明日なら、明日ならきっと少しはまともになれる。
薬はまだある大丈夫。
大丈夫と自分に言い聞かせる。

『お菓子楽しみにしてますね。
勤務の関係で少し遅れるかもしれませんが、その時はご容赦ください』

会いたい、無性に会いたい。
他愛もない話をしよう、どうでもいい話を、自分の好きな話を
今の自分の惨めな姿を知らないあなたに。
惨めな姿を知られぬように。

はえー　みたいな顔で映画ファンの話を聞く。
映画って奥が深い。

「ということはやっぱり詳しいバーナードくんの選んだものにした方がよさそうだね」

と、あなたが選んだ3本をじっくり吟味し。

「うぅん……なんかこうもっと刺激的、っていうか……わっ！ってなるような方がみんな喜ぶんじゃないかな？」



「その中ならこれ、かな？アニメーションでも大人向けのものあるって言うし……名前聞いたことあるし」

チョイスしたのは、5歳児とその家族が活躍するアニメ作品の映画だ。

ああ初めてじゃないんだな、と少女は思った。

「……うん、……ある。……ある、アタシ、それしか……思いつかない……。嫌、なことする、とき。飲むの。そしたら過ぎてるる、るる。今、はそういう事が、お多い」
少し違和感のある言い回しだなと、少女自身も思った。

「生き物は、わわ、死んでも生き返る。でも、知らないの、理解できない、のこ、怖い、のの、私、わかる。」

「僕は……シトゥラ、ラ、私が、死ぬ、助けられない、かもしれないい。けど……。」
「僕、わ、ワタシ、ちゃんとあなたの側にいる、る、消えない」

蘇生を理解できない小さな相棒へ言うのと、同じことを言ってみた。

「ごめん、ねね」

『大丈夫、勤務を優先していただいて構いませんよ。
僕はゆっくりお待ちしておりますから』

また明日、という約束ができるのがこんなに心穏やかになれる事だったなんて。
ゲームに参加しなければきっと分からなかったのだろう。
短いメッセージを送ったあと、明日の支度を始めた。

あなたの言葉に「ああ、この少女は勘違いしてくれているのだな」と思った。
だからその勘違いを正そうとは思わなかった。
なのに、なのに
口は勝手に動き

「違う、違うんだキューくん。わかってる、わかってるんだ、死んでも蘇ると、私は、知っているし、わかっている。あ、あ……」

シトゥラにとっての常識は死は当たり前のもので、病で怪我で寿命で人々は簡単に命を落とし、肉体は海に還り魂はまた命として生れ落ちる。
でも世界の常識は死は遠い昔のもので、病で怪我で寿命で命を落とすことはなく、肉体も魂も消えることのなくあり続ける。
死は救いでも哀しみでもなんでもないのだ。

「で、でも、わた……私はキューくんも、誰も彼も死んでほしくな、ない。から……。よみ蘇ると知ってても、し……死んで、死んでほしくない、から」

『私も仕事明けが楽しみです。
会えるのを励みに頑張ってきますね』

メッセージを送る。
これで退路は断った。

装おう、シトゥラという人間を。
優しいあなたのために
弟のように感じるあなたのために

/*　PL連絡だけ失礼いたします、では明日にいたしましょう。
PCPLとも明日を楽しみにしておりますね。愛を込めて

「わかっってる、わかってるる、るるる……それでも死んでほしくない、のも、わかる、のの」

教えて分かるのなら、お話してわかるのなら、そうしている。君は色んな人と仲がいいように見えるのに、それが分かっていないのなら、それは記憶にないからではない、のもわかっている。

