人狼物語 三日月国


149 【R18身内村】LOVE OR ALIVE

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視点:


瀬里蓮司との間に運命の絆を結んだ。

【独】 雨宮 瀬里

/*
置手紙!?
(-0) ししゃもん 2022/05/26(Thu) 10:06:09

【独】 雨宮 瀬里

/*
うあー置手紙しんどい
(-1) ししゃもん 2022/05/26(Thu) 12:59:36

【人】 雨宮 瀬里

 

 その日はすぐにやってきただろう。
 宮々の家に行く車の中では、
 きっといつもよりも会話は少なかった。

 私ね。
 時折貴方を窺っては
 貴方を好きであることを確かめてた。

 貴方の気持ちがなくなったとしても、
 私の気持ちがなくなったとしても、
 一瞬一瞬のことを、思い出せるように、
 流れる景色の内側に、貴方の存在を確かめてた。

 
(0) ししゃもん 2022/05/26(Thu) 13:58:42

【人】 雨宮 瀬里

 

 私が知らなかったのは
 恋矢が抜かれると、恋心を失うだけではなくて
 貴方が記憶を失う可能性もあるということ

 私も貴方も知らなかったのは
 恋矢が抜かれると、
 その恋矢と繋がっていた相手の恋矢も消滅して
 相手の恋心や、記憶にも影響があるかもしれないこと

 恋をしていた間の私自身が、
 いなくなってしまう可能性もあるということ

 
(1) ししゃもん 2022/05/26(Thu) 13:59:12

【人】 雨宮 瀬里

 

 漠然とわかっていた。
 確かなことは、ひとつだけ。

 恋矢を抜くことで、
 私と貴方の今がなくなってしまうということ。


 
(2) ししゃもん 2022/05/26(Thu) 13:59:41

【人】 雨宮 瀬里

 

   宮々の家に着く。
   私たちを迎えてくれたのは誰だったか。
   貴方の隣で、私は薄紫の翼を揺らす。

   貴方の隣に居られるのは、
   どれくらいの間だったのだろう。

   僅かなひととき。私は貴方と手を繋ぐ。 *

 
(3) ししゃもん 2022/05/26(Thu) 13:59:54

【秘】 宮々 蓮司 → 雨宮 瀬里

 

助手席へと身を寄せて、瀬里にそっと口付けを。

どうかこの幸せを忘れぬように。


 
(-2) JohnDoe 2022/05/26(Thu) 19:14:23

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 もちろん、覚えてるよ。 」


 あの時のふたつの音。
 私たちを結び付けてくれた恋の矢は、
 確かに今もここにあって、
 おかげで、私たちは素敵な恋をすることができた。

 目を閉じれば今でも胸の中で響いている気がした
 澄んだ美しい歌声が。幸せを願って鳴らした指音が。

 
 「 忘れないよ 」


 私にとっての忘れない≠ヘ
 貴方にとってのそれとは重みが違ったけれど
 それでも、きっと、気持ちは同じ。

 
(7) ししゃもん 2022/05/26(Thu) 19:46:15

【秘】 雨宮 瀬里 → 宮々 蓮司

 

 口づけの温かさも、幸せな気持ちも。
 貴方を想うすべてを。

 指で貴方の眼帯を撫でて、微笑んで。
 貴方がそうしてくれたように、
 私からも身を寄せて、もう一度だけ短くキスをする

 きっと、今の貴方との、最後の口づけ。

 
(-3) ししゃもん 2022/05/26(Thu) 19:46:49

【人】 雨宮 瀬里

 

 武家屋敷のような平屋建てに、
 まったく驚かなかったかと言えば嘘になるけれど
 それでもなんとか澄ました顔は出来ていただろうか
 
こんな時に、作りものの顔が得意なのが役立つとは


 通された客間で、机を囲んで貴方と向かい合う
 二人きりになったときには、
 あれがお祖父さん?とでも聞いただろうか
 肯定が返ってきたら、優しそうね、とも。

 
 「 治療、怖い?
   ……病気、良くなるといいね 」


 恋天使の矢を除去する治療。
 どんなことをするのだろうか。
 想像すらつかない私は、そんなことしか言えなくて。
 
恋を失うことからは、目を背けた。
 *

 
(8) ししゃもん 2022/05/26(Thu) 19:47:10

【人】 雨宮 瀬里

 

 上手くいったら

 その言葉は、単に貴方の病が治ったら、
 という意味ではないことくらい、私にもわかる。

 何もかもがただの杞憂で終わったら。
 貴方と私が今のままで、在り続けられるなら。

 
 「 うーん、何かな… 」


 何をしたいか、なんて考えたことなかった。
 何処に行きたいか、なんて考えたことがなかった。

 貴方と一緒だったら、どこでもよかった。
 それが当たり前≠セったから。

 ……結果。私は一つの答えにたどり着く。

 
(11) ししゃもん 2022/05/27(Fri) 7:58:13

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 すぐには無理かもしれないけれど
   私ね。蓮司と一緒に暮らしたい。

   週末デートで突然音沙汰なくなって
   貴方の有事に駆けつけられないとか。
   そんなの、もう嫌だもの。 」


 お互いに生活の拠点を持っているから
 すぐに共に暮らすのは難しいかもしれない。
 だけど当たり前≠ェずっと続くように、
 私は、貴方の傍に在りたい。 *

 
(12) ししゃもん 2022/05/27(Fri) 7:58:33

【人】 雨宮 瀬里

 

 それは上手くいったら≠フ話。
 だけど、絶対に訪れないなんて仮定はせずに
 訪れるかもしれない未来を夢見た。

 
 「 うん、約束 」


 もちろん上手くいったって、
 そうするには山ほど課題はあるかもしれないけど
 それでも。夢を見ないよりかは、全然いい。

 
(16) ししゃもん 2022/05/27(Fri) 14:58:08

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 待ってるよ。
   行ってらっしゃい。 」


 あなたの右目を見つめてぎこちなく微笑んで。
 大丈夫だよ、と言うようにひとつ頷いた。

 貴方がそうやって微笑んでくれるなら
 私も、貴方を微笑んで送り出したい。

 貴方に最後に見せる顔は、
 やっぱり笑顔がいい。………なんて。
 そんな言葉が頭を過ぎったら、
 込み上げるものは、あったけれど。

 泣くのは、今じゃない。


 
(17) ししゃもん 2022/05/27(Fri) 14:58:30

【人】 雨宮 瀬里

 


 そうして私を残して扉は、閉じられた。


 
(18) ししゃもん 2022/05/27(Fri) 14:58:42

【人】 雨宮 瀬里

 

 きっとお祖父さんが、
 もしくはお手伝いの人が。

 治療が1日近く掛かることを私に伝えたのは
 それから間もなくのことだったし、
 きっと、私は不自由なく滞在させてもらえたのだろう

 食事も、寝床も、きちんと宛てがわれて
 私はそこで貴方を待つことになる

 
(19) ししゃもん 2022/05/27(Fri) 14:58:57

【人】 雨宮 瀬里

 

