【妖】 生贄 セレン何も……今、何も知らないぼくのまま、 あなたを殺してあげるなんて嘘を言えないから。 [ 狼を撫でる手指はきっと震えていて、 堪えたものを溢す音は傍らだけに響く小さな声で。 吐息を混じらせ寝台から滑り落ちた。 目の前の化け物と称する綺麗な主に苦く笑い、 傷の残る掌を差し出すことはもうせずに。 胸の前で緩やかに振って去ることを知らせつつ ] ($8) pisca 2019/04/13(Sat) 3:52:51 |
【妖】 生贄 セレンここにぼくの居場所がないことは分かってる。 だから、教えてくれる時がくるまでか、 それとも貴方がぼくに価値がないと思う時まで。 ここに……いさせてください。 ほんの少しの間だけでもいいから、 ひとりぼっちじゃない夜を過ごす夢を見てみたい。 [ 要らないと告げられることに怯えはあるけれど。 この双眸も、髪も、特別なものだと説いた古城の主へ。 泡沫だと知る夢から醒める日までの願いを託し、 そっと撫で、狼を誘い、裸足は扉へと滑らかに歩んで ] ($9) pisca 2019/04/13(Sat) 4:20:23 |
【妖】 生贄 セレン……おやすみなさい。 紅茶を飲んでくれて、ありがとう。 [ 扉を開けて振り向き、頭を下げる。 寒さに強張る表情を髪で隠して、悟られないように。 部屋に戻る帰り道は狼任せで先導を任せ、 あとに続く足音はぺたぺたと音を立ててゆっくりと。 上着を借りたままだったと気付いてももう遅く、 それに包まれるようにして誂えられた部屋へと戻る ]** ($10) pisca 2019/04/13(Sat) 4:27:31 |
【妖】 生贄 セレンねぇ [ 囁きを灰色の狼へ落とす。 狼を恐れることなく寄り添いながら双眸は遠くへ、 居場所のない城の中を歩く足音も、消えそうな程に儚く。 言葉を理解するとは知らないまま、 部屋へ辿り着くまでは問いの言葉を宙に浮かせていた。 勿論、狼を部屋から追い出すことなど在ろうはずもなく、 招き入れ、クロゼットの前へと歩きながら ] ($21) pisca 2019/04/13(Sat) 18:15:35 |
【妖】 生贄 セレン化け物だから殺すだろうって…… ニクスさまはぼくがそう思うって考えたのかな。 [ それとも生き残るためになら、だろうか。 生き延びるために何でも―― 想像し得る限り、どこまでもする心算だった。 齟齬は恐らくそこなのだろう。 贖罪のために殺されることを望んだ彼と、 この手で誰かを殺すことまでは浮かばなかった、 世間知らずで無価値だった己との、絶望的な差 ] ($22) pisca 2019/04/13(Sat) 18:17:00 |
【妖】 生贄 セレンもしぼくが彼を殺せて、ひとりになって。 それからきみはどうなっちゃうの……? [ 古城の主が消えたと知れれば大人が群がり、 そこに富があるならそれを得ようと、 贄の代価とばかりに奪いに来るのは想像に難くない。 居場所がない子供など大人にとって無力なものだろう。 けれど村の悪辣さを知り得なかった夜の怪物に、 それを知らせることなどはしないと決めている。 眼と、声と、たったそれだけ。>>$11 それだけが誰かに似ているらしい我儘な生贄に、 あんな忠告をする優しい主には決して。>>$16 どうでもいいと投げ捨てられるならともかく、 これ以上、塵であっても彼の重荷となるのを避けるために。 少なくとも、今それを伝えても意味がないのだと、 忘れられないと溢した想いの重さを知れば当然で>>$19 ] ($23) pisca 2019/04/13(Sat) 18:20:40 |
【妖】 生贄 セレン森に帰るのかな。 それともあの人が死んじゃったら、 きみも死んじゃったりする……? [ 借りた上着を脱いで皴を伸ばし、 衣装掛けに吊るして選んだ夜着は一番シンプルなもの。 バスローブも脱ぎ捨て夜着に袖を通して、 それでも未だ夜の空気は冷たくて小さく震えながら] ($24) pisca 2019/04/13(Sat) 18:21:47 |
