人狼物語 三日月国


59 【R18RP】花韮の咲く頃

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  わ、私たちまだそう言うんじゃないから……!


[綺麗な蝶の箔押しの箱。
 高級チョコかな? と騙されるところだった。
 こう言うの、親が娘に渡すもんじゃないと思うけど!
 けど、避妊だけはしっかりしなさい。
 そう言う行為は止めるつもりはないけれど、と
 真面目な顔で言われたらぐうの音も出なかった。
 いつそう言う関係に進むか分からないし
 身の安全のためにも、なんて言われたら。
 渋々、貴重品ポーチに突っ込んでおく。
 これ、見つかったら気まずいなあ……。
 ともあれ、彼氏の存在を知られても
 根掘り葉掘りされなかったのはよかった。
 とんでもない地雷を仕込まれた気分はあるけど
 放任主義と言うか個人主義というか、
 こう言うところは気楽だな、うちの親。]

【人】 上原 隆司

>>0月曜日、急な待ち合わせで会ったとき、矢川の喜びようは飼い主が帰ってきたときの子犬のようだった。
 それがあまりに可愛らしくて、上原は躊躇いなく頭を撫でられたのだった。

 話した通りの卵焼きを作ってもらったことには驚いたが、嬉しくなって食べてみて。
 上原の感想はやはり「何かが違う」なのだった。
 隠し味でも入っていたのだろうか。塩かと思っていたが違うもので味付けされていたとか?
 母親の卵焼きの謎は深まるばかりである。

 そこで水曜の夜、思い切って母親に電話してみたところ、調味料として昆布茶が使われていたことが判明したのだった]


  え? いや、急に懐かしくなって。


[なんでそんなことを聞くのかと問われて、嘘ではない内容で誤魔化すことにした上原だったが。
 「早くいい人見つけなさい」などと言われて、面倒になってほどほどに相手して切ることになった。

 矢川のことは可愛がっているし、会えることも嬉しいけれど、結婚まで考えるような相手かどうかは、まだ上原にはわからなかった]
(3) 2021/03/05(Fri) 8:50:27
[矢川母の贈り物は英断であった。
 なにせ上原に避妊具を買い置きする理由がなかった。

 自宅には古いものが余っていたかもしれないし、使用期限も過ぎてないかもしれないが、すぐに出せるところにあるかは不明である。

 その上、矢川が高校生ということもあり、まだ早いと思い込んでいる節がある。
 買って持ち歩くことも当分は無いであろう]

【人】 上原 隆司

  ……卵焼きでわかるもんなのか。


>>1矢川の申告は上原にとっても予想外だった。
 が、確かにわざわざよその家庭の味を作ろうとは思わないかもしれない。作るとしたら、それだけ親しい人ができたということになるのか。

 矢川が気楽そうなことが上原は嬉しかったし、反対されなかったことには心が安らいだ]
(4) 2021/03/05(Fri) 8:51:25

【人】 上原 隆司

[金曜日、迎えに行く場所は矢川の家だった。
 ここ1週間ほど、ストーカーが大人しそうではあったが、やはり心配なものは心配で。
 出かける時刻が暗くなり始める頃というのもあり、上原は「家まで迎えに行く」と伝えたのだった。

 上原の服装はと言えば、仕事帰りに直行だったから、いつも通りの服装だった。
 キャメルのチノパンにオフホワイトのシャツを着て、その上からボルドーのニット。靴は革靴、上着は黒い革のコート。
 気張ってないといえばそうだが、あまりデートらしくはなかったかもしれない。

 >>2矢川の家に着いた頃には、彼女は準備万端で]


  悪い、待たせたか?