 1時間、2時間、
 経過する時間の中で、
 私は常に貴方のことを思い浮かべた。

 まだ、私は貴方のことを愛している。

 そんな言葉を反芻しながら、
涙を流しながら

 恋心を何度も確かめた。

 同時に、恋心を抱いているということは
 まだ、貴方の治療が終わっていないということだ。
 それは、私にもわかること。

 同時に、貴方のことを思い出せるということは
 まだ、貴方の治療が終わっていない可能性があるということ
 それは、私にはわからないこと。


 貴方への恋心を最後に確かに感じたのは、
 私が眠りにつく前のことだった。 *

 
(20) ししゃもん 2022/05/27(Fri) 14:59:50

【人】 雨宮 瀬里

 

 夢を見た。

 とても大切な人と手を繋いでどこかへと歩いている夢。
 顔には陰が掛かっていてそれが誰かはわからない。

 私は、誰かの名前を呼んでいるのに、
 それがどんな音なのかわからない。

 聞こえない。自分の声も、誰かの声も。

 
(25) ししゃもん 2022/05/27(Fri) 20:21:14

【人】 雨宮 瀬里

 

 目を覚ますと、私は知らない場所にいた。
 朝の陽ざしがとても眩しく、暑く。

 季節が夏に移り変わっていることを知る。

 
   知らない場所、というのも語弊があった
   私は確かにそこを知っていた。
   知っているはずなのに、思い出せないのだ。



 
(26) ししゃもん 2022/05/27(Fri) 20:21:34

【人】 雨宮 瀬里

 

 私は私のものであるらしい♀唐開ける

 私のものであることはわかっている
 だけど、そう、何かが違う。
 
 鞄の中を開ければそれは顕著で、
 詰められた服はどれもカジュアルなものばかり
 
 だけどそれも、
 どうしてか私のものであることはわかってる。
 ただ、それを着ていた記憶がないだけだ。

 
(27) ししゃもん 2022/05/27(Fri) 20:21:50

【人】 雨宮 瀬里

 

 恋矢を取り除いた貴方と
 それに伴って恋矢が消滅した私と
 その程度に差があったかどうかは神のみぞ知る話

 少なくとも私には
 あの春から今までの記憶が
 ぼんやりと、朧げにしか残っていなかった
 朧げに、残っていたことは、不幸中の幸いか。


 ……いや、思い出そうと思えば
 思い出せることもある
 
 例えば私が、学校を卒業して弟子入りをしたこと
 そういえば着る服が変わったということ
 そう、私は確かにあれから1年以上の歳月を
 雨宮瀬里として生きてきたのだ。

 季節が夏に移り変わっていたことも、
 次第に納得することは、できた。

 
(28) ししゃもん 2022/05/27(Fri) 20:22:27

【人】 雨宮 瀬里

 

 私がそれを見つけたのは、
 たくさんの違和感を抱えながら
 見知らぬ部屋を見まわしているときだ

 一通の手紙。>>1:L0

 瀬里へ、と書かれたそれを、手に取ると
 私はその封を開く。

 見慣れた文字。
 見知らぬ文字。


 「 瀬里へ 」


 小さな声でそれを呟く。
 誰かの声がそれに重なった気がしたけれどすぐに霧散した

 
(29) ししゃもん 2022/05/27(Fri) 20:22:44

【人】 雨宮 瀬里

 


        


        
宮々


        
蓮司


        


        
お見合い


        
記憶



 手紙に書かれた単語が、
 ただの単語として、意味も成さずに滑り落ちていく

 だけど、ここに書かれたことが本当だとすれば……
 私は、暫くその文字をずっと指で辿っていた。 *

 
(30) ししゃもん 2022/05/27(Fri) 20:23:18

【人】 雨宮 瀬里

 

 扉が3回叩かれる。
 そこに立っていたのは見知らぬ老人だった。
 ほんの少し、身構える。

 人のよさそうな顔つき、白い髪、刻まれた皺
 そして ────── 紅い瞳。


 「 ……あの、えっと。
   ここに来た理由…?
   いえ、覚えていません。 」


 不安げな表情を浮かべながら、
 私はその老人に答える

 紅い瞳が、どうにも心をざわつかせる。

 
(34) ししゃもん 2022/05/28(Sat) 0:40:45

【人】 雨宮 瀬里

 

 答えながら、私は老人にさらに問いかけるだろう
 手に持っていた封筒を見せながら。

 手紙を見せはしないが、
 いわゆるラブレターというやつに近い。
 他人に中身を見せるものでもないだろうから。


 封筒の表面には「瀬里へ」と書かれており、
 裏面には「蓮司」と書かれているはずだ。


 「 手紙は、蓮司、という人からのものでした
   私は、……ちょっと、わからなくて。
  
   あの、ここは、どこなんでしょうか。
   あと、この、宮々、というのは、その… 」


 言葉を紡げない。
 宮々が何を指すのかはわからないし、
 矢継ぎ早に聞いた質問の答えは、
 この目の前の老人が持っている、そんな気がした。

 答えを待つのが正解だ、と。

 
(35) ししゃもん 2022/05/28(Sat) 0:41:22

【人】 雨宮 瀬里

 


 私は、気づかなかった。
 
 その名前を、滞ることなく宮々いえみやと読めたことに。

 かつて冗談でもなんでもなく
 雨宮瀬里という人間は、その名前を初見の時に
 みやみやさん、と呼んだというのに。 *


 
(36) ししゃもん 2022/05/28(Sat) 0:41:51

【独】 雨宮 瀬里

/*
どうしようかな!このままかえるか、あいにいくか
(-4) ししゃもん 2022/05/28(Sat) 9:49:26

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 ………手違い 」


 私はただその言葉を繰り返す。
 ちょっとした事故、恋矢をなかったことにする、
 その言葉を頭の中で繰り返した。

 
 「 そう。なんですね。でも、 」


 でも、の言葉の先を紡げない。
 この頭にこびりつくほんの少しの違和感はなんだろう。

 
(40) ししゃもん 2022/05/28(Sat) 10:06:13

【人】 雨宮 瀬里

 

 恋天使のお見合いのことは知っている。
 蓮司という人が手紙に書いていた、
 お見合い、というのはそのことだろう。

   恋天使のお見合いで
   手違いなどが起こるだろうか


 手紙が本当であるならば
 蓮司という人は、私を愛していてくれたらしい
 記憶を喪っても、取り戻したいと思うほどに。

   一番私が引っかかっているのは
   その感情を目にしても、
   何も嫌な気持ちが起こらないということ。
   私が恋に抱いていたはずの忌避感を
   なぜか抱いていないということ

 ── まさに、私は恋をしていたのだろう。
    そしてそれが、嫌な感情でなかったことだけは
    どうしてか、今も思い出せるのだ

 

