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【神】 三年 井上清春木桶以外の石鹸やタオルは自前のもので、 堀江くんの隣に座して体を洗う。 「今日はどこから攻める? 室内でも露天でも」 (G62) szst 2021/08/13(Fri) 15:42:41 |
【妖】 三年 井上清春「え〜、やらせてよ」 返事の前に、背中を泡が触れた。 背中を流しあったことは数えるほどしかないが、 いつになく押しが強い。 肩甲骨から背筋へ。肩から腕へ。首へ。 止められるまで体をなぞり続けた。 「お客さん、こってるところはありますか〜」 吐息が耳に触れる。 ($19) szst 2021/08/13(Fri) 17:36:17 |
【妖】 三年 井上清春わっ、と掴まった手にこころが跳ねる。 幾分か熱の増した瞳が捕われる。 「えっと……痛かった?」 へらりと笑い返した。 ($21) szst 2021/08/13(Fri) 19:13:50 |
【妖】 三年 井上清春するりと離れていく手に、 玩具を取り上げられた子供みたいな気持ちを抱いて、 引っ張られたタオルに気づくのはしばらく後だ。 「あ……。うん、わかった」 こくん、と頷いてタオルを渡す。 それから。 一人立ち上がり先へ行くこともなく、 あなたの支度が済むまで隣で待っていた。 やさしい拒絶にはっとして体の表面の熱は引いた。 というのに芯の部分では未だに燻り続け、 視線を送ってはそらしてを繰り返していた。 ($23) szst 2021/08/13(Fri) 20:34:15 |
【神】 三年 井上清春「どういたしまして〜」 てちてちと湿ったタイルを鳴らして後をついていく。 湯気が霧のようにたちこめて、説明書きも見ずに入った温泉は 体があったかぁ〜くなる湯 (G77) szst 2021/08/13(Fri) 21:18:46 |
【神】 三年 井上清春湯の温度は高くない。 むしろ長く浸かっても大丈夫くらいなやさしい温度なのに、 体の熱が高まっていく。 「んん〜〜、長時間移動した甲斐あって風呂が染みる〜!」 なお濁り湯なのでさまざまなものが安心ですね。 (G78) szst 2021/08/13(Fri) 21:26:07 |
【妖】 三年 井上清春いつもと同じ距離。 いつもと同じように横に並んで、 肩ひとつ分開いた距離がどこか物足りない。 「なんかさ……、けっこー暑くない……?」 熱で頭がくらむ。 困らせることを言いたくないのに、 気を張らないとまたよからぬことをしてしまいそうだった。 ($25) szst 2021/08/13(Fri) 21:32:43 |
【妖】 三年 井上清春「わっ…………、大丈夫」 触れられたところに熱が集まる。 それに嫌な気分はなく、むしろ。 その行為で許しを得たように、 猫みたいに触れられた手を額に擦りつけた。 「とよひも暑そう」 熱の浮かぶ顔に不審も不安も抱くことなく、 同じだ、というように指摘した。 ($27) szst 2021/08/13(Fri) 23:01:56 |
【妖】 三年 井上清春ぉぁー、とそれこそ猫の鳴き声が漏れる。 この距離感はいつものことでこの反応はいつものことじゃない。 それに気づけない。 「なんか……体あつくて……?」 「とよひ見てると、もっと近づきたくなる……?」 もともと柔らかに喋る性質があるが、一段と言葉がやわい。 正常であれば口にしないことを口にして、 あなたに跳ね除けられる可能性は考えない。 これはいつものこと。 蜂蜜色の瞳が指先を見上げる。 「指、さわっていい?」 ($29) szst 2021/08/14(Sat) 0:15:04 |
【妖】 三年 井上清春承諾を得れば、なにも使われていない湯に沈む手を引き上げて、人差し指を両手でぎゅっぎゅっと握った。 「ふふ…………」 幼い笑顔から吐息ともつかない声が漏れる。 額を撫でられる感触に甘やかされているような気持ちになって、 掴まえた反対の手に愛おしさを与える。 握ったり、さすったり。 それだけのことなのに目の前がくらんで、 背筋がむずむずする。 「とよひ、」 不意に両手を自身の口元まで運ぶ。 つられて持ち上がるあなたの指先になまあたたかな息がかかる。 「…………んー…………」 ぽかんと半開きの口から舌が覗く。 言葉を綴るたびにその動きが見えたことだ。 ($31) szst 2021/08/14(Sat) 1:52:33 |