「僕、が死なないとと、誰かが、死ぬ……君が、死なないと、誰か、死ぬぬ……私も、怖がっって、欲しくなくて……」

死なないと約束できない、否、約束してしまうと、他の人が死んでしまう。

「………………。生きたいよ。生かしたい、いよ。」
それしか言えなかった。

「ごめんん、ね」

「･･･おや もしかして お褒めいただいておりますか」

疑問。ではなく･･･照れくさい感情からの。
こうした形で褒められるとは、思いませんでした。

小さな声で、ありがとうございます と告げます。

「私はいつだって 私のままに」

ですから、優しい 優しくないなどではなく 私は。

「･･･シトゥラ様も そのままでいてください
私 シトゥラ様の優しさが 好きでございますよ」

「まあ、うん。レビューの質というか文体でたまーに分かったりするけど、人間好意的なレビュー信じがちだから……」

まだ知識と経験の蓄積がある自分が選ぶ方がいいんじゃないかな、とは言わなかった。

「生き物って実は刺激がありすぎてもダメなんだぜ？何事もほどほどが一番ってな、……おー、それ行くのなかなかいい感じじゃん？ちょっと下ネタがあるくらいで面白いし、ものによっては本当に色々考えさせられるし。どんな内容か不安なら一緒に観るか？」

マーカーけんちゃん、あたりはどうだろう。

「―――」

蹲る貴方を見る。
跪き、手を浮かせ……僅かに逡巡した後、貴方の背に。

「シトゥラ」



「すまない。俺はまだシトゥラのような好きを知らない。これから抱けるかどうかも……正直わからない。
だけど、シトゥラを嫌う事はできないと思っている。
俺が愛想を尽かされる方が早いとも、思っている」



「それでも、これ以上シトゥラが泣く事のないよう……俺は、俺のできる精一杯をしていきたい。

誰かを想う事は醜いだろうか。
誰かに縋り付く事は滑稽だろうか。
……少なくとも俺は、そうは思わないよ」

背中をそっと、壊れ物に触れるように撫でる。
男が貴方の喉元にナイフを刺す事は、ない。

薬の影響なのか、精神がボロボロなのか、あるいはその両方なのか。
シトゥラの意思に反し涙がとめどなく流れる。

「こ、こんな、こんなのま……間違ってるんだ。わたわ、わたし、はシャトが、しんぱ……心配で参加した、だ、だけ、で。だ……だから、罰……罰が当たったんだ……」
「し……死んじゃ、だ、だめだから……。こ、ころ殺すのやだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！！！！！」

子供のように目をこすりながら泣く。
そこに規律を遵守するクルーであるシトゥラの姿はなく、古い時代の常識で26年生きている人間がいるだけだった。

「君の優しさはなんていうかな、……私の星独特の感覚だと思うけど、大地って感じがする」

曰く　海は母　すべてを産み出す偉大なる母
曰く　大地は母　すべてを愛しみ育てる偉大な母
曰く　天は父　すべてを見通し優しさを試練を与える偉大な父

……男であるあなたに母というのは悪いので、大地のようの一言にとどめたが。

「優しい……か、な？」

身に覚えのない言葉に首を傾げる。

「うーん……あれかな？カウンセリングっぽいこともしているからかな？」

「レビュー見ると面白しろそうなのに……」

名残惜しくデーモンマンのレビューを見ている。


「先に見るとみんなと見るとき楽しめなくなっちゃう気がするからどうしよう……。キラーポテト二回目見た時も二回目は楽しくなかったし……」

一回目の時もそう大して楽しくなかったのだが。

「ああ、でも有識者の君と一緒にチェックすれば、少なくともみんなを退屈にさせることはなくなるね」
「二人で見るんだったらカップルシートでいいね。空き状況を確認してみる」

シアタールームは常にオープンしている。クルーも利用するため空き状況の確認は必須なのだ。

「あ、よかった。空いてる。それじゃあ行こうか」

「き……きみ、は、本当に、ざ……残酷な男だ、ね……」

蹲りながら胸を押さえる。
感情は脳で生まれる、それなのになぜか胸が痛んで、痛くて痛くてたまらない。
ただ一方的なエゴをぶつけるだけの愛なんて求めていない。
それはただ相手を傷つけるだけの行為だから。

