人狼物語 三日月国


159 【身内RP】旧三途国民学校の怪【R18G】

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視点:


 

出席を取ります。

 

……色とりどりの炎が、花を咲かせた後。
どこかで、少女が教鞭を執っていた。

鳥飼
。」

夢川
。」

司馬
。」

来家
。」

山中
。」

名前が増え、賑やかになった出席簿を満足気に読み上げる。
その声は隠し切れない程の喜色が溢れていた。

「……ふ、ふふ!
 すごいなぁ、こんなに沢山!
 体育の授業だって色々できるようになるね……!」

前回との違いは、更に名前が増えたことと──最後にもう一名分、空欄があった。

「さて、さて。
 もしかしたら、遅刻かもしれないし。少し待っておかないとだ」

欠席かもしれないけれど。
時間は幾らでもある。
時計の針が進まないのだから。


どこかで出席を取る声が響くころ。

「先生」

あなたと最初に・・・出会った時と同じように。
今はまだ数少ない、あなたを先生と素直に呼び慕う生徒の一人は
この時も、やっぱりひょいと顔を見せた。

夜闇はもう随分と薄れてしまって、
生者の時間にほど近くなりつつあるけれど。
曖昧な色は、今もまだ白日夢じみてそこにある。

「……みんなは、呼べなかったね。」

名簿の空欄がひとつ埋まっても、全員にはならない。
飽くまでも、全員、というのは努力目標ではあったのだけど。
とはいえやはり、そうなれば良いと思っていたのも確かな事で。

そうはならなかった理由が、ただ時間の制約だけであれば。
少々強引なやり方をしてでも、今すぐに解決していただろう。
けれどそうではない。だから、でも、と言葉を続けた。

「今日だけじゃ、皆は揃わなかったけど。
 牧夫兄達の事はちゃんと先生のおかげで呼んで来れたし……
 …すぐには来れなかった皆も。いつかは来てくれると思うから」

いつかはきっと来てくれる。
今はまだ少し、生きてやらなければならない事があるだけ。
おおよそ何を疑う事も無くそう思っている。だから、


「俺、待てるよ。いつか全員が揃うまで」

けれどやはり、ずっとは待たないだろう。
願わくば、生者の内で死者が遠く色褪せた記憶になる前に。
君達が遠くへ行ってしまう前に、友達同士で居られる内に。
手を引いて行けるように、きっとまた会いに行こう。


誰が来てくれたから、とか、何人来てくれたから、とか。
そういうものは決して手を引く理由になり得ない。
だって、君達の重みは等しく換えの利かないものなのだから。

子どもというものはできる限り多くを望むものだし、
寂しがり屋は、誰にも寂しくあってほしくはないものだから。

「……良かった。
 『もし待ち切れないから今すぐ行こう』って言われたらどうしようかと思ってたんだ。
 私はこの辺りから動けないしさ」

貴方に視線を向けた後、窓の奥を見遣った。

「しかし、矢張り難しかったね。
 特に私は皆と昔から友達、というわけでもないから……夜が明けてしまうと尚更」

もしも幼馴染なら、情に訴えることも可能だろう。そう思い
馴染んだ
わけだが。
白間コズヱは神でもなく、只の少女であった。限界というものはどうしても見えてくる。

ギシ、板が沈む。
教壇の上を、少女の細い足が進んでいく。


「……今日は、『待ち切れなくなったら』の話をしようと思ってたんだ」

貴方の頭を、誉めるように撫でて。

「ね、深雪。
 車とか用意できそう?バスとかさ。
 そういうのがあれば私も移動できるだろうし──修学旅行だって行けると思うんだ」

自ら調達できればするのだが、こればかりはそうもいかない。
生徒の、貴方の力を頼るしか無かった。

「それに」

できる限り多くを望む子供の、

皆を迎えに行き易いかと思って。


夢を叶えてこその教師だ。


「前から友達じゃなくても、楽しかった事は変わらないよ」

過去の記憶は偽りであったとしても。
ほんのわずか、共に過ごした時間は決して嘘にはならない。
やはりと言うべきか、少なくとも夢川はそのように思っている。

真実それぞれの思いがどうであったかは、
当然ながら、訊かねばわからない事なのだけど。

「……バス?」

ぼんやりと目を細めて、優しく頭に触れる手にはされるがままに。
けれど投げ掛けられた問いに、ふと視線を上げた。


「…うん、わかった。
 せっかくなら、修学旅行の時期までに間に合ったらいいな…」

夢川深雪の死因は、交通事故だ。

その事を鑑みれば、このお使い・・・を頼むには最も適任と言えるだろう。
この場所へと迷い込んだのはきっと幾つかの偶然の産物であって、
死者とは元来、自分の死に纏わる処に留まり続けるもの。

そうして時に、悪意の有無に関わらず生者を引き込むものだから。


「……課題、初めての課題……になるのかな?
 皆を呼んで来るのは、先生の手伝いって感じだったしさ…」

わからない所があれば、また聞けば良い。
あなたも皆も、きっと一緒に考えたり、助けてくれるはず。
何よりも、上手くできたら皆喜んでくれるはずだ。

──ああ、なんだ。努力する事の楽しさって、たったこれだけでいいんだ!

昨夜から明け方。
ほんの数時間だが……思い感じて過ごしたことは、正しく現実のものだろう。
それは自分が、貴方が、ここにいるという証左に他ならない。
たったそれだけの事実が、存在の証拠だ。


「……そう言ってくれると嬉しいよ」

きっとそんな貴方だからこそ、この学級へやって来たのかもしれない。

「まあ、急ぎというわけでもないからね!
 初めての課題……うん、校外学習って感じかなぁ」

楽しみで仕方ないのだろう。
普段の落ち着いた抑揚も今は無く、年相応の笑顔があった。

「修学旅行はやっぱり京都かな。
 いや、最近は東京なんだっけ。
 たしか、すごく高い電波塔ができたんだろう?
 ……へえ、もう向こうまで車で行けるようになったんだ。
 高速……道路?っていうのを使うんだね」


「ああ、寝るのが惜しい!
 こんなに今夜が待ち遠しい朝は初めてだ……」