人狼物語 三日月国


224 【R18G】海辺のフチラータ2【身内】

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ダニエラ! 今日がお前の命日だ!

リヴィオ! いざや恩讐の碧落に絶えよ!

【人】 門を潜り ダヴィード

路地裏の逃走劇から一夜明けて。

借り物の電動バイクを操り、「頼まれた荷物」をどうにかこうにか積み込んで昨日までとは違う種類の混沌にあるアジトへと顔を出した。

「あだだだ」

「おだちん」の鍵を使うことなく運び出されたそれに首をひねりつつ、頬を腫らしながら。

昨日までの陰鬱な雰囲気をすべて忘れたような、晴れ晴れとした顔で。
(11) 2023/09/26(Tue) 22:22:55
ダヴィードは、落ち着く間もないまま車に詰め込まれた。無抵抗だった。
(a2) 2023/09/26(Tue) 22:55:06

【人】 Commedia ダヴィード

>>62 ペネロペ

一人であれば少し気後れしそうな隠れ家だ。一緒に来てくれる先輩がいてよかった。
……いや、自分達は隠れ家から歩いてきたのだから正しくは隠れ家「風」か。
とりとめのないことを思うし、いくらかは口から出てきたかもしれない。

促されるままに着席するが貴方の頼んでいるカクテルが何なのかもわからない。
大人しく椅子に座って店内を見回しているうちに提供された一皿は、一日以上何も食べていない人間にとって魅力的すぎた。

「本当に……めちゃくちゃ美味しそうですね。
 え、これ、ねえもう食べていいですか?」

なので、我慢ができるはずもなく。
煮込まれても素材の食感を失わず、シチューの味をしっかり吸い込んだ具材たち。
ほどよくあたためられたパンを浸せば、しっとりと口の中の傷に障らない美味しさが口の中に広がる。
合間に口にしたカクテルはやさしい甘酸っぱさが特徴で、貴方がこれを選んでくれたのがじんわりと嬉しかった。

#バー:アマラント
(63) 2023/09/29(Fri) 7:54:29


「いいじゃないですか」「俺がいるんだから」

それだけでこの部屋には価値ができる。
あんたが訪れる。誰かが遊びにくる。それを自覚した者の言葉。

この家には沢山の捨てられなかったものがある。
良いも悪いもない過去の思い出、漠然と受け取った賞状に、
頭にあるのに読み返してばかりいた書物たち。

これからの自分に必要ないものは多く、
きっと新しく増えるものもまた、多いのだろう。

「本調子じゃありませんし、
 適切な仕事の割り振りが行われている為か、
 案外忙殺されているという訳ではないな」

「俺がこうなる前に働き詰めでいた甲斐もあっただろう」

表情や視線に対しても全く悪びれずに言う。
ただ代償を支払っているだけのこと、罪悪感に苛まれるつもりは毛頭ない。

「失礼なのはお互い様でしょうが、全く。
 暑くないとは言わないが、こっちの方がマシですね」

少なくとも、剥き身で見せるよりかは。


──早朝も早朝。

貴方のスマートフォンに着信が一件入る。
表示される名前は非通知、或いは『公衆電話Telefono pubblico』。

怪しいそれにあなたがもし出てくれるのなら。


『……あ、ろーにい?』

『…………ですか?あってる?』


聞き慣れた声が届くだろうか。

「……ん”ぁ」「ぁに……何?」

早朝のコール音。
寝起きは良からずとも無理やり起きる事には慣れている。
また何か誰かの手伝いの依頼だろうか……とベッドサイドに置いたスマートフォンを手に取り画面を見れば、なかなか見ない表示がそこにあった。
訝しむ一瞬で受話ボタンを押すのが遅れたが、無視するわけにもいかないと通話に応じ、

「あいもしもし……
あ?