 
(41) ししゃもん 2022/05/28(Sat) 10:06:42

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 ……あの。
   蓮司さん?に、会うことはできますか 」


 私はまっすぐに紅い瞳を見つめて問う。
 
やっぱりこの紅い瞳は私の心をざわつかせる。


 会ってもわからないかもしれない。
 会っても思い出せないかもしれない。
 思い出しても、何の意味もないのかもしれない

 だけど手紙のそのひとは、私に会いたいと望んでいた
 それが、そのひとと記憶にない私が望んだことならば
 せめて叶えるくらいは、……そう願って。 *

 
(42) ししゃもん 2022/05/28(Sat) 10:07:02

【人】 雨宮 瀬里

 

 広げられた大きな翼
同族の証
が畳まれる
 残ったのは紅い瞳のそのひとだけ。

 
 「 それは…… 」


 会ってどうする?の問いには言葉を詰まらせる
 話しがしたいという気持ちもないし
 会っても知らない人だろう、という想いは強い
 赤の他人になった、そう告げる老人の声は、
 まぎれもなく事実だった。

 それは今の私にとって≠サの通りの意味を持つ
 
だけど前までの私≠ノとっては?


 
(45) ししゃもん 2022/05/28(Sat) 11:32:10

【人】 雨宮 瀬里

 

 手紙が残っていたことと、
 手紙にお見合いと書かれていたこと
 恋に対する忌避感がないこと。

 それらは確かに私に恋人≠ェいたのだろう事実を
 浮かび上がらせる。

 老人や、この手紙の主が嘘を吐く理由もない…筈だ。
 老人が渋っているのもそれが真実だからだろう。

 そして老人にも、私が戸惑っている様子は
 そのまま伝わるに違いない。

 
(46) ししゃもん 2022/05/28(Sat) 11:32:22

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 ……だけど、
   会わないのは、後悔すると、思うから。
   多分記憶が混乱する前の私だったら、
   会いたい、って願うような、そんな気がするんです 」


 そのひとの気持ちはわからない。
 今の私の気持ちでもない。

 だけど今までの雨宮瀬里≠セったら。
 そうしたい、と望むだろうから。

 気の強い、私のことだから。
 20年以上この心で生きてきた。
 記憶がなくても、私のことくらいはわかる。


 朝食を食べろという声には頷いて、
 私は蓮司≠フ意向を、老人の答えを、待つことにする
 
(47) ししゃもん 2022/05/28(Sat) 11:33:31

【人】 雨宮 瀬里

 

 恋人だった人との記憶はないけれど
 私が確かに変わった、という事実だけは、
 私の中に薄ぼんやりと残っている

 以前のような洋服を着なくなったこと
 母親とはそれでも良好な関係を築いていること
 家を出て、陶芸の道に私が進んだこと

 それは蓮司≠ニ関係ない部分だから
 記憶の混乱が起きていないのだろうか

 それでもその変化≠キるきっかけは思い出せないから
 それをくれたのは、まぎれもない、その人なのだろう。 *


 
(48) ししゃもん 2022/05/28(Sat) 11:33:57

【人】 雨宮 瀬里

 

 昼よりも前のころ、
 空には高く陽が昇り、木々の緑を美しく照らす
 案内された庭には洋装の男性がひとり佇んでいる

 私は白のブラウスと赤紫のスカートを纏って
 その人のほうへ近寄っていく

     それはいつ手に入れたものなのか
     私は、憶えていない。
     そこにも貴方との記憶があるのだろう


 その人の背中を後ろから見たとき、
 会うのが怖い、と思ってしまった

     怖い、という感情が、
     いつかの感情に重なった気がしたけれど
     それはいつのことだったのかわからない


 
(51) ししゃもん 2022/05/28(Sat) 13:43:51

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 ………こんにちは、蓮司さん? 」


 名前を口にして、
 どこか違和感があったのは何故だろうか
 
     もしかしたら蓮司さん≠ネどと
     私は、呼んでいなかったのかもしれない


 
(52) ししゃもん 2022/05/28(Sat) 13:44:12

【人】 雨宮 瀬里

 

 その人がこちらを振り向く。
 二色の瞳がとてもきれいで、だけど、私は、


 「 ……?? 」


 何かが、とても違和感で。


 「 目、大丈夫、なんですか 」


 
陽の光の下
、美しく煌めく二色の瞳に、
 何が大丈夫じゃない≠アとがあるというのか
 それもわからないまま、私は本能的に、
 そんな言葉を、口にしていた。 *

 
(53) ししゃもん 2022/05/28(Sat) 13:44:53

【人】 雨宮 瀬里

 

 きっと私はその人に瀬里≠ニ呼ばれていたのだろう
 その呼び方はどこかしっくりときて私は縦に首を振る

 それと同時になにかデジャブのような違和感を感じて
 心の奥底がほんのわずかに軋む



 「 ……そうですね、かっこいいですよ 」


 ほらまただ。
 少し戯けて掛けられた言葉、
 何も文脈としておかしくはないのに、
 なにか、なにかが、ひっかかる。


 
(57) ししゃもん 2022/05/28(Sat) 16:01:41

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 うん。初めましてでは、ないみたい
   でも、憶えてないんです 」


 貴方もですよね、って確認するように。
 
 貴方の声も、顔も、憶えてはいないけれど
 それでも、どこか、穏やかな気持ちで話せたのは。
 やっぱり絆があったから、ということなのだろうか。


 その人に翼はない。
 だけど、手紙の中には「恋矢」が、と書いてあった
 同種であることを前提に、私は話をする。
 これで相手が恋天使じゃなかったら…ふと不安になって
 私は背中の羽を揺らしてみせて、貴方の視線の先を確かめた。

 …羽根が見えていなさそうなら、
 ほんの少し、不安な顔は見せただろう。

 
(58) ししゃもん 2022/05/28(Sat) 16:02:12

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 あの 」


 そうして私は貴方にあの封筒を差し出す。
 恐らく貴方の文字で、瀬里へと書かれた一通の封筒。


 「 貴方に返すのも、なんか違うと思うんですけど
   でも。貴方にも、読んでもらいたくて 」


 封筒には一度開けた跡があるから、
 私が読んだものだということはすぐに分かるだろう
 
 それから、もうすこしだけ、貴方に近づいて
 声を落として、小さくつぶやく

 
(59) ししゃもん 2022/05/28(Sat) 16:02:26

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 あのお爺さんが、
   手違いで、恋矢が刺さって、
   恋矢を抜いたのだと言っていました。

   ……でもここにはお見合い、ってあるし
   何より、これを書いた人の言葉が、
   手違いで恋矢が刺さってた人のものだって
   私、思えないんです。

  たぶん。蓮司さんの字、だと思うんですけど
  ……読んでみて、ください。 」


 手紙を読んでくれるのならば、その傍で。
 言いたいこと、ってなんだったんでしょうね、って
 私は困ったように笑いながら呟いた。 *

 
(60) ししゃもん 2022/05/28(Sat) 16:02:38

【人】 雨宮 瀬里

 