【妖】 生贄 セレンおいで。名前を、あげる。 終わりまでの間だけだけど、きみの名はね…… [ 柔らかな寝台へ滑り込む。 燭台の灯はつけたままベッドの隅に寄って、 狼を空いた場所へと誘って、その首に腕を巻き付けて。 毛皮に顔を埋めて無防備に瞼を閉じた。 人ではない気配も、鋭い牙も恐れないどころか、 その感触に安堵の息を漏らし、稚くくすくす笑う ] ($25) pisca 2019/04/13(Sat) 18:23:03 |
【妖】 生贄 セレンクー、とかどうかな。 ぼくが唯一、触っても逃げなかった犬とおんなじ。 [ 牧羊犬と一緒にされては狼も堪らないだろうけれど、 過去で唯一の癒しだった存在と重ねて瞼を閉じて ] ($26) pisca 2019/04/13(Sat) 18:32:17 |
【妖】 生贄 セレンクーが喋れたらよかったのに。 そうしたら、もっとあの人のこと知れたかな。 ぼくが、殺す勇気を持てるくらいまで。 [ 湯に溶かした薔薇の香を漂わせ、 狼の毛皮に顔を埋めて瞼を鎖し溢れる何かを堪えながら。 眠れそうにもない夜を、取り留めのない会話が続く。 不安を少しずつ埋めるかのように。 過去を遡り語る独白は殆どが傷痕でしかないけれど、 少しだけ救いがあるとしたら同じ生贄の子たちとの交流で。 狼の呼気が寝息と重なるのは陽が月を熔かす夜明け前。 変わり者の子供の話に到ろうとして、眠りに落ちた ]* ($27) pisca 2019/04/13(Sat) 18:33:03 |
【妖】 生贄 セレン[ 陽に透ける金の髪。 生贄の意味も知らない子供の目の前で、 柔らかな髪を風にそよがせて微睡む誰か。 眩くて、遠い、鈴音を知っていた。 誰もが厭った異色の瞳で見ても、 ただ笑うだけだった変わり者の子供。 売られた時から捧げられるためだけに生かされて、 順番をただ待つ子供の中ではただひとりだけ、 陽のように暖かく、眩かった誰かの夢を ] ($29) pisca 2019/04/13(Sat) 20:50:39 |
【妖】 生贄 セレン……ああ、でも。 [ 夢だと知るふわふわした感覚の中、 眩い誰かは唇を動かして己の記憶を刺激する。 彼女がおかしそうに綴った言葉を艶やかに。 何故か忘れるべきだと塗り潰していた思い出を鮮烈に。 “ わたしたち おんなじね ” 何が、同じだったのだろう。 祝福されたかのような暖かい髪の色。 空を映す瞳を持つ彼女が順番を迎える日に、 届かないと知りながら手を伸ばし聞いたことがあった。 笑い方を――心の動かし方を。 周りの全てから気味悪がられてひとりきりの子供に、 悪戯げに同じだといった、その真の意味を ] ($30) pisca 2019/04/13(Sat) 20:54:18 |
【妖】 生贄 セレン[ ―――彼女の答えは聞けなかった。 自ら探せと言い残し、 順番を迎えた彼女が消えたあとはまたひとりきり。 名か、境遇か、それとも他の何かだったのか、 存在感だけが残ってその幻想は夢で語りかけてくる ] ($31) pisca 2019/04/13(Sat) 21:01:28 |
【妖】 生贄 セレン“ 大切なものは、なに? ” [ 幻想が織る、未来と過去と願望と拒絶の狭間で。 掴めそうな何かに無意識に手を伸ばす ] ($32) pisca 2019/04/13(Sat) 21:12:07 |
【妖】 生贄 セレン ― 翌日 ― [ 陽が窓から差し込んで暫く。 目許を濡らす舌に身動ぎを幾度か繰り返し、 漸く眠りから浮かんだ意識で陽を眩しげに見る。 眼が痛かった。 寝際にカーテンを引いた記憶がなく、 差し込む陽光に目の奥まで刺された痛みに蹲る。 無意識に伸ばした手で目を覆えば少しは楽で、 見守る狼に手を伸ばし頼りながら起き上がり、 カーテンを引いて光を弱め、そこで漸く息を付く。 淡い光源でなければ傷める眼は相変わらずで、 こんな瞳のどこが特別なのか己では理解できない。 陽で傷めるだけでなく焼かれてしまう主との差は、 自分で思うよりかは深刻なのだろうとは思うけれど ] ($33) pisca 2019/04/13(Sat) 21:17:13 |
