「……ああ、そうだよな」

色々なものを察して頷く。ほぼ確信として抱いていた思考なのだ、察する材料自体は十分に足りていた。
同時にあなたの言うそれがあなたにとっての精一杯であると思っているのだから、嬉しくなる。

感じるべきではない痛みなど理解しないに限るのだ。だから、あなたがそれを言い出さなかったことが嬉しい。

「お前の思うようにしてくれたら、俺はそれでいいよ。……あ、と、苦しめて殺すっていうけど、そもそもそこまで長く苦しむかはわからねえよ？っほら、苦しくない殺し方をしてくれるやつとかいるかもしれないじゃん。テレベルムとか……シトゥラみたいに、さ」

自分の安心のためかあなたを宥めるためか抱きしめようとする。はぐはぐ。

『なんでだろーな？なんでだと思う？ヒントは俺の装備している電子機器！』

全身に色んな電子機器を装備している男だ。きっとどこかのカメラとかを覗き見たのだろう。

『おう、すぐ行くわ。お前のサイズ分からないけど俺のサイズならまあ着れるだろ。部屋に行くまでくらいは問題ないと思う。……あーお前のびしょ濡れ姿楽しみー♡』

最悪のキャッキャをしながら中庭へ向かう。びしょ濡れ姿を見たいだけじゃないか？


/*わーいじゃあいただき！よろしくお願いいたします！

「おっけー任せろ。投票先はシェルタンであってるな」

再確認。委任されたのにうっかりサルガスに投票するなんてミスはあってはならないので。

「丸投げできない処刑って時間が嫌でも来るんだ、それ以外で負荷を軽くできるならいくらでもやりゃいい。……いやー俺占い師じゃなくてよかったーその辺の悩み諸々すっ飛ばせる♡」

あ！最悪の発言だ！なおわざと明るく言っている。

手に伝わる凹凸に気付きはするものの、今は重要ではない。ムルイジが電子機器を狂わせることもない。
泣いている間、好きなだけ泣かせ、ハンカチの湿った面を変えたり相槌を打ったりしていた。が、こちらを見る目に気付いて。

「……どう、なのかしらね」

静かな声。それは冷淡ではないが、荒立つものを隠すものでもない。

「前、聞いたわよねバーナード。アタシに、経験者かって。そうよ、アタシ結構ババアだからね、一度前に参加したことあるわ。
…………アタシ、その時も同じだったわよ。怖いし苦しいけど、やりたくないけど、……こうなの」

ふふ、と自嘲混じりに笑う。茶化すような誤魔化すような笑みでもある。

「やれちゃうのよ。いつも通り。直後にカウンセリング受けても、A判定貰えちゃうのよ。……アタシ、薄情なのかしらね。
……心配してくれてありがとう、でも、だから、いいのよアタシのことは」

「薄情なんてことない、」

どこかあなたの言葉を遮るように声を上げる。

「薄情だったらこうして俺の様子を見に来たりビービー泣いてる情けない男をあやしたりしねーよ。……さっきムルイジ俺に『震えとかが先に来るタイプ』って言ったじゃん、ムルイジは『そういうのが表面化しないタイプ』ってだけなんじゃね？」

怖い、苦しい、やりたくない。
そういった情が薄いという意味では確かに薄情かもしれないが。
あなたが持つ善性に近い優しさと配慮は情に満ちたものだと思うから。

情けなさを自覚していた男はあえておどけるように笑う。

「……ってか何、意外と歳いってんの？じゃあさっきの泣きついたのも許される？」

「あっ……てる……そうだ〜、そのとおりに投票するよって言いに行かなきゃ……あ〜あといっぱいはなしすすんでる〜……あ〜〜あ〜」

アーになった。

「バーナードいまから役交換して」
無理なこと分かっていってる。

言葉を遮られたことそのものよりも、言葉に気圧されたように声を止める。

「情けないとは思わないけど、」

開いた口から出た言葉は、まずはそれ。
論点がそこではないと理解しているから、口を閉じ。もう一度、考えるように視線を色んな方向に移ろわせ。

「表面化しない……そう、だったら、いいわね。……分かんないわ、アタシ、自分のこと。分かりやすく悲しめない自分が悲しい。平然としてられる自分が……一番怖いわ」

しない、から、分からない。笑う息と共に、溢すように吐き出す。ゲームへの拒絶ではないが、弱音といえば、そう。ほんの少しだが。
けれど戯けられれば、ぱっと顔を上げて、片眉を釣り上げるようにして笑い。

