人狼物語 三日月国


69 【R18RP】乾いた風の向こうへ

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【人】 宵闇 ヴェレス

[ 東へ開いた窓はないが、それでもゆっくりと昇る太陽に室内は明らんでいく。
 寝付いたか寝付かなかったも判別もせず、意識は彼より早く覚醒していた。枕元に持ち込んだ本に手を伸ばすと頁を開く。
 夜目は元より効く方であるし、薄明かりのなかでも文字を追うのに困りはしない。
 うつ伏せ暫く早朝の小鳥の鳴き声だけが聴こえる部屋に、頁を捲る音だけが響く。
 ふと隣へ視線をやると、まだ目を閉じている彼が入る。身を延ばし、そっと額へ唇を触れた。せめてこれくらいを赦されるといい。神のない自分に、誰が赦すのかは知れないが。

 それからまた本へと視線を落とす。彼が目覚めるまでは自然そのままにしておいたし、陽が登りきるなら彼が気付いた頃には読み差しの本に片手を添えたまままま眠っていた。]**
(7) ameya 2021/04/20(Tue) 21:27:54

【妖】 宵闇 ヴェレス

[ 笑う以外になにがあったろう。ふとすれば溶けゆく儚い泡を、宝石のように大事に抱え込んでいた。覚えているに決まっているというからまた笑った。

 何度でも聞いてくれたらいい。その都度、また彼の水面から泡沫を掬い直せるのなら。]

 そうなの? 兄弟がいるって言っていたから。

[ 独占欲が強いとは寧ろ自分にとっては意外だった。女性の様に扱う素振りは置いても、彼の上に兄弟があることは聞いていたから、やたらと面倒見が良い習性は、上から受けたあしらいを彼から見れば庇護への対象と見える自分に施しているのだと思っていた。]

 どうだろう。泣きたい訳じゃないんだけど。

[ 勝手に溢れる涙を、また勝手にダンテの夜着で拭う。泣いた記憶など殆どないから、情緒が慣れぬ身体に引き摺られているのかという僻見だ。けれど彼も泣きそうだと言うから違うのかもしれない。]

 どうして君が泣くの……。

[ 頭の芯は冴えるばかりであるのに、泥の様な眠気が身体を浸す。明日、目が覚めたら、との彼の言葉の続きを拾えなかったのは、自分が暫し意識を手放していたのか、彼が寝入ってしまったのか。]
($15) ameya 2021/04/21(Wed) 12:34:23

【人】 宵闇 ヴェレス

[  額に触れるか触れないかの口吻を落とすと、うっすらと彼が目を開いた>>17。]

 ごめん、起こした。

[ 意図せず眠りを邪魔した事を詫びると、覗き込んだ目は僅かに赤らんで、あまり深くは眠れていないのかもしれない。]

 眠いのならまだ寝ていていいよ。

[ もっと早く起こしてくれたらよかったのに>>18。昨日と立場を変えたようなやりとりにそう答え、また開いた頁に目を落とすと、彼は早々に寝台を下り窓際へと向かう>>18。]
(25) ameya 2021/04/21(Wed) 12:36:11

【妖】 宵闇 ヴェレス

[ 目を開いた彼が何かを探すように腕を伸ばしたと思うと自分の身体を抱き寄せた。

 悪戯げに額を擦り寄せ、夢じゃない、というのは、彼自身へ確認しているのか、それとも自分に言い聞かせているのか。]
($16) ameya 2021/04/21(Wed) 12:37:10

【人】 宵闇 ヴェレス

[ 昨夜の話の続き>>1、街に下りるなら街中で朝食を摂ればよいが、そうでないなら朝食のことも考えないとと彼は言っていたから、代わりとなるホテル内のカフェの話などしていたが、何処かで考えを変えたのか、まだ払暁の静けさに沈む街を眺めて、散歩に行こうと支度を始めた。

