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【秘】 一人の少年 ルヴァ → 一人の少女 ブラキウム森を、再び風が撫でる。 そのブラキウムの目を覗き込みながら、 ちょっとだけ真剣な顔で、 今さっき思いついたことのように 今までブラキウムに見せていた顔でいつも通り、 どこまで本気か分からない気分屋のように、 ……尋ねた。 「………。 キスしていい?」 (-96) reji2323 2021/06/05(Sat) 11:32:06 |
【秘】 一人の少女 ブラキウム → 一人の少年 ルヴァ「…………へ?」 あぁ、でも。 あなたのその言葉はちょっと想定外で。 思わず結んでいた視線を外してしまう。 肩は寄せたまま、何と応えればいいのか言葉を探っている。 顔に熱が灯るのが嫌でもわかる。 あなたにはこんなことまで全部筒抜けになってしまうのが恥ずかしくてまた帽子を目深にずらした。 「きゅ、急にどうしたのさ。 どういう風の吹き回しだい?」 問いながら時々ちら、と影の下からあなたを覗いている…… (-97) shionsou 2021/06/05(Sat) 11:40:22 |
【秘】 一人の少年 ルヴァ → 一人の少女 ブラキウム袖を口元にやる。 少しだけ考えるような動作。 相手のリアクションを経て初めて 頬も若干朱に染まったかもしれない。 首をさらに傾げて。 「俺が……したく、なったから。かな? あとその、言うと怒られるかもしれないけど、 ちょっとだけ、試してみたくなって。 ……ブラキウムが嫌なら、しないよ」 そもそもが、順番を吹き飛ばしていることは、 自分にもわかるけれど。 でも一方で、自分にとっては、 その飛ばしていることが今は重要なことなのだけれど。 だめかな。と帽子の下を覗き込む。 (-98) reji2323 2021/06/05(Sat) 11:48:22 |
【秘】 一人の少女 ブラキウム → 一人の少年 ルヴァ「い いけど…… 」尻すぼみになる。 嫌ではない。 嫌では無いのだけれど…… 「試すって……そんなこと、しなくてもさ。 ルヴァになら……いいのに」 覗き込まれると逃げるように、ぼそぼそ零しながらとさらに帽子を深くかぶって真っ赤な顔を隠す。 しばらくせめてもの抵抗が続いた後大きく深呼吸をして、こてんとあなたの肩に顔をのせる。 「……その。やさしく、ね」 そのまま動かない。 じっと、あなたを待つ。 すっ飛ばした過程の分はやっぱりブラキウムには眩しくて眩暈がしてしまう。 それでも、その光が暖かくて惹かれるのだ。 (-99) shionsou 2021/06/05(Sat) 12:04:26 |
【秘】 一人の少年 ルヴァ → 一人の少女 ブラキウムその返事に。 少しだけ、顔が明るくなる。 拒絶されなかったことは、素直に嬉しかった。 ただ、すぐ、何かを考えるような、 少しだけ真剣な表情に変わり。 「うん……」 とだけ、余裕のない返事をした。 下から、素顔に潜るように。 少年の顔が、少女に近づく――。 (-100) reji2323 2021/06/05(Sat) 12:12:27 |
【秘】 一人の少年 ルヴァ → 一人の少女 ブラキウム――作法は、知らない。 やり方も、分からない。 そういう行為が、世の中にあると、 ただそれだけを知っていて。 真似事であるし、 だからごっこ遊びでしかない。 言う通りそれでも丁寧に優しく。 ブラキウムの髪を手ですき、頬に触れた上で。 ――静かに、唇を重ねた。 恋慕のキスというにはあまりに拙く、 親愛のキスにしてはあまりに長い。 唇だけが触れ合うような行為は、 子供の指の先程だけ想定より長く、静かに――。 風が、頬を撫でた。 (-101) reji2323 2021/06/05(Sat) 12:13:10 |