「あ、ああ愛想なんて尽かすわけ、な、ないじゃないか」

きっかけは転びそうになった時に抱き留められた、ただそれだけ。
あなたにとっては何でもないこと。でも、シトゥラにとってはそれで十分だった。

「ど、どれ……どれだけ、き、き、君のこと、す……好きだったと、お、思って……るん、だ」

あなたのことを知った。

同僚として親しくなった。

同僚として

/*　クソ映画の話しませんか！！！！！！

薬を飲む。
全然効かない、全然足りない、でも、『シトゥラ』を装うために。
もっと飲めという脳の欲求をシャットアウトする。

『今から向かいます』

連絡事項だけのメッセージ。
カウンセリング明けのあなたを不安にさせないよう
こんなボロボロの姿を見られないように

それだけを胸に部屋を出た。

/*
笑った　いいよ！！！！！！！！！！！
こっちから向かいます？

「大地･･･ですか」

そうした印象を抱かれていることが意外で。
優しさなど、与えていたつもりもなく。

ですが、褒めてくださるのが伝わるので、やはり照れ臭くなり笑ってしまうのです。言葉も上手く紡げなくて。

「･･･周囲を見る力があると言いますか
自分に余裕がなくとも 他者を気遣える方だと思っております」

･･･そして、このゲームには 向いていない方だとも。

/*　どちらでもOKです！こちらから行く場合はギャラクシーシャークの感想を聞きに行く感じになりますね。

/*　どちらでもOKです！こちらから行く場合、現在の時間とは違う時間軸でギャラクシーシャークの感想を聞きに行く感じになりますね。

/*　何故二回も？？？？反省のためサメ映画観ます

「そう、大地。なんていうかな、許容力というか包容力というか……そういう受け止めてくれそうっていう感じがする」

あなたのゲームでの役職はわからない、仮に人狼だとしても誰かを手にかける姿は似合わないと思うし、そうして欲しくないとも思う。
綺麗な、その姿でいて欲しいとも。

「へ、へへ、なんか……褒められたのかな？……はは、ちょっとくすぐったくって変な感じだ」

褒められ慣れてないシステム管理は顔を真っ赤にしている。

/*
了解ですわよ。サメ映画しまって！
多分現時間軸だとお互いにそれどころではないでは？な気がするので違う時間軸の方が良い気がしますわね。お願いしていいかしら？

「･･･私は 私のできる範囲のみですが
私に出来ることならば いくらでも」

ですから、受け止めるというのは 正しいのかもしれません。
そうあればいいとも 思っておりますしね。

シトゥラ様の考えを全て読み取ることは叶いませんが、例えば牙を持っていたとして そのようにお考えいただけることはとても とても 有難く 嬉しいことなのでしょう。

「ええ ええ 褒めてしまいました 本心でございますよ
･･･どうか変わらずに そのままに」

そんな様子を見つめながら、緩い笑みを浮かべるのでした。

(1日目)
「昔の人たちからすれば信じられない程人は色んな事ができるようになった。
だから、シトゥラもきっと……きっと。俺の赤ちゃんを産めるようになるかもしれないよ」

人は死から蘇る術を手に入れた。もはや命の冒涜とも言えるような領域にまで足を踏み入れたのだから、それに比べたら淡い期待を持たせても許されるんじゃないだろうか。
使用人はそう考えた後、ゆるく頭を振って思考を散らした。
今は目の前の子を愛してあげることを優先しなくては。

「フフ……濡れているのは体が期待しているからだよ。君と愛し合う事に。君とのキスだけでこうなっちゃったんだ。
ね、シトゥラ。もっと気持ちよくさせてくれる？俺が今から君にするのを、真似してみて……ほら……」

もう一度、貴方の秘所へと指を伸ばした。
閉じられたそこを撫でさすり、そっと入り口に指を入れて。
ローション塗れの指を曲げて擦ってくちくちと水音を鳴らし、女にとって快楽を強く感じるだろう肉芽をくすぐっていく。

＜みんながえらいこっちゃになっているのとは時間軸＞





「……というわけで、ギャラクシーシャークの感想を聞きたいんだ」