>>159
「加虐性愛や被虐性愛は、持ち合わせてはおりませんよ？」
「ああ、いや、でも。……『作品達』になら、話は別かもしれないのだけれど」

　
「……へぇ？そう、そうかぁ。そうかあ！
　　だって。」

「だって、『作品』相手なら、」

声の、抑揚が変わる。貴方を抱いた時と同じ色。
頬は紅葉して高揚する。それくらいに、



想像すると、しあわせにしか聞こえないから。
作品に対して、僅かな嫉妬を滲ませた声。

あなたの在り方を想像して、想定して、その上で羨ましくていいなと望む、悪辣染みた飽くなき底なし欲求。

「」

「……ふ、ふふ。成程、成程。」

君に抱かれた時の事。君に己の"執着と愛欲"を告げた時の事。それを人形師は思い出した。

嫉妬を滲ませた声を聞く。
ーーああ、こんなにも。愚かで狂い歪な欲を抱く彼を。

　
「ふ、はは。シェルタンも、好きものだな。
　いや知ってたとも。けどつい、ついね？
　無礼講もありテンションを上げすぎたが…良い顔するね？」

貴方の頬に指で軽く撫でようとする。もし避けないなら、本当にただの『あるがまま』の人間の手が掠め、触れる。

「……こーらシェルタン。
　そんな反応されると俺も照れるぞ？
　"あの時"はそこまで情熱的でもなかったのに。
　
　まあ怒ってないけど、さ。
　君ならこれが素体とも例えるのかな？」

貴方の内の慟哭衝動に気付いてない。だが全てに、ではない。
吼える声は聞こえずともその圧は感じたよにうに僅かに目を細めた。心地の良い音楽でも聞くように。

「……ふふ、失敬。お見苦しい所を見せてしまいましたね？
　幾分、貴方の様な物好きは随分と久しぶりに見たもので。
　それも――そういった感情を抱く様なお方は。」

触れる手を避けようともしない。
君の『あるがまま』の綺麗な手が、己の頬を撫でる。

想像する。
触れるその手を、或いは己を見つめる目を。それとももっと別な場所を。
人と違うカタチに変えたら、どれだけ愛おしく見えるのだろう？

「ええ、その様に呼ぶ事もありますね。
　……流石にこの場では、貴方ぐらいにしか告げられませんけれど、ね？」

君のすぐ傍で囁く様に。