【妖】 生贄 セレン[ 誂えられた服に着替えて、 その上に外套を羽織ってフードを目深に。 髪も瞳も隠すそれは如何にも陰鬱そうだったが、 今まではこれが己にとって身を護る盾だった。 いまも、きっとそう。 ] きみもお腹がすくよね、 ありがとう、夜に一緒にいてくれて。 [ 扉を開けて狼の自由を促して、 用意されていた靴を履いて己も部屋を出る。 空腹が胃を痛ませるが今更そんなものには慣れていた。 麺麭のひとつやふたつ城の食料から貰っても怒られまい。 主にとってこの身体は殺されるまで継ぐモノで、 その価値が失われる日がくるまでは生かして貰える ] ($34) pisca 2019/04/13(Sat) 21:19:25 |
【妖】 生贄 セレン[ 足は自然と、空腹の訴える先ではなく。 広い城内でまだ点在する空き部屋のひとつ。 鍵のかかっていないいくつかの部屋は、 過去に訪れた子供たちの部屋でもあっただろうから。 確かめたかったら探して見せろと>>$11 まるで突き放すような彼の言葉通りに。 ひとつひとつ、扉の中身を確かめて覗いていく。 男、女、それぞれに価値を見出され、 捧げられ続けた子供たちの、僅かに残る痕跡を。 辿り着く先がどこかは既に知っている。 これは時計の針が鍵となる部屋の向こう側にある答えを、 覗く勇気が出るまでの梯のようなものだろう ] ($36) pisca 2019/04/13(Sat) 21:31:04 |
【妖】 生贄 セレンクー、……ぼく、ね。 [ 狼がいてもいなくても話し相手など彼だけで。 背後に語り掛ける言葉の抑揚はなく、感情を殺したまま ] 誰かが死んでもどうでもいいものだと思ってた。 ……でも、きっと、違ったんだね。 ($37) pisca 2019/04/13(Sat) 21:38:48 |
【妖】 生贄 セレン[ 人を殺したことがないから違うと諭す彼が、$13 己に殺してほしいと願う裏腹さに瞼を半ば閉じて。 薄暗い部屋に馴染んだ視界は灯がなくとも部屋を見る。 あてがわれた部屋と間取りはそれほど変わらず、 家具も片付けられているだけの痕跡の消された部屋。 ここにはなにもない。 子供たちが残した何かがありはしたけれど、 衣装棚の隅に宝物のように隠された金貨が1枚だけでは、 何もしることはできないと苦笑して ] ($38) pisca 2019/04/13(Sat) 21:57:19 |
【妖】 生贄 セレン[ これは返すべきだろうか。 それとも貰っていいものなのだろうか。 見た限りでは普通の金貨にしかすぎず、 自分の物ではないそれを懐に入れる気もおきず。 けれど、彼を訪ねる理由にはなった ] ($39) pisca 2019/04/13(Sat) 22:02:42 |
【妖】 生贄 セレン斜陽の頃なら、起きているかな。 [ それとも土足で暴きにいくべきか。 未だ踏ん切りがつかない臆病さは独言に満ちて、 そっと溜息を重くし、部屋の扉を潜って階段を降りていく。 外を歩けば何か変わるだろうか、この沈む意識が。 記憶を辿るように歩いて何かを見つけることができれば、 誰かの何かが救われたりするのだろうか。 足は食堂ではなく薔薇の生い茂る庭園の中へ。 陽に香る薔薇の匂いは濃密で、 手入れをするには子供の手には余る広さに映る ] ($40) pisca 2019/04/13(Sat) 22:23:46 |
【妖】 生贄 セレン…… [ 赤い、紅い、痺れる程に濃く香る薔薇。 葉が多くを吸って枯れる花弁も目に付く庭園に、 ぽつんと立って改めて思い知るのは独りだという意識で。 空腹が限界を迎えるまで思考を巡らせた。 どうせ陽が僅かでも傾くまでは動きは鈍いままで、 やることなどそれきりしかできない。 過去の扉を開く時計の針を得る勇気を得るまで、 手間のかかる薔薇の庭園が残されてある意味を。 なにより、“おんなじ”の意味を、幾度も、幾度も ]* ($41) pisca 2019/04/13(Sat) 22:39:25 |
【妖】 生贄 セレン[ 森の影が伸びる頃合いまで、 思考に沈む間の手は余計な薔薇の芽を摘み、 荒れを緩やかに押し留めようと従事していた。 陽は白い肌を赤く焼く。 それに気付かない程に幾度も繰り返す思考は、 子供部屋に残された痕跡のいくつかを中心としている。 忍ばされたナイフを片付けなかった理由。>>$50 見逃されたのか、残されたのか、 描かれた絵の笑顔の意味とその心情も。 涙の滲む羊皮紙には息を詰まらせた。 これを見たのだろうか、彼は。 見たうえで彼は子供たちに望み続けたのだろうか ] ($57) pisca 2019/04/14(Sun) 1:15:07 |
