【人】 部隊長 シュゼット[>>1:380見張り台から帰る時、 最小限まで明かりの落とされた基地内。 部屋へと戻る廊下の途中に、誰かの影が見える。 その人は、僕が近づいてくるのに気が付くと、 持っていたタブレットの操作を止めて、 僕へひらりと手を振った。] 『やぁ。部隊長殿。待っていたよ。 見張りのお役目、ご苦労様。』 総司令……? あ、…!お待たせしてしまい、申し訳ありません。 ですが、その。ご用事があるのでしたら、 ご都合の良い時間を指示いただければ 僕の方から、伺いましたのに。 [僕はびっくりして、背筋がしゅっと伸びる。 まさか、こんな時間にこんなところで司令に会うなんて。 『気楽にしていいよ』なんて声をかけられたけど 前線基地の一番偉い人に、気楽になんてできやしない。 最初の襲撃で記憶を無くした状態で会った時ならともかく あれから僕も、色んなことを学んできた。 今でも敬語に自信があるわけではないけれど。 あの時のような無礼な話し方は、もうしていなかった。 いつもの、一見穏やかな笑みを浮かべたまま 僕の様子を見て、敬礼の手は下げるよう指示される。] (58) kaomozi 2020/05/22(Fri) 2:55:15 |
【人】 部隊長 シュゼット 『それほど硬くならなくてもいい。 今日、私がここで兎君を待っていたのは 一つだけ、聞きたいことがあっただけなんだ。』 僕に、聞きたいことでしょうか……? はい、何、を――――――! [普段、総司令は滅多に僕に会うことは無かった。 僕の記憶を戻すためにあらゆる手を尽くせと、 そう指示をしているのは司令だと聞いていた。 全ての結果は、司令に伝わるのだと。 ……僕はそうも、聞かされていた。 総司令は笑顔でも、僕を見る目はいつも通り冷たい。 僕は、いつも思っていた。 彼が、他の兵士や研究員や軍医を見る目と、 僕に対して向ける目は、全く異なるものだ。 その目が、僕を射抜いた。] (59) kaomozi 2020/05/22(Fri) 2:56:23 |
【人】 部隊長 シュゼット[―――背中を、汗がつぅと伝っていった。 僕は指令と対峙する位置で、暫く動けずに 何を話そうかと悩み、戸惑う視線は揺れる。 どうする。……どうする。 まだ、僕自身に関わることかわかったわけじゃない。 『夢』のことを話すのは、きっと、良くない。 ただ、何も話さないのは、一番駄目だ。 この人は、『検査』の結果を全て聞いている。 脳波は記憶の回復の兆しを見せているらしいから。 何もないわけがないと、そう思っている。 それに、実際………最近は、] 指令に隠し事、なんて。僕は……何も、 [ふと、気づいて。帽子の上から頭を撫でる。 『奇妙な夢』を見るようになったのと同時期に 以前の僕と比べて変わったことが、一つだけ、あった。] (61) kaomozi 2020/05/22(Fri) 2:57:43 |
【人】 部隊長 シュゼット ……そういえば最近、ですが。 頭痛がするように……なりました。 薬の副作用よりも、遥かに弱いもの、です。 でも、……それよりも。遥かに、耐え難いものです。 [指令は僕の言葉を聞いて、僅かに目を見開いたようだった。 僕の返事は、指令の問いの答えになってない。 だから、怒られるかとも思った] 『……頻度は、どのぐらいだろう』 え……? ……最初は、すぐ収まりましたが。 日が経つにつれて、多くなってきてるようで…… ["思い出した"ことなんて何も話していないのに 指令は、僕のこの答えで満足したようだった。 ただの頭痛だろう……そう思い込もうとしていた僕は 指令の反応で、一気に深い穴底に突き落とされた気分で。 降ろしていた掌を震わせ、握りこんでいた。] (62) kaomozi 2020/05/22(Fri) 2:59:58 |
