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![]() | 【秘】 pasticciona アリーチェ → 傷入りのネイル ダニエラ「あ……」 今となっては随分懐かしい言葉。 それを話題に笑っていた日は、まさかこんなにも世界が変わってしまうなんて欠片も思ってはいなかったのに。 「……馬鹿。 ダニエラがそう言ってくれたから、私助かったのよ」 ダニエラにとっては些細なエピソードでも、自分にとってはとても大事だったのだ。きっと、貴方に対してもそれと同じ事のように思っていて、 貴方が笑みを浮かべ続けている理由だってわからず、 貴方が何を考えているのかが全く── 最も、普段から実際読み取れていたかと言うと定かではないが── 読み取れず、困惑の内に髪に触れられ、目を伏せて不安げに左手を右の手でぎゅっと握り込む。「……わたしだってなりたくないし、させたくない、よ」 触れる髪を伝って微弱に震えているのが伝わるかもしれない。 きっと脅しじゃないのだろう。冤罪にしか見えない同僚を艶やかに逮捕してのけた人だ。自分の事だってすぐに何とかしてしまえるだろう。 怖くて、辛くて、それ以上に何もわからない自分が悔しい。 (-456) poru 2023/09/22(Fri) 22:41:43 |
![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 月桂樹の花 ニコロ「……さあ、どおでしょお。」 「あたしは、嘘つきですからあ。」 …笑顔だけは、崩さずそのまま。 罵倒される心づもりまでは、できていたのに。 あなたに近寄り、手が伸びる。 マリーゴールドの色をしたエナメルが、この日も両手の小指に咲いていた。 そこに握られた、手錠が、 ―――かしゃん。 いつかあなたにリクエストした『子守歌』。 あれはカンターミネ・ヴォーフルが、眠る女に歌って聴かせた曲だった。 …女の胸にはあの歌声も、あの日のハーモニカの音色も未だに残り響いている。 そのどちらもをこの日同時に失ったわけだが。 嘆く資格なんて、当然女に残っているはずもないのであった。 そうして、女はあなたを逮捕した。 「後悔するなよ」、その言葉には、何も返事を返せなかった。 (-468) oO832mk 2023/09/22(Fri) 23:34:54 |
![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → マスター エリカ開いた紙に書かれたものを。 読んで、女は 「…あー。」 「なるほどお。」 …これは、 「ずっっるいなあ……。」 ――さて、どう向き合おうか。 心だけは、もうとっくの昔に決まっていたけれど。 (-470) oO832mk 2023/09/22(Fri) 23:39:41 |
![]() | 【影】 傷入りのネイル ダニエラ――あれから。 目を覚ました女がまず行ったのは、ここ数日1度も開けようとしなかったこの『預かり物』を開けることだった。 スーツケースを部屋中央まで引き摺って開く。 しばしがさごそと何らかを行う物音がして、最後にぱたりと閉じられた。 「…さてと。」 とりあえず、ひとつ決めたことがある。 やっぱり1杯くらいで許してやるのは絶対にやめてやると、そんなことだった。 (&5) oO832mk 2023/09/22(Fri) 23:45:15 |
![]() | 【秘】 月桂樹の花 ニコロ → 傷入りのネイル ダニエラ男は貴方を罵倒するでもなく 嘆くでもなく、ただ静かにそれを受け入れた。 鉄の重みが腕に伝わる。 マリーゴールドに捕まえられたそこには たった1本、右手の薬指にだけある、ネイビーの空。 そこをちらりと見て、男は笑っただろう。 だって男には罵倒する資格なんてありはしない。 既にその手で、同僚を摘発して。 此度は貴方の幼馴染を…そして。 またその次も、考えられていたのだから。 「じゃあな、ダニエラ。 他人に嘘を吐く分には構わんが 自分にまで嘘を吐くんじゃねえぞ。」 まるで仕事上がりに挨拶するような声音で 最後のお節介を焼いて。 男はそれ以上は何も言わず、連行されていくのだろう。 (-471) ぴんじぃ 2023/09/22(Fri) 23:48:12 |