【妖】 生贄 セレン[ 考えても答えを持つのは夜の名を持つ彼だけで、>>$56 その名を名乗った彼を思い出し、唇をきつく噛み締める。 そこまで繋がれば己の鈍い頭でも理解はできた。 明らかに同じ村の出だろう奉仕を仕込まれた女の子。 似た名前と、彼女だけが持たされた金貨のお守り。 愛されるべき子供の行方はここで、 ここはその女の子と、夜の怪物の居場所だったのだろう ] ($59) pisca 2019/04/14(Sun) 1:24:52 |
【妖】 生贄 セレン[ 食堂で手を洗って、 空腹を今更思い出し林檎を一つ手に取った。 森を探して食料を得る時間は思考に奪われ、 麺麭を焼くにはもう陽は落ちて、 焼きあがるまではお腹が持ちそうにもない。 それに、音色が途絶える前に。 裸足と違って乾いた音を響かせて、 ピアノに誘われ部屋へと戻り扉を叩く。 与えられた部屋なのに客人のように。 誰かのための部屋だったここに慣れてはいけないと、 檻を課した無意識を発露しているのには気付かずに ] ($62) pisca 2019/04/14(Sun) 1:37:27 |
【妖】 生贄 セレンおはよう、ニクスさま。 [ 顔を覗かせ、唇だけが覗く格好で“笑う”。 左手にはぴかぴかの赤い林檎がひとつ、 右手には棘を払った薔薇一輪を挿したグラスがひとつ。 ピアノの傍には寄らず薔薇を飾るために、 窓辺に寄ってそこにグラスをことりと置いてから ] ($63) pisca 2019/04/14(Sun) 1:43:40 |
【妖】 生贄 セレンお部屋をたくさん見て回ったんだ。 あなたのことを描いた絵も、手紙も、ナイフも、 残していたのはわざとだったりする……? [ 問い掛けは直球で、 けれど言葉遊びのように答えを期待するでもなく。 フードを脱ぎ顔を覗かせ小首を傾いで見せながら、 外套の内側に入れていたコインを掌に乗せ差し出した。 あの子のお守り。 知らなかったのならこれを持つに相応しいのは、 己なんかではなく、彼の方だろう ] ($64) pisca 2019/04/14(Sun) 1:58:05 |
【妖】 生贄 セレンそう……? でも、これは誰かに想われた子供の証だから、 ぼくが持っていていいものでは、ないかな。 [ 掌の上の金貨は受け取られずに、 落ちた言葉に白金の髪を不思議そうに揺らす。 美麗な顔立ちを顰める様子に、>>$67 思い出に浸ることすら苦痛なのだろうと察しはした。 けれど日誌に綴られた金貨の正体は己から最も遠い物で、 己の元では思い出を穢してしまうとでも言いたげに。 冷たい指を動かすのを視界の端で捉えながら、>>$68 とりあえずは金貨を楽譜台の上へと置き去りにして、 彼を未だ知らないからこそ深い溝を自覚し、苦笑する ] ($80) pisca 2019/04/14(Sun) 15:22:45 |
【妖】 生贄 セレンあの子は太陽のようで眩しいひとだった。 あんまりはっきり思い出せないけれど、 ぼくと似てる場所なんてどこにも…… [ 男にしては細くて高い声音は少し似ているか。 自声に関しては認識が歪んでいそうで、 その想像すらも烏滸がましいと思える眩い陽の少女。 シスターに心配されてお守りを貰うだなんて、 双眸の物珍しさと年齢の都合だけで捧げられた己には、 知りたくもない現実を突きつけられたかのよう。 生贄としての立場は“おなじ”でも、 そこにすら居場所はなかったのだという現実を ] ($81) pisca 2019/04/14(Sun) 15:27:26 |
【妖】 生贄 セレンううん、ごめんね。 貴方を殺す勇気はまだ出ない。 貴方を殺してもいいなって思えるくらいに、 早くなれたら……楽にしてあげられるのにね。 [ 故に問い掛けには、>>$69 失望を伴うだろうとしても素直に答えた。 拒絶され続けた世界で最後と信じた場所を失い、 そのまま繋げられると思えるほどには、 未だ彼を思いやろうとする感情には足りない。 最初に触れられてなければ、 この手を穢す躊躇いはなかっただろうか。 誰もが疎んだ異色を躊躇いなく覗かれて、 何かから一瞬でも逃れられたのだと安堵しなければ。 考えても結論などは出る筈もなく、 きっと、大人をひと匙混ぜた曖昧な笑いを浮かべて ] ($82) pisca 2019/04/14(Sun) 15:41:16 |