【人】 部隊長 シュゼット 『どうやら、もう少しのようだね。』 [そんな僕を見て、ジャイルズ総司令は笑みを深め。 僕の肩を軽く叩いた。 びくりと肩が震え、心拍が上がっていって、 青ざめた顔で俯いた僕は、上手く呼吸も出来なくなり、 時折、しゃくりあげるように息を吸う。] 『兎君。私はまだ、君への判断を下していないんだ。 君が一体何者で、なんのためにあそこにいたのか。 それを知ることは、確実に、我々の強みとなる。 君も、自分のことは早く知りたいだろう? ―――これからも『検査』は真面目に受けるんだよ。』 [そう言って、指令が立ち去った後も 僕は暫く、その場に立ちすくんで動けなくなってしまって。 ……その後どうやって部屋まで帰ったのか、よく覚えていない。 この頃からは、夢を見て起きた直後にも、 例の妙な頭痛がするようになった。 最初こそ弱い頭痛に感じていただけのそれは、 段々と、頭の中を捏ね回されるような不快感になり。 気を抜くと、僕が違う何かになってしまいそうな そんなあり得ないイメージがついて回るようになっていった。] (63) kaomozi 2020/05/22(Fri) 3:01:44 |
【人】 部隊長 シュゼット[この次の日、総司令から『検査』担当の軍医達に向けて、 こんな指示があったことだろう。 『おそらく、副作用ではない兎の頭痛は、兆候だ。 特にその前後の様子は、よく見ておくように。 何か記憶の手掛かりを落とすかもしれないからね。』と。] (64) kaomozi 2020/05/22(Fri) 3:02:19 |
【人】 部隊長 シュゼット― 数日後の医務室 ― [通信機をルークと回収してから、一週間ほどが経った。 通信機の解析については僕も気になっていたから 戦闘演習の帰りなど空いた時間に、 >>1:402解析を任せた技術班の人達の様子を見に行った。 研究棟には、義手の解析で行くことがあったぐらいだが 毎回、ここの人達のテンションにはあっけにとられてしまう。 >>1:403技術班は個性的な人たちが多くて 突然、仕事を増やされたっていうのに、 皆して宴でも始まったかのようなハイテンション。 そして皆、自分たちの研究成果を話すのが大好きみたいで 一度話始めると、ちょっとやそっとじゃ止まらない。] (65) kaomozi 2020/05/22(Fri) 3:03:27 |
【人】 部隊長 シュゼット[彼らは、興味の対象物以外について覚える気はないようで、 ルークの名前も何度僕が隣で教え直しても 最後まで間違えたままだったし、 僕の名前についても、ゼット、だの、ゼットン、だの。 シュークリームだの、シータだの。 最後まで、ほぼ不正解の名前で呼び続けた。 帰るときには僕ももうどうでもよくなって、 なんて呼ばれようが返事を返すようになっていた。 研究や解析の結果を聞く分には、 彼らは前のめりに色々と話してくれる。 少し前に見に行った時は>>11解析結果を教えてくれたけど 途中から、内部の通信に使われている暗号についての話になり 暗号解読に苦労していると長時間に渡って話された挙句、 午後の演習に遅刻しかけるというミスをしてしまった。] (66) kaomozi 2020/05/22(Fri) 3:03:37 |
【人】 部隊長 シュゼット[『検査』は数日おきに一日休みが入るぐらいで、 今も継続して続けられていた。 軍医達に囲まれて行われる投薬実験での僕の扱いは 相変わらずモルモットのようだったし。 最近、軍医達が口をそろえて、 「妙な頭痛がしたらすぐ教えるように」 と、作り笑顔を張り付けて言ってくるのには 流石の僕でも、辟易してきていた。 いくら、記憶を取り戻させたいからと言って。 痛みを期待するのが、医師のすることなのだろうか。 僕はただ、皆を守りたいと思っているだけなのに。 思い出した後の僕の処遇は、保証されているのだろうか。] (67) kaomozi 2020/05/22(Fri) 3:04:01 |
【人】 部隊長 シュゼット ―――まだ僕への判断を下していない、か。 判断、……ね。 [総司令の言葉の意味を考えると、怖くなる。 もし記憶を思い出した結果、僕が僕で無くなって、 ……機獣を倒すのに有用な存在では無くなってしまったら。 悪い判断が下されてしまうのかもしれない。 最近見た夢は頭痛と共にもやもやと頭の中を渦巻いて。 僕はとぼとぼと歩きながら、重い息を吐いた。 夢について思い出すときには、頭痛も一緒についてくるけれど タブレットに書き残した夢日記に返される返事…… あの暖かくて優しい誰かからの返事を読んだ時の記憶も 一緒に思い出すことができるのが、 今の僕には、他に替えられないほどの救いだった。] (68) kaomozi 2020/05/22(Fri) 3:05:03 |