[約束よりほんの少し早く着くのが上原の常だったが、それでも心配になってそう声をかけた。
 そうしながら、より大人っぽく見える彼女を見て心臓が跳ねたのだという]**
(5) 2021/03/05(Fri) 8:51:58

【人】 上原 隆司

  卵焼きにもドラマがあるんだな……。
  よく聞くのは味噌汁だが。
  コショウ入りも美味そうだ。


[家庭の味でよく取り沙汰される定番品目、味噌汁。それこそ生活を共にしないと食べる機会が少ないだろう。

 パートナーのために慣れない味の料理を作るというのは、料理が苦手な上原には分かりづらい感覚だった。
 けれど合わせてもらう側としては嬉しくて、別の何かで応えられたらと思うのだった]


  あー、蛍のも美味いんだが、
  慣れた味とは少し違ってなぁ。

  なんでか気になって親に聞いてみたが、
  昆布茶で味付けしてたらしいぞ。


>>6卵焼きの感想を問われると、味の秘密は素直に教えた。
 上原家ではその他の料理にも昆布茶が密かに使われていたらしい。

 他にも様々な料理の知恵があったのかもしれないが、上原はそれを知ることなく実家を離れてしまったのだった]
(8) 2021/03/05(Fri) 15:02:58

【人】 上原 隆司

  う、腕? いいけど……、
  歩きづらくないか?


>>7腕を組みたいという申し出に一瞬戸惑う上原だったが、矢川の舞い上がりようが可愛らしくてたまらなかった。
 どのくらいくっつく気なのか測りかねてそんな返事になりながらも、拒むつもりはなかった。

 駅から近い分、bloomの看板は見かけたことがあったが、上原はゆっくり入ったことがない店だった。
 それでも店名を聞けば迷うことなくたどり着けただろう。
 演奏を楽しむ店なら、向かい合わせよりも隣同士で座る席が多いだろうか。

 服装は大人っぽくても、弾む心を隠せない矢川の姿は年相応だった。
 そのギャップがたまらなくて、上原はたびたび矢川に視線を向けては笑みを隠せずにいた。
 傍目には相当に仲睦まじかったかもしれない]**
(9) 2021/03/05(Fri) 15:03:46

【人】 上原 隆司

  うちはなんだったかな……。
  出汁は煮干しとか昆布だったと思うが。

  いろんな具で作る人だった。
  わかめとか豆腐とか玉ねぎとかエノキとか。

  味噌は合わせ味噌って聞いた気がするな……


>>10味噌汁の話題になって思い返してみるが、作るという観点だと詳しい情報が足りないと感じた。
 一口に「合わせ味噌」と言っても様々な種類があるらしい]


  塩は確か入れてないんだったかな。
  昆布茶とコショウでも美味いんじゃないか?


[しらす干しなど、混ざった具材の塩気もあって味は足りるのだろう。
 上原家が塩分控えめだった説もある。塩分を控えても旨味があると食べやすいのだとか]
(13) 2021/03/05(Fri) 17:36:29

【人】 上原 隆司

>>11矢川が腕にくっついてくると、柔らかい感触があった。
 上原はそれでいちいち騒ぐ歳ではないものの、感想が無いわけでもなかった。言葉に出すことはなかったが。

 店に着くと、薄暗くしっとりした雰囲気に上原は安らぎを感じた。
 矢川にとっては慣れない雰囲気なのかもしれないと、席に案内されると慎重に様子を窺うことになった。

 矢川がシャンディ・ガフを頼むのを聞いてメニューを確かめると、ノンアルコールの欄にあった。
 本来はビールで作るカクテルだが、ノンアルコールビールで作る例もあるらしい。ノンアルコール欄にあるからには、間違いなくノンアルコールのはずである]


  モヒートを。


[上原はアルコールメニューを見てすぐに見つけたお気に入りのカクテルを頼んだ。アルコールはそれ1杯にするつもりだった]
(14) 2021/03/05(Fri) 17:36:56

【人】 上原 隆司

[店員が去っていくのを見ると、続けてメニューをめくって]


  軽食ぐらいあるんじゃないか……?
  あ、あった。


>>12夕飯はと問われてフードメニューを探して、少量ながら見つけたのだった。
 揚げ物がほとんどで、その他もおつまみの類と言える。
 フライドポテトとか唐揚げとかフィッシュ&チップスとか、カプレーゼとかナチョスとか、チーズの盛り合わせとか生ハムとか。
 食事扱いで楽しめるかは個人差があるだろうが、上原は気にせず食べる方針であった]