 彼が夜明けも眠っているならそれでもよいと思っていたから、外出の為の何の準備もしておらず、続けて寝台から足を下ろした。自分もさして眠れてはおらず、小さく欠伸した。

 彼が浴室を使う間、酔いと眠気の気怠さに放置し長椅子に置かれたままの昨日の荷物を封解いた。皺になっていなければいいと気掛かりながら衣類を取り出すと、柔らかな包装紙に包まれた滑らかな布地のワンピースは変な折り目もついておらず、安堵して息を吐く。

 その他に買い求めた服もクローゼットに片付けている間、ダンテは支度を終えて出てきただろうか。
 入れ替わりに着替えなどを抱えて浴室に入り、薄く化粧を施すなど身嗜みを整えて、宿を出る頃には足元は薄っすらと明るい時間になっていた。
 昨日買い求めたばかりの黒いヴェールを頭から被り、まだ登りきらない太陽から肌身を隠す。]**
(26) ameya 2021/04/21(Wed) 12:40:24

【妖】 宵闇 ヴェレス

[ 荷物を封解こうと長椅子に腰掛ける自分へダンテが身を屈める。
 昨日なにかを言えたかと聞くから何のことかと小首を傾げると、そのまま彼は長椅子の背に手を掛け更に身を屈めた。寄せられる唇に目を閉じた。頬へと柔らかな感触が滑る。

 目を閉じていたので、何処か恥ずかしげにも聞こえたおはようのキス、と言った時の彼がどんな顔をしていたかはわからない。]**
($17) ameya 2021/04/21(Wed) 12:42:14

【秘】 祓魔師 ダンテ → 宵闇 ヴェレス

[ 大切なものをもらっておいて、これは本物ですかと確認するような事をしてしまった。ひどい話だ、自分が差し出したものはそれなら何だったんだろう。

 自分のさし出すものだけは疑いようのない本物の好意だなんて、彼にだけ信じてというのはおかしな話だ。*]
(-56) x13close 2021/04/21(Wed) 20:15:18

【独】 宵闇 ヴェレス

/*
>>53
服飾の描写を求められてる気がしたんだけど、したいときとしたくないときがあるんだよ!!!! ごめんな!!!!!!
(-60) ameya 2021/04/21(Wed) 20:41:40

【妖】 宵闇 ヴェレス

 格好悪いだなんて思ったことないけど。

[ 寧ろ、容貌なら優れている方ではないだろうか。
 そういえば彼が自国に足留めされた初対面の折、目ぼしい宿は既に埋まり、個人が片手間に開いているような自分の宿を漸く探し当てたなら、断られては困る為心象を良くしようと努めていたなど、その夜の酒の席で聞いたような覚えがある。]

 見栄っ張り。

[ 断定でもなく揶揄でもなく、もしかしてそうであるのかと問い掛けのような投げ掛けだ。
 更に加えて、自分の為の嵩張る荷を彼に任せているのだから、酒瓶の1本くらい片腕に抱えると、憮然とも言えない表情を帰路に浮かべていたようことも思い出す>>0

 様が好いであるとか、振る舞いが洗練されてあるだとか、そういったものに心を惹かれている訳ではないと言える。ふとした育ちの良さを感じる温柔さであるとか、良くあろう、それは自分が彼を見栄っ張りと呼びつけてしまった部分かもしれないが、そういった部分を愛しく思う。

 歳の離れた兄弟や、その子である甥姪に囲まれる彼の話を聞くのが好きだ。願わくば、遠くからでいいからいつかその風景を見てみたい。

 何故自分が泣いているかわからないと言うと、余計に彼が自分を抱き寄せた。
 僕が君を泣かせたんだという言葉に、腑に落ちる思いがする。いつかも似た事があった。自分にとってダンテは特別なのだと彼が言った。それと同じ心持ちだ。]

 悪い。

[ だからこれはダンテが悪いのだからと、余計に溢れる涙を勝手に彼の夜着で拭う。]

 泣かないで。

[ 自分は駄々を捏ねる子どものような素振りの癖、彼の腕の中で手を伸ばす。手を伸ばし彼の頬に触れる。温かい。
 ずっと穏やかで優しいものだけが彼にあればいいのに。]
($21) ameya 2021/04/21(Wed) 22:47:00