 これは俺≠ェ書いたものじゃない。
 その言葉にどこか落胆の気持ちを抱いてしまったのは
 別に恋心を取り戻したい、とかいう動機じゃない。

 じゃあ私を動かすものはなんだろう?って
 ふと考えたとき、一番に心に浮かんだのは

  私の中に知らない私がいること

 それが、どうしてももやもやするのだと気づいた。

 
(66) ししゃもん 2022/05/28(Sat) 18:21:36

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 いえ。
   恋心を抱いていたらしい、のは
   ここにいる私、ではないので。 」


 好きか?と聞かれて即答した。
 好き嫌い、という感情はどこにもない。

 昨日までの私たちはどこにもいない。
 貴方と過ごしたらしい日々の様々な瞬間が
 私の中からすっぽりと抜け落ちたまま、
 私は、いつかの私の続きを歩いている。

 
(67) ししゃもん 2022/05/28(Sat) 18:21:49

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 ありがとうございます。
   ……助かります。 」

 
 ここは一体どこなんだろう、とスマホを見る。
 位置情報から、大体の場所が分かるはずだ。
 ロックを外せば、私と貴方が並ぶ待ち受け画面が見えた。

 
(68) ししゃもん 2022/05/28(Sat) 18:22:01

【人】 雨宮 瀬里

 

 見覚えのない車。
 見たことのあるような車。

 躊躇することなく私の足は助手席へ向かい、
 慣れた手つきでその扉を開く。


 「 あの。
   何か、思い出したら。
   ううん、何も思い出さなくても。
   また、連絡してもいいですか。 」


 そう切り出したのは車が発進した後だったか。
 スマホには、ご丁寧に貴方の連絡先も、
 直前までのやり取りも、残っているようだった。

 
(69) ししゃもん 2022/05/28(Sat) 18:22:20

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 恋心があるとか、ないとか、じゃなくて
   ……記憶。ないのが。嫌だなって。 」


 貴方との記憶、じゃない。
 私自身の記憶がないことが、嫌だなって思ったんだって
 私は、貴方に伝えるだろう。


 「 ……自分のこと、
   なんでも自分で決めたいんです。
   だから、昨日までの私が分からないのがすごく嫌。

   おかしいな。
   昔私そういう人じゃなかった筈なんですけど。 」


 昔の私は、自分の意思を持たずに、
 家族に、他人に、自分の評価も意思も委ねていた。
 今の私は、すっかりそうでないと嫌だ、なんて

 …それが、変わった記憶はどこにもないのに。 *

 
(70) ししゃもん 2022/05/28(Sat) 18:23:12

【人】 雨宮 瀬里

 

 貴方の皮肉には素直に頷いた。
 きっと、昨日までの瀬里≠セって、喜ぶはずだから。

 恋をしたらどうなのか、と私は考えたりはしなかった
 知らない貴方に恋をするつもりもなかった。

 けれど、どうしてだろうか。

 恋をしてはいけない≠フだと、

 そんな気持ちが無くなっていることに、
 私は気づいてはいなかった。
 それは、ほんの少し貴方の状態とは違っていたのかも。


 
(74) ししゃもん 2022/05/28(Sat) 19:38:16

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 clarity?知ってる、というか、」


 そう。私は確かにclarityを知っている。
 知っているどころか、…と言葉を紡ごうとして
 その先に続く言葉が見当たらないのに気付く。
 多分私はスマホの履歴に「灯歌」という名前を見ても
 それが誰だかあまり思い出せなくなっているのだろう


 
(75) ししゃもん 2022/05/28(Sat) 19:38:37

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 ……ううん、なんでもない。
   知っている、はず、なんだけど、
   あんまり思い出せないの。
   これも、貴方との記憶が関係しているのかな 」  


 透明な歌声が車の中に響く。
 不安な人を励ますような、優しい歌声。
 大丈夫だよ、って背中を押してくれるような声。

 私は、その声を、確かに、どこかで、

 記憶を呼び起こそうとしても、靄がかかっている
 だけど、記憶を探るように、探すように、
 ぼんやりとした瞳で、私は貴方のことを見た。

     貴方は、どうしてこのひとを知っているの?
     そんなことを問いかけるように。 *

 
(76) ししゃもん 2022/05/28(Sat) 19:38:51

【人】 雨宮 瀬里

 

 ぱちん、ぱちん、と指が鳴る
 そのたびに、何か大切な景色が色づいていく

  『 私ね、変わろうと思って 』

 それは確かに私の声
 変わるための後押しをしてくれたのは…?
 
 透明な歌声、跳ねるような指の音、
 月明りが照らす暗がりの中で、
 明るい光が私の、  
私の……?


      
真っ赤
ななにかが、見えた気がした

 
(79) ししゃもん 2022/05/28(Sat) 20:21:27

【人】 雨宮 瀬里

 

 明るい光に目線を向けようとして、
 
           
       車が動く。
       思考は途切れる。



 「 何か、思い出せそうな気がしました 」

 それだけ言って小さく笑うと、
 私は手元のスマホに視線を落とす。
 車の中。会話などはほとんどないはず。

 
(80) ししゃもん 2022/05/28(Sat) 20:21:48

【人】 雨宮 瀬里

 

 スマホに残されたメールも写真も、
 どれも私の知らない雨宮瀬里だった。
 たくさんの景色や、たくさんの食事や、
 たくさんの笑顔が、そこには残されていた。


 「 楽しそう 」


 私はただの感想を呟く。
 他人事だけど、本当にそれは楽しそうだったから


 「 恋、してたんだなって、分かります
   恋をする人間と、同じ顔、してるもの。 」


 恋をしたい、だとか。
 同じ感情を取り戻したい。とかじゃないけれど。
 スマホに残った、二人の姿は、本当に楽しそうで

 ……だから、私は至極当然の質問を投げかける。

 
(81) ししゃもん 2022/05/28(Sat) 20:22:03

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 どうして、恋矢を抜いてしまったんでしょうね 」


 貴方は知っていること。
 私は覚えていないこと。

 ただの、話のきっかけにすぎない。 *

 
(82) ししゃもん 2022/05/28(Sat) 20:22:14

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 病?
   ………そう。だったんだ。 」


 病によって、恋矢を抜かざるを得なかった。
 そんな話は今、初めて聞いた。

 ううん、瀬里≠ヘ知っていたんだろう。
 知ったうえで、それを受け入れたとき
 私は、どう思ったんだろう。

 うらやましい、の声に私は小さく微笑んだ
 
 
 「 これほど楽しそうに過ごしていたのに
   恋心と記憶が消えてしまったのは……
   ……きっと、悔しかっただろうな。 」


 恋心が消えるときの感情なんてわからないけど
 でも大切にしていたものを喪わざるを得ないときの
 悔しさとかなら、分かる気がするから。

 
(86) ししゃもん 2022/05/28(Sat) 22:39:03

【人】 雨宮 瀬里

 

 駅前で車が止まる。
 私が全く知らない駅だったけれど
 きっと家までは帰ることはできるだろう。


 「 ……うん、 」


 貴方の視線がこちらへと向く
 
 ここで、私が車を降りればそれでおしまい。
 時々私から連絡をするかもしれない。
 だけどそれもいつ終わるかはわからない。
 だからと言って何もできないし、何かしようとも ──


      二つの色の違う瞳を
      私のスカートとお揃いの色の左目を
      私が…好きだったであろう、その瞳を、


 
(87) ししゃもん 2022/05/28(Sat) 22:39:48

【人】 雨宮 瀬里

 


 ねえ瀬里
 貴方はこんな終わり方も想定していたの?