「フレッド!? 何お前ムショ出てたの!?」

……無事に一気に目が覚めた。
寝転がったまま電話に出たのに、
飛び起きたみたいに上体を起こす。
思わず問う声は早朝に出すにはやや大きかった。

『声でけえ〜』

電話口では貴方の大声に何やら笑っているらしい声。

『刑務所出たよ、ついでに家無し子になった』
『いや、今はそれいいんだ、あの、その』
『やっぱり困っちゃって……ええと……』

よくはなかったが、家が無いのは最初に戻っただけなので。
あまり深刻に捉えていなかった、今の一番の問題は別。
無期限、回数無制限、いつでも言っていい。
に、甘える最初がこれなのもどうかと思うが。

『ぁの〜、…………あのさぁ……』
『……よくないとは思うんだけど……』


よくないなあと思っているから声はちいさくなる。
犯罪だよなあ、わかってるんだけど。

『………………こ、』
『…………戸籍って……お金で、買えるかな……?』


身分を証明するものがないと、何をするにしても困る。
まだはっきりと貴方の素性を聞いたわけではないけれど。
想像がついている弟は、よくない頼り方をしているところだ。

「どこからそんな自信が出てくるんだか」

なんて呆れたように言いながら。顔は穏やかな笑みを浮かべて。
あとで整理するものがあれば手伝いくらいはするわよ、と続けて。
あなたが部屋のものにあまり触れられたくなければ、1人の時に任せるだろうが。

「意外と余裕…があるわけじゃ、ないんでしょうね。動ける人はとんでもなく忙しくしてそうだもの」

テーブルにグラスも並べて。
なんでも良さそうだったから、白ワインを注ぐ。辛口で食事向き。

「私はこう見えて気遣い屋さんだけど」
「そう。まあ無理に見せてとは言わないわよ、その手に関してはね」

他はまあ、追々。
とりあえずは食事が先決だ。

「乾杯でもする?」

「いや……デカくもなるよ、驚いてんだもん」
「家無し子ォ〜〜? お前家まで追い出されてんのかよ。
 や、良くはねえだろ。なんですか」

まだ梳いていない寝起きのままの前髪をかき上げながら、
また仰向けにぼすんと寝転がる。

「……なんだよ。言えよ、何でも」

まごつく様子に、何を言い出すのか待っていれば。

「…………………」
「ああ〜〜……」

納得した。それは確かに貴方には言い辛い話だろうと。

「分籍とか就籍とか養子縁組とかそういう感じじゃない奴ね?
 あれクッソめんどくさい上に書類でつっかかりそうだもんなぁ……う〜〜〜〜〜ん……まあ逆にそっちの方が……」

しばしの間、そんな風に考える呟きが
通話口に垂れ流された後。

「……できるよ。よそのブローカー頼んのはやめな。
 足元見られて適当な仕事されんのやだろ。
 やんならオレがやるから……」

つまり質問の答えは『Yes』だった。
良くない兄も居たものだ。

手伝ってもらった方がいいか。
手袋に包まれたそこを見下ろしながら、助力を受け入れて。

「恨まれていそうですね。俺じゃなくてやらかした奴らが。
 きっとゆくゆくは俺の机にもデスクワークが山積みになるんでしょう、今から少々気が重くなってきますね」

にしてはあまり憂鬱そうにしていないのは、
仕事そのものを苦にしていないからか。
何かしらの世話か、警察の仕事くらいしかしてない男である。

それ故食事の用意も任せっきりにしていて、
どことなく落ち着かない様子に見えるだろう。

「無理に見せろと言ったところで、
 得られるものは何にもないでしょうから、賢明です」

「……できないことはないか、乾杯くらいは」

大人しく席については、自分の手をまた見遣る。
曲げられる指はどれとどれだったかな。

『ぶんせき、しゅうせき、ようしえんぐみ……』


呟きを復唱する声は正直あんまりよくわかっていないのが伝わるだろうか。
養子縁組ぐらいはぎりぎりわかる、他はわからない。
わからないから感心していた、あ、やっぱり詳しいんだな、と。
で、『Yes』の答えが返れば表情が明るくなる。貴方には見えないものだけれど。

『ほんと!?』

『よかったあ、スマホ無くてさ〜。
 新しく契約したかったんだけどそういえばなんもねえ〜と思って……』

『……あはは、ごめん。
 困ったの頼り方の一番最初、こんなで。
 お金はあるんだ、好きに使って』

もっと兄弟らしい可愛げのあるものだったらよかったのだが。
それでも手放しに頼りたいと思える家族がいることは幸福だと心から思う。
相変わらず包帯で固定された右手で、なんとなしに電話機を撫ぜた。

『今家?二度寝する?
 顔見たいな、ろーにいが良い時間に家行きたい』

…コーヒー豆の、香りがした。
ああそっか。
あの人は最初から、許してもらおうなんて思っていなかったんだ。
一番最初に腑に落ちたのはそのことだ。

――いってらっしゃい。幼子の声。
その後数日顔を合わせることもなく母は死んだ。
…同じかもしれない。ずっと同じように時が過ぎるなんてことないって知っていたつもりだったのに。
ばかだなあ。ほんとうにばか。