【人】 宵闇 ヴェレス

[ 寝坊というにはまだ夜も明けていない。日頃の、日頃といっても自分の住処に来ている時しか知らないが、日頃の彼の起床時間よりは随分と早い。]

 無理をしなくていいよ。

[ 重ねて言ったが、振り切るように彼は寝台を下りてしまった>>51。自分も釣られて身を起こす。
 元々は昼日中の予定は兎も角として、夕方近くに王宮周りを散策しようと彼が考えていたものを、自分が朝早くとした勘違いを彼が合わせてくれた形だ。自分こそ何一つ準備をしていないのだから、後を追うように毛足の長い絨毯に足を下ろした。]
(66) ameya 2021/04/21(Wed) 22:48:32

【妖】 宵闇 ヴェレス

[ 今は眠いと言うよりも、泣いたせいか頭の奥がぼんやりと重い。明け方の今は問題ないが、流石に昼方、熱射の中を動くのは厳しいのではないかと思う。
 眠気を我慢せずともいいとのダンテの気遣いに、恐らく甘えてしまうことになりそうだ。
 抱き締める腕が甘く温かく心地良く、このままもう一度寝台に潜ってしまおうと誘い掛けるのを堪え、寝台を出る。

 窓からまだ陽の登りきらない街を眺め、そのまま浴室に向かうと思ったダンテが、長椅子で着替えを解く自分の傍へ身を屈めたのではずみで見上げる。目が合うと、謎掛けめいた言葉が落ちた。

 答えは待たされることなく、彼が唇を寄せるのと、目覚めの口吻の許可を問うのとどちらが早かったか自分からは判然としない。どちらでも、先に目を瞑った自分が待ち詫びていたようで、唇が触れる感触に羞恥を覚える。]

 おはよう。

[ 彼が型通りの挨拶をするから、何でもないことのように平静のなりで挨拶を返す。彼がどんな顔をしていたか、見られたら良かったのに。]*
($22) ameya 2021/04/21(Wed) 22:56:08

【人】 宵闇 ヴェレス

[ 女性の身支度は慣れていない為多少手間取る。裾のドレープがきいたワンピースに袖を通すが、膝下で布が揺れ、下肢に風が通る感触が落ち着かない。
 化粧と言っても、軽く肌に粉をはたき、目元や唇に色を乗せる程度だ。

 それでも支度の終わった自分を見て、彼が満悦そうに笑うので>>53、それなりに甲斐はあったのかと思う。

 出掛けて見たが、王宮まで足を伸ばすつもりは彼はないらしい。夜明けまであまり時間がない為か。
 今は宿として使っていても、元は由緒があるのだろう古城であるから、華美とまではいかないが、中庭は充分鑑賞に耐えられるだけ整えられ、散策路が整備されている。

 また、外から城を見上げれば複雑な空中回廊と、独特の窓枠の意匠や、装飾として飾られた色彩々のパネルが美しい。]

 城の中なら、陽もあまり射さないし大丈夫かも。

[ 陽が高くなれば城の中を見て回るのもよいかもしれない。
 散策路を一周りし、元の場所へと戻ってくれば挽きたてのコーヒーの香りが迎えた。カフェがもう開いていたのだ。朝食も提供する為か、随分と早い時間から開店している。
 同じ宿の泊り客だろうか、既に席に着く姿もあった。

 木陰が陽射しを遮るテラスの片隅に席を取る。乾燥した土地柄だが、元のこの城の主の趣味か緑が多く、朝露の為空気も幾らか湿り気を帯びている。

 コーヒーサイフォンとは別に、露店の様に様々な果物が盛られている一角がある。好きな果実を選ぶとその場で絞りジュースにしてくれるそうだ。]**
(67) ameya 2021/04/21(Wed) 23:03:41

【秘】 祓魔師 ダンテ → 宵闇 ヴェレス

[ 木陰の落ちるテラスの涼しげな席に黒一色のベールを被り裾だけひらひらとしたワンピースを着たヴィが腰かけている。

 少しだけ覗く手の先や足元は氷砂糖みたいに白い。
 自分がいつも心配する気持ちなんて彼だけがわからないんだろう。こんな綺麗なものを日で灼いてしまうなんて。]
(-76) x13close 2021/04/22(Thu) 2:19:08