 
(88) ししゃもん 2022/05/28(Sat) 22:40:16

【人】 雨宮 瀬里

 


 ──────── ちがうの。



 
(89) ししゃもん 2022/05/28(Sat) 22:40:41

【恋】 雨宮 瀬里

 


 こんな終わり方なんて望んじゃいないの。



 
(?0) ししゃもん 2022/05/28(Sat) 22:40:55

【人】 雨宮 瀬里

 


      頬を流れる涙の意味を、私は知らない
      貴方が見たことのない涙を
      私はきっと、初めて流した。 *


 
(90) ししゃもん 2022/05/28(Sat) 22:41:44

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 …っ、ごめんなさい
   泣くつもりとか、なくて 」


 意に反して流れ出た涙を
 あたたかな指先が拭うなら、
 私は思わずそれを否定するけれど、
 涙は簡単には止まってはくれなかった。

 それでいて、もっと触れていたいと思ったのは
 昨日までの私?それとも今の私?

    それとも、全部、私なのだろうか。


 
(97) ししゃもん 2022/05/29(Sun) 8:44:32

【人】 雨宮 瀬里

 

 洋服の好みが変わっても
 恋矢が刺さって恋心を抱いても
 それがまた喪われて想いが消えてしまっても

 私に起きた変化はすべて、
 雨宮瀬里そのものなのだろうか。

 貴方に出会って、貴方が日常を満たして以降の
 私自身の記憶は喪われたままだというのに


 
(98) ししゃもん 2022/05/29(Sun) 8:45:06

【人】 雨宮 瀬里

 

 こんな終わり方は嫌だ。
 はっきりと音になって耳に届いたそれに
 私はこくりと頷いた。


 「 私も。こんな終わり方は嫌 」


 理由なんて私だってわからない。
 だけど、こんな終わり方は絶対に嫌だというだけ。

 
(99) ししゃもん 2022/05/29(Sun) 8:45:18

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 私ね、記憶を取り戻したい
   どうしたらいいか、わからないけど… 」


 恋をしていた私も、今の私も、私だというのなら
 恋をしていた時の私の記憶を、取り戻したい。
 オーディオからは相変わらず透明な歌声が響いている。 *

 
(100) ししゃもん 2022/05/29(Sun) 8:45:30

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 ……恋人に? 」


 私が浮かべるのは困惑の色。
 それでも頬に触れた手を避けることもしないまま
 貴方の両の瞳を見つめる。

 恋心とはどんなものだっただろうか
 思い出せぬままに、恋人の振りをするのは

 ──── ああ、それはかつての私。
 そんなことも忘れているくらいに、
 いつの間にか私は変えられていた。

 憶えていないから、きっと貴方のお陰。

 
(103) ししゃもん 2022/05/29(Sun) 11:12:42

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 ……うん、構わない。
   瀬里≠熈蓮司≠烽サれを望むもの。 」


 流れていた涙が止まったから、
 きっと、そうなのだろう。


 「 ……改めて、っていうのもなんだけど
   雨宮瀬里です。……よろしく……? 」


 きっと2回目の初めまして。
 はにかんだ笑顔は、営業スマイルなんかじゃない。
 
(104) ししゃもん 2022/05/29(Sun) 11:13:20

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 恋人はじめに、もう少し、
   ドライブデート、しませんか。
   歌も、聞いていたいし、
   もう少し、話がしてみたいから。 」


 例えばひとつ先の駅まで。
 例えば乗り換えのターミナル駅まで。
 家までは、少し気が引ける距離だけど。

 もしもドライブデートが叶うなら、
 きっと最初から、お互いを知っていこうかな。
 私が陶芸を生業にしていることとか
 貴方は珈琲を好むとか、きゅうりが嫌いだとか

 他愛のない話を、いくらでも。

 
時間制限はどこにもないから。
*
 
(105) ししゃもん 2022/05/29(Sun) 11:14:33

【人】 雨宮 瀬里

 

 記憶から抜け落ちてしまった欠片を拾い集める
 私たちにとっては初めて手に入れる欠片は
 新鮮味がなく、どこかすんなりと馴染んでいく

 隣の駅を越え、
 ターミナル駅を越え。

 記憶があいまいであっても
 私は正しく貴方に住所を伝えることが出来たはず

 だけどそんなことしなくたって
 ナビの履歴に残っていたかもしれないし
 ナビを見なくても……
 貴方は、問題なく車を走らせたかもしれない


 
(109) ししゃもん 2022/05/29(Sun) 20:03:23

【人】 雨宮 瀬里

 

 街灯の少ない小さな町。
 こうして夜の助手席に座っていることも
 なんだか、初めてではないような感覚に陥る
 事実、初めてではないはずだから当然だけど

 貴方の左隣に居ることが、
 なんだか、至極当たり前≠ナあるかのような感覚。

 オーディオからゆるやかに流れる音楽
 窓の外を流れる夕景 いくつもの標識
 低いエンジン音と 僅かな車の振動

 ああ、いつだってこうやって、


      離れがたい
      どこにも着きたくない
      そんな気持ちを重ねていたのは、

      ………誰、だっけ。


 
(110) ししゃもん 2022/05/29(Sun) 20:04:04

【人】 雨宮 瀬里

 

 気づけば、私の家へとたどり着く。
 記憶がはっきりしている実家ではなく、
 記憶が朧げだった一人暮らしの小さなアパート。

 だけど確かにここが私の家なのだ、と
 住所がそらで言えたように、知識として理解してる



 「 遠くまで、ありがとう 」


 すっかり辺りは昏くなってしまった
 途中お昼や休憩に立ち寄ったとはいえ
 随分と長いドライブデートをさせてしまって
 素直に…ほんの少し申し訳ない気分になったけど。

 
(111) ししゃもん 2022/05/29(Sun) 20:04:19

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 蓮司さん、……あの、 」


 言葉を投げかけて、詰まらせて。
 何か言うべき言葉があった気がして、
 それでもそれは何処にも見つからなくて。

 
(112) ししゃもん 2022/05/29(Sun) 20:04:31

【秘】 雨宮 瀬里 → 宮々 蓮司

 


