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【秘】 失格 セナハラ → 遊惰 ロクその頭部に手を伸ばす。 案の定触れる事はできず、ただ虚しくすり抜ける。 それでも。 撫でるように、掌で頭の形をなぞった。 「……はい、おしまい。 もう目を開けて良いですよ」 貴方が目を開ける頃には、もう手を下ろしている。 本当は見られても構わなかったが、貴方は拒むだろう。 貴方がこの手を求めていたのは今ではなく、 ずっと幼い頃だったであろうから。 全てが過ぎ去り、今となってはどうしようもない事だと理解しながら──、 そうしたかったという只の自己満足だ。 (-45) wazakideath 2021/07/13(Tue) 22:27:08 |
【秘】 遊惰 ロク → 失格 セナハラ「――、終いかい」 クロスグリが露わになって、瞬く瞼に幾度か隠される。 僅かな時間振りの色彩が少しばかり目に痛かった。 「そンじゃ、まァ、これにて。 なにか用がありゃアまた呼んでくれ。 もうちっとはここにいンだろ、互いにさァ」 今、何を貰ったのか――与えられた事も知らぬ儘の男は、 そんな風に。アッサリとした別れを告げる。 至って平々凡々な挨拶は、だからこそ可笑しな話だった。 (-48) 榛 2021/07/14(Wed) 1:23:15 |
【秘】 名無しの ミロク → 遊惰 ロクあなたの足元に黒猫が一匹。 小さくないて、じゃれつけば姿を消した。 「バケツなんて持ってどこに行くんですか」 それがどんなものかわかっていても、 男はそう話しかけました。 (-51) toumi_ 2021/07/14(Wed) 8:31:22 |
【秘】 遊惰 ロク → 名無しの ミロク 足元に現れた猫を踏んづけぬ様蹴らぬ様、 避けようとしてたたらを踏む。 「――あァ、いいとこに。 お前サンの墓、つくりにいくとこなんだけども。 どこに埋めりゃァいいかねェ」 一人分の首と骨とが収まったそれを抱え直して、 顔を上げた男はそう返事をした。 (-52) 榛 2021/07/14(Wed) 8:54:36 |
【秘】 名無しの ミロク → 遊惰 ロク「私にソレを聞くんですね。 ニエカワさんと黒猫のお墓を作ったんで、その近くにでも。 深く掘るように言われましたが力は大丈夫ですか? タマオさんを呼べばよいと思います」 警察官はあまり文句なくやってくれるだろう。 見えている自分たち以外からは異常な提案ではあるのだが。 彼が異常な存在であるのは殺されている身からすれば十二分に知っているのだ。 そのまま案内をする、病院の裏口から出て少しした場所。 泥で山も見えなくなっているが比較的無事な地表があった。 彼らがいる場所だ。 (-53) toumi_ 2021/07/14(Wed) 9:55:37 |
【秘】 遊惰 ロク → 名無しの ミロク「聞けンだし、どうせなら好きなとこがよかろ。 ……んー、まァ、おれだけでやってみるかねェ」 時間はかかるだろォが、と言いつつ 拝借したスコップを持って着いていく。 辿り着いた先、最近均されたと思わしき場所が二つ。 それが彼らの墓なのだろう。 バケツを脇に降ろし、静かに手を合わせる。 それから、程近くの地面にスコップの先を突き立てた。 十分な深さへ到達するまで、短くはない時間を要する。 只管に土を堀り返し乍らも、 話し掛けられれば手を止めぬ儘で応えるだろう。 (-56) 榛 2021/07/14(Wed) 10:41:10 |