【人】 Commedia ダヴィード

>>79

「へえ?ああ、じゃあ。
 習ったらおれにも作ってくれませんか、ペネロペさん。
 材料代も出すし片付けもしますから」

もくもくと食べ進めながら、貴方のそんな一言に反応した。
もとよりこの男は人の手がかかった料理が大好きで、外食にそこそこの給金を注ぎ込んでいる節がある。
それが貴方のお手製ならばもっと嬉しい。そんな単純さだ。

「いいなあ、それ。来年にもまたこうやって……
 俺に似合うお酒選んでくれますか?」

今回の選んでもらったカクテルは「傷に沁みないもの」という基準が大いに影響しているだろう。
それを抜きにして、18歳の自分に貴方が何を選んでくれるのかが気になった。
その時に貴方は別の顔をしているかもしれないけれど。

貴方のいつも通りに触れた、あたたかい時間。
子どもはなんだか、泣きたいくらいに嬉しかった。
(80) 2023/09/29(Fri) 21:01:15
「おう、いいよ。なる早でやっとく。
 スマホもねえのは不便だろうさ。
 お前の事、他に心配してる奴いるんじゃねーの?」

公衆電話だけで知人とやり取りするのは余りに不便だろう。
友人も多いだろう貴方のそういう不自由はやや不憫に感じた。

「なんでもいいよ、頼ってくれんなら。
 金は貰う事になるけどそれは勘弁な。安くはしとくよ」

個人的にやったっていいのだが、他の人間と連携を取る以上仕事の客として扱った方が勘ぐられもされずに済むだろうと思っての事だ。自分もだが、相手の立場は守らねばなるまい。
詐欺としてやるなら別だが今回はそうではないので。

「家だよ。いいよ、今来る?
 なんもねーけど……30分くれない? 身支度とか終わらす」

来てくれるのは純粋に嬉しい。素直に快諾して、話しながらようやっとベッドから起き上がる。
場所ならこの間連れて帰ってきたときに覚えてもらっている筈だ。

「なんなら迎えに行くけど……足あんの? 近場?」

『ありがと、すっげ〜助かる!
 心配はどうだろ、連絡取りたいの職場のせんぱいとちょっと身内ぐらいだからな』

だからそう貴方が不憫に感じる必要はなく、というのは此方が知っていることでもないのだが。
早めに手に入れたい理由は生存報告がしたいそれだけだった。
『高くてもい〜よ』と値段については伝えたものの、安いままでも素直に甘えることだろう。
さっぱり入手経路なんてわからない自分にとっては大層なものだから、何らかの形で恩は返すつもりだが。

『今行く!』

『足ならあるよ、オレの足が。
 近場かな、わかんないけど。
 場所は覚えてる、のんびり歩いてたらそれぐらいにならないかな』

回答全てがふわふわしているが、道は覚えているのでとりあえず辿り着けそうなことだけ確かだ。

『だからだいじょうぶ、ゆっくり身支度しててよ。
 あ、猫アレルギーじゃない?
 仲間がいてさ、離れてくんないの』

伝え、切ろうとして、その前に思い出したように最後の確認がひとつ。
猫を家にあげてもいいかなの意。

【人】 Commedia ダヴィード

>>81 ペネロペ

「ペネロペさん」の手料理はきっと、初めてだろう。
貴方に作ってもらったものならきっとなんだって、それこそ消し炭だって無理矢理に口に詰め込んでから泣くような男だけれど。
これからあるかもしれない、ない話。

「あははっ、来年ですよ。言いましたからね。
 絶対一緒に来てくださいね」

もうすぐ夏が終わり、実りの秋と眠りの冬が来る。
この先にどんな苦難が待っていようと、未来に楽しみな約束があるのはいいことだな、と思う。

目の前の苦難を乗り越えるためにたくさん笑って、たくさん泣いて、たくさん食べて。
すこしだけ貴方に甘えて。
そうして、日常は続いていく。


#バー:アマラント
(82) 2023/09/29(Fri) 22:58:24
ダヴィードは、平穏と日常を愛している。
(a19) 2023/09/29(Fri) 22:58:39

