人狼物語 三日月国


131 蕐の残香、追憶のブーケトス

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【人】 ピアニスト イングラハム




     「なん、で.........。」



(99) 西 2022/02/16(Wed) 2:24:27

【人】 ピアニスト イングラハム



   現実を受け入れられなくて怒るのでも
   現実を受け入れて哀しむのでもなく

   まだこれが現実だという自覚すら持たず。
   私はただ鉛のように重い身体を引きずって
   彼女がいつも出迎えてくれた病室を目指した。



(100) 西 2022/02/16(Wed) 2:25:17

【秘】 ピアニスト イングラハム → 患者 アンネロズ




   そうだ。こんなの、悪い冗談だ。


         あの病室にはきっとアンネがいて。


   またいつものように僕は出迎えてくれる。


         用意してくれた可愛らしい服を着て


   僕と外に出ることを待ち侘びてくれている。


         そうに、そうに、決まってるんだ。




(-111) 西 2022/02/16(Wed) 2:26:19

【人】 ピアニスト イングラハム




     しかし事実は残酷で。
     私の眼前に飛び込んできたのは

               アンネの、亡骸だった。



(101) 西 2022/02/16(Wed) 2:27:46

【秘】 ピアニスト イングラハム → 患者 アンネロズ




    世界でたった一人だけの

        僕が愛した人の、亡骸だった。



(-112) 西 2022/02/16(Wed) 2:29:13

【人】 ピアニスト イングラハム



   くらりと意識が飛びそうになる。
   血管が悲鳴をあげるように
   血液までパニックを起こしかけた身体を
   無理矢理奮い立たせると
   病室にいた者たちの視線が私へと集まって

   私に気づいた彼女の両親が
   その全てを、教えてくれた。>>90


   こちらへ謝罪をする彼女の両親は
   私よりも深く哀しむことになるのだろうに

   最後まで他者を気遣うその心に
   私は彼女の面影を辿らずにはいられない。



(102) 西 2022/02/16(Wed) 2:30:27

【人】 ピアニスト イングラハム



   今ここで泣き叫ぶことだって出来た。
   それをしなかったのは
人徳者彼女の両親
の前で
   私がそんなことをするわけはいかないからで

   そんな私に追い討ちをかけるように
   忘れていい。>>91
そんな言葉が心臓を抉る。

   彼女の両親の気遣いだということは
   痛いほど伝わってきた。

   それに憤る資格など私にはないということも
   十分に分かっていた。


(103) 西 2022/02/16(Wed) 2:31:43

【人】 ピアニスト イングラハム




   「すみません。少しだけ...
    彼女と二人にさせてもらえませんか。

    彼女に...ちゃんと別れを、告げたいんです。」


(104) 西 2022/02/16(Wed) 2:32:18

【人】 ピアニスト イングラハム



   赤の他人の私が言えたことではない
   しかしこれまでの事を好意的に見てくれた
   彼女の両親は私の願いを聞き入れてくれて


   部屋に残ったのは
   取り残されてしまった私と
   逝ってしまったアンネの亡骸だけとなった。


(105) 西 2022/02/16(Wed) 2:32:54

【秘】 ピアニスト イングラハム → 患者 アンネロズ



   二人きりになった病室。
   君がいつも用意してくれた椅子に座り
   僕は冷たくなった君を見つめる。

   涙なんて、流さないよ。
   君に余計な心配をかけたくないからさ。


   麻痺すら覚える意識を振り絞り
   僕は震えた声で彼女に語りかけた。


(-113) 西 2022/02/16(Wed) 2:47:16

【秘】 ピアニスト イングラハム → 患者 アンネロズ



   「ねぇ、アンネ。

    今日はさ、海に行こうとしていたよね。
    今の季節はあんまり人がいないからさ。

    外に慣れない君も安心して楽しめるかなって
    そんなふうに考えてたんだ。

    それに、君のために練習した曲を
    君に披露するのも楽しみだったんだ。
    失敗するかもしれないって不安だったけど
    君の前なら笑って許してくれるかもって
    不思議と緊張も無くなっていた。