    …だから。というわけではない。

    それは、随分と自然に、
    最初からそうしたかったかのように
    私の右手が勝手に、動く

    手のひらを差し出す動き
    貴方が手を取ってくれるなら、
    添えるように、貴方の左手に重ねる


 
(-5) ししゃもん 2022/05/29(Sun) 20:04:57

【秘】 雨宮 瀬里 → 宮々 蓮司

 


 とん、

 色のない人差し指が貴方の掌を叩く
 
誰かに褒めてもらった、大好きな爪



   とん、
 
   いつかも、こんなリズムで
   
暖かな掌を爪で弾いた、懐かしい記憶



     とん、

     掌に、重ねた想いは、なんだっけ
     離れがたい、どこにも着きたくない
     記憶がすこしずつ、色づいていくような *



 
(-6) ししゃもん 2022/05/29(Sun) 20:06:46

【秘】 宮々 蓮司 → 雨宮 瀬里

俺の左手が勝手に呼応する。

お前の手を、それが当然という様に、そっと。

それからお前の左手がさらに重なる。

 
(-7) JohnDoe 2022/05/29(Sun) 22:13:48

【秘】 宮々 蓮司 → 雨宮 瀬里


オーディオから透明な声が恋の詞を歌う。

とん、とん、とお前が掌を叩く。

いつしか俺はその指を捕まえる。

掌を合わせて指を交互に絡めて、ぎゅっと握る。

お前の柔らかな手を。
(-8) JohnDoe 2022/05/29(Sun) 22:14:25

【秘】 宮々 蓮司 → 雨宮 瀬里


相変わらず記憶は曖昧なまま。

だけど、色づいていくものがある。

もっと触れていたい。

手だけじゃなく、もっと瀬里おまえに。


この気持ちは誰のものだ?
(-9) JohnDoe 2022/05/29(Sun) 22:14:56

【秘】 雨宮 瀬里 → 宮々 蓮司

 

 えっ、と声を出した時には
 もう、貴方の顔は近くにあった。
 私はそっと、瞳を閉じて顔を傾ける

 私にとっては初めてのキス
 …なのに身体は、ちゃんと覚えている
 瞳の閉じ方も、顔の傾け方も、
 貴方の唇の温度も柔らかさも。

 
唇が離れるときに、名残惜しいと思う気持ちも。


 
(-10) ししゃもん 2022/05/30(Mon) 8:22:13

【恋】 雨宮 瀬里

 


 この暖かな気持ち忘れていた気持ちはなんだろう。


 
 
(?4) ししゃもん 2022/05/30(Mon) 8:22:42

【秘】 雨宮 瀬里 → 宮々 蓮司

 

 もう一回、なんてお願いするよりも早く
 私は、貴方にふたたび唇を重ねる。

 貴方とのキスの仕方は、身体が憶えている。
 指先を絡めて、ギュッと握りしめたら
 もう少しだけ、深いくちづけを。


 「 ……おかしいね、私
   蓮司さんと、離れたくないんだ
   ずっと、こうしていたいの。 」


 記憶が戻ったわけじゃないし
 貴方に恋をしたって断言はできない
 好きという気持ちもわからない


 だけど、心が、身体が、貴方を求めていた
 全部、全部、頭じゃない部分が憶えている
 貴方がくれる、
びも、全部。 *

 
 
(-11) ししゃもん 2022/05/30(Mon) 8:23:18

【秘】 宮々 蓮司 → 雨宮 瀬里

一度目は自分から、
そして、二度目は彼女から。

握り合う手と手。
絡め合う指と指。

触れ合う柔らかな唇。
二度目はより深く、より官能的に。
(-12) JohnDoe 2022/05/30(Mon) 12:18:46

【秘】 宮々 蓮司 → 雨宮 瀬里

 
 「 俺も、同じだ。
   お前といつまでもこうしていたい。」


 記憶だって戻らない。
 これが恋なのかもわからない。

 だけど、心が、身体が、お前を求めていた
 全部、全部、頭じゃない部分が憶えている

 
お前が欲しいと、お前の全部、全部。

 
(-13) JohnDoe 2022/05/30(Mon) 12:20:01

【秘】 雨宮 瀬里 → 宮々 蓮司

 

 唇が重なる。指先が重なる。
 それから気持ちが、言葉が重なった。

 どこにも着きたくないと願ったいつかの気持ちが
 今新しい感情として、蘇る。
 だけど……着いてしまったから。
 この車を降りたら、また離れ離れになるから。

 
(-14) ししゃもん 2022/05/30(Mon) 13:08:16

【秘】 雨宮 瀬里 → 宮々 蓮司

 


   
「 今日、泊まっていきませんか 」



   はしたない、と思いながらも
   ちいさな声で貴方に尋ねる
   答えはどうだっただろうか。

   我慢、と言われたら、
   車の中で、貴方ともう少しだけ。
   
そうじゃなければ続きは…きっと暗い部屋の中で。


 
(-15) ししゃもん 2022/05/30(Mon) 13:09:00

【恋】 雨宮 瀬里

 


   これはきっと私にとって
   二度目の、初恋だった。


 
(?6) ししゃもん 2022/05/30(Mon) 13:09:16

【人】 雨宮 瀬里

 


 部屋のあちらこちらに貴方のものがあること
 気づいたのはもう少しだけ後の話。


 
(113) ししゃもん 2022/05/30(Mon) 13:09:32

【人】 雨宮 瀬里

 

 その日の夜か、翌朝か。
 貴方と別れてからというものの
 貴方のことがどうしたって頭を離れず
 どこか熱に浮かされたような心地は続く。
 
 溜まっていた写真や、メールのやり取りから
 どうやら週末だけ私たちは会っていたようだし
 彼のことを、蓮司、と呼び捨てにしていたようだ

 貴方が居ない部屋で「蓮司」と呼んでみて
 なんだか恥ずかしくなって顔を赤らめたのは
 貴方が知らない私だけの秘密。

 
 『 また週末、会ってくれますか 』


 貴方に一文メールを送るだけでも、心が跳ねた。

 
(114) ししゃもん 2022/05/30(Mon) 13:10:04

【人】 雨宮 瀬里

 


    貴方に再び恋をした今、
    記憶なんてなくてもいいと思う自分がいた

    だけど

    貴方に再び恋をしたからこそ、
    貴方との過去を取り戻したいと思う自分がいた
 
    お見合いで出会ったのだろう人々との
    縁を思い出したい、そんな気持ちもあった


    それに ──────

 
(115) ししゃもん 2022/05/30(Mon) 13:10:38

【人】 雨宮 瀬里

 