檻の中の言葉。渡された荷物。コーヒーの香りする紙片1枚。
…答えは出ているはずだった。
彼が自分を、どう思っていたかは知らないけれど。

…少なくとも。

「おう。用意出来たら出来たって言うわ。
 スマホに掛けたら繋がらないのは心配させるだろ、
 早く安心させてやらねえとさ」

ついでにスマホも登録しておいてやろうかな、
なんて企みは口には出さないでおこう。

「そ? わかった、徒歩なら気を付けて来いよ。
 ──あ。そうだ、猫」

それならこっちも色々用意できるな、とズレかけた思考は、
『猫』という単語ですぐに戻った。

「あのさ。飼ったわ、猫。家に居る」
「貰ったんだよ。白猫……」

だから大丈夫、と一言。
いつぞやは自分では飼わないと言った覚えがあるが、
結果として今、家に一匹いらっしゃるのだった。

じゃあ後で手伝うわね、なんて会話をしたかもしれない。
この女に任せると、捨てようと思っていた物をいくつか持って帰られるかもしれないけれど。
それはそれとして。

「お気の毒様ねえ」
「まあ、警察も上がああなった以上はドタバタ騒ぎもやむなし……っていうか。
 それくらいで済んでよかったって感じじゃない?書類仕事で済むなら、それほどの痛手でもないでしょうしね」

署長代理とやらが捕まることで、丸く収まっているならいいことなのだろうけれど。
自分が撃ち抜いた彼の事も公になっている。結構な地位にいたらしいと聞いたから。
警察内部の事情に疎い女は、実際のところどうなの?と聞いてみている。

落ち着かない様子をちらりとみて、にまと悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「怪我人は大人しくしてて下さ〜い」と楽しそうに口にして。
鼻歌まじりにデリのパックを開けていく。
チーズとろけるピザに熱々揚げたてのアランチーニ。ジューシーなポルケッタ、パリパリのパネッレにほくほくクロッケー……本当に片っ端から屋台飯を買ってきたようなラインナップ。
結局こういうものが一番おいしいのだ。

「まあそれもそうなんだけど。
 テオが見せたくないものは、無理に見たくないってだけ」

嫌な思いさせたくないし。気を遣ってくれてるのを無碍にはしたくないし。

「できないことはないか、じゃないのっ」
「もし難しそうなら私の片手をテオだと思って乾杯するから」

どういう有様かは知らないけど。無理してグラスを落としたり、不安定になってもいけないし。
ちゃんと持てる状態でないと、この女は折れなさそうだ。

「口さえ利けるならできる仕事は幾らでもありますから、
 幸いにも税金泥棒になることはなさそうだ」

悪逆の限りを尽くしてくれたとはいえ親しかった、
因縁深い警部の話になれば、ほんの少し渋い顔をして。

余罪の追求に関する話を幾つか述べた後に、
彼を打った下手人の捜索が行われ始めていることも語る。

その方針について口利きできないわけでもないが、今はそこまで言う必要もあるまい。テオドロ・アストーリは兎も角、この警部補は何も知らないのだから。

「尊重を身に着けたのは良い傾向だな。
 この調子で俺の不機嫌を悟ったときに、
 いつでも離れられる心掛けをしていてほしいものだが」

少なくとも今は言うほど機嫌が悪く無さそう。
それよりも並べられた食事を見て、「これが怪我人の食事か……」と苦笑をしつつも賞味を楽しみにしている。

「俺の目の前で独り芝居をしないでほしい。
 そっちに滑らせるくらいはできるから、
 ちゃんとこっち宛に乾杯をしてくれ」

ここで無理を言っても仕方ないことは分かるから、譲歩案を提出する。暫くは強く出られなさそうだ。



気遣いを感じる言葉には『ありがと〜』と嬉しそうな声、もちろん企みにも気が付かないままだ。
そうして猫については……

『え?飼ったの?やだーってしてたのに。
 あはは、そっか、でもならよかった。
 遊び相手になるかも、なー』

足元で丸まってる白い毛玉に話しかけてから、それなら問題ないかと一安心。
じゃあこいつも連れてくなとそれだけを伝えて、電話を切ることだろう。

まだ人々の活気は遠い街中を伝えた通りにのんびりと歩いていく。
ようやく会えるなあ、とか。どういう心変わりがあったんだろうなあ、とか。
考えながら歩みを進めていれば、目的地までは案外すぐだった。