「なによ今更。そーよ、余裕ある大人なんだから泣きつかれたってどーってことないわよ。好きなだけ泣きつきなさい」

「話がめっちゃ進んでてビビるよなー、俺もう返事してからほとんど見てないわ」

アーになっているのを見てしれっととんでもないことを言った。だって……これ以上俺の考察伸びないし……。

「役交換できたらよかったんだけどなー、残念残念。交換できない分必要なら甘やかしてやっから許して♡」

羨ーにもなった。

「何だよ甘やかすって〜宿題全部やってくれるとか？」
そんなにあるのかというと、ある。

『なんだかメタな内容が見えた気が致しますが 私は触れません』

既に言っておりますがそれはそれ。これはこれ。

『お待ちしておりま

･･･いい性格しております』

因みに髪は解いております。多少しぼりました。
ですが服はもう、それはそれは。

というわけでまだ浸かっております。寒いです。

「はーいタオルと着替えのお届け物でーっすうわ本当びっくりするくらい濡れてる」

明るく笑いながらやってきたしあなたを発見しての第一声も最悪だ。
とはいえバスタオルを３枚も持ってきているし着替えはフリーサイズのものを持ってきている。

「頭拭くのと身体拭くのとでとりあえず２枚使うかなって思って。どうよこの配慮？」

貴方が狼であれば、もしくは、他の犠牲者がでてしまえば、これは裏切りだ。それでも僕は、何より大事なものを守りたい。

ぎゅ、と此方からも抱きしめる。
まるで、縋るように。

「痛みを最小限にしても。…心は守れないでしょう。
僕は、其方も恐ろしいんです。貴方の命も、貴方の心も、侵されてほしくないのに」

静かに、祈るように呟く。

「…どうか無事でいてください。僕を、置いていかないで」　

「わーいやったームルイジ様だー。27歳の若輩者にはありがたすぎて涙出ちゃう、さーんきゅ☆」

あえてじゃれつくように肩を組もうとするし、失敗したらしたでそのまま背をばしばしする。

「死への恐怖とか、生存本能とか。俺覚えたてだから、その辺の感情コントロールが上手くいかないかもしれないけど……それはそれで悪くない気がしてきた。ムルイジの分まで表出してるって考えればちょっと恥ずかしいけど恥ずかしくないし。
少なくともこのゲーム期間内に限ってはお前の分まで悲しめるし、お前は怖くないぞ優しいぞって言い続けられるからさ、……ビービー騒ぐ俺がお前自身のことを考えるきっかけになりゃいいなって思うよ」

「宿題全部ってどれくらい量あるんだよお前。協力はしてもいいけど俺の筆跡じゃバレるだろ、最終的にお前が書く必要があるんじゃね」

まあ筆跡が見えるタイプの宿題なのかは分からないが。マーク式なら楽だしね。

「後は抱きしめてよしよししてやったりとか？逆に宿題以外でどう甘やかされたいかとかある？」

「もうぐっしょぐしょのハンカチしかないんだからね、全く」

じゃれつきだと分かっている。ので、そのまま好きにさせた。
なんの変哲もない、ムキムキでもなく細すぎるわけでもない男の肩と背だ。

「…………自分のためだけに泣きなさいよ…」

次いだ言葉に対する返事は、唖然とか呆然とか、そういう表現をするのに相応しい声色。
じわじわと、戸惑うようなそわつくような、そんな熱が胸中に広がる。

「じゃあ、幾らでも慰めるわ。次からはアナタを訪ねるときはタオルを持っていくし、泣き止むまでそばにいてあげる。
……そこまで言うからには、泣き喚くところ、隠さず見せてくれるんでしょ？」

縋るような抱擁に応えるように腕の力は強く、強くあなたを腕の中に捕らえる。
大丈夫だと言ってやることができない自分にできる最大限の意思表示だ。

「……置いていかねえって。お前を寂しがらせる時間作りたくないもんよ。それに……たくさん放置したら、他のところに熱求めに行っちまうんだろ？」

抱きしめていた腕を緩めて、片腕だけを背から腰をなぞるようにして滑らせる。腰を抱くようなしぐさ。

「まだお前の熱知らないのに。他を求められたら悔しーじゃん」

「ええ 私もびっくりでございます 困っております」

本当にそうでございます。

「そして流石にございますね バーナード様
私シェルタン とても とても 助かりました･･･」

ええ こちらも本当に。

ゆっくりと立ち上がりますが･･･あ 重いですね。
ざぱぁ！！とお風呂にでも入っているかのような音。

「ありがとうございます」

ですが それはまぁ置いておきます。先にタオルを下さい･･･。

「何シェルタンお前噴水と一体化してた？新しいオブジェか何か？」

（音が）デカ過ぎんだろ……。
噴水から少し離れたところにバスタオル１枚、その上に着替え……を置いて、残り２枚を持ってそちらへ。１枚をとりあえず差し出して、もう１枚もすぐ渡せるようにしておく。

「それで理解不能なシーンや観客に何を伝えたいのか分からないシーンが多数存在していたと。納得が行った。
　とはいえ私としては、ここまで理解不能にするのは逆に高度な技術なのでは？と思えてきてならないが」

サルガスは別に犠牲になったつもりは無さそうだ。その代わり、キファという新たな犠牲者を増やしてしまったのだが。

「……ちゃんとした名作映画も見てみたいと思う。」

バーナードの方を見る。この期に及んで尚もクソ映画が見たいとは言いださないので安心して欲しい。

「･･･かなり長い間 浸かっておりましたので」

一体化したかもしれません。オブジェかもしれません。
どうして直ぐに助けを呼ばないんですか？？

･･･どうすればいいか分からずにかたまっておりました。

タオルを1枚受け取りまずは髪から。
ああ〜 吸水性抜群でございます 最高でございます！！

次に服を脱いで濡れた上着等を噴水のふちに置き、身体を拭きます。
全部は脱いでいませんからね 大丈夫でございます。

「ア〜……らくができない……」
カストルは、かなしんだ。

「オレそんな……ち〜ちゃい子供じゃないし！
う〜〜ん………………考えとく！またあとで！」
今はあんまり思いつかなかったので、もういい時間だし、と通信を切った。きっとすぐロビーででも会うことになるだろうが。

一応他人が来ないかだけ確認しつつ身体を拭いている様子も時折伺いつつ。適宜タオルを渡したり着替えを渡したりしていく。

「髪はあとでも乾かせるからとりあえずは身支度、だな。……とはいってもなぁ……」

今日の処刑対象があなたであることは、知っているので。
中庭を離れる時に、一言だけ質問を投げかけたことだろう。

「なあ、シェルタン。怖くねえの？」

というわけで色々飛ばして動くことは叶いました。
噴水から脱出です。わ〜

髪のことも、処刑のことも笑顔で返しました。
何も言いません、内緒です。

と思いましたが、一言だけ。

「･･･怖いですよ」

それは本音。
小さく零しますが、その表情は笑顔のままでした。