  何か食べたいものあるか?
  名前が気になるやつとか。


[メニューを矢川にも見せて、様子を窺った]**
(15) 2021/03/05(Fri) 17:37:20

【人】 上原 隆司

>>16矢川がなんだか緊張しているように見えて、上原は心配そうな視線を向けた。
 慣れない場所で不安ではなかろうかと、どうしても気になるのだった]


  レーズンバターは……うん。バター。


[バターにレーズンを練り込んで固めたものだという。それは果たして食べ物なのかという疑問は上原も抱いていた。
 トーストに塗って食べるという選択肢もあるというが、むしろそちらが普通ではないのだろうか。
 しかもラム酒に漬けたバターである。酒のつまみに酒が染み込んだレーズンとはいったい。]


  じゃあチーズの盛り合わせと。
  俺はフィッシュ&チップスにするか……。

  分け合うか?


>>17矢川が決めたのを見て、食事に近いメニューを選ぶ。
 酒を持ってきてくれた店員に頼んで、モヒートのグラスを手にとった]
(19) 2021/03/05(Fri) 18:25:52

【人】 上原 隆司

  ミントだな。
  食べたければ食べてもいいんじゃないか……?


[上原は残す派ではあったが、飲食の仕方は個人の自由な気がしてそう答えた。
 グラスを持ち上げるのを見れば同じようにグラスを寄せて]


  乾杯。


[矢川に微笑んで、グラスを傾ける。
 たっぷりのミントが入って、ジンも相まって香り高いモヒートだった。他店で飲んだものより美味しい気がして、思わずメニューのアルコールのページに戻る。

 矢川の感想はとても微笑ましくて、つい小さく笑い声をあげた]


  ジンジャーエールが入ってるからな。
  ノンアルでも苦いしな……ビール。


[的を射た感想ではあるのだが、素直な言葉が高校生らしい。
 反応を面白がるように笑いながらも、上原は今日の待ち合わせから今までの間で、“年下の彼女”の良さをしみじみと感じていた]**
(20) 2021/03/05(Fri) 18:26:24
[今日の曲目は、映画の名曲のジャズアレンジ。
 「虹の彼方に」はかなり古い映画から。
 それから始まり、ピアノとサックスたちとの演奏が
 しっとりとした調子で奏でられていく。
 自然と私は言葉少なに、演奏に聞き入ってしまう。
 矢張り高音域のソプラノとアルトがメロディの中心となり
 テナーやバリトンがそこに深みを加える形が多い。
 私はバリトンだから、ついそちらの音色に耳を傾ける。
 低く艶のある音色が大人の雰囲気にとても合う。
 飲むことも食べることも忘れて
 つい曲に集中してしまっていた。

 でも。
 ちら、と隣にいる隆司さんに時々視線を送って、
 隣に確かにいてくれる事が嬉しくて。

 穏やかに微笑んで、それからまた曲に耳を傾けた。**]

【人】 上原 隆司

  酒飲むと脂っこいもの食べたくなるからなぁ。
  といってもバターはどうなんだろうな……
  キツいのには合うんだろうか。ウォッカとか。


>>21酒を飲む身にもいまいちわからないレーズンバターの魅力。きっとわかる人にはわかるのだろう。
 つられるようにナッツを少しつまんだ]


  ノンアルなら大丈夫。
  そんな飲みづらい味なのか? それ……

  他のも飲んでみりゃいいのに。
  シンデレラとかさ。


[苦笑いを浮かべる矢川に首を傾げ、ノンアルカクテルの定番を指差した。名前も味も女子受けしそうな代物である。

 店員が来ると礼を言って頭を下げた]
(23) 2021/03/05(Fri) 20:23:16

【人】 上原 隆司

  これ食べると黒ビール飲みたくなるんだよな。
  本場のはもっと不味いって聞くが、
  本当なんだろうか……


[フィッシュ&チップスをつまみながら感想を呟いて、モヒートを一口。香りは良いが、魚には合わないかもしれない……そんな感想が浮かんで、チーズに手が伸びた]