【秘】 名無しの ミロク → 遊惰 ロク「それもそうですか、死者の声が聞けるのも難儀ですね。 私は死んでいる方と意識して会話をすることがありませんでしたから、随分恵まれていました」 不思議な体質でしたとあなたの手を止めない程度にぽつぽつと会話を溢し自分が埋まる穴が掘られていくのを眺める。 他人事のようにみえてしまうのは、死んでしまっているからなだけだろうか。 「その骨って、"私"なんですかね」 (-62) toumi_ 2021/07/14(Wed) 11:07:50 |
【人】 遊惰 ロク>>20 >>21 メイジ “会えるんだったら”。そういや見てねェなァ、と思う。 どこぞに隠れてしまったか、もうここにはいないのか。 その答えが分かるのは、きっとこの後直ぐの出来事だ。 “やっぱりやさしいね”。やさしかねェよ、と小さく笑う。 ――生きてたらこの年頃だった、きょうだいの様な友らがいた。 放っておけなかった理由は、只それだけだ。 汚れた手をよくよく洗って、綺麗に拭いて。 座る少年に近寄り「拭くぞ」と一声かけてから、 顔の汚れをグイと拭う。 痛みのない程度に、しかし繊細さの足りない力加減で。 それからそこかしこが赤く染まった包帯を替えてやる。 その儘ではお嬢サンの前にも出づらかろうと。 「――そンじゃこれにて。 おれの方こそ、どうもアリガトウ」 それらを終えれば、ブリキのバケツを一つ手に取って。 蓋したそれを抱えて暇を告げ、少年を残して部屋を出た。 (22) 榛 2021/07/14(Wed) 12:11:24 |
【秘】 遊惰 ロク → 名無しの ミロク「あァ、そういやお前サンもだったか。 ……まァ、ちっとばかしナンギかもなァ」 視界の外で幾人分か、パタパタと走る小さな足音。 バッチリシッカリ とり憑かれている 側に居る。なかなか姿は見ないものの。スコップを差して、掘り起こして、穴の外へ土を盛って。 無心に繰り返す動きが、掛けられた言葉で一瞬澱んだ。 「――おれのやったモンつけてんだ、 十中八九お前サンでちがいねェだろうよ」 (-66) 榛 2021/07/14(Wed) 12:55:31 |
【秘】 名無しの ミロク → 遊惰 ロク「……そうですかね?」 声色が少しだけ明るく聞こえたかもしれない。 「私、商人として死んだのか私として死んだのか、 あんまり自信がないんです。 理由はすべてミロクに起因しているんですが。 ……ああ、わかりにくいですかね。 ミロクというのは商人の名前で、私は名前がありません。 だから私の意思でちゃんと死ねたのか、わかりかねています」 あのとき話した言葉より少し揺れた言葉。 生き方を変えられなかった男は、自分を見つけられていない。 自分のものがようやく手に入ったのもあの瞬間だった。 今なら言っても良いだろう、生死で揺れているのは同じだ。 「誰かの為に、誰かのせいで。あなたは言いましたが。 何よりも、自分がそこにいたのかがわからなくなるのはあまり良い気分ではないと経験則から語りましょう」 (-68) toumi_ 2021/07/14(Wed) 13:05:23 |
【秘】 失格 セナハラ → 遊惰 ロク視界の隅に捉えたままの少年に、一瞬目をやった。 「そうですね。 まあ、僕はニエカワくん次第ですが」 貴方がどんな選択をしようと、 停滞する己から見れば進むことに変わりはない。 だからこそ、別れの言葉はこのひとつしかなかった。 「……いってらっしゃい」 (-69) wazakideath 2021/07/14(Wed) 13:15:20 |
【秘】 遊惰 ロク → 名無しの ミロク「お前サンの話はややこしいンだよなァ……」 流れ落ちる汗をグイと手の甲で拭う。 汚さぬ様に上着は裏口に置いてきていた。 「“商人のミロク”と、そうでないお前サンと。 ……わかんねェなァ。 それってまったくの別モンなのかい」 そう零してから、暫くの間。 傍目には変わらず黙々と腕を動かし―― 不意に、スコップをザクリと縦に突き立てた。▼ (-74) 榛 2021/07/14(Wed) 14:58:33 |