【妖】 三年 井上清春額のあたたかいが離れていく。 生まれた心細さは距離が近づいたことで直ちに霧散した。 それでもまだ隙間があることが不満で、 もっとがほしくてたまらない。 「……ふぁ……」 吹き込まれた息にぶるりと体を震わせた。 ひとつの問いかけのもとへ思考は収束する。 はやく答えなければと舌がもつれて、 なのに明確にどうしたいのかわからない。 したいこと。 かたにもたれかかりたい。 みつめられるとのぞかれたくて、 しんぞうがうるさい。 もっと、さわられたい。 「たべたい」 おんなじくらい、さわりたい。 あーんと口を開けてあなたの人差し指を口に含もうとする。 ($33) szst 2021/08/14(Sat) 10:48:06 |
【妖】 三年 井上清春あなたのためになれた気がして、 あなたの喜びが悦びに変わって下腹を重くした。 「 ……ぁ……み ふぇ………」あなたの指が飲みこまれるところを。 撫でられるだけでぴりぴり電流が背中を走って、 瞳をとろけさせるのを。 やらかい舌先を流れる血潮の赤きを。 指先ひとつでこの身を掌握された気がした はしたなさもまた、 楊梅色の瞳には透けているのだろうか。 見てほしくて開きつづけた口から 溢れた唾液がおとがいをつたう。 それすらきもちよくて身を震わせた。 ($35) szst 2021/08/14(Sat) 12:36:29 |
【妖】 三年 井上清春たくさんを得ようとした指先は、 口内をぐるりとかき回して、 上顎をくずくり、頬の裏側をすり、 歯列をなぞったかもしれない。 そのたびに鼻からくんと甘い息を漏らして刺激を甘受した。 銀の糸を引いて離れていく指先は淫靡だ。 離れるのを止めようともせず、ただ彼に食べられた。 自分だったものが、彼の指先につれていかれて。 うらやましい。 唾液で濡れた唇は名残惜しそうにもごもごと動いて、 「おれもほしい」 砂漠をさ迷う旅人が渇きに耐えかねて天に祈るように、 だらりと垂らした舌は雨を求めた。 ($37) szst 2021/08/14(Sat) 15:31:54 |
【妖】 三年 井上清春焦点の合わない距離まで近づかれて、名前を呼ばれるのを耳にした。 とよひ。 呼び返したかったのに、なまえごと食べられてしまった。 「んー、ん、ぅ」 たどたどしく動く舌が熱いものに触れて絡み合わせれば もう離れられなくなった。 熱く、ぬめって、くちゅくちゅで、 毒みたいに甘くて 。むせかえるほどのとよひーの匂いが頭をいっぱいにする。 目の前の快楽がすべてだ。 熱かった。 あなたに触れてほしかった。 さみしかった。 あなたに近づきたかった。 求めた。 あなたに求められたかった。 平素より向けられる視線に心地良さを感じて、 いまこのときも同じように求めた。 結果として暴かれることを望むのと同義だった。 それだけのこと。 心細い腕があなたの背中にしがみつく。 これでまたひとつ隙間が埋まって満たされた。 下腹の兆しがあなたのそれに触れたとしても すべてきもちいいになっていく。 ($39) szst 2021/08/14(Sat) 22:34:05 |
【妖】 三年 井上清春ぷは、と息継ぎのために空いた隙間はたちまち塞がれる。 熱に溶かされた体が交わって、 こんなにも至近距離にあるのにまだ遠い。 まだひとつじゃない。 快楽に貪欲でまとまりのない頭は、 最後に残されたひとかけらの理性だけが 『あなた』を指向しつづけた。 どうすれば埋められるかと酸素の足りない頭で思考する。 幾度目かの息継ぎのとき、 とびっきりの甘い 毒 をこめて囁いた。「ぜんぶ……見て…………」 求めて。暴いて。貪って。 「とよひに……見られるの……好き……から……」 ひだまりみたいなやさしさも。ぴりと刺激を感じる強さも。 呑みこまれそうな出処のわからない不可思議さも。 誘惑と呼ぶには拙い、感情を言葉にしただけの。 他者の心などわからないから、 独りよがりの内面を知ることはない。 しかしあなたも似た気持ち [欲] を抱いていると確信に似たものを抱いている。 だからこの欲望であなたの欲を肯定して、 最後の歯止めすらこわれてしまえと まほうのことばを唱えるのだ。 ($41) szst 2021/08/15(Sun) 12:59:54 |
【妖】 三年 井上清春楊梅が離れて、蜂蜜はぐにゃりと崩れて滲む。 『おんなじ』は錯誤していたに過ぎなかった。 それをつきつけられてさっと熱が引く。 湯船に浸かっているのに指先までしんと冷たい。 というのに体の中心に燻りつづけた熱は未だ引かず、 首筋に触れられた刺激で淫らな声を漏らした。 はしたない。 縋りつく背をやさしく撫でる。 「大丈夫だよ」 平静の声を取り繕えただろうか。 「とよひー」 「すべて俺のせいにして。悪いのは俺だから」 「怖がらせてごめん」 安心させたくて似たような言葉を何度も繰り返す。 共感した不安に襲われて、 あなたの反応の予期できぬことがひどく恐ろしかった。 それでも縋りつく先が今ここに自分しかいなかったことだけが 唯一の慰めだ。 ($43) szst 2021/08/15(Sun) 17:52:56 |