【人】 部隊長 シュゼット[前回、薬を減らして貰ったのが悪かったのかもしれないが 『検査』の担当がルークだけのことはなくなってしまった。 何の楽しみもなく、以前より増して苦痛のみがある。 …………ここ数日の『検査』は、憂鬱そのものだ。 僕もなかなか時間がとれなかったから 昼間に、医務室に行くこともあまりできなかった。 行くことが出来た時だってルークだけが居ることはなく 近くまで言って兎の耳をすませ、 聞こえてきた中の様子にしょんぼりと耳を揺らして 仕事に戻る。……最近は、そんな日々だった。] (69) kaomozi 2020/05/22(Fri) 3:05:42 |
【人】 部隊長 シュゼット[さて。今日の訓練は全て終わり。 『検査』も数日に一度の休みの日だ。 いつもなら、食堂で部下達と皆で夕飯を食べるのだけど、 突然あの嫌な頭痛が襲って来たら平気な顔でいられない。 部下達を心配させるわけにはいかないと、 僕は夕飯のパンやスープを容器に入れてもらって。 一人で部屋で食べるため、持ち帰るところだった。 夕飯を食べ終わったら、医務室に行ってみよう。 『検査』もないのに夜の時間に行って、 そこでルークに会えたら彼は驚いてくれるだろうか。 夕飯が乗ったトレーを持ったまま、くすりと笑う。] ……あれ? 君は……医務室のペンギンじゃないか。 [まっすぐ進めば、隊長クラスの兵達が暮らす兵舎がある。 そちらへと続く渡り廊下へ向かおうとしていたら ぐいぐいと、足元のあたりを後ろに引っ張られた。 振り向くと、そこにはルークと仲がいいペンギンが居て。 何かとても焦った様子で、きゅーきゅー鳴いている。 ばたばたと身振りで、"こっちきて!はやく!"とか そんなことを僕に伝えたがっている。 ……いや、僕は彼の言葉はわからないんだけど。 ここ最近一緒に居ることが多かったせいか、 前よりは、この子の気持ちがわかるようになったと思う。] (70) kaomozi 2020/05/22(Fri) 3:06:36 |
【人】 部隊長 シュゼット こっち……? ……なんだ。医務室に、来てほしかったのか? [僕は、この子が懐いている軍医を一人しか知らない。] 医務室…?まさか……!! [ペンギンの様子と行先に嫌な予感がするのと、 遠くの方へ去っていく足音を耳が捉えたのは、同時だった。 思い出すのは、あの日、頬に痣を作っていたルークの顔。 >>1:143痛々しいまま、自分では何もせずにいた、彼。 もし、ルークが、あれ以上のことをされたとしても 彼は―――死ぬほどの怪我を負わされたとしても、 そのまま、何もしようとしないのでは、ないだろうか。 歩く足は、だんだんと速くなり、駆け足になる。 去っていく足音を追うなんてことより先に 中に居るだろう彼のことが心配で、心配で。] (71) kaomozi 2020/05/22(Fri) 3:08:24 |
【人】 部隊長 シュゼット[医務室に入った直後。 目に入った、倒れた器具と、そのそばに倒れた姿に 僕は、血の気が一気に引いていくのを感じた。 どうしよう。どうすればいい。 狼狽えたのは一瞬。 落ち着け。僕は兵士だ。 まずは状況を、怪我の場所を確認して、 動かせそうなら安静にできる体制に…! 僕はすぐ近くにあった机の上に 持っていた夕飯のトレーを乱暴に置いて。 (その辺に投げ出さなかっただけでも偉いと思う)] ルーク!!! [床に倒れているルークの側にしゃがみ込んで、 かがみこみ、極めて近い距離で顔を覗きこむ。] (72) kaomozi 2020/05/22(Fri) 3:09:24 |
【人】 部隊長 シュゼット[頬のあたりと、首筋を薄く切られているのを見れば、 彼がこんな目にあってしまったのが、辛くて。 胸を締め付けられる気持ちで、唇を噛みしめる。 そして、ペンギンの方を振り返って、叫んだ。] 君も、ルークを治したいだろう! 消毒液と、ガーゼを…!! [本当は僕も手伝いに行きたかったけれど 他に大変な怪我をしてたらと思うと、動けなかった。 他にどこか切られたり殴られたりしてないだろうか。 あぁ、早く確認して。手当をしてやらないといけない。 ……そう思った僕は、脱がしていいかと聞くのも忘れて、 彼の纏っているローブの袖と、フードも勢いよく捲ろうと。]** (73) kaomozi 2020/05/22(Fri) 3:10:59 |