【秘】 遊惰 ロク → 名無しの ミロク 持ち手から手を離し、一つ伸びをして。 チラリと相手に視線を送る。頬に土汚れをつけた儘。 「――お前サン、どうして死んでくれたんだろ。 おれァ商人サンには“ガキども生かすために”って 頼んだつもりなんだけども」 諳んじる様に流れる様に言葉を吐く。 学が無いなり、考えて。用意できた返答がこれだった。 「それだけがお前サンの死んだ訳なら、 お前サン、商人として死んだんだろうさ。 それがチットモ関係ねェなら、 お前サン、商人じゃねェお前サンとして死んだんだろう」 (-75) 榛 2021/07/14(Wed) 15:00:49 |
【秘】 焦爛 フジノ → 遊惰 ロク貴方が外から戻ってくると、フジノが近づいてくる。 「お疲れ、様。 ……外、暑くなってきた、から、喉渇いてないかなって、思って」 そう言って水の入った水筒を差し出した。 「……ロクさんは、救助が来て、その後は、どうするの? 来たところに、戻るの?」 そも、貴方はどこから来たのだったか。 そういう話を全然していなかったと思い出す。 (-81) sym 2021/07/14(Wed) 19:59:39 |
【秘】 名無しの ミロク → 遊惰 ロク「あなたのことを考えたかどうかで決まりますね……」 今までのややこしさを吹き飛ばし、簡潔にまとめる。 話すことが思考の整理になっているのだろうか。 「言うとおり取引にあなたは入っていなかったんです。 死ぬことは、入っていたと思いますが。 ……私あなたのために(も)死にましたか?」 罪を後悔する生者にする質問ではない。 「…………、答え出ていましたね」 そういえば、言っていた。なんだ、私はいましたか。 「私名前も、戸籍もないんです。 だから死んでしまったら本当にどこにもいなかったことになります、それが寂しいなと思っていたところだったんですよ。 あなたのおかげで、あまり気にしなくて良さそうです」 (-84) toumi_ 2021/07/14(Wed) 20:11:25 |
【秘】 遊惰 ロク → 焦爛 フジノ キョトン、と。差し出された水筒と少女の顔を見比べて。 どこか面映ゆそうに受け取る。 「こいつはどうもアリガトウ。 アハ、ワザワザ用意してくれたのかい」 それなりに渇いていたのだろう、直ぐに蓋を開ける。 喉仏が幾度か上下して、一気に中身を目減りさせたのち。 「おれァ、……どうするかなァ。 ……出てきたとこには戻んねェつもりだけども。 アー、ここだけのハナシ。親から逃げてきてんだ、おれ」 まさか 『おっ死んじまう予定です』などと 馬鹿正直に答える訳にもいくまい。 シカシ咄嗟に上手い嘘も吐けず、そんな風に返事をした。 (-85) 榛 2021/07/14(Wed) 20:19:01 |
【秘】 遊惰 ロク → 被虐 メイジ「お医者サンから、お前サンに」 いつかの時間。そう言い乍ら一枚の封筒を手渡す。 封がされておらず、中には数枚の紙が入っている。 ――少年の手に渡ったと同時、 男は「アッ」とワザとらしい声を上げる。 「封しとけって言われたんだが、忘れちまった。 悪いが坊チャン、しといてくんねェか」 糊は宿直室にあると言って、そンじゃこれにて。 返事も待たずヒラリと手を振り、男はサッサと立ち去った。 死人に口なしとはマサにこの事。中身を見るも見ないも、少年次第だ。 そも、少年を只、大人しく守られているだけの存在と見做さなかったのは、かの医者なのだし。 (-86) 榛 2021/07/14(Wed) 20:27:13 |
