[言葉を理解していてもこれまで生き延びた時間は互いに異なる
つきりと疼く痛みを何と表現すれば正解なのだろうか。
化物が知る筈のない名前を捨てて黙り込んだ。
問いかけを一笑
楽しくもないのに浮かべる表情はどこか壊れているのかもしれない]
それは、ただの夢だよ。
目を瞑っていると真実から遠ざかるの同じように。
全てを見せることが恐ろしい――か。
化物が何を怯える必要があるんだろうね。
だけど、……見せたいとは思えなかった。
この手には最初から何も残ってやしないのに。
ほんの少し、夢を見て現実から目を背けてしまった。
それだけでこの体に生まれた空洞はあまりに大きかった。
[ただそれだけのことだよ。
そう語る男の目尻からは、ちっとも涙なんて出やしなかった]