【人】 東天[決まった場所で舞うのは、旅路で数か所。 止り木のように渡り歩き、舞う、 榛名はその一つ。 決まった地ではある程度の言伝も、 先代、あるいはその前から引き継いでいる。 義肢の調子を診た技師、ほつれた裾を繕った職人、そのような恩人の名は、それこそ礼を欠かぬようにと。 そして、代替わりを悟られぬように、その地で起きた事件など。 舞手東天は、常にこの世に一人きり。 継いで、繋げ、なぞり、長く長く旅を繰り返す。 繰り返し染み付いた流麗な舞に、少女のような可憐さなどはない。 舞にはそれぞれ役割がある。 この男にただ、その役目がないだけで。>>#2**] (16) KNG 2022/04/11(Mon) 23:23:25 |
【人】 東天[狐の面で顔を隠している上、その舞は祭りの熱気を度外視しても人を魅せるもの。 巧みに操る扇も、ひらめく裾も、魅せるに値はするのだが、 老いを重ねた故の深みはまだ軽く、若さは隠し切れずほんの僅かに滲む。 とは言え、もう片手で足りぬ年月、この名を名乗ってきた。 昨年よりも、その前のどこかの道よりも。 今日この日、この瞬間の舞が最も円熟した舞である。 りん、と鈴は空気を振るわせ、 賑やかなはずの囃子の音の中、 かいくぐっては人の元へ。>>21 其の音が誘い観客となるか、>>23>>27 或いは僅かな縁となるか、>>26 それは見る者へと委ねて。>>28>>37] (38) KNG 2022/04/12(Tue) 22:05:06 |
【人】 東天[ちりり、転がすように。 鈴を鳴らして扇を放る。 円を描くように上がり、そして落ちる扇を くるりと風雅にその手で翻し、 流水のように扇は舞へと戻っていく。 その流れる指先に、薄墨の花弁が絡んでいた。 爪に火が灯るかのように。*] (39) KNG 2022/04/12(Tue) 22:07:34 |
【人】 東天[音を立てて扇を閉じれば舞は終い。 面の中で笑ってもわからぬから、恭しく観客に礼を。 祭りと言う非日常に財布の紐が緩むのは、旅人も日々ここに暮らす者も変わらない。 有り難く、色鮮やかな和紙に包まれた感謝を受け取る。 その感謝はどんな形でも。 平等に変わらぬもの。 狐面の、細く開く目からさらに目を細めて。 遠くから放る観客にも、また礼を。>>40 その礼儀は記憶の中の舞手と変わらない。 川の流水のように、継ぎ目を感じさせぬを理想として、 幾度も同じ景色を、違う目で、"彼ら"は見ていた。 舞手"東天"に引き継がれるのは舞だけではなく、 礼と、義と、記憶と──**] (42) KNG 2022/04/12(Tue) 22:49:48 |
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