部隊長 シュゼットは、メモを貼った。 (a10) kaomozi 2020/05/22(Fri) 3:15:35 |
【人】 部隊長 シュゼット[>>16ルークが兵士に襲われるよりも数日前のこと。 今日はまた、見張りの当番の日。 でも、見張り台について交代を申し出ると、 僕の前に見張りをしていた兵士には、 大丈夫かと酷く心配されてしまった。 僕は、平静を装っていたつもりだったけれど。 きっと、顔色も悪く辛そうに見えたのだろう。 「薬のせいで不快な頭痛が起きるようになった」 僕は、軍医達にそう訴えたのだけれど、 皆、僕の言葉を聞いて喜ぶばかりで 僕の体の心配など、一人もしてくれなかった。 頭のあちこちを弄られているような頭痛。 その頭痛は見張りの前の仮眠から起きた後、 ずっとおさまらずに―――今も、続いている。] ……、大丈夫、このぐらい。 大した痛みじゃ、ない……… [まずは周囲に危険が無いか、ちゃんと見ないと。 頭を押さえながら、基地外壁の外の方を見る。 僕は、自分に言い聞かせる。 僕の目も耳も、考える力も、問題はない。 だから、大丈夫。……大丈夫だ。] (160) kaomozi 2020/05/23(Sat) 3:25:02 |
【人】 部隊長 シュゼット 人が住めなくなった土地、か。 そんなひどい場所……どこに、…… [この世界には―――ない。 そう思った瞬間、また、頭が痛んだ。 僕は今はなるべくそのことを考えないようにして 書かれた内容のその先を読み進めた。 相手自身の話があるのに気づいた時は嬉しくなったけど 内容に目を通した時は心臓がどきりと跳ね上がって。 頭を押さえる指先が、頭部を引っ掻いた。 "情緒面と感覚に異常がある" と。 その言葉を読んだ時、一つの顔が浮かんだ。 どう見ても僕に怒ったり、心配したりしてるのに、 >>1:397自分では自分の感情を理解していないような 他の軍医とは全く違う、彼。] まさか……いや、そんなわけ。 ……でも、ルークも…。 [思い当たる節は多かった。 僕は、そんなこと思ったことはないけど "よく人を不快にさせる"軍医といえば、 どう考えても、ルークのことだった。] (162) kaomozi 2020/05/23(Sat) 3:26:04 |
【人】 部隊長 シュゼット[……あぁ。でも、本当にそうだとしたら。 猶更、彼には、これを書いているのが誰か。 この夢の登場人物が僕自身だと知られちゃいけない。 僕の予想が合ってしまっているなら。 遺失技術の研究者だった父を"亡くして"いる (研究者の死亡という話で、基地から大量の犠牲者が出た 最初の襲撃が原因だと僕は勝手に当たりをつけていた) ルークにとって、僕は―――] (163) kaomozi 2020/05/23(Sat) 3:28:54 |
【人】 部隊長 シュゼット[きっと、僕の思いすぎで、別の人だろう。 そうは思っても、どうしても気になってしまう。 僕はここまで、ちゃんと正体を隠せているだろうか。 僕は前に何を書いただろう、と思い出す。 確か僕は>>1:380あの時、四角い形をしたものを "通信機"と書くのを避けたのだった。 戦闘班が戦闘時に使っている通信機は かなり小型で見た目も全然違う。 他の形をしたものが通信機であるとすぐわかる者は、 この基地には少ないと思ったから。 ……だが。 前の夢を思い出しているときに、気づいてしまった。 このあいだルークと回収した、 機獣が残した大型の通信機の見た目は知っているが 何故僕は、こないだのものよりは遥かに小さく、 普段使っている通信機と見た目も違う、 掌大の箱型をしたものを。 ぼんやりとした夢の記憶を思い出した時に、 "通信機"だと……すぐわかったのだろうか?] (164) kaomozi 2020/05/23(Sat) 3:31:53 |