![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → pasticciona アリーチェそうやって笑い合ったあの日、こうなるなんて思っていなかったのは女もおなじ。 あたたかな日差しの下でうとうととまどろむような、本当に幸福な日々だった。 同じ言葉を違えることなく言えるのだから、女にとっても些細なものではなかったのかもしれない。 「そおですかあ。よかったですねえ。」 それを他人事のように切り捨てて、そうやってここまで歩いてきた。 これまでの幸せな日々を削って。全部嘘だったと騙って。 それだというのにまだあなたは、やさしい、甘いことをいう。 触れる髪すら震わせながら。それが女は、 とても█しい 。「――そう思うんならあ」 「もお、この話はやめにしましょうかあ。」 「ただでさえあたしの秘密を1個知っちゃってるんですしい」 歌うように間延びした明るい声。 するりと指先をあなたから離すと、かつ、かつ、革靴の靴底を鳴らして2歩、あなたから離れた。 「…誰にもあたしのこと、話さないでくれるならあ」 「見逃してあげましょお」 「大サービスですよお、アリーチェさん。」 女は、嘘つきだ。見逃してなんかやるつもりはない。 だけどこう言って裏切れば、自分を今度こそ恨んでくれるんじゃないだろうか。 前の2人では失敗したから、今度こそ 。…そんな思いが確かに、女の胸の中にはあった。 (-486) oO832mk 2023/09/23(Sat) 0:38:45 |
![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 歌い、歌わせた カンターミネ革靴の底が鳴る。こつ、こつ。 牢獄を繋ぐ通路。…目当ての場所まで、真っ直ぐに。 「…ミネ」 とある牢獄の手前で立ち止まった女は、底に収容されたあなたへ声をかける。 今は、眼鏡を外していた。 不安げで悲しげな面持ちが、そうっと檻の中を覗く。 (-492) oO832mk 2023/09/23(Sat) 0:56:11 |
![]() | 【秘】 歌い、歌わせた カンターミネ → 傷入りのネイル ダニエラカンターミネは、通路に背を向けて横たわっていた。 どこかぐったりとして見えたが、 足音が牢の前で止まり、そこに声がかかれば のっそりと転がってあなたの方を向いた。 「……わお、エ……エーコじゃん。元気そう……でもないな。 いやー捕まっちゃったぜ、酷くない? 俺別にそんな悪い事してないってのになあぁ」 へらりとした声。いつもと変わらない声。 眼鏡を外しているなら、顔に浮かぶ憔悴の跡に気付くのは難しいだろうか。 その分、いつもと変わらないように聞こえる声の奥に ほんのりと我慢の色が見えるかもしれない。 (-496) shell_memoria 2023/09/23(Sat) 1:12:23 |
![]() | 【秘】 無敵の リヴィオ → 傷入りのネイル ダニエラ「………そうかい」 頷いて、けれど変わらない笑顔で君を見つめる。 男のこれは出来ている訳ではなく、 リヴィオ・アリオストの模範的解答と言えるのだろう。 最も、君にそんなことが伝わるはずもないのだが。 「……そうかも、しれないね。 逮捕した人間が悪いやつなら、そうなるかもしれない」 罪のない人間は、暖かな部屋に帰るべきだ。 あんなに狭く、冷たい空間にいるべきではないのだろう。 君の答えはとても正しい。 綺麗事よりも、とても正しかった。 「だから、ないとは言えないかもしれないね。 …未来ってのは、分からないものだ」 その 出来すぎた 未来が訪れないとは、決して、言い切れるわけもない。 君の本心は、奥深くまでは理解出来ないが、 君を見つめる男の表情はいつもよりもずっと、 柔らかで、少し、苦しげにも見えたかもしれない。 (-497) sinorit 2023/09/23(Sat) 1:15:52 |
