【秘】 ハチヤ → エン[飾り気のない薄暗い石壁が続く場所の一角で、検診衣にケープを羽織った少年がいる。 けほっと短く咳き込んで、足型のついた腹部を抑えて立ち上がった少年は、駆け出そうとするのだが──… 暗がりから伸びた岩のような腕が、それより先に少年の肩を捉え、腕の持ち主がいるのであろう暗がりへと、力任せに引きずり込んだ。 ──そこで場面は途切れている] (-44) kannoko 2021/04/05(Mon) 17:06:54 |
【秘】 ハチヤ → エン[金属の床の上で、検診衣の少年が嘔吐している。 えづく少年の髪を引っ張りあげ、開口器をつけた顔をあげさせる白衣の男は、どう見ても医学を志すものには見えない。 白衣の男の隣にもう一人、派手な装いの女が皿を片手に男の腕に絡み付く。 女が一歩踏み出して、人であった原型を留めた食事に匙を入れ、少年の口へと差し出した。 ──場面はそこで途切れている] (-45) kannoko 2021/04/05(Mon) 17:14:37 |
【秘】 ハチヤ → エン[鉄格子の中、白髪をはじめ全体的に色素の薄い鷲鼻の男が検診衣の少年と一緒になにかを髪に書き付けている。 書き付けられた単語を指差し、鷲鼻の男が聞きなれない言葉を口にすれば、少年も一音一音不安げに首を傾げながら、 声変わりを迎えていない声でなぞっていき──… 鷲鼻の男が少年の髪をかき混ぜている辺り、音をなぞる試みはうまくいったようである。 紙に書かれているのが口汚い罵倒文句でなければ心暖まる風景だろう。 男と少年は新しい紙を取り出して…… ──そこで場面は途切れている] (-48) kannoko 2021/04/05(Mon) 19:37:57 |
【秘】 ハチヤ → エン[真っ白い壁の部屋の中、検診衣の少年か診察台の上で眠っている。 腕に刺さる針は一つでは足りなかったらしく、二本は少年からなにかを運びだし、三本は少年へとなにかを輸送し続けている。 少年の体からは電極も生えており、それらは部屋の隅の機械のかたまりの針を休むことなく働かせているようだ。 眠る少年の周りには白衣の集団がいる。 バインダーを胸に数値とにらめっこしてるもの 針の先で輸送量の調節をしているもの、それを記録しているもの 部屋の人数にそぐわない静けさの中、少年の呼吸が荒くなり…… ──場面はそこで途切れている] (-49) kannoko 2021/04/05(Mon) 19:50:44 |
【秘】 ハチヤ → エン[鉄格子のなかで、遠い異国の顔立ちの青年になりたてのように見える男が、検診衣の少年に話しかけている。 検診衣に縫い付けられたネームプレートを指差しての言葉に、少年は最初意図をつかめぬようであったが、 次第にその顔が輝いて、にやけるのを抑えられない様子で、男が口にした言葉を小さく何度も繰り返している。 よくよく耳を済ませば、はちやと呟いているようだ。 ──場面はそこで途切れている] (-50) kannoko 2021/04/05(Mon) 20:44:19 |
【秘】 ハチヤ → エン[鉄格子の部屋の隅、異国風の男が一人、右腕全体を覆う鱗を引きちぎっている。 血が滲むのも構わずに、その行為は、その焦りは、なにかに追われているようにも見える。 鉄格子が開く音がして、男がそちらへ視線を向けると、検診衣の少年が立っていた。 少年がその場を走り去り、男は肩を落とすのだが──…走り去ったはずの少年はまた鉄格子に手をかけた。 困惑する男をよそに、少年は救急箱を机に置くと、 男に向かって傷を見せるように促した。 男が少年を抱き締めれば、少年はわけがわからないといった顔で、早く傷を見せるようにと促した。 ──場面はそこで途切れている] (-54) kannoko 2021/04/05(Mon) 22:57:58 |
【秘】 ハチヤ → エン[鉄格子のなか、男は真っ青な顔をして椅子に腰を掛けていたのだが、少年の足音を耳にすると、男は何事もなかったように振る舞った。 検診衣の少年がなにかをする度、弛い衣服から覗く肌に、 男は喉をならしかけ、咳払いでそれを誤魔化した。 がりがりと指を噛むことで、なにかを抑えているようだ。 覗く犬歯が男が何に分類されているかを物語っている。 少年が男を指差して、具体的にはボロボロの指を指差して、 それから部屋を飛び出して、救急箱を抱えてくることだろう。 ──場面はそこで途切れている] (-55) kannoko 2021/04/05(Mon) 23:08:02 |
【秘】 ハチヤ → エン[鉄格子のなか、男と少年が向かい合っている。 格子には鍵が外から鍵がかけられており、閉じ込められた二人には外に出る術はない。 男の吸血衝動は抑えられそうになさそうで、 少年も何故閉じ込められているのか察することはできたのだろう。静かに目を閉じ、食まれるのを待っている。 やがて男が動きだし、少年へと食らい付いた。 しかし、上がるであろう悲鳴は上がらず、かわりに上がったのは嬌声だった。 男の食事になって生を終えるつもりであった少年は、予想外の展開に混乱を口にしながら、男の手で暴かれ続けて、最後には甘ったるいかすれ声で男の名前を呼ぶだけに。 少年の中に何度も精を放ち、少年に鱗が生えるのを見届けたあと、男は少年の内腿に顔を埋め、血の餓えを満たすのだった。 ──場面はそこで途切れている] (-56) kannoko 2021/04/05(Mon) 23:26:50 |
【秘】 ハチヤ → エン[彼の番の番へと、見せつけられる記憶の断片は、 彼の番が何であるのか、番の番へ見せつけるもの。 彼が番に預けた彼の形見になってしまった札は、 彼の番にとっては宝物となっているそれは、 彼の意識を継いでいるのかもしれない。 見せ付けた意図は独占欲と牽制と、 それから番と番うつもりなら、番を知れという激励が少し。 本当はもっとマイルドだったはずなのに、 館の悪意とうまく噛み合ってしまったせいか、 劇薬を包んでいたはずの薬紙は破けてしまったようである] (-57) kannoko 2021/04/05(Mon) 23:36:08 |
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