【妖】 生贄 セレンううん大丈夫、でもありがとう。 林檎は好きだし、これひとつで足りるよ。 [ 空腹に慣れているからこそ、林檎ひとつで十分。 そう伝えて足は自然とピアノの椅子の傍らへ。 彼の視線から逃れるようで距離を縮めたのは、 もう一つ言葉を足す反応を間近で見たいから ] ($83) pisca 2019/04/14(Sun) 15:59:18 |
【妖】 生贄 セレン……あなたの、食事は? [ 人間は林檎で足りると伝えたのだから当然のように。 血を啜ると噂に聞く夜の怪物に尋ねる言葉は、 どうしたって残酷に響くのだろうと想像しながら。 紅茶では到底、大人の身体は足りないだろう。 見ていない場所で何かを食べているのならその理由を。 陽が落ちて夜に満ちた室内では異色の双眸は真っ直ぐに、 まるで人のような男を射抜いて、静かに問いかけた ]** ($84) pisca 2019/04/14(Sun) 16:01:22 |
【妖】 生贄 セレンあなたはぼくが幼くて、 誰かが愛してくれるかもしれない。 諦めは早いよ心配してくれたでしょう……? ……でもね。 それを知ることがあったらきっとここに居なかった。 陽に弱くてろくに陽射しを歩けない、 瞳はちぐはぐで、互いの視力もよくはない。 抜け落ちた色の髪も陽の下じゃただの白髪で、 要らないってずうっと言われ続けてここに送られて、 ここがなくなったらどこにも行き場はないんだ。 ($91) pisca 2019/04/14(Sun) 22:29:02 |
【妖】 生贄 セレン[ 責める口調ではなく訥々と事実だけを重ねて、 それこそ本心から不思議そうに。 食事をとらずに顔色を悪くしていった彼が、>>$85 人になりたかったらしき彼が、 もし、今も……いまも、食べていないなら? ただの想像でしかない。 この問いが彼の逆鱗に触れるのかもしれない。 けれど、自分は彼の事が知りたかった。 知りたいからこそ惨めな過去を伝えた上で言葉にし、 それこそ“期待”するのならと、狡く ] ($92) pisca 2019/04/14(Sun) 22:31:26 |
【妖】 生贄 セレン……あなたのいちばんたいせつなものって、なに? [ 己の過去にはなにもなかったからこそ。 その疑問を彼へ、そっと、柔らかく投げかけた ]* ($94) pisca 2019/04/14(Sun) 22:44:35 |
【妖】 生贄 セレンそーだね、多分、違うんだと思う。 あのこは誰かに愛される素質も、資格もあって、 ぼくはなにも無かったんだ、そういう違い。 同じ場所にいても違うなんて不思議だよね、世界って。 [ 慣れていることだ、これも。 故に憐憫を誘おうとしているわけでも何でもなく、 ただ事実だけを伝えているに過ぎない淡々とした口調で。 穏やかな笑いは崩れることなく、 子供らしからぬ諦めを宿し、笑顔は保たれたまま ] ($106) pisca 2019/04/15(Mon) 2:15:57 |
【妖】 生贄 セレンどれくらい待ったのかな? ……なんて、そんなことも知らないのに、 貴方にもう少し待って欲しいって。 自分勝手にも言えちゃうんだ、ぼくは。 ニクスさまが辛そうなのが凄くわかるのにね? [ 月のようだなんて綺麗な言葉に、>>$96 滲んだのは自己否定の言葉の羅列ではあった。 物心というものを知った頃から奴隷で、 否定され続け、やがて憶えて深く沁み込んだ記憶。 だからこそ睫を震わせただけで流して、 双眸を細めて言葉を受け取ったことだけを知らせつつ。 寂しそうな夜の怪物に己の醜悪さを伝えて、 日誌に残されていた少女の優しさと重ねる違和感を誘う ] ($107) pisca 2019/04/15(Mon) 2:22:15 |