![]() | 【秘】 favorire アリーチェ → 傷入りのネイル ダニエラ「……本当?で、でも……」 視線が右往左往する。 その提案を飲むか、アリーチェの中で葛藤が発生する。 このまま、何も知らない振りをして見逃して貰えば、 自分がまだ逃れられるなら、あの人も子供達の事も助けられるかもしれない。 実際には不可能なそれを夢見て、 でも、ダニエラは? ずっとずっと、その言葉がリフレインする。 だけど、 「──わ、かった」 「あなたの要求を呑むわ。誰にも、話さない。 ……見逃してくれる?」 恐る恐る、お伺いを立てるような問いかけ。 最も昔からこの女の気弱さを考えると、そうおかしなものではないけれど。 それが"貴方に"向けられての事なら、随分と珍しい事だろう。 (-518) poru 2023/09/23(Sat) 2:41:31 |
![]() | 【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 傷入りのネイル ダニエラあなたは今か、後ほどか。 花束の中にメッセージカードが入っていることがわかるかもしれない。 それは丁寧に書かれた読みやすい文字だ。 『もし俺が逮捕されることがあったなら。 一番最後に会っていた奴はリヴィオ・アリオストだ』 そこに含まれている全ての意味を知る事は難しいだろう。 ただ電子文で送られた最後という言葉にも、 このインクで綴られた最後という言葉にも、 誰かを信じて裏切られるつもりがない男の意思が籠もっていた。 男は今でも 貴方 を。自分の信じたいと思った者達 を信じている。 (-522) toumi_ 2023/09/23(Sat) 3:14:48 |
![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 歌い、歌わせた カンターミネ乱視の視界に鮮やかに灯るライムグリーン。 女には 受け止める 意気地がなかった。…そんなあなたの様子や顔色をだ。 「…」 いつも通り、――ううん、ちょっと違う。 ただそれだけなのに胸が痛い。 そうっと手を持ち上げる格子に触れて。 指先には、ぞくりとするほどの冷たさだけが残った。 「…あはー。そおだよねえ。」 「ミネはちょおっと、盗聴とかそゆことしてただけでえ。」 …頬を緩めて、へにゃりと笑う。 この特技はきっと、こんな時にこそ役立てるべきものだった。 それにしても発言は身内贔屓が過ぎるが。 「……あたしは。」 「だいじょおぶ、元気だよお。」 えへへと笑って、左手を翳す。 少し傷が入ってしまっても剥がさずにいるこの小指のネイルは、あの日あなたに塗ってもらったものだ。 …だから、大丈夫。ダニエラ・エーコは、まだ頑張れる。 (-531) oO832mk 2023/09/23(Sat) 4:45:17 |
![]() | 【秘】 歌い、歌わせた カンターミネ → 傷入りのネイル ダニエラわかってる。だって『エリー』は優しいから。『エーコ』は聞き分けがいいように見せているから。 鼻血の跡、きちんと拭けてるよな。よだれ、垂れてないよな。 「そうそう、ちょっとだけってオーイ。しーてーまーせーん。 俺のテディに変な仕掛けがされてただけですぅー。」 ふざけるように笑いながらも、近づかない。 普段なら絶対に駆け寄って、その手を握るのに。 悪い。今はふらついて真っ直ぐ立てないからさ。 「そりゃあ、……元気ならよかった。おまわりさんも 日々激務だろうけどさ、ここからのんびり応援してるよ」 そう言って寝転がったまま、片手を上げる。 この仕事のない場所をそれなりに満喫しているらしい。 お前だけは同じ場所に入らないでくれよ。 そして、少しの沈黙があって。ふと、思い出したかのように。 「あそうだ。今度あいつ、あのーあれ。ほらあいつ、 花屋で『マリーゴールド』をよく買ってた奴。 あいつにもし会う事があったらさ」 あなたの指を見る。フレームの歪んだ眼鏡だと、 少し見え辛いけど、きっと約束の花はそこにあるから。 「……無理すんなって、伝えといてくれない? あいつ、すーぐなんでも我慢しちゃうだろ〜?」 へにゃりと、ブレてても見えるように大きく笑った。 (-532) shell_memoria 2023/09/23(Sat) 5:08:19 |