いつぞやもお泊まりをした貴方の家の扉前。
左の指先を伸ばしチャイムを鳴らす、ピンポーン。

「ろーーにいーーー」

ついでに子供みたいに呼びかけながら。

優秀な人は引く手数多でいいことねえ、なんて言う。
その分頼られて大変なのだろうけど。

「そう。妥当な処分が下るといいわね」

下手人の捜索が始まっていると聞けば、少しだけ目をそらすようにして。
それでも、それ以上の動揺はない。
協力者がうまくやってくれているだろうから、よほどのことがなければ足がつくこともないだろう。
そして何より、目の前の彼に知られたくはないものだったから。

あの時のことを見られていたなんて、彼女には知る由もないのだ。


「もう!前から尊重はしてたと思うんだけどっ」
「あなたが何してようと勝手に喜んでる女なんだから。
 まあ……しつこく付きまとってるところを言ってるなら、たまには放っておけって言うのも分かるけど」
「不機嫌になったくらいで離れるような女、つまんないでしょ」

黙って近くにいるくらいはするのだろうけど。
「病人食の方が好みだった?」なんて揶揄いながら。

「それなら許してあげる。軽めのグラス選んだから、そんなに力入れなくていいわよ」

それじゃあ、と気を取り直して。

「お疲れ様、テオ。乾杯〜」

テーブルの上で、グラス同士をぶつけ合うのだろう。軽い音が響いた。



「いや〜、人間心変わりってするもんだよ。
 きっかけさえありゃあ人間なんでもするんだね。
 猫用のおやつはあるから分けてやるよ。んじゃな」

ぴ、と電話の切れた音。
さて、とりあえず顔を洗わなければ。
適度に取っ散らかった床も片付けて、それから……



「はあい、はいはい、はーい……」

近所のガキみたいだな、なんて思わず笑みが零れる。
早足で玄関まで行けばすぐに扉を開いた。
貴方に会う時はいつも髪を結んでいたけれど今日はそのまま。
勿論眼鏡もかけていなかった。

「入んな〜。飲み物、用意してるから」

扉を開け放ち貴方を家の中へ迎え入れる。
ロメオの家は一階建てのこじんまりとした家で、それほど部屋は多くない。けれど物が少ないから少し広く見えるのだった。ガラスのローテーブルを挟んで一人掛けの白いソファと椅子代わりにもなる大きなクッションが置いてあり、窓際には白猫が丸まって眠っていた。

「近所の店にマリトッツォ売ってたから買ってきたわ。
 これ二人で食べよ」

心なしかそわそわと嬉しそうにおやつの用意をしながら、
「好きなとこ座んな」と促した。

ダヴィードは、買いすぎた昼食を、一人きりでは食べきれなかった。
(a34) 2023/09/30(Sat) 20:16:09

ダヴィードは、『イレネオ・デ・マリア』に、生涯出会うことはなかった。
(a35) 2023/09/30(Sat) 20:16:27

そわりとこちらも扉が開くまでを待っていたところ、貴方の姿見えたのならわかりやすく瞳が輝いた。

「かっこいいろーにいだ〜」

眼鏡しててもかっこいいけれどね。
謎に付け足しながらありがとうとお邪魔しますを続けて口にし、中へと入っていく。
ちなみに子猫は腕の中ですやすやお昼寝中だった。

「え、今買って来てくれたの?」

気にしなくても良かったのに、を続けようとしたが。
何やらそわそわと貴方が嬉しそうなのが見えて……ああ、と納得する。
喜んでくれているんだなって気が付かないわけがない、だから言わなかった。

「……へへ、ありがと、うれしい。
 お腹減ってたんだ、そういえば全然何も食べてなかった」

言葉は感謝へと形を変えて、抱くのはいとおしいなという感情。
ちょうどおんなじ色の……なんなら子猫をおっきくしたかのような白猫が窓際に居たので、そっと並べて隣で寝かせてみる。よし。
好きなところの指定には「どこだったらろーにいの隣に座れる〜?」と尋ねたりして、貴方が嫌がらないのならそれを叶えられるようにしながら。

「にしてもさ、ほんとに戸籍どうにかできちゃうんだね」

などと口にする言外で求めているのは、貴方の口から語ってもらえる本当のことだ。ちら、と顔を見上げた。

「はい、かっこいいろーにいです」

かっこいいだろ。はずかしげもなくおふざけの延長でそう言って、
貴方の腕の中の子猫を見れば「かわいっ」と笑った。

「おう。折角だから一緒に何か食べたいだろ」
「オレも朝飯まだだったし……丁度よかったな〜」

朝飯にしては甘いが、見たら食べたくなってしまったのだ。
気付いたら2個買っていた次第だ。
飲み物は何がいいか聞いて、その通りにグラスに注げばマリトッツォと一緒にテーブルへ並べる。