 貴方は、何を言おうとしてたんだろう。
 手紙の最後に書かれている文章を目で追う。

 それから何か ── 私たちは約束を交わしたような、


    ………そんな気がずっとしていたんだ。 *


 
(116) ししゃもん 2022/05/30(Mon) 13:10:56

【秘】 宮々 蓮司 → 雨宮 瀬里

返事を返さずにその唇を塞いだ。
交わすキスは、瀬里を強く深く求める。
誰も見ていない、真っ暗な車の中で、聴き慣れた歌とキスの音だけが耳に届く。


 
「 ……行こう、…… 」



耳元にそっと囁くと、エンジンを切った。
オーディオから聞こえていた歌が途切れる。
その衝動はきっと瀬里と同じなんだ。

 
(-16) JohnDoe 2022/05/30(Mon) 14:39:54

【秘】 宮々 蓮司 → 雨宮 瀬里

─── 暗い部屋に影が二つ。

強く抱きしめ、唇を重ねる。
指先が、唇が、瀬里の肌に触れる。
絹のようななめらかな触り心地。

首筋に紅い花。
人に見えてしまう場所。

深い口付け。
何度も何度も重ね合わせ、何度も何度も絡み合う。

 
(-17) JohnDoe 2022/05/30(Mon) 14:40:47

【人】 雨宮 瀬里

 

 諦めなかった。
 記憶を喪ってしまったこと。
 恋心を喪ってしまったこと。

 わからなかったことが悔しかったんじゃない。
 忘れてしまったことが悔しかったんじゃない。

 1年経っているはずの私は随分と変わっていた。
 以前のはっきりした記憶の中の雨宮瀬里は、
 もう、私の要素のどこにもなかった。

 これだけ人を変えてしまうほどの恋を。
 これだけ私を変えてしまうほどの貴方を。

 忘れたまま、生きていくということが
 私にとって、望ましくない。

 私の理性はそう思った。


 
(123) ししゃもん 2022/05/30(Mon) 15:08:11

【人】 雨宮 瀬里

 

 それと同時に、理性じゃない部分が
 貴方を喪うことを、恐れていた。
 貴方と離れることを、強く拒んだ。

 涙を流した理由は、
 悲しみも悔しさでもなくて

 きっと貴方と離れることに対する恐怖だった


 
(124) ししゃもん 2022/05/30(Mon) 15:09:00

【秘】 雨宮 瀬里 → 宮々 蓮司

 

 音が途切れたオーディオ、それから暗い部屋
 貴方を招き入れて、部屋の灯りを点けるよりも早く
 私は貴方を抱きしめる。

 当然、衝動はそれだけでは収まらず
 灯りを消したまま貴方とふたり、シーツの上へ
 いつ付けられたものか分からない、
 消えかけた紅い花の隣に、新しい紅い花

 私にとっては初めての行為なはずなのに
 身体はちゃんと貴方から与えられる快楽を憶えている

 
(-18) ししゃもん 2022/05/30(Mon) 15:09:33

【秘】 雨宮 瀬里 → 宮々 蓮司

 


 「 たくさん愛して 」


 貴方にとって、昨日までの蓮司≠ェ
 嫉妬の対象だったというのなら
 今、初めて私も、昨日までの瀬里≠ノ嫉妬する

 貴方と幾度交わってきたのだろう
 貴方に幾度愛されてきたのだろう

 昨日までの瀬里≠ノそうしてきたように
 私を深く、深く、もっと愛して欲しかった。

 
貴方を、私を、教えてほしかった。


 
(-19) ししゃもん 2022/05/30(Mon) 15:10:13

【人】 雨宮 瀬里

 

 貴方に恋をすることが、
 必然だったような、気がしていた。

 貴方との記憶を喪っても、なお。

 靄が晴れるきっかけは、
 まだ私には、訪れなくとも。
  
 週末のデートまでの日数を私は指折り数えている *

 
(125) ししゃもん 2022/05/30(Mon) 15:10:26

【独】 雨宮 瀬里

/*
なんだと
(-20) ししゃもん 2022/05/30(Mon) 21:03:36

【人】 雨宮 瀬里

 

 私にとって初めての週末デートの日。
 その日私は家にいて、
 貴方が来ることを今か今かと待っていた

 
靄はまだ晴れていなかった

 貴方がすでに記憶を取り戻したことを私は知らない
 私が、いつ取り戻せるのかも、分からない


 だから、貴方を迎えたときに


 「 蓮司
さん


 
 と。私は呼んだ。

 
(128) ししゃもん 2022/05/30(Mon) 21:17:31

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 待ってた。遠いところまでありがとう。
   ……ご飯……かな?このあとどうする? 」


 週末デート。この後いつもどうしていたんだろう。
 私はこの町のこと、知っているようで何も知らない。
 きっと住み慣れた町、だったはずなのに。

 
(129) ししゃもん 2022/05/30(Mon) 21:17:47

【人】 雨宮 瀬里

 

 私の瞳に映る貴方は、
 もう一度私に恋をしてくれたひとのはずだった
 
 貴方の瞳には、
 上手くいったあとのお願い事も、
 貴方との日々も、忘れてしまった私が映る

 だけどきっと貴方が誰であっても。
 忘れてしまったころの貴方も、
 これから先の貴方のことも、全部知りたいと私は願う。 *

 
(130) ししゃもん 2022/05/30(Mon) 21:17:59

【独】 雨宮 瀬里

/*
瀬里さんどうやったら記憶もどるの?
→わかりません

と思ったけど、使えそうなフラグはまあなくもないんだよな…なくもない、けど展開次第で考える(なおエピ
(-21) ししゃもん 2022/05/30(Mon) 22:32:57

【人】 雨宮 瀬里

 

 貴方と過ごす時間なら、きっとどこだって楽しい。
 …こんな気持ちで、今までの雨宮瀬里は、
 貴方と一年も過ごしてきたのだろうか。

 それとも恋矢を受けた恋と、
 今の恋は、何かが違うのだろうか。

 恋をしたことがない≠ゥら
 これが恋なのかどうかも確かめられずに
 私は初めての週末デートを迎える。


 そういえば。と、私がきっと提案したのは
 この町にきて貴方と最初に行った店=B

 
 「 この間見かけて、気になっていたの 」


 と、きっと私は一年前と同じことを言う。
 それを私が気づいていないだけで。


 ふいに囁かれた言葉には、
 真っ赤になって、頷いた。
 
これを一年続けてきたというのか、私は。


 
(133) ししゃもん 2022/05/30(Mon) 23:19:05

【人】 雨宮 瀬里

 

 同じメニューを頼み、同じ感想をいう。

 お店の人が「ああ、」という顔をしていたから
 もしかしたら何度も訪れたことがあるのかも、と
 そう気づいてからは、貴方に向かって苦笑した。
 私たち、どうやら来たことがあるみたいね、って。