【妖】 三年 井上清春さながらシーソーみたいに、 腕の力が緩んだ分だけ代わりに力を入れる。 口ぶりに反して、そこだけは聞き分けの悪い子供だ。 「大事にされているよ」 これまでも、 口内をまさぐる指も舌も大事に愛おしんでくれて ダメだ。猥雑な思考が抑えられない。 「とよひーが思っているよりたくさんもらっている」 内心を否定するように重ねた言葉は無垢な本心そのものなのに、 『たくさん』の内訳を考えれば 今日この日のやましさがあふれかえる。 吐息が熱い。 あなたに効かなかったまほうはこの身に跳ね返り、 自家製生する毒がじくじくと身を苛んだ。 ($46) szst 2021/08/15(Sun) 22:50:46 |
【妖】 三年 井上清春「うん…………」 最後に背中をひとなでして緩慢な動作で離れた。 それでも離すことを望まれるまでは、 手をぎゅうと握り続けたのは自身の意思だった。 ($47) szst 2021/08/15(Sun) 22:51:34 |
【神】 三年 井上清春だいぶ遅れて風呂をあがった。 休憩用のソファに腰掛けてちびちび水を飲んでいる。 長風呂の影響で顔はほてり、 どこかぼんやりとしている。 (G89) szst 2021/08/15(Sun) 22:55:55 |
【神】 三年 井上清春「 あ。 ………うん」こくりと頷いてそれ以上の言葉はない。 隣はひとり分空いているが誘うこともなく、 堀江くんの胸元に焦点の合わない視線を向けていた。 (G91) szst 2021/08/16(Mon) 0:17:13 |
【独】 三年 井上清春「みられるの……すき……」 熱に浮かされて口にした言葉に嘘はない。 嘘じゃないから困った。 これまで向けられてきた視線に勝手に意味を見出して、 勝手に気持ちが増幅してしまう。 すべてが好きで きもちよくて心を乱す種になって たべられてしまいそうな強い眼差しを思い出すだけで 背筋がぞくぞくして身が震える。 おかしい。よくない。抱いちゃいけない。 傷つけたくないのにあの目がもっとほしくて 頭がおかしくなりそうだった。 (-23) szst 2021/08/16(Mon) 0:25:35 |
【神】 三年 井上清春ひんやりした温度に意識が浮上する。 普段より取り繕った明るさでお礼を言おうとして、 「ありがと。俺、これ好きな…………」 交わされた視線に言葉が止まる。 「もうちょっとゆっくりしたら行くから」 「またあとで」 数秒か、数分か、あるいは永遠に近い時間の後に、 背中へそう声をかけた。 (G93) szst 2021/08/16(Mon) 1:09:06 |
【妖】 三年 井上清春それから気分を落ち着けようと売店を物色したりして、 部屋に着いたのはだいぶ後のことだった。 (浮足だった気持ちに変化はなかった) 扉を開いたとき、アロマでも焚いているのか、 ほのかに甘い香りが鼻についた。 「遅くなってごめ〜〜〜……えっ!?」 部屋の中央に設置された大きなベッドに釘付けになり固まる。 男二人やすやすと受け止めてくれそうだがひとつしかない。 二人一部屋なのに。 「あー……。俺、ソファで寝るよ……?」 備え付けのソファを差す。 あんなことがなければ、 床をともにすることに抵抗なかったろう。 ($48) szst 2021/08/16(Mon) 1:36:54 |
【妖】 三年 井上清春「もっとよくない」 近づいて、ずいと顔を寄せて、言い聞かせるみたいに言う。 「それならも〜、一緒に寝よう。 冬馬くんとか深瀬くんみたいに」 すぐに誰かの布団へ潜り込む後輩たちよ。 ($52) szst 2021/08/16(Mon) 2:15:05 |
【妖】 三年 井上清春「えっ……」 その言葉を契機として いつも を演じるために纏ったものが霧散して瞳が熱くなる。 「平気。平気だから。 とよひーもへいきなら大丈夫ってことだよ」 ぽやぽやした熱は頭にも移動して、あつくて、 ちゃんと喋れているんだろうか。 呼吸は荒くて心臓がどきどきする。 この顔のひとにあんなのをした。してもらった。 強い視線をもっと向けてほしくて、 一度意識してしまえば情欲が節々に滲む。 「俺はこわくない。 とよひは……こわい?」 舌がもつれてゆっくりした喋りしかできなくて、 はやく彼に触れられてこわくないよと言ってほしかった。 ($54) szst 2021/08/16(Mon) 2:57:59 |
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