  ん、これ美味いな……


[上原が思わずそう呟いたのは、あまり食卓では食べないような独特の風味のクリーミーなチーズだった。牛乳からはこの味にならないかもしれない。

 少しずつ飲んでいた分、演奏が始まった頃にはまだグラスの中身が三分の二は残っていた]
(24) 2021/03/05(Fri) 20:24:05
[演奏が始まると、上原は矢川がバリトンだと言っていたのを思い出した。
 目立たない、だが無いと締まらない、縁の下の力持ちのようなパートだ。

 聞き覚えのある名曲の数々がサックスで奏でられるのを聞きながら、自然とバリトンの音に意識が向かう。
 それが、甘えながらも尽くそうとしてくれる矢川の姿に重なるように感じて、そっと彼女の髪に手を伸ばした。
 微笑まれると目が合って、微笑み返して髪を撫でた。

 そうして音色を楽しみながら、静かにモヒートのグラスを傾けると、氷がグラスにぶつかる音が微かに鳴った]**

[そんな気分だったのだけど。
 微笑まれて、頭を撫でられたから。
 別に二人きりじゃないけど良いかなって
 カラン、と氷が傾く音を聞きながら
 隆司さんの方に身を寄せて、頭を預ける。
 隣同士に座っていたからそれでも視線はステージに。
 今は「輝く未来」が演奏されている。
 今回は珍しくバリトンがメロディを担当していた。
 甘いメロディを朗々と歌い上げているようで
 耳にとても心地よい。

 こっそり、指先を伸ばして。
 テーブルの下で指先同士を絡め合わせて握っても
 大丈夫、かな。

 こんな時間がずっと続けば良いのだけど。]

[演奏を聴く他の客たちの中にも、カップルはいたのだろう。
 隣り合う座席からはステージがよく見えて、薄暗い店内では周りにも意識が向かない。

 メロディを奏で始めるバリトンは、それまでとは全く別の魅力を持っていた。
 意識しなければ陰に隠れるようにも感じた音色が、今は主役となっている。

 手が重なって指が絡むのを感じると、応じながらも照れ臭くなって、彼女に視線を向けられなくなった。

 それも演奏が終わって拍手の時間になれば、自然と離れることになって、名残惜しさを感じずにはいられなかった]

【人】 上原 隆司

>>25彼女がシンデレラに乗り気でない理由を推測するのは難しかった。
 悲恋のイメージなのだろうか、と思ってみてもしっくりこない。
 それでも無理強いをすることはなく、時を過ごした。

 演奏が終わってしまえば、拍手をしながらも、もう少し長く続いてほしかったと感じた]


  プロの演奏は迫力が違うな……。
  終わるのが惜しい時間だった。


[日頃、生演奏を聴く機会など上原にはほとんどなかった。矢川と出会わなければ、ここへ来ることはなかったかもしれない。
 そう思うと、彼女は年下の可愛らしい女の子であるだけじゃなくて、新しい世界を教えてくれた人なのだった]
(27) 2021/03/05(Fri) 21:23:19

【人】 上原 隆司

[矢川と同じように、食べ終えていないものは食べ、グラスは空にしながら、どうするかと問われると彼女を見つめ返した]


  蛍はどうしたい?
  あまり遅くなるのもまずいだろうが、
  次までなら時間は大丈夫なんじゃないか。
  後悔のないようにしてくれ。


[ちらりと時計を見る。
 まだ、未成年が店内にいてもいい時間のはずだ。
 あとは予算次第である。上原には持ち合わせも、いざという時用のクレジットカードもある。
 だから、彼女の希望に合わせるつもりだった]**
(28) 2021/03/05(Fri) 21:23:30

【人】 上原 隆司

  そんなこともできるんだな……。
  ああ、また来よう。


>>29彼女の演奏が聴ける機会は、ほしい気がした。
 自分の楽器はないのだろう。>>26
 なら、普段は聴きようがない。
 けれど、彼女がどんな音を奏でるのか、それがどんな風に他の人たちと混ざり合うのか。
 一度でいいから、目の前で聴いてみたいと思った]
(31) 2021/03/05(Fri) 22:00:20

【人】 上原 隆司

>>30片時も離れたくないとでも言うようにくっついてくる矢川は、まるで酒に酔ったかのように見えた。
 それが共に時間を過ごしたことを物語っているみたいで、拒む気など起きようもなかったのだけれど。

 肩が抱きたくなっても、腕が封じられている。
 それがほんの少しだけ不満だった]


  ……公園か。
  冷え切る前に帰るぞ?