 貴方が思い出したなんて知らないもの


 それからまた少しだけ車を走らせて
 といっても都会ほど、夜景が美しいわけじゃないから
 きっと、それはそこそこに。

 
(134) ししゃもん 2022/05/30(Mon) 23:19:22

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 蓮司さん、 」


 それはそれからだいぶ時間が経った後。

 身体が幾度貴方を求めようと、
 まだ記憶を取り戻す前の私は、
 薄いタオルケットにくるまりながら
 薄暗い部屋の中、肌を貴方に寄せている
 

 「 あれから暫く、
   記憶を思いだそうと、頑張ったんだ 」


 どうだった?って聞かれたら
 首を横に振るだけだけど。ご存じの通り。
 
(135) ししゃもん 2022/05/30(Mon) 23:19:47

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 家にある服とか、
   随分、昔の私と、違うの。
   昔の私がどうだったか、っていうのは
   ……蓮司さんには、内緒。
   今と全然違って、びっくりしちゃうから 」


 知ってる、ってネタ晴らしされない限りは
 私はその話はしないつもりで。
 見てみたいとか言い出されても
 ほらまた、私は首を横に振るだけ。二回目。

 
(136) ししゃもん 2022/05/30(Mon) 23:20:02

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 でもきっと蓮司さんが変えてくれたんだなあって
   だって変わった記憶が、ないんだもの。

   つまらないことは案外覚えてるのよ。
   蓮司さんと関係ないこと。
   ここの町の人間関係だとか、
   私の師匠にあたる人のおでこ掻く癖とか。

   でも私の中から、蓮司さんとの記憶だけが
   すっぽりと抜け落ちちゃってるの。 」


 多分きっと、貴方もそうじゃない?って同意を求める
 ……その返事がね、どうであれ。
 私はそれ以上に、貴方に言いたいことがあったの。

 
(137) ししゃもん 2022/05/30(Mon) 23:20:16

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 でもひとつだけ完全にわからないものがあった

   私が、着けるはずのないものが、
   家に置いてあるの。 」

 
(138) ししゃもん 2022/05/30(Mon) 23:20:50

【人】 雨宮 瀬里

 

 体を起こしてちいさな棚へと手を伸ばす。
 一番上の引き出しを開けて、中から取り出したのは

    ── 見覚えのない、
いマニキュア。

 
(139) ししゃもん 2022/05/30(Mon) 23:21:10

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 陶芸をするときね。
   ネイルって基本だめなの。
   作品に爪が刺さったら台無しだし
   納得いく作品は絶対にネイルをしてたら作れない
   だから、私は、これ、使わないはずなの

   でも憶えてないってことは、
   貴方との記憶の何かに、関係するんだと思う

   ……って言われても困っちゃうか。

   見覚え、ないよね。
   あるはず、ないよね。 」


 私は記憶を喪っているはずの貴方≠ノ問いかけた *

 
(140) ししゃもん 2022/05/30(Mon) 23:21:24

【独】 雨宮 瀬里

/*
もう変わったきっかけになったもの出すしかないんじゃない?ってなりました なりました
(-22) ししゃもん 2022/05/30(Mon) 23:32:56

【秘】 宮々 蓮司 → 雨宮 瀬里

俺は瀬里の肌に唇と指を這わせる。

瀬里を欲すがままに、
瀬里が求めるがままに、
恋心を一度失う前がそうであった様に、

深く、深く瀬里を愛する。

瀬里の身体に刻んだ愛と官能を呼び起こすように。

(-23) JohnDoe 2022/05/31(Tue) 6:47:37

【独】 雨宮 瀬里

/*
ところで>>133で一年前って書いたんですけど、これ数か月前ですね…この町に来たの数か月前だから……頭寝てたな
(-24) ししゃもん 2022/05/31(Tue) 8:39:54

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 これを? 」


 ベッドサイドにはちいさなランプが灯り
 赤いマニキュアを僅かな光の中で翳してみせる
 殆ど使っていないゆえなのかほとんど減っていない赤を
 そっと目の前で揺らして


 「 似合うかな… 」


 …などと。

 どちらにしろ週末が終わったら剝がさねばなるまい。
 一日、二日くらい指先が赤でも、
 なんとなく悪くはない気がした。

 
(144) ししゃもん 2022/05/31(Tue) 8:42:13

【人】 雨宮 瀬里

 

 一糸纏わずベッドに寝転がりながら。
 灯りは相変わらずあまりないまま
 私は爪に色をのせる

 
 「 不思議ね。
   前もなんだかこんなことがあった気がしたの
   暗い場所だとマニキュアが塗りにくい、って
   私、なんだか知ってる気がする 」


 大人になってからネイルなんてしたことないのに
 どうしてか、この感覚を私は知っている

 「 でも、普段指に色がついていないから
   なんだか不思議な感じ。
   まるで、別の私になるみたい。 」


 色づき艶めく左手の小指と薬指。
 二本塗って光に翳して、そうして私は首を傾げる

 
(145) ししゃもん 2022/05/31(Tue) 8:42:38

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 あれ?この赤、最近どこかで、 」


 薄れてしまった記憶の中とかじゃない。
 最近、どこかでこれと同じ色を私は見た気がする

 
(146) ししゃもん 2022/05/31(Tue) 8:42:58

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 蓮司さん、私…… 」


 戸惑いながら私は貴方を見る

 
         
ぱちん


         どこかで小さく音が弾ける


 
(147) ししゃもん 2022/05/31(Tue) 8:43:37

【人】 雨宮 瀬里

 


         ぱちん、ぱちん、ぱちん
         時計の秒針のように
         規則正しくリズムを刻む、

 
(148) ししゃもん 2022/05/31(Tue) 8:43:54

【人】 雨宮 瀬里

 


   ああ、そうだ、あの時だ >>79


 
(149) ししゃもん 2022/05/31(Tue) 8:44:09

【人】 雨宮 瀬里

 



     『 私ね、変わろうと思って 』


     それは確かに私の声。
     透明な歌声、跳ねるような指の音。
     ちいさな灯りが照らす暗がり。
     明るい光が私の手元を照らしていて
     私の指先が、ひとつひとつ色づいていく

 
(150) ししゃもん 2022/05/31(Tue) 8:44:37

【人】 雨宮 瀬里

 


  明るい光に目線を向ければ ──── 、

         思考は
途切れない
>>80
         考えるための猶予は幾らでもあって、


 
(151) ししゃもん 2022/05/31(Tue) 8:45:10

【人】 雨宮 瀬里

 


   ぱちん。
   催眠術師が眠りから観客を揺り起こすように
   ひときわ大きな音が、耳の中で鳴り響く

   世界に、色が



 
(152) ししゃもん 2022/05/31(Tue) 8:45:54

【人】 雨宮 瀬里

 


   赤く塗られた左手の小指と薬指

   見慣れた部屋と匂い いつもの週末
   肌で感じる貴方の体温

   隣には恋をしている相手がいて、
   私は、貴方に向かって


         「 蓮司? 」


        ……と。一言だけ呟いた。 *

 
(153) ししゃもん 2022/05/31(Tue) 8:46:26

【独】 雨宮 瀬里

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えぴー
(-25) ししゃもん 2022/05/31(Tue) 9:41:19