【秘】 一人の少女 ブラキウム → 一人の少年 ルヴァ「ん……」 帽子で隠した期待と不安が入り混じった表情であなたと触れる。 髪を流す手にぞくり、体を震わせる。 頬を撫ぜる手が磁石のようにひっついて離れられない。 逃げるつもりなんてない癖にどうしても浮ついてしまう体がまるで自分のものじゃなくなったみたい。 ブラキウムも何も知らない。 けれどもっと好きになりたくてもっと知りたいと思う。 形ばかりの逃げ腰が解きほぐされて、反対にあなたの方へもっと、もっとと傾いてゆく。 子ども同士の未熟な行為はそれでも二人にとっては特別で、次から次へと湧いてくる未知の感情に突き動かされ、応えるようにこちらからも唇を押し返す。 か細く拙い繋がりでも、そよぐ風に攫われないようにあなたと確かめ合う。 いつの間にか少女の顔は柔らかくほころんでいた。 (-102) shionsou 2021/06/05(Sat) 12:33:10 |
【秘】 一人の少年 ルヴァ → 一人の少女 ブラキウム永遠に似た時間が、現実に溶ける。 やがて、少しだけ温度という 未練を残して、体が離れる。 ブラキウムの表情を確かめるように瞳を覗いた。 そして、少しだけ、自分の唇を噛み。 その至近距離にある顔に、笑ったような顔を見せた。 「良かった……。 ちゃんと――」 (-103) reji2323 2021/06/05(Sat) 12:40:54 |
【秘】 一人の少年 ルヴァ → 一人の少女 ブラキウムそれは。頬は誰が見ても分かるくらい赤く、 やっぱり泣き笑いのような――。 心から嬉しい笑顔のような。 居なくなってしまった誰かを悲しむ泣き顔のような。 ――そんな表情だった。 「――ちゃんと、ドキドキした」 だからこれは――ちゃんと恋で。 それが、恋で。 本当に良かったと思う。 早鐘のように鳴り響く恋の証明。 相手のことが好きだという言葉は今でも、 それだけは偽りでもごまかしでもなくて。 君のことが好きで、本当に良かったと思った。 (-104) reji2323 2021/06/05(Sat) 12:41:21 |
【秘】 一人の少年 ルヴァ → 一人の少女 ブラキウム――自分たちの身体の中では、 ちゃんとまだ金魚が泳いでいる。 恋が、生を証明してくれていた。 トクトクと、胸の中で響くその音が、 胸の中で生きている金魚の存在を、自分たちに教えてくれている。 相手の身体を抱きしめる。 同じように鳴り響いているであろう金魚同士を確かめ合うように。 曖昧な時間の中で、相手の金魚を誰にも渡さないように。 このギムナジウムという透明な鉢の中で、 俺たちは今日、生きている。 (-105) reji2323 2021/06/05(Sat) 12:41:54 |
【秘】 一人の少女 ブラキウム → 一人の少年 ルヴァあなたの名残惜しさを埋めるように今度は目を逸らさずに真っすぐ受け止める。 淡く揺れる瞳を少しの変化も見落とさないようにじっと深く見つめる。 「……えへへ。僕も。お揃いだ」 蜃気楼のようにも思えた気持ちはやっぱり本物で、触れて抱きしめられる宝物だ。 一元的な仮面では表せない複雑な表情のあなたを見て、これで良かったのだと思える。 ほんとうの喜びも悲しみも一緒に背負えるから。 あなたの全部が愛おしくてそれを余すところなく味わえる今が尊い。 「……ルヴァ。ルヴァ」 名を呼ぶ。 抱きしめる全身であなたを感じる。 あなたと心を通わせてありのままの鼓動を響かせる。 (-106) shionsou 2021/06/05(Sat) 13:41:32 |
【秘】 一人の少女 ブラキウム → 一人の少年 ルヴァ「ずっと一緒だよ」 どうしようもなくあなたに恋をしている。 小さく澄んだ世界の中にかけがえのないものを見つけた。 恐れて間違えて随分と遠回りをしてしまったけれどもう迷わない。 大好きなあなたの手を握って離さない。 僕があなたの明日になって、あなたが僕の明日になってくれる。 さぁ幸せな明日を祈って旅立とう。 あなたと見上げるギムナジウムの星空は美しくて。 いつか、彼方に羽ばたいた日にも同じように広い世界を覆う星空を見上げよう。 一人の少年と一人の少女が 幾度空を廻ってもきっとまた二人になれますように。 〆 (-107) shionsou 2021/06/05(Sat) 13:42:25 |
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