朝の登校時、門を潜るとそこはでした──

と言わんばかりに『持ち物検査』と掲げられた傍に並ぶ机。
この時期は特に多いのは2年以上は知っているだろうし、何が起こってるかはすぐわかるだろう。

「はいそれじゃ、ね。
時代錯誤？いやあ言うてね？こういうのやっとかんとね？
好き放題何でも持ってくるのがいるんですねぇ。

特にそろそろ体育祭でしょ？
なんかあったら『風紀がちゃんと締め付けんから』とかね？
無責任な事言われても困るんでぇ。するんですねえ」

　
「ってことでカバン見ていい？ダメ？
　楽しそう？いや〜なんの事かなあ。ちょっとだけね？
　

別に持ち物検査の担当はこの生徒だけではないものの、
この生徒は2年からずっと風紀委員をしているので
名前が『普川尚久』なのは程々に有名だろう。

何より、なんせこの態度だ。
周囲に聞けば、名もすぐに判明する。

　
「……いや、セクハラって失敬な。
女子はちゃんと女子の風紀委員が担当しますよさすがに。

ん〜？今度は何？法律違反ン？プライバシー侵害〜？
はい残念。教員勢からの許可は取ってますよ毎回。
保守はウチ、改革は生徒会へ。泣きついてなくして貰えば？

……はい、問題ないね。行っていいよ」

終われば軽くあしらうようにしっしと手で示す。
そんな感じで、本気でヤバいモノから、相手によっては許されるものでも、コイツ相手で抜き打ちに引っ掛かる可能性もある。
別になにもないかもしれない。学園は今日も平和だ。

「よぉ、抜き打ち風紀チェッカー。
カバン見せればいいんだよな？」

菓子パンを食べながら、カバンの中身を見せた
特におかしなものはない。お菓子やらは多少あるが

「……ぁ、検問してる」

膨らんだスクールバッグを肩にかけて、眠たげに目を擦りつつ。
手近な位置にいる普川に声を掛ける。

「おはよーございます、センパイ。朝からよくやりますねー…」

マイ枕の入ったカバンを君の前に出して、これでいいですか？とばかりに立ち去ろうとするだろう。
許されて当然だと言わんばかりの態度だ。

　
　いいもんやるから、ほら。」

鞄の中身を見せたくなさそうな生徒が通過しようとしている。
かつ鞄の中にあったら問題なものを平気で口に出している。

「OK貰えた人は、とっとと通過しやがってくださいね〜。
　後がつかえちまいますんで」

何処にでも居る男は、今は風紀委員として検査に参加していた。
もちろん、調べる側で。

「え、僕にでやがります？
　普川先輩ほど厳しくはしねぇつもりですがね？
　全く見ねぇって訳にもいかねぇですので、ご理解の程よろしくお願いしやがりますね」

「ん、ん……抜き、打ち？」「カバン開く、こう？」

よくわかっていない様子で首を傾げた。
カバンの中は水筒とスポーツドリンク、他には教科書やら何やら。
隅の巾着袋から何個か「必勝」「勝運」と書かれた古いお守りが飛び出している。