[少し夜風に当たりたかった。
 音楽を楽しんだ後は、すぐに喧騒の中に戻るより、夜の静けさを感じたかった。
 だから、公園はとても魅力的な行き先に思えた。>>L0
 外は寒い。だから、そんなに長時間にもならないだろうと。
 別れを惜しんで日常に戻る手前の場所として、ちょうどいいように思えた]**
(32) 2021/03/05(Fri) 22:01:14
[――腕を離してほしい。

 そう言いたかったのに、言いそびれた。
 あっという間に公園に着いてしまったから]

【人】 上原 隆司

>>33隣同士でベンチに座るとき、矢川の言葉で顔を上げた。
 少ないけれど、花開いた桜があった。いつの間にそんな季節になったのかと、上原も目を細めていた。

 街灯に照らされた桜の花はやけに白く見えるのに、隣にいる彼女の頬はやけに赤く見えた。
 >>34その瞳が潤んで見えたのは光の加減ではないのだと、すぐに気づくことになった。

 始まりは形だけの、名目上の関係のはずで。
 デートも半分は作戦のはずだった。
 だから、このままストーカーが何もしなくなれば、自然消滅だってありえたのかもしれなかった。

 けれど、いつの間にか上原はこの関係を楽しんでいたし、会いたい日も、頭を撫でたいときも、抱き締めたいときもあって。
 その理由が曖昧なままだったことに、彼女の言葉でやっと気付いた]*
(35) 2021/03/05(Fri) 22:58:50
[彼女の手は両手とも膝の上だったろうか。
 それとも、片腕はしがみつかれたままだったろうか。
 しがみつかれていたなら、それを拒むように腕を動かすことになる。
 彼女の肩を抱き寄せるために、必要なことだから。

 囁きかけて、肩を抱き寄せて、間近に彼女を見つめたとき。
 また、唇に触れたくなった。

 けれど、触れたらキスをしたくなる気しかしなくて。

 それにはまだ少しだけ早いような気がして、ただ見つめるだけに留めた]**

[肩を抱き寄せられて顔を上げる。
 直近に彼の瞳があって、視線が絡んだ。
 膝の上に置いていた手をそっと彼の方に寄せる。
 でも、見つめ合うだけ?
 こんな時、……。]


  ……。


[何かを言いかけて、けれど薄ら開いた唇をまた閉じた。
 眉尻が下がって、泣きそうな顔になってしまう。
 けど私はそのままそっと瞼を下ろした。
 ほんの少し顎を上げて隆司さんを待つ。

 街頭の光を受けて、桜の花びらが
 闇に浮かび上がっていた。**]

[瞼を閉じて、顎を上げて、じっと待つ矢川を見ていた。

 引き寄せられるように頬に触れて、そっと親指で唇を撫でる。
 上唇から、下唇へ、形をなぞるように指先で優しく撫でて、それから。

 指を離して、唇を寄せて、一瞬迷ってから静かに重ねた。
 ただ触れ合うだけの、けれど感触を確かめるような、唇をじっくり味わうような、長いキス。
 離れる頃には、上原の頬もすっかり上気していた。

 今日、デート中の上原は煙草を吸っていないけれど、それでも染み付いた匂いはあったかもしれない]

  ……。


[でも、唇が離れたら何を言って良いかわからなくなった。
 そっと瞼を上げて隆司さんを見る。
 真っ赤な顔で、潤んだ瞳で、
 けどもう泣きそうじゃない。
 眉間の皺も消えていて、でも私はぼんやりしていた。
 夢見心地というか、なんだかぽわんとしてしまって。]

  ……ん。


[だから、もう一度。
 私の方から一瞬唇を寄せて、
 それが夢じゃなかったと確かめられたら。

 ぎゅ、と彼にしがみつくと思う。
 好き、という気持ちが受け入れられること。望めること。
 それがとても幸せなんだなって思ったから。**]