人狼物語 三日月国


242 『慰存』

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[最近では喫煙者は肩身が狭いと聞きますし
 喫煙者というだけで嫌な顔をされることだって
 あるのかもしれませんが……。
 煙草を吸っている姿をみても
 当然嫌悪感なんてありません。

 視線を感じさせてしまったのか
 不意に辺りを見渡しているのには
 少し驚いて、死角に身を潜めます。
 どうやら見つからずに済んだみたいですが
 気を付けないといけませんね。]
  


[渡した差し入れがもしかしたら
 道中で捨てられてしまうかもしれない、とも思いましたが
 杞憂だったようです。

 きっと、ファンの気持ちを無碍に扱わないから。
 
……私の気持ちを大切にしてくれる。

 それがどれだけ嬉しいか
 あなたに伝えられたらいいなと思うのです。]

 


[たどり着いた場所は、オートロックのあるマンション。
 住人に紛れて入ることも一瞬考えましたが
 騒ぎになってしまったら入居来ませんし。

 場所を確認した私は、一度帰宅することにしたのでした。]
 


[―――――というのは建前。

 好きな人の住んでいるマンションに住みたいから、 
 とはいくらなんでも言えませんから。

 止められたりしたら面倒でしょう?

 毎日ネットで確認して
 目的のマンションに空室が出たと知ってすぐ
 私はそこに引っ越すことに決めました。


 流石に隣の部屋に血腹先生がいるとまでは
 知らないままでしたが。]

 


[……発信機の示す位置はマンションから動かないまま
 きっと部屋に置かれたままなのでしょう。
 捨てられていないことをうれしく思いつつ。

 私は無事引っ越しすることが出来たのでした。]
 

***


[引っ越ししたことで大学生活に
 何か影響が出るかと言えばそんなことはありません。

 徒歩や自転車での通学ならともかく
 電車通学なこともあって
 通学にかかる時間が大きく変わることもなく。
 週に一度だけある一限から講義の日は
 満員電車に乗らなければいけないのも変わりません。

 掛け持ちしていたバイトは両方辞めて
 家から徒歩三分のコンビニで働くことにしました。
 家とバイト先が近い方が何かと便利ですし。

 とはいえ、頻度はそんなに多くせず
 週に2〜3日、大抵夜にシフトを入れていました。
 家がこれだけ近ければ、
 夜遅くなっても危ない目に合うこともないだろう、
 なんて慢心があったのは否定できません。]
 


[バイトも講義もない日はといえば
 本屋に行ったり図書館に行ったり。
 女子大学生らしくはなかったかもしれませんね。]
 


[引っ越してから一週間ほどは、大学を休んで
 隣の部屋にいるあなたがいつ外出するのか
 ドアの開く音を頼りに聞き耳を立てて。
 外出を書くんん出来たら、少し間を置いて後を追って、 
 行き先も確認していました。

 ゴミ捨てのために外に出たのなら、
 何時何分にごみ捨てに行くのかとか
 
 以前であったスーパーに行く日、時間は
 決まっていそうなのか、それともバラバラなのか。

 何か趣味はあるのか、どこかに遊びに行ったりするのか。

 とにかく、どんなふうに過ごしているのか知りたくて。]

 


[偶然を装って、同じ時間にごみを捨てに行っては
 おはようございます、って軽く挨拶もしました。
 慌てて梳かしたせいで残ったままの寝ぐせを
 気にする余裕もなく、
 好きな人に朝から会えて嬉しいな、と
 心の内で密かに舞い上がっていました。]
 


[別に相手に迷惑をかけてるわけじゃない。
 これくらい、なんてことない。
 持ち合わせていたはずの倫理観は
 とうに消えていましたから
 自身の行動を不思議に思うこともなく。


 ただ、知りたい、近づきたい。
 その想いを形にしていくだけ。]*

 



[葉山にとって、ストーキングとは自己防衛であった。]




[葉山という男の人生は、他人からの排斥が大部分を占めている。ストーキングという加害行為に基づく防衛行動、その異常性を幼い頃には母親に、成長してからは父親に指摘されてから今に至るまで、葉山が多数派と受け入れられることは万に一つもなかった。

小学校では白い髪は忌避され、中学と高校ではその顔立ちから反感を買い、その度に自分を悪くいう人間の事を徹底的に調べ尽くして恐怖を与えて追い詰めるようになってしまう。

特定の誰かに強い執念を持ち、プライバシーの柵を切り倒す。そうして首元に爪を立てれば、完了だ。

それこそが葉山が唯一持っている防衛の手段だった。]



[人は安息の地から石を投げる時にその本性を表す。醜く卑劣なやつらは自分の安全を確保できた時にしか他人に牙を向けない。

これは当然の措置なのだ。安息の地で石を投げる人々と腹を割って話し合うためには、彼らを地の底に引きずり下ろすしかない。

ストーキングという異常性が示す目的などただ一つ、葉山はそう信じて疑わなかった。]





      [ そ う 。あ の 日、ま で は 。




  [そう、偶然なのだ。

   前の入居者が突然出ていってしまったことも、
   こうして都合よく隣の部屋が空いたことも全て。]






    私なんて、誰にも好かれない。
    好かれるほどの価値がない。


  



  「せなちゃんは"いけにえ"なんだよ。
   だから……ごめんね、
   わたしもせなちゃんとなかよくするの、やめるね。」

  



[小学校の時、クラスの子全員から無視されました。
 小さい頃の私は今より泣き虫で、
 今より体力もなければ運動神経だって悪くて。
 学校の大縄跳び大会の練習で
 うまく跳べずに足を引っ張ったのがきっかけ。
 最初は女子のほんの数人から無視されてるだけで、
 私は友達と笑って過ごせていました。
 ……結局私は跳べるようになったのに、
 その子たちは無視を止めることはなく。]


 



  「ねぇ、なんでせなちゃんなんかと話してるの。」

  



[他の子にもそう言い始めたのです。

 逆らえば次の標的は自分かもしれない。
 自分が標的になるくらいなら、無視するだけなら……
 そんな思いで私を無視する子は増えていき。


 友達だと思っていた子に生贄だと言われたのを最後に、
 私はクラスで孤立しました。]


 



[勿論、両親は気づきました。
 担任の先生に相談しているのを私は見ていました。]

 



  「でも、無視されるってことは
   聖奈さんにも何か問題があるんじゃないですか?」


  




    
―――――………。



 



[見ていなければよかったのかもしれない。
 今思えば、そう思うのですが、過去は変えられません。]


 



[私は二度と同じ目に遭いたくなくて
 家から離れた中学校に進学することに決めました。
 私に問題があったのかもしれないから
 中学生になったら体力を付けようと思って
 自転車で長い時間かけて通学したり、
 休日だって運動を欠かさずにして。
 もちろん勉強だって頑張りました。]

  





           
[………それでも、だめでした。]

 



  「聖奈ってなんかいつも人の顔色伺っててキモい。」

  「優等生ぶっててむかつく。」


  



[上手く、馴染めなかったんです。
 何が悪いのかわかりませんでした。

 ……対象は誰でもよかったのかもしれません。
 ただ、私ばかりが損な役回りを引くだけで。]


 




   そっか、私は誰かに好かれることはなくて。
   たとえ誰かを好きになっても
   想いを伝えることは諦めるしかないんだな。