![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 無敵の リヴィオ「…そおですねえ」 こんな話題のお供でも、フォカッチャはすぐに減る。 ダニエラ・エーコという巡査の、1番正しい挙動をなぞる。 「来るといいなあ、そんな未来」 来てはいけない、そんな未来は。 普段と遜色なく女は笑う。 こうなる前の、普段と。 温かい日差しの中で、まどろむようだったあの日々と。 「あ、そおだ。リヴィオさん。」 フォカッチャもあと欠片と差し掛かったところ。 お口直しと水を1口、口の内を、潤して。 「…犬と猫」 「前、 最近は 猫が好きって、言ってましたけどお」「今は、どおです?」 「今も猫の方が、好きでしょおかあ?」 ことん。ボトルを置いて、小首を傾げる。 (-538) oO832mk 2023/09/23(Sat) 6:29:12 |
![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → favorire アリーチェ――へらり。 …やっぱりそれは、いつも通りの緩い笑みで。 「Certamente.」 「…ありがとおございますう、アリーチェさん。」 …ああ。信じちゃった。 本当に、純粋で――綺麗なひと。 ひらりと、離れた足そのまま手を振った。 「じゃーー」 「これまで通り、仲良くしましょおねえ。」 かつ、かつ。靴底を鳴らし、離れていく。 こうする度に、浮かぶ言葉が胸を刺すけれど。 その言葉だけは口にしてはいけないから、胸の中で何度も押し潰した。 (-540) oO832mk 2023/09/23(Sat) 6:38:55 |
![]() | 【念】 傷入りのネイル ダニエラへらりと緩い笑みで頷く。 「えー、それじゃあ」 「看板のティラミスを――」 ダニエラ巡査は、そう笑って。 この日ホテルに持ち帰ったのは、ブーゲンビリアの花束と、ティラミスがひとつ。 (!10) oO832mk 2023/09/23(Sat) 6:42:33 |
![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 口に金貨を ルチアーノそのケーキ屋で、女はすぐにそのカードに気付いた。 身に染み込んだ技術がそれを一切表沙汰にしなかった。 ほんの一瞥でそのメッセージを読んだ女は顔色ひとつ変えない。 まるで、最初から、そう。 そういう仕事をしていたみたい 。――このカードの送り主がこの場にいたのなら、そんな些細な様子にだって気付くことはあったのだろうが。 きっと、目の前の店員は気付けない。気付かない。 …ありがとお、お兄さん。 あたしもお兄さんを 信じて ますからねえ。 (-541) oO832mk 2023/09/23(Sat) 6:47:13 |
![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 歌い、歌わせた カンターミネ守りたいものが、あった。ひとつ、ふたつ。…ふたつとも、こぼれ落ちて行く。 守ることができなかった、その想いだけで枷なのに。 そのふたつの現在を知ると今度こそ先に進めなくなってしまう。 「…ふふっ。」 何がおかしいのか、あなたの様子を見た女は笑う。 「…大丈夫だよお、ミネ」 「カメラとか、全部、弄ってきたからあ」 びっくりしたあ?なんて女は悪戯に笑った。 元から女は警察に忍び込む内通者。これくらいなら、易くあり。 …更に言えば、上層部が検挙されたこの署内を好きにするのは、日頃より少し、更に易かった。 「…あんまり長くは保たないけど、でも」 「話したいことが、あったのお。」 とはいえリスクは多分にある。 毎度面会でこんなことはしていられない。 …リスクをとる必要があったのだ。だから、今こうなっている。 「その、お兄さんのこと、なんだけどお。」 「…ううん、あんまし長く話す時間もないしい、要件だけ、言うねえ。」 指先が上がる。5本。時計を見ながら、1本減った。 時間の猶予は、それだけだ。 「ミネのモーテルに、まだ仕事道具が残ってるなら」 「場所と使い方、教えて欲しいんだあ」 (-542) oO832mk 2023/09/23(Sat) 6:58:20 |
