【人】 陽は落ちぬ 夕凪>>25 編笠 「……大げさ。 それでも、夕凪は楽しみにしてる。 怪我してこないでよ、…急ぎすぎないで。 夕凪は、ただ。 こんな約束ができただけで、十分なんだよ」 小指を絡めただけの意味のない約束。 少年はなにに固執していたのか、今になってわかったような気がした。 編笠の"夕凪たち"に対する気持ちが聞きたかったのだ。 夕凪として聞きたかったのか。 夜凪として聞きたかったのか。 今となっては混ざってしまって明確にするのは意味をなさないだろう。 一度でも任せてしまいたくなったこの気持ちも。 一度でも隣を夢見た形にならないこの気持ちも。 あなたへの気持ちが泡沫のように消えてしまうのかは、この約束さえあれば不安じゃない。 "なれなかったこの気持ち"は、成熟する前に夢が覚めていく。 (26) toumi_ 2021/08/20(Fri) 20:50:23 |
【人】 陽は落ちぬ 夕凪>>26 編笠へ だから今この祭りの間だけは、 夕凪としてこの夏、ここにいる。 「お願いって、何? わざわざ改まって」 あなたの言葉を聞くために、ここにいる。 ――ねぇ、淡い初恋を話してくれるのが楽しみよ。 大切な思い出が存在したことが嬉しくて仕方ない。 今も思ってくれていたことに胸がいっぱいで。 本当に来ていたら、その手を掴んで、水に飛び込んでいたでしょうね。 お魚さんは、逃げちゃうのかしら、捕まっちゃったのかしら。 夜凪なら、きっとそうしたわ。あなたのことが好きだから。 だから私も、言葉があふれる前に体が先に動いてしまいそうね。 (27) toumi_ 2021/08/20(Fri) 21:05:45 |
【人】 陽は落ちぬ 夕凪>>32 編笠 たち 「『なんだか楽しみ、賑やかそうで。 もちろん伝えてあげるわ。 今の言葉、夕凪にはさっぱりわからないのに。 夜凪がずっと聞きたかった言葉だってすごく思うの。 男の子同士で伝わるものなんて、なんだか妬けちゃうな』」 伝わらないかもしれないけど。 全部勘違いかもしれないけど。 「『夢から覚めたら、―――』 夕凪たちの物語も、これから紡がれていくんだから。 私から夜凪たちに伝えることは、 」一生があれば、大抵のことは大丈夫ってこと ここには凪いだ波しかなくて。 何一つ紡がれていなかったとしたら。 未来に繋がる"それ"さえ、あれば。 夕凪たちは二人でいくらでも待てるよ、だから。 「「待ってるね、編笠。 夕凪たちはきっと、そう言うよ。双子だからわかるんだ」」 青い空に、朱い灯火に、黄色の太陽に、緑の山に。 忘れ物はもうしなくてすむように。 もし、なくしたものがあったなら。 一緒に探して、また、魚でも捕まえて帰りましょう。 思い出はいつだって、みんなが来るのを待っている。 (33) toumi_ 2021/08/20(Fri) 23:20:57 |
【独】 陽は落ちぬ 夕凪チリーン……風鈴の音が鳴ります。 「呼子ちゃんの話最近聞かないけれど、どうしているのかな」 「どう、なのかしら。私も連絡取れなくなってしまって知らないのよね。 モモチくんも分かれたときはとても小さかったから心配だわ」 「なんだか二人には同じ者を感じてたな、姉弟がいるって……感覚」 「あのさ、いつか会えると信じていながら そのまま会えずに終わっちゃったらどう思う?」 「突拍子もないけれど、そうね。 それは―――悲しいわ、ニュースを騒がす行方不明でも、殺人でも自然死でも。 あなたがいたことが嬉しかったって伝えるすべがなくなってしまうのが悲しい」 「それって僕は死んでもいいってこと?」 「何言ってるのよ、夜凪。私たちは一緒よ、思ってもないことを言わないの。 それで悲しむ人だって居るんだから。 そうじゃないのよ、死んで悲しいんじゃなくて会えなくなることが悲しいの」 「夕凪、きっと僕は。 君たちがいなくなったことが悲しくなると思う」 「それじゃあ、私は君にたくさん残していかないといけないわね。 さみしがり屋の弟を持つと大変ね」 (-51) toumi_ 2021/08/21(Sat) 14:34:14 |
【独】 陽は落ちぬ 夕凪チリーン…… 「お兄ちゃんから手紙来てた!」 「本当! ふふ、今年もちゃんと来てよかったわ。 電話でせかせばくれるけど、やっぱり忙しいのかしらね」 「夏は犯罪が増えるから忙しいんじゃないのかな」 「私たちより犯罪が大事? こんなこと言ったら迷惑かかるわね。 さっそくお返事書きましょう。 大好きなお兄ちゃんへ――あなたより魅力的な男性が現れないです。 どうすればいいのかな? 私の心を奪ってやまないのです。 だから夜凪と同じように人間観察をよくするようになりました」 「夕凪、それ本当に送るの……? じゃあ僕も、お兄ちゃんにラブレター書こうかな。 お兄ちゃんへ。……添木くんみたいな黒髪の方がやっぱりモテる?」 (-52) toumi_ 2021/08/21(Sat) 14:35:52 |
【独】 陽は落ちぬ 夕凪チリーン…… 風鈴の音が鳴ります。 「雪子おばさんに教わったパンナコッタよ、夜凪!」 「夕凪慣れない料理は―――」 「私の向上心を叩き潰すのはよくないわ。 雪子さんが6割つくったから味は平気よ」 「味噌汁ですらちょっと味付けぶれてるじゃん……。 ちゃんとはかってさ。細かいところ面倒くさがらないで。 どうしてそうなるのかを理解をするのが上達の一歩だよ」 「几帳面ねそういうところは。 夜長さんはなにしてもうなずいてくれるって言うのに。 晴臣くんもよ! 私の作る料理美味しいって言ってくれるわ!」 「僕の料理の方が数秒美味しいって言うの早いよ」 「言ったわね。 今度どっちが美味しいかって言わせる勝負をしましょう。 お菓子作りならまけないわ!! 雪子さんの味で二人を落としてみせるんだから」 ▼ (-55) toumi_ 2021/08/21(Sat) 14:46:39 |
【独】 陽は落ちぬ 夕凪「たまにはさ、……僕に美味しいもの作ってよ夕凪」 「何か言った? 夜凪」 「なんでもないよ。 その場で感覚で生きている夕凪が好きだなって思ったんだ」 「あら、私も。 どんなときでも几帳面でみんなを見ている夜凪が大好きよ」 「……」 「……」 「「ふふ。 知ってる」」 (-56) toumi_ 2021/08/21(Sat) 14:49:26 |
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