    本当に僕は、君の事ばかり考えていたんだ。」


(-114) 西 2022/02/16(Wed) 2:48:41

【秘】 ピアニスト イングラハム → 患者 アンネロズ



      ─────────



(-115) 西 2022/02/16(Wed) 2:49:50

【秘】 ピアニスト イングラハム → 患者 アンネロズ



   「僕は...君に謝らないといけない。

    僕が君の事を...君の病気の事を
    怖がらずに聞いていればよかったのに。

    僕のせいで、君に一番大切な事が言えなくて
    一番大事な時に、傍にいられなかった。」



(-116) 西 2022/02/16(Wed) 2:50:41

【秘】 ピアニスト イングラハム → 患者 アンネロズ



   「信じてもらえないかもしれないけどさ。

    僕は......君が好きだったんだ。
    君が好きで、誰よりも大切で。

    僕はずっと、君に傍にいてほしいと
    そう思っていたんだ。」


(-117) 西 2022/02/16(Wed) 2:51:41

【秘】 ピアニスト イングラハム → 患者 アンネロズ




      ─────────



(-118) 西 2022/02/16(Wed) 2:52:25

【秘】 ピアニスト イングラハム → 患者 アンネロズ



    「ごめんね。こんな僕で.....本当に...。」
    
(-119) 西 2022/02/16(Wed) 2:54:10

【秘】 ピアニスト イングラハム → 患者 アンネロズ



    静寂の病室。

        僕は永眠る君に誓いの口付けを重ねる。



(-120) 西 2022/02/16(Wed) 2:55:59

【秘】 イングラハム → 患者 アンネロズ




    大丈夫、僕は泣いてないよ。

    君を失ってしまった哀しみが
    少し目に染みてしまっただけなんだ。**




(-121) 西 2022/02/16(Wed) 2:57:48

【独】 患者 アンネロズ

/*
最後のロル天才すぎてもう………もうだめだ……(語彙力
(-122) alice0327 2022/02/16(Wed) 3:00:58

【独】 患者 アンネロズ

/*
書き方とシチュエーションの作り方が好みすぎるのに
描写力とセンスで殴ってくるしなんかもう色々犯罪級にしんどい……。
(-123) alice0327 2022/02/16(Wed) 3:09:53

【人】 イングラハム



 ***

   アンネに別れを告げて病室を出ると
   外で待っていてくれた彼女の両親に


    「ありがとうございました。 」


   そう深々と礼をして私はその場を後にする。
   向かう先は病院の玄関出口...ではなく
   誰も通らないような外付けの非常階段で。


(106) 西 2022/02/16(Wed) 3:31:25

【人】 イングラハム




    私はコンクリートの壁を


          己の握り拳で殴りつけた。



(107) 西 2022/02/16(Wed) 3:32:45

【人】 イングラハム




   なにが『約束』だ。


   なにが『強くなくてもいい』だ。


   なにが『一緒に背負いたい』だ。


   なにが『僕が連れていく』だ。



(108) 西 2022/02/16(Wed) 3:34:10

【人】 イングラハム



   自惚れるな、惚れた女一人守れぬクズが。

   お前に出来ることなど何もない。



(109) 西 2022/02/16(Wed) 3:35:06

【人】 イングラハム



   アンネロズを失った痛みが魂を引き裂く。
   壁へとぶつかる怒りの数だけ
   引き裂かれた魂が更にバラバラに崩れていく。

   粉々に砕け散る魂が今更どの面を下げて
   彼女を愛しているなどと言えようものか。



(110) 西 2022/02/16(Wed) 3:38:25

【人】 イングラハム



   ゴン、ゴン、と不細工な音を奏でる度に
   耐えかねた拳からは流血が零れ落ちていく。

   あぁ、痛くない。痛くないよ。
   君が背負った痛みや、君を失った痛みに比べたら。


   すると胸ポケットから何かが
   血溜まりの上に落ちていった。

(111) 西 2022/02/16(Wed) 3:40:04

【人】 イングラハム



   それはチョコレート。
   アンネが私の為に用意してくれた
   甘くて美味しい、私の一番好きな食べ物。

   包みから落ちて血と砂で汚れたチョコレートを
   拾い上げて、それを口へと放り込むと

   甘くて蕩ける想い出の味を
   ざりざりとした鉄の味が邪魔をする。


   
(112) 西 2022/02/16(Wed) 3:41:58

【人】 イングラハム



   それでいて。

   このチョコレートは
   もう二度と、口にすることは出来ない。



(113) 西 2022/02/16(Wed) 3:42:31

【人】 イングラハム




   小鳥が囀り子供たちがはしゃぐ
   そんな長閑で平和な病院の何処かで


         一人の男が、慟哭を奏でていた。**


(114) 西 2022/02/16(Wed) 3:43:27
(n5) 2022/02/16(Wed) 3:46:34