[体の相性も合うけれど、好きだとか愛してるの延長線上にある盲目気味の自分を、彼の虜だと表現したつもりでいた。誤解を招きかねない文脈だったと思い至らないが、嘘偽りない本心とはいえ、陳腐にも聞こえる台詞を紡いだ自覚はあった。
それを笑う訳でもなく、彼が黙ったまま動きを止める。
一体何を考えているのか、……そもそも聞こえていなくて呆けているだけなのか、考え得る可能性が浮かんでは消えていく。話したいから口を動かすのに、頭を働かせた彼の思考がどこに転ぶのか予想出来ない。
頭の中を覗くことも、思考回路を手繰ることも。
誰にも出来ないと分かってはいる]
ふ、……はあっ、はは……駄目なのか。
でも君も、自分で……っ動いてる、だろ?
馬鹿になってる瑠威も可愛いから……、
……もっと馬鹿になってくれよ。
[少し腰を揺する度に、途切れ途切れの甘ったるい嬌声が彼の唇から溢れた。素直に快感を得ようとして子供のようにぐずる姿が、可愛くて愛おしくて、同時に安堵を覚える。彼につられて馬鹿になった素振りで、弾む息に機嫌良さげな笑い声が混じった。
実際はセックスを始める前──そもそも転院する以前から。とっくの昔に、自分はある意味馬鹿になっているのだが]