【人】 部隊長 シュゼット[―――あれは確かに、"通信機"だ。 僕は使い方だって、良く知っている。] [頭の中を這い回る頭痛が、僕の声で僕へと告げる。 もう止めてほしくて、僕は帽子を取って、 震える両手で、耳の付け根を握りこんだ。] なんで、僕が……知っているんだ。 だってあんな機械、どうみても。 遺失技術の塊で……基地にだって…… あの形の物は見たことがない、のに…!! まるで、別の世界で作られた物の、ことなんて、 [……書かないといけない。 遺せるうちに。遺しておかないと。 僕は、夢を、思い出した傍から打ち込んでいく。 急ぐあまり、前よりももっと。 ぼろが出てしまっていることには、気づかない。] (165) kaomozi 2020/05/23(Sat) 3:34:09 |
【妖】 部隊長 シュゼット[ノートには新しく、七ページ目が追加されていた。 今回は、視覚で見えるものが少なかったらしく、 前にあった、色硝子や、真っ白い大地など、 この世界にない物についての記述は無いようだった。] ($5) kaomozi 2020/05/23(Sat) 3:34:48 |
【妖】 部隊長 シュゼット○月●日 まだ、確証はないのだが。 僕にはもうあまり時間がないのかもしれない。 できるかぎり、そうならないよう尽力するが 最悪が起きてしまってからでは遅い。 だから書けるうちになるべく、 ここに、書き残しておきたいと思う。 これは先ほど、ここに来る前の仮眠で見た夢だ。 気づけば僕は、暗い暗い、吸い込まれそうな闇を 見下ろすようにして立っていた。 僕は横や後ろを見ようとしなかったから 視界を埋め尽くす闇以外の場所は、 どうなっているのか、わからなかった。 後ろから声が聞こえた。 僕に対する感情など何もないような、 基地内のペンギンたちをただの端末と見てる人が 彼らに対して命じるような、冷たい声だった。 『事前に立てた予測と何も変わりは無かった。 お前の調査結果の通り、外には望みは無い。 あのような環境で生き延びられるのは 精々、お前らのような存在だけだろう。 ―――計画を実行に移す。行け。』 僕は、後ろを振り返ることなく頷く。 僕の横からその闇の中へと向かって、 何か巨大なものが落ちてゆく気配がした。 ($6) kaomozi 2020/05/23(Sat) 3:36:33 |
【妖】 部隊長 シュゼット 僕は大地を軽く蹴って、後に続く。 感じるのは、ただ下へと落ちてゆく浮遊感。 その時の僕自身の感情はわからないけれど 地面を蹴った時のためらいの無さから 僕には、命令が正しいかどうか考えるだけの 意思というものが、無いように思えた。 ―――でも。意思が無いとの予想は、 暗闇に落ちたところで裏切られた。 命令を聞くだけの機械のようだと 夢を見ている僕が感じた、夢の中の僕が。 人が住めなくなった土地……そう。 前回の夢で見た、白い地面から突き出た腕。 その手が握っていたものを、拾っていたのだろう。 『数人の人が笑って映っている写真』が 落ちる最中に荷物の中から零れて 吹き飛んで行ってしまったのに気づいて。 慌てた様子で手を伸ばしたけれど。 頼りの綱の、上から刺す光などすぐ見えなくなり、 ただの暗闇を義手が掴んだところで、 今回の夢は終わりを迎えたのだった。 ($7) kaomozi 2020/05/23(Sat) 3:38:25 |
【妖】 部隊長 シュゼット 今までの全てで、夢を見ている僕には、 夢の主人公である僕の感情はわからなかった。 でも、この時初めて、感じるものがあった。 初めて感じた理由はもしかしたら、 本当に初めて、夢の僕は自分の感情を 自分で思うほど強く自覚したからかもしれない。 憧れ?寂しい?悲しい?苦しい?後悔? 今まで感情というものが無かった分まで 様々な感情が爆発するように渦巻いている中で、 旅で見つけた大事な宝物を失ったらしい僕が その時一番、強く感じていたことは――― 自分へ命ずる声に対する。大きな『疑問』だった。 ($8) kaomozi 2020/05/23(Sat) 3:39:10 |
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