隣に座りたい様子があれば、
クッションをソファの横に持ってきて横並びに。
自分はクッションの方に座ろう。

「まあなー。もちろん違法だけど」

「………………ノッテの人間だからね。慣れてるよ」

これだけ言えばあなたには伝わるだろうと思った。
今回の騒動で仲間が牢屋に入れられたのだと。
自分は運が良かっただけだと。

「ごめん。黙ってて」「怖がらせるかなって……」

丁度よかったな〜に、うん〜と返して笑う声は陽気なものだ、訪れた平和を享受するみたいに。
飲み物についてはミルクがあればそれをねだり、横並びになれると分かればソファにぽすんと座る。
そうしてマリトッツォにはまだ指先を伸ばさず、返答を待って、待って。

「……そっか」

内容は予期していたものだから驚きはなく、答え合わせが済んだだけに違いない。
でも貴方の口から直接伝えてもらえたことに何よりもの意味がある。

「そりゃ〜中々言えないだろ、オレが同じ立場でもそうだよ。
 怖いの気にしてくれてありがとう、隠さず言ってくれたのも」

ふっと目を細めると其方へと少し身体を傾けた。
クッションとソファでは高低差があるだろうからバランスには気を付けつつ、とはいえ身長差を考えれば丁度いいぐらいなのかもしれない。
頬に当たるのはあの日とおんなじ、柔らかなひだまり色。

「……大丈夫、怖くなんかない。
 だから安心してね、変わらないから」

……で。
結局それだけじゃ足りなかったから、両腕を伸ばした。
貴方の頭を抱え込んで、それから左手でやさしく髪を撫でる。
抱いているこの思いがちゃんと真っ直ぐ届くよう。

「きれいじゃなくても、ろーにいがだいすき」

違法頼んだのオレだしな、とも、笑声を傍で揺らしながら。

「お前の事こっちのゴタゴタに巻き込みたくないし」
「どうせだったら
マトモ
な部分だけ見て欲しくて……」

貴方をそういう世界に触れさせたくはなかった。
無かったけれど、貴方がそうやって許すから、
正直に言おうと思えたのだ。
それでもこれは言い辛そうにしていたけれど。

「え」

──伸ばされる両腕に、ぽんと抱き寄せられる。
抱えられた頭を、自分よりも小さな手が撫でている。

「あ」「…………」「フ、フレッド」
「オレ、」

これは途端に驚いた顔をして、何回も瞬きをし。
ふと弱弱しく名前を呼んで、貴方の胸に頭を押し付ける。
弟に甘えるなんて思っても無かったけれど。

「……きらわれなくてよかった」「安心した……」
「…………あは。オレもお前の事は好きだよ」

今は抱き締め返すよりも、この時間を享受していたかった。
穏やかに目を閉じて、ぽつりと「よかった」とまた言って。

「お前……これからどーすんの」
「他に手伝う事無いの。オレやるから……」

貴方が見せたいものがあるのならそれだけを見続けているのも良かっただろうか。
だけれどだいすきだと思うからこそ、全部知っていたいとも思ってしまう。
何かあったときも足元を揺らがせることなく、同じ言葉を紡げるように。

弱弱しく名を呼ぶ声に戸惑っているなと感じながら。
それでも嫌がられているわけではないから、抱きしめたままだ。

「……うれし」

貴方を甘やかしたいし、こうすることで自分だって甘えている。
柔らかな髪を幾度も撫でてはここに在る愛情を伝えるように。

「他はぁ……ええっとさ、街出ようと思ってて。
 オレ、ニーノって子の代わりしてただけなんだけど、死んだことになったから。
 死人歩いてちゃだめでしょ、だからそう……出るんだけど……」

「……それまでの家がないです。
 野宿でもしようと思ったんだけど」

お金はたくさんあるとはいえ有限だ。
節約するべきところは節約しようかと考えていたが。
抱きしめていた腕を少し緩めて、そぅと貴方の瞳を見つめた。

「街出る準備できるまで……ろーにいの家に泊まっちゃダメ?」