【秘】 焦爛 フジノ → 遊惰 ロク「外の作業、手伝えなかったから……できる事、しようと思った、の」 ほっとしたように水を飲む貴方を見た。 「……そう、なの? ロクさんも、私も……メイジも。 似た者同士、だったんだね」 すんなりと信じた。自分の事も、メイジの話もあったから。 貴方が死んでしまうつもりだなんて、思ってもいない。 「……なら、また、会える? 私、ね。都会に出て、ミロクさんの紹介してくれた所へ、行くの。 もし、ロクさんも都会へ行くなら……会えたらいいなって、思って」 言いながら、腹を摩った。 (-87) sym 2021/07/14(Wed) 20:27:34 |
【秘】 遊惰 ロク → 名無しの ミロク「……。そうかい」 何かを露わにする程の体力も残っておらず。 ただ相槌を打って、男は再びスコップを握る。 「お前サン、いなかったことにはなんねェだろ。 いなくなって泣く子だっていンだから。 ………………、おれが言えたことじゃねェんだが」 下を向いて作業を続け乍ら、そう言った。 ……本当に、言えた義理ではない。 (-88) 榛 2021/07/14(Wed) 20:35:45 |
【秘】 名無しの ミロク → 遊惰 ロク「泣かせたんですか。知りませんでした」 すべて見ていたわけでもなくて、死体に興味がなかったわけですから。 ピアスが残っていたのは嬉しかったです。 「あなたは悲しくなってくれましたか? 心が痛むのならば、いい場所がありますよ。 安くて、美味しいものが食べられます。 死ぬ前に贅沢しませんか、私の荷物隠してあるんです路銀にしていいですよ」 (-89) toumi_ 2021/07/14(Wed) 20:40:49 |
【秘】 被虐 メイジ → 遊惰 ロク「……え? あ、うん──」 メイジは不思議な面持ちで封筒を受け取る。 さっさと立ち去ったあなたを、唖然と見送って 封のされてないそれを見つめる。 そういえば、手紙を置いておいたと 彼が生前言っていたのを思い出した。 ──中身は見ないでください、とも。 (-90) DT81 2021/07/14(Wed) 20:47:48 |
【秘】 遊惰 ロク → 焦爛 フジノ「――どうだろ、なァ。 おれァ先のこと、まだ考えてねェからさ」 “まだ”なんて、言葉の上では小さな、 けれども総じて大きな嘘を口にする。 商人がやってくれたのはそういう事だったのか、 と思い乍ら、回りにくさを覚える口を開く。 「……そうだなァ、もし、都会にでるって決めたら、」 それから一度水筒の口に唇をつけて、 その必要もないというのに軽く湿らせる様にして。 「そん時は、もうちっと。 飯をキチント食えてそうなお嬢サンに、会えたらいいなァ」 ヘラリと笑って、 あるかも分からぬ 未来を語った。 (-91) 榛 2021/07/14(Wed) 20:48:36 |
ロクは、死んでいない。まだ、今のところは。 (a14) 榛 2021/07/14(Wed) 20:53:41 |
【秘】 遊惰 ロク → 名無しの ミロク「――お前サン、諦めてなかったのか」 “悲しくなってくれましたか?”。 その問いに答えは返せず、返さず。 青年は只そう言って、困った様な顔して笑った。 (-94) 榛 2021/07/14(Wed) 20:57:34 |
ロクは、一先ず、今日も生きていた。 (a19) 榛 2021/07/14(Wed) 20:57:41 |
【秘】 焦爛 フジノ → 遊惰 ロク「じゃあ、今、考えて……ううん、やっぱり、いい」 じっと貴方を見て、そう言いかけ……途中で口を閉ざした。 「それぐらいなら、するよ。 見せられるように、する。 ……その、時は」 腹をそっと撫でる。 「その時は、『この子』を見せる、からね。 絶対。会いに来て。 皆に生かしてもらった、子だから」 そう言って、女は笑った。 (-95) sym 2021/07/14(Wed) 20:59:25 |
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