【妖】 宵闇 ヴェレス

[ 見栄っ張りなのかと伺うように問うてみたら、すんなりと肯、と帰ってきた為思わず笑ってしまった。これは諦念ばかりの笑いではない。]

 別に、気取ったりする必要ないのに。

[ こう言えば、彼にとっては甲斐のないことだろうか。彼がそうであろうとする意を汲み取れていないことはぼんやりわかるが、大事に思うこと変わりないとどうして伝えればいいのか惑う。
 或いは、自分が彼の望む姿であろうということも、彼に同じ様な気持ちを抱かせているのだろうか。

 胸内は言葉にならず、泣かないで、との自分の言葉に彼が笑みを作ってみせるから余計に苦しい。]
($27) ameya 2021/04/22(Thu) 14:26:40

【妖】 宵闇 ヴェレス

[ それから朝の口吻を、と彼が言う。唇が離れて暫く目を閉じたままでいた。おはよう、と掠れたような囁きに漸く目を開くと、間近に此方を覗き込むような彼がいる。

 あと何度、目を開けば彼がいる幸福を過ごせるのだろう。
 与えたものを同じ様に与えて欲しいと望まれもう一度触れ合った唇は、先よりも少しだけ長い。]*
($28) ameya 2021/04/22(Thu) 14:29:24

【人】 宵闇 ヴェレス

 嬉しそう。

[ 折角褒めてくれているものを、あまりに無粋な反応だったかもしれない>>75。このワンピースは彼が気に入り勧めてくれたものだから、似合うようなら安堵の気持ちはある。
 けれど着付けないのは変わらないので、姿見の前で前に後ろに確かめてみたりする。布地の多い裾がゆったりとはためき膝が覗く。

 暁暗から夜明けまでは瞬く間で、石畳の上を歩むほど落ちる影は濃くなっていく。敷地内に放された鳥の鳴き声も遠くから響く。]

 子どもみたい。

[ 宿として改装されているのは一部の区域だけなのだろう。後は往時の面影を残したままの佇まいだ。城の中を見て回ろうとの提案にダンテも乗り気となってくれたのは嬉しいが、その理由が無邪気極まりない。
 笑いを抑えて口元に手をやる様に、子どもの頃の思い出とだけ受け取ってはいないことが知れるだろうか。]
(93) ameya 2021/04/22(Thu) 14:30:50

【人】 宵闇 ヴェレス

[ ザクロ、オレンジ、りんご、バナナ、パイナップル、レモン、種類ごとに山と盛られた果実は目にも楽しく、中には人参などの野菜もある。見覚えのない果物も中にあり、聞いてみるとデーツというこちらで好まれる果実のようだ。一際目立つ山はザクロのもので、他のものの倍ほどの数が盛られている。よく注文されるのだろう、それならザクロを、と選ぶとあっという間に絞り機に掛けられ、卓に運ばれてくる。氷を満たしても居ないのに水滴が滴るほどに冷えているのは、盛りとは別に冷やしておいた果実を準備しているのだろう。
 ダンテはこちらの朝食の定番であるパンケーキを頼んだので、他のものを選ぼうとすると、やはりこちらでよく食べられているという惣菜のプレートを勧められた。数種類のチーズに、ツナやナスのペースト、卵料理。それにチョップドサラダなどが一皿に盛り付けられている。パンと合わせるといいと言われたが、食べきる自信がない。ダンテが注文したパンケーキは甘みのないものらしいので、それを少し分けて貰えないかとねだる。どのみち惣菜もすべてをひとりで食べきる気はないのでシェアだと言い張る。

 同じ異国での朝食であるのに、昨日と比べて随分と落ち着いて感じるのは、 腰を落ち着ける宿を見つけている為か、静けさの為か。
 この宿が喧騒から離れている為もあるが、こうしていれば治安を恐れる必要などないようにも思えるものを。]