![]() | 【秘】 無敵の リヴィオ → 傷入りのネイル ダニエラ「来るといいね、そんな未来」 君と同じような言葉を繰り返す。 変わらない笑顔で君と笑い合う。 そこだけはまるで、法が発表される前のようで、 "いつも通り"の二人のようだった。 男の机に置かれたフォカッチャは、 やはり満腹なのか手を出さないまま。 君のそれが欠けていくのを少し眺めて。 「そうだね、今は……同じくらいかな」 最近見た子犬がとても可愛くてね。 あの可愛さには流石に無敵も眩みかけたよ。 笑いながらそう付け足して、 傾げられた首に合わせるように首を傾ける。 それから「君は?」と問いかけて、 反応とその答えを待った。 (-557) sinorit 2023/09/23(Sat) 9:20:58 |
![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → マスター エリカ指先のエナメルを眺めた。 傷がまた、ひとつ増えている。 左手小指のエナメルは約束の証だ。 だからどれだけ傷がついても、女は剥がしたりしない。 「……今度こそ」 どっちつかずの蝙蝠が、どちらの居場所も認められるなんて間違ってる。 …犯した罪は消えやしないのだから、その分くらい、憎んでもらわないと。 /* お疲れ様です。おさとうかえでです。 重ねまして、情報屋ロッシありがとうございました! discordにて先にお伝えしておりましたが、本日の襲撃対象は アリーチェさん よろしくお願いします! (-566) oO832mk 2023/09/23(Sat) 9:54:52 |
![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 無敵の リヴィオ「えー。いいなあ。」 「あたし、犬の方はまだ会ってなくてえ。」 最後の欠片も、ぱくり。 咀嚼し飲み込むと、また水を1口、流し込む。 「でも猫は、触りましたあ。」 「…ぐーぜんですけどお。」 猫カフェも調べてたのになあ。 そうからころ笑って。 どっちが好きかは、犬も触ってから決めまあすなんて。 指先をナプキンで拭いて手を合わせる。 「ごちそうさまでしたあ。」 「ふふ。結局リヴィオさん、食べませんでしたねえ。」 (-569) oO832mk 2023/09/23(Sat) 10:06:20 |
![]() | 【秘】 無敵の リヴィオ → 傷入りのネイル ダニエラ「おや、まだ会えていなかったか。 ……それじゃあ」 「それじゃあ、今度一緒に犬カフェに行こうか」 犬カフェ、君とならきっと楽しいから。 リヴィオ・アリオストは落ち着いたら行こうと、 未来の話を君にする。 それから、手を合わせる君に頷いて。 「はは、君との話に夢中になってつい、ね。 どうせまだまだ業務は残っているし、 きっとお腹も空くだろう。後で食べるよ」 元々君にと買ってきたものだが。 分け合うってのも素敵なものだ。 このままいただいていくとしよう。 (-573) sinorit 2023/09/23(Sat) 10:23:31 |
![]() | 【念】 傷入りのネイル ダニエラひと回りほど小さくなったアジトのデスク。 7色の缶の紅茶アソート。 薄紅色のバスボム。 ライムグリーンのウィッグのテディベア。 ブーゲンビリアの花束。 そして冷蔵庫の中には、少しお高めのチョコレート。 部屋の片隅に、大きなボストンバッグとスーツケース。 鞄の中には、15mlの小瓶が複数と、脱脂綿にオイル。 この部屋にある、女の私物はそれだけだった。 女の自室とまた別の意味で、生活感のない部屋だった。 けれど変わらず、その部屋の明かりが消えることはない。 帰ってくる時女は、誰もいないその部屋に必ず、「ただいま」といった。 (!12) oO832mk 2023/09/23(Sat) 10:33:23 |
