘まれた花 ダニエラ (138) oO832mk 2023/10/01(Sun) 20:32:21 |
【人】 摘まれた花 ダニエラ (140) oO832mk 2023/10/01(Sun) 20:45:00 |
【独】 摘まれた花 ダニエラ>>-429 ぐし、と少し乱暴に涙をふいて。 くるりと女は振り返った。 「…もおやだ。」 「今日なんもしたくない。」 文句だ。…お望み通りの。 そうして変わらず、ゆるりと絡みつく。 ずび、とまた鼻をすする音だけが聞こえて。 「ん、…帰ろお、ミネ」 足音がひとつ、ふたつ。 港を離れて、車へと消えていく。 (-430) oO832mk 2023/10/01(Sun) 20:56:01 |
【念】 摘まれた花 ダニエラさて、翌日。 正式な手続きを踏まず脱獄した女にどれほどの時間があるだろう。 少なくとも今ここで、自宅のアパルトメントへと立ち寄るような女ではなかった。 「…ただいまあ」 だから、最後に立ち寄ったのはそのホテルだった。 …変わらず、照明はついたまま。誰もいない室内に声をかける。 そうして真っ先にデスクへと向かい。 そこにある『大切なもの』たちを見つめ、ひとつひとつを回収してく。 冷蔵庫から、チョコレートも取り出した。 (!0) oO832mk 2023/10/01(Sun) 20:56:53 |
【独】 摘まれた花 ダニエラライムグリーンのウィッグをつけたテディベア。 これは大事に飾っておこう。 ブーゲンビリアの花束も。 枯れるまでは大切に、花瓶に生けて。 このチョコレートは、紅茶と一緒に食べようかな。 ミネは、チョコが大好きだし。 バスボムは、特別疲れた日に使っちゃおうか。 …今夜とか。 (-431) oO832mk 2023/10/01(Sun) 20:57:11 |
【念】 摘まれた花 ダニエラ片腕にそれら『大切なもの』たちを抱いて。 そのまま振り返り、部屋の隅を向く。 ちょこんと最後にひとつ残されたスーツケース。 片腕で、よいしょ。これもそこそこ重いから、怪我した腕ではひと苦労。 …この中身は、どうしようか。 それだけは、まだ決められそうにない。 自分ひとりの問題ではないからかもしれない。 でも、いづれは決める心算ではあった。 (!1) oO832mk 2023/10/01(Sun) 20:57:36 |
ダニエラは、「ああ、でも…。」 (a57) oO832mk 2023/10/01(Sun) 20:57:49 |
ダニエラは、この中にある、鍵だけは、どうしようかは決めていた。 (a58) oO832mk 2023/10/01(Sun) 20:57:59 |
ダニエラは、きっと近いうち『お兄さん』に連絡を入れる。 (a59) oO832mk 2023/10/01(Sun) 20:58:33 |
ダニエラは、彼の方が、自分よりずっとあの場所での思い出が多いと知っていたから。 (a60) oO832mk 2023/10/01(Sun) 20:58:39 |
【念】 摘まれた花 ダニエラ「常連さんには、結局なれませんでしたしねえ」 そうひとりでに、からころ笑う。 喜ぶべきか悲しむべきか微妙なところだ。 女はそもそもコーヒーという飲み物の味が好きではなかった。 今まで一度も、誰にも、そのことを口にしなかっただけで。 荷物に両腕を抱えて、女はホテルを後にする。 もうここを訪れることもないだろう。そうやって初めて照明を消した。 (!2) oO832mk 2023/10/01(Sun) 20:58:59 |
【影】 摘まれた花 ダニエラ 苦い水面に砂糖を2つ。 そうやって飲める味にしても尚やっとだった。 それでもダニエラ・エーコは、日常的にコーヒーを嗜んだのだ。 でないと、喫茶店になんて足を運ぶ事も出来やしない。 そしてそのための我慢は全然苦でもなかった。 きっとこれも、石であり、星だったのだろう。 もう、そんなかいがいしい我慢もする必要はない。 だというのに、スーツケースの中、手放す気のないものがひとつだけあった。 …この香りが好きだったのは、本当だったから。 (&2) oO832mk 2023/10/01(Sun) 20:59:21 |
【置】 摘まれた花 ダニエラねえ、アレッサンドロさん。 あの日、聞くことができなかったこと。 だから、本当のことはわからないままのこと。 あたしは、―― 親孝行 できていましたか?聞けた方が良かったのか。 聞けないままで良かったのか。 その答えすら、今も出ない。――きっと、これからも出ることはない。 (L7) oO832mk 2023/10/01(Sun) 20:59:40 公開: 2023/10/01(Sun) 21:00:00 |
【人】 摘まれた花 ダニエラ荷物を転がし、抱えて、少しの距離を往く。 虚実不明の明るい鼻歌を奏でる。 そうやって向かう先にいるのは王子様。 あたしのひと。いつものように、女はその名前を呼んだ。 (141) oO832mk 2023/10/01(Sun) 20:59:55 |