 市場や街の方の雰囲気も好きだけど、少しだけ遠いのが難だね。

[ 遠いからこそ部屋から覗く展望であるし、自分でそれを望んだのだから文句がある理由もないが、気軽に行き来し難いのだけが残念だ。]**
(94) ameya 2021/04/22(Thu) 14:35:13

【妖】 宵闇 ヴェレス

 うーん……

[ 眠くはないかと尋ねられると歯切れが悪い。昨日からを思えば横になった方がいいような気はするが、眠るといえば彼が付き合わせてしまいそうな気がして憚られる。]

 シャワーを浴びたいなら。
 今日は湯船も使いたいな。

[ だから、シャワーを浴びたいのだと理由があれば渡りに船であったし、ダンテの気遣いに気を回すことができない程度、疲れていたのかもしれない。

 朝方支度をする為に簡単にシャワーは使ったが、折角足を伸ばせる湯船が備えられているというのに昨夜は使わなかった。

 一度部屋に戻り、彼が湯を浴びる支度をする間に寝台に横たわり夕方には王宮に行く? と聞いた。
 彼に他に出向きたい場所があるのなら、少し早めに出た方がいいという思いと、昨日と異なりきちんと起こして欲しいとの念押しだが、次に彼が浴室から姿を見せるまでに、すっかり寝入ってしまっていた。]**
($29) ameya 2021/04/22(Thu) 14:38:15

【秘】 祓魔師 ダンテ → 宵闇 ヴェレス

[ 彼が真の糧にしているものを知っているのだが、自分に何か変化があるような気もしない。懐かしさと少しの楽しさ混じりの、普段なら思い出しもしない遠い過去の記憶。]
(-109) x13close 2021/04/22(Thu) 17:06:38

【妖】 宵闇 ヴェレス

 格好悪いなんて思ったことないよ。

[ 先と同じ言葉を繰り返した。語尾が尻すぼみに消え、八の字眉とでも形容できそうなその表情が、大型犬が途方に暮れているようにも見え、伸ばした手に触れる頬は温かい。頬を撫でると自分よりも長く濃色の髪が手の甲を撫でる感触が心地よい。]

 君が好きだよ。

[ 問われるのではなく、在り処を疑懼されるのではなく、自然と口をつき同じ言葉を繰り返した。]

 君が好き。

[ 彼はもう目を閉じており、繰り返す自分の言葉と、明日目が覚めたら、と呟いた彼の言葉の終端が、どちらが先に夜に溶けて消えたのかわからない。熱くさえ感じる彼の体温にくるまれて自分も直に眠りに落ちた。]
($33) ameya 2021/04/22(Thu) 20:58:44

【人】 宵闇 ヴェレス

[ 子どものときにできなかったことを大人がするのだ>>96、と言われると非常に腑に落ちるものがあった。確かに、子どもと比べて大人の自由になるものの方が大きい。経済力であったり、行動の自由であったり。子ども時分と今を比べての不自由に思い当たることはない。
 自分も彼も継嗣の立場であったり家に縛られなどしない生活であるから気儘なものなのかもしれない。彼の家は兄が跡を継いでいるという。]

 他にやり残したことの覚えはない?

[ 思い出話をねだり、冗談めかして聞くが、叶えられるものなら何でも叶えてあげたいという思いがある。できるなら共に過ごす時間の中でできるだけ多く。]
(105) ameya 2021/04/22(Thu) 21:00:09

【秘】 宵闇 ヴェレス → 祓魔師 ダンテ

[ 人の記憶の残滓と、適宜な水。生きていくにはそれだけで事足りる。
 血を糧にしていたなど、自分の血筋では曽祖父、いや更にそれ以前の世代の話だ。他種を畜類と見る傲慢が祟って迫害され、北の果ての地へ追いやられた。
 それであるのに老耄たちは未だ多くがその食性と血統を誇るのだから恐れ入る。必ずしも血でなくともよい、と気付いたのはいつの頃の話か知らない。極北の地では当然贄の数が減ったが為の苦渋が見出したのか。何を選ぶかは各々異なるが、人の精に近しいもの。それでよい。若い世代ほどそちらを選んだ。
 血液というのはただそれがわかりやすい形だっただけのことなのだろう。