【妖】 生贄 セレン[ 笑顔の仮面に何を隠しているのかは、未だ。>>$104 手を伸ばせば届く距離だからこそ、 想像でしか埋め得ない感情の行方を探るように ] ……ぼく、頑張るから。 [ 指を伸ばして撫でるように触れたのは歪に笑う頬へ。 過去の記憶を振り返ってもたったひとつだけ、 己が唯一知る他人からの優しい仕草を写して返す。>0:216 彼はきっと意識していなかっただろうけれど、 己が人に優しく触れられた経験は、これしかなくて ] ($112) pisca 2019/04/15(Mon) 3:29:50 |
【妖】 生贄 セレン[ 人のようになりたい怪物を―― 人を殺していないから怪物とは違うと諭す彼を、 殺せば己は何になるのだろうかと考えながら。 その思考の意味のなさに、すぐに気付いて散らす。 夜にしか生きられない月の子供は、 夜を失えば消えるしかないのだから答えは自明だ。 だからあとは死なない為に生きて来た己を殺し、 たいせつなものに縛られた夜を、 眩い陽へ還すための感情を産む時間を作るだけ ] ($113) pisca 2019/04/15(Mon) 3:36:00 |
【妖】 生贄 セレン[ 解放が、赦しが、殺すことなら。 そうしてもいいと想う感情とはなんだろう。 何もなかった己が抱いた疑問の答えこそが、 きっと、己のたいせつなものなのだろうと考えながら ] ($114) pisca 2019/04/15(Mon) 3:41:10 |
【妖】 生贄 セレンあなたが何であっても殺せるように…… 皆みたいに、思い止まらないよう頑張るからさ。 [ だから大丈夫と囁いて仄かに笑いながら。 何が大丈夫かを――その解釈を夜に託して、 大切なものを知らない子供らしく無邪気を装う。 そうすることくらいしか己にはできないのだから ]** ($115) pisca 2019/04/15(Mon) 4:16:11 |
【妖】 セレン強欲でも傲慢でも怠惰でもなんでも。 貴方があなたであることに変わりないし、 ぼくはそんなニクスさまが嫌じゃない。 今まで見てきた人間たちと同じだ。 たいせつなものがあって添って生きてる。 だから愚かだとは……思わないかな。 ちょっとだけお腹が空く貴方を前にしたら、 ぼくが……そう、 ぼくが 、悲しいだけ。[ 生贄を生贄として扱わないのなら己の価値は。 彼の幕を引くための従者か、或いはただの子供か。 それを尋ねてもいいのだろうか。 また、この手を払われたように、 問いをはぐらかされ、流されたなら……? 己ひとりでは怖くて出せない答えだった。 自分が何なのかを理解できないままに育った子供は、 曖昧な笑いを浮かべるしかできなくて俯き、 髪でそれを隠す狡さを以て壊れそうな何かを自衛する ] ($123) pisca 2019/04/15(Mon) 18:50:06 |
【妖】 セレンあなたなかの化け物は、ぼくが殺してあげるから。 心配しなくてもいいよ……いいんだ。 ニクスさまが飢えで苦しむことなんて、 “誰も”望んでいなかった……そうでしょう? [ 嘘は、言わない。 裏切りもしない。 ただ誓うようにして綴る言葉が、 己を罅割れさせて乾いた声音に変え大人びさせて。 彼の優しさを利用するようなものだろうか。 飢える苦しみを知っている。 けれど、彼の痛みだけは想像にすぎないからこそ、 彼を良く知るだろうし彼もよく知るセレスを匂わせる。 あの子は彼の怪物を赦していたのだろうから ] ($125) pisca 2019/04/15(Mon) 19:06:05 |
【妖】 セレン……我慢できなくなる前に、言ってね。 [ 選んだ言葉はごく軽く未来の約束に繋げるもの。 曖昧に濁されても心が痛まない自衛手段でもあるけれど、 彼にとってもこの話題を先に延ばせるのは良いことだろう。 急ぐ気はなかったのだから。 だから、今は、話題を柔らかく変えて ] ($126) pisca 2019/04/15(Mon) 19:08:19 |
【妖】 セレンぼく、ニクスさまに聞いてばっかりだね。 貴方が知りたいことって、ある? [ 自分のことを知りたがるものなど居なかったけれど、 他に話題にできるようなものは彼を傷付けるだろうから。 己には何もないと認識する痛みを無視して問いかけた ]** ($127) pisca 2019/04/15(Mon) 19:10:54 |
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