「ありがとう、ブラック」

「僕の名前はカーキ・アッシュ。
　皆の監察官を務めさせてもらうことになった。

　至らない点もあるかもしれないけど、
　どうかこれからよろしくお願いするよ」

恭しくグレイ一同に頭を下げる監察官の表情は堅く、
緊張していることがありありと見て取れるだろう。

「手始めに……皆の事を教えてほしい。
　差し支えなければ軽く自己紹介でも、どうかな」

「…………」

「結構……絞られてて……」

ひのきのぼうが買えるくらい。
体制はよくなっていても金回りはよくないみたい。

「僕たちで塔の探索を頑張れば、
　きっと不自由しない程度には賄えるとおもう。うん」

「そう、塔の攻略について。
　テストプレイだからとある程度の情報は渡されているから、
　今から読み上げておくね。よく聞いていてもらえると嬉しい」

今ここに居ないグレイに対してはなるべく個別で伝えるようにするが、念のため君たちの間でも積極的に共有してほしい。そんな旨も伝えつつ。

「──と。

　昔はグレイの監視目的で、塔の攻略には監察官の同行が必須だったみたいだけど、それじゃ双方の気も休まらないだろうと今では監察官のモニターによる観察だけでもいいみたいだ」

「呼ばれればなるべく向かうようにするけど、
　僕がいない時でも、どちらにせよ無理はしないようにね」

「……あれ、既に塔の中にいるグレイが？
　様子を見に行くのはいいけれど、確か……

　今日はまだ、ほんの入り口しか探索出来ないと思うし、ほどほどにして帰ってくるんだよ」

あと次からは誰かに一声かけてね、とも。
慌ててモニターを開きながら指示をしていた。

「日常生活に即した罠……かもしれないし、
　やっぱり棘が生えてきたりするのかもな。
　
　そういうのを確かめるために、
　気になる子は見に行ってもいいかもしれないね」