 今も、彼の記憶の欠片を貰っている。彼もそれを承知している。必要以上に収奪することはないと信じてくれているのだと信じたい。
 彼の初恋の思い出すら、手に入らないなら舌の上に乗せたいと懇願したような自分であるのに、彼はどこまでも優しく自分に甘い。]
(-117) ameya 2021/04/22(Thu) 21:01:42

【人】 宵闇 ヴェレス

 ひとつひとつを剥けばそうだろうけど、半分に割って絞るんだよ。ほら、あっちみたいに。

[ ちょうど新しく注文が入ったのか、水滴を纏う赤い果実が絞り台の隣に置かれ、無骨な刃物でふたつに断たれた。此処からの位置では赤い塊にしか見えないが、断面にみっしりと実が詰まっているのだろう。

 そもそも用向きがないだけの理由で、生国を出奔しひとつところに落ち着いた後、旅のひとつも出たことのない不精であるから、異国の見慣れない全てが珍しい。

 他国の言語や文化に人文的な知識や興味は仕事柄あるが、それと実際目にするのは別だ。
 そういえば、聞いたことはあっただろうか。]

 そういえば、ダンテはどうして僕を旅行に誘ってくれたの。

[ いつか旅に行こうと言われて、断わる理由はなかったからふたつ返事で承知した。ただの旅客と宿の主の間だった。話の弾みや、空約束でも一向不思議はなかったろうに、彼は律儀にその約束を守った。そうして今があるのだから、とまで考えて、ふと真顔になった。]

 ……ごめん、やっぱり今の無しで。

[ 今となってはその発端を自惚れと毀損しなくてもいいのではないか。照れを覆うのに表情を鎮めれば必然真顔になるしかない。]**
(106) ameya 2021/04/22(Thu) 21:03:17

【妖】 宵闇 ヴェレス

[ 夕闇が迫るころ灯籠を灯される王宮はきっと美しいだろう。ダンテの答えにうっすらと笑い、そのまま眠りについた。声を掛けられた事も当然気付かず、次に気がついたのは昼過ぎだ。

 太陽の光が眠りを誘う訳ではなく、単に活動しやすいのが夜であるから体内時計が夜に合わせられているだけで、充分に眠れば目は醒める。時間としては短かったのかもしれないが、深く眠りに就けたようだ。
 目を擦ろうとして、すんでで今は化粧をしているのだと思いあたり手を止める。やはり女性の形は不便だ。窓から差す陽の色でおおよその時間を悟った。]

 ダンテ、お昼は?

[ 朝食を食べすぐ眠ったのだからまるで食いしん坊の様な発言だがそうではなく、起きていたダンテの腹具合の方を心配している。窓際の卓か、応接間の方か、室内に姿を探し、認めればじっとその姿を見た。]**
($34) ameya 2021/04/22(Thu) 21:04:24

【独】 宵闇 ヴェレス

/*
明日もうエピじゃん! うそ! 信じられない!
ひーんレス遅い遅々とした進みでねこちゃんごめんね……!

いつになったら仕事が落ち着くんや……
(-118) ameya 2021/04/22(Thu) 21:05:57

【秘】 祓魔師 ダンテ → 宵闇 ヴェレス

[ だからヴィの食性を知っても、怖いと思うことはなかった。彼がいなければどのみち語られることもなかった思い出だ。

 初恋の記憶だって、自分の趣味が詩を書くことだったからあんなに昔のことを残していられたが、そうでもなければ断片的なものしか覚えてはいなかったろう。

 若い時分の拙い文章を見て涙をこぼしてくれるのなんて彼くらいだ。できるなら甘くて美味なものならいい。*]
(-120) x13close 2021/04/22(Thu) 22:57:25

【人】 宵闇 ヴェレス

 うん。思い出したらね。

[ 急かなくとも、まだ時間は充分にあるのだと思いたい。
 そうして自分が思い出したというように、市街地と異なり必要もなく、今はふたまわりも大きい彼の手に指を掛け、薄明の石畳を歩く。]