![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 無敵の リヴィオ「ええー。いいんですかあ?」 間延びした口調のまま、そのトーンだけが微かに持ち上がる。 嬉しそうに女はへらりと笑った。 この笑顔は決して嘘ではなかった。 「んー。そおですかあ?」 「お疲れ様ですねえ…。あ」 思い出した、とでもさも言いたげに立ち上がる。 懐には2つの小物。 犬の小さなヘアクリップと、銀色の大人びたヘアピン。 犬のヘアクリップはごく普通の購入品。 だがヘアピンの方には仕込みがされている。 「リヴィオさあん。」 「ちょおっと、じっとしててくださいねえ」 あなたに近寄り、手を伸ばす。 女にはあなたを調べねばならない理由が2つあった。 だから、迷う必要なんてどこにもない。 そうして、ふたつの中からひとつ。 女はその手の中に、選び取る。 (-586) oO832mk 2023/09/23(Sat) 11:16:02 |
ダニエラは、ふたつの中から、犬を選んだ。 (a23) oO832mk 2023/09/23(Sat) 11:16:18 |
![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 無敵の リヴィオ…そうしてそれを、あなたの前髪に。丁寧に。 「ふふー。お手伝い、でえす。」 「…本当に、お忙しそうですからあ。」 満足げに、微笑みかける。 そしてあなたから離れる刹那、衣服のポケットへ銀のヘアピンを滑り落とした。 それまでの人生、受け取ってばかりだった女は、 あなたが贈り物のヘアピンを大事にしてくれるのが本当に嬉しかった。 …だからこそ、この銀のヘアピンをあなたへの贈り物にはしたくなかった。 今までの贈り物と、同列にしたくなかったのだ。 (-587) oO832mk 2023/09/23(Sat) 11:17:03 |
![]() | 【秘】 歌い、歌わせた カンターミネ → 傷入りのネイル ダニエラ「……。あーもうほんとびっくりした。 俺のお姫様はおてんばな事で…… いっそ王子様って呼んだ方がいいかもしれん……」 いや、その座は譲る気ないけど、とも思うが。 ともかく、軽口を叩くほどの時間はなさそうだから。 『お兄さん』の事も気になりはするけれど。 「……おいおい、あそこに踏み込まれたんだぜ?危ない……」 そこまで言って、かぶりを振る。この子は、子供じゃない。 隣に立つ相手。唯一、信を置くその人だから。息を吸い込む。 (-593) shell_memoria 2023/09/23(Sat) 11:38:38 |
![]() | 【秘】 歌い、歌わせた カンターミネ → 傷入りのネイル ダニエラ「……連中も色々探ったろうが無茶は出来ないと思う手間のかかる大型の備品は運び出してないはずだベッドまだ買い替えてなくてよかったよ『あのベッド』のマットレスを外してスプリングの中から緑色の部品を全部抜いてくれそしたら頭側にある収納に幾らか道具が落ちるからそれを組み立てて使ってくれ番号のシールが貼ってある」 一息に伝える。それが、あなたに渡せる唯一の仕事道具。 誰も信用していないカンターミネが、 万が一、億が一に備えて用意した最後の"武器"だ。 「フェイクの部品も入ってるから、番号を間違えるなよ。 正しい組み合わせはフィボナッチ数列の順だからな。 起動すれば後は5番の部品を捻って、 チャンネルを合わせればいい。 34番と、55番がそれぞれ送信機と受信機。 13番が録音機だ。全部本体のスイッチ一つで起動する」 なるべく簡素に、必要な情報は確実に渡す。 後は、あなたに全てを任せて、女は息を吐く。 「……もし、万一……本当に万一、エリーが捕まったら。 全部俺が指示したって言ってくれ。俺に脅されてたって。 昔馴染なのを利用して、無理矢理やらされたって」 実際、それに近しい事をするんだから。 自分の道具を渡して危険な橋を渡らせるんだから。 これくらいのリスクは、せめて背負わせてほしかった。 (-596) shell_memoria 2023/09/23(Sat) 11:39:55 |
