[　話が終わった後のテーブルの上には、
　 量の減ったコップだけが残されていた。　]**
　
　

　


[　目は口程に物を言う。

　 …もちろん読心術はないけれど、
　 ほんの少しでも、ヒントが貰えたなら
　 きっとそれですべてを察したんだと思う

　 二人の会話は、二人にしか聞こえない。　]


　

　


[　やがて目の前の人が立ち去って、
　 朔也くんが現れたとき。

　 疲れ果てた顔をした桧垣やよいは、
　 それでも朔也くんの前だから、って
　 笑顔を作ってみせたけど。

　 それはあなたにはどう映っていたのだろうか。




　

――　数日前・結城家　――


　　父さん


[　コンコン、と父さんの部屋をノックする。
　 手には、コーヒーカップの乗ったトレー。
　 返事はなかったけど、
　 偶に机で寝ていたりすることもあるから、
　 そのまま部屋に入った。　]


　　……あれ？
　　いない、のか


[　しかしそこに父さんの姿はなかった。
　 なんだ、寝てる訳じゃなかったんだ、って思いながら、
　 トレーを定位置に置いて、　]
　

　

　　わ、　と、……


[　軽くだけれど、父さんの事務机にぶつかってしまって、
　 紙束が雪崩れていく音がした。



　 これは全部父さんの仕事のものだ。
　 だから――見るつもりはなかった。
]
　

　



　

　
[　見てはいけない。
　 そう思うのに、紙を捲る手を止められない。

　 そこに書かれた名前が、よく知る名前、だったからだ。　]
　

　



　

――　現在・結城家　――


　　……ただいま


[　今日は……やよいが家に来る日、だった。
　 その時は、家に居ようと思ってたんだけど、
　 僕はうっかり、図書館で寝てしまっていたらしい。
　 もうやよいは帰ってしまっただろうか。父さんは――

　 そう考えていると、
　 やよいがそこにいた。>>46　]
　

　
[　一瞬見えた、疲れ果てたような顔。
　 顔色も少し悪いように見えるけど、
　 そう、君は、最近少し、体調が悪そうだった。>>33
　 それを見る度、心配になる。
　 ……ここ数日の間に顔を合わせていたなら、
　 僕の心配は大きく顔に表れていたかもしれない。　]


　　やよ、い　……


[　笑顔を向けてくれる君は、
　 心配させまいとしているのだろうか。
　 その心が愛しいけれど、
　 堪らなく、痛々しい。

　 ――僕の目に映る笑顔は、いつものようでありながら、
　 やはりどこか、無理しているように映る。

　 ……それを見た僕の様子も、
　 きっと、いつも通りじゃない。　]
　

　



　

　

[　君の手を取ることくらいは、
　 もし幼馴染であるだけであっても、許されるだろうか　]

　

　

　　やよい、