 僕らの故郷じゃあんまり見ない果物だものね。

[ 種明かしをすると、流通の良い現住の国の、市で屋台が出ていたのを見たことがある。汁を絞るのではなく実をそのままカップに盛り匙を差したものを並べて売っているのも見たから、粒を剥くのが面倒なのは多かれ少なかれ誰しも思うものなのだろう。

 幾つかの実が割られては絞られ、屑箱に捨てられまた絞り機に挟まれ赤い汁を垂らすのを目を細めて見る。]

 楽しいよ。

[ 今のは無し。そう遮ったと言うのに律儀に彼は答える。]

 今も楽しい。

[ 楽しければいいと言ったのは彼だと言うのに、今の自分の気持ちこそ告げる。何度もこうして伝えられる時に伝えなければいけない気がした。それが許される間に。
 旅へ行こうと誘った彼の言葉が気紛れであっても、行き摺りの彼がまた訪う幸運が50年後の先であっても、多分自分は、ダンテと過ごした数日を、得難くしめやかに輝く想いとして、繰り返し胸に反芻していただろう。

 当のダンテは何だか面白げに此方を眺めていたので、次第に膨れ面になった。]**
(133) ameya 2021/04/22(Thu) 23:45:43

【妖】 宵闇 ヴェレス

 よく寝たよ。

[ 寝台の上に起き上がると大きな欠伸とともに伸びをする。朝食を採った後からすると、4、5時間は寝ていたのではないか。]

 そろそろ退屈してたんじゃない?
 お酒、お酒飲んだあとダンテ出掛けられる?

[ 昼を摂ったかと聞けば、部屋で摂ろうかと応えが返る。
 既に酒に弱いという前提で答えている。基準は自分である。]

 僕はお酒だけでもいいけど。

[ 昨日取った干葡萄とチーズが、些か干からびながらまだ残っている。それを肴に食べれば充分。後はダンテが頼むものを横合いから摘めばいい。

 酒だけでいいと答えて、それから不意に黙り込む。ダンテをじっと見詰めたまま、黙り込んでいる。]**
($38) ameya 2021/04/22(Thu) 23:50:08

【妖】 宵闇 ヴェレス

 外出してもよかったのに。

[ 凝った身体を解すように彼も伸びをする。
 応接室の卓には彼がいつも書付けに使っている手帳や万年筆が置かれている。手帳は閉じられているから、書き加えた内容の墨は乾き、暫く前に作業は止められているのだろう。

 そう言いながらも起きれば宿の室内に真っ先に彼を探し、姿を見つければ安堵する。]

 それは今は僕も遠慮したい。

[ 拗ねたように自分が弱いんじゃないとかなんとか、呟く彼に一頻り笑う。
 物言いたげに彼を暫く見詰めていると、腰掛けから立ち上がった彼が此方へ歩み寄り自分の手を取った。まるで貴重なものかのように許可を請うて、指先に口吻け、頬で触れる。]

 起きたから。

[ 歯切れが悪い。目覚めの口吻は朝だけなのかと、当然ではなかった筈のものが与えられると、それを当然のように強請りたくなるから、どこまでも強欲だと思う。]**
($41) ameya 2021/04/23(Fri) 7:16:09

【人】 宵闇 ヴェレス

[ 一月、二月流石に足留めされることはなく、悪くて数日だろうと>>0:2国境を務める公吏は言った。明日か明後日かこの国を経つことになり、そうすればおあずけされた海にようやく辿り着く。]

 青い方の海。

[ 故郷も国の一辺を海に接する形だったが、それは断崖の下に白い泡の波をぶつけるものと、鈍色に光る港のものだ。青い海など、物語か海を内装に模したカフェ>>1:174でしか見たことがない。]

 楽しみだね。

[ 夜には波打ち際が発光する様子も見られるという。昨晩買い付けたこの地の酒を、それを眺めながら呑むのもいいかもしれない。

 また目を細めたのは今度は気分を害したのではなく、陽の角度が変わって疎らに差す木漏れ日が、そこに彼がいる風景があまりに眩しかったからだ。]**
(143) ameya 2021/04/23(Fri) 7:20:49
 




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