![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 歌い、歌わせた カンターミネ「やあだ、王子様はあ、ミネだもん ん 」そう口を尖らせたのも一瞬のこと。 すぐに和やかににこりと笑った。 ありがとう。信じてくれて。 その言葉だって本当は嬉しいんだ。 でもただ守られるだけのお姫様では、やっぱりいたくなんてなかった。 立てた指が曲がる。1本、2本。 その間あなたの言葉を1字1句忘れることなく聞いた女は、密やかな吐息をまたひとつ落とした。 「…うん。ありがとお、ミネ。」 「でもお、あたしは優秀だからあ。そんなことにはならないよお。」 「…ふふ。見ててよねえ。」 そう嘯いたのだって、もしかしたら強がりかもしれない。 それだってあなたにはわかるはず。だって女は、笑っていたわけだし。 「『マリーゴールド』の子にも、伝えときまあす。」 けれどからかうように、あなたのお転婆姫はいう。 茶化して笑って、ゆるりと変わらないあのモーテルでのことみたいに。 指が、あと1本。 反対の指先を冷たい格子に滑らせて、その向こうに薄い微笑みを向ける。 …本当に、あっという間なのだ。最後の指も、次第に折られるだろう。 (-600) oO832mk 2023/09/23(Sat) 12:12:36 |
![]() | 【秘】 歌い、歌わせた カンターミネ → 傷入りのネイル ダニエラ説明が終わって、お願いも終わって。 指折り、時間の流れを見ながら、 ため息とともに笑みがこぼれる。 「見てるさ。一番近くでな。 しっかり伝えといてくれよ」 きっと、そう遠くない内に朝が来る。 真っ暗な内はライムグリーンの方が目立つけど、 明るさを交えた頃にはミントブルーが輝き出す。 「……なあ、残りの時間の間、目ぇ瞑ってくれる?」 言って、立ち上がる。ふらつきながら。 一度、二度とたたらを踏み、二度目には壁にぶつかりながら、 あなたの方へ。最後の1本が折られてしまう前に。 「後は頼んだ、エリー。いってらっしゃい」 あの夜と同じように、送り出す。 今はネイルを塗り直す事は出来ないから。 ふらつく姿は見せたくないから、 片膝をついて、少し背伸びして。 格子にかかる指先に、ほんの一瞬のくちづけを。 あとは、指が折れるだろうから、また床に転がった。 (-604) shell_memoria 2023/09/23(Sat) 12:36:34 |
![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 歌い、歌わせた カンターミネ笑んで頷き。 続いた言葉に、一瞬だけきょとん。 あなた相手に身構える必要はないけれど、多分このときの女は他の人に同じことを言われると警戒の色を見せていた。 「…いいよお。なあにい?」 そうして目を瞑ってのしばしの時間。 ゆっくりとあなたが近付く気配がして、…少しして、指先に湿ったやわらかな感触。 それだけでぎゅうと胸が潰されるくらい痛くって、手が届く距離にいるはずのあなたに今すぐ触れたいってそんな我儘が過ぎっていく。 だけど、女はそうはせずしっかりと目を閉じたまま。 指を折るまでの時間は心の中で正確に数えた。 最後の指まで折り曲げた後、目を開いた女は恥じらうようにはにかみ笑っていた。 「…ミネ」 「早くこんなとこ、出られるといいねえ。」 「ミネはなあんにも、悪いことしてないんだからあ」 カメラに載せられるぎりぎりの本音に虚言を添えて。 …ただでさえ小細工もした今日はあんまり長居ができないから、それを別れの挨拶みたいにこつこつ靴音を立てて立ち去っていくんだろう。 (-613) oO832mk 2023/09/23(Sat) 13:34:53 |
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