人狼物語 三日月国


137 【身内】No one knows【R18】

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  ……。


[どうしましたと訊ねる声に
 答えられず俯いた。
 目を閉じてて欲しいなのか
 もう一度私の立場を教えてほしいなのか
 自分でもわからなかった。]
 

 
[彼が私のこれからについて語る。
 それを大人しく聞いた。]


  ……。


[全て彼に従うつもりの私だけれど
 彼の言葉には一つだけ間違いがあった。
 生涯何人が自分の上を通り過ぎようとも
 この身に快楽を植え付けられたのは
 貴方だけということだ。]
 

 

  ……やだ。


[子どものように言って、首を振る。]


  ……やだ、ぁ……やだやだぁ……っ


[イヤイヤと首を振る。
 大粒の涙がぽろぽろとこぼれおちていく。
 だってそれ、全然大事な商品じゃない。]
 

 

  そんなWどうでも良い商品Wじゃ
      頑張れないよぉ……っ


[馬鹿みたいに泣きながら彼を見た。
 彼は、自分の方なんて見てなかった。
 彼の視線の先にあったのは、青い────]
 

 
[カッと目を見開いて咆哮する。]


  それぇ……っ 
私のだぁぁ!!!!



[掴まれていないほうの膝で
 リガートゥルの股間を蹴り上げた。
 男が呻き距離が開けばもう一度足を蹴り上げ
 鎖の先についた鉄球が頭蓋を砕く音を響かせた。*]
 

[ それが両目の揃った魔女の力なのか。
重い鉄球を物ともせず、それどころか易々と振り上げて部下の頭を砕いた。]


 馬鹿が。
 油断するからですよ。


[ だが、その動きには多少の驚きはあった。
指を鳴らすまでもなく、その動きにギアスは女の魂に痛みを刻み込む。いかに耐えようとも、呪いによる痛みは逃れようがないのだ。だというのに女はそれを振り切っている。]


 ……魔女め。


[ 口元の薄笑みが、大きく嗤う。]

[ 男は椅子に座ったまま豹変した女を見た。]


 これは私のものです。
 契約を守れなかった貴方のものではありません。


[ その表情から笑みが消える。
暗い眼鏡は、男がどのように女を見ているのかを隠してはいるが、その顔は今まで女に見せたことのない冷たいものであることは確かだった。]

 

 私からこれを奪いますか?

 ジャンヌ。

 それなら、私は貴方を捨てなければなりませんね。


[ それは明確な敵意。
客でも、商品でも、所有物でもなく。
女に向けた男の気配は、敵意だった。]*

 
[めきゃりと骨の折れる音は
 大男の頭の他にも鳴っていた。
 蹴り上げた女の細い足首が、あらぬ方向に曲がっている。]


  はーあ、人の体って、面倒だわ。


[だが気怠げに言う間にも治っていた。
 両の足で冷たい石の床を踏み締めて立つ。
 外傷も魂に受ける痛みも
 窓の外で小鳥が囀ってるみたいだわ。]
 

 
[椅子に座ったままの男を見る。
 この男は自分を捨てるというのが
 脅しになると思っているのだ。


  ふふ、そんなの効くと思っているの?


[嘲笑する。
 ……実際ちょっと堪えて頬が引き攣ったけど、
 自分はいい子でいたかったんだ。
 どうでもいい子になる位なら、悪い子を選ぶわ。]


  ……奪う? いいえ、返して貰うのよ
  それが貴方のものになった時間なんて
  一瞬たりともないんだからぁ……っ!


[手枷の嵌まる手を力任せに引けば
 鉄の鎖が千切れて女の身体を自由にする。
 男を威嚇するように睨みつける。
 それは私のだ。]
 

 
[────そこに水を差すものがある。]


  「きれいな顔が台無しだよ、ジャンヌ。
   君の人としての取り柄はそれ位なんだからね」


[二十代半ばほどの身なりの良い金髪の青年が
 ジャンヌの傍らに立っていた。
 呆気に取られるジャンヌのドレスから
 白いハンカチを取り出し涙と唾液と血を拭う。]


  「君が働いて買ったのかい。凄いじゃないか。
   はぁ……勿論婚約者の僕にくれるんだよね」


[呼吸など必要としないその男は
 ハンカチを鼻に当て深く吸い込むと自らの服にしまう。]
 

 
[それから、ジュダスの方を向く。]


  「どうも、商人の方」


[品良く微笑いかけ挨拶した。*]
 

[ 脅しと取られたらしい。
実際には行わずに効果を狙うのが脅しであり、実際に行うのは宣言である。などと高説を垂れるつもりは無い。男の言葉が宣言≠ナある以上、どう受け取ろうと知ったことでは無い。]


 今まさにこの手にあるというのに。
 私のものでは無いと。
 世間知らずもそこまで来ると救えませんね。


[ 豹変した女を前に男は変わらない。
薄笑みの消えた冷たい顔のまま、ただただ女の威嚇を受け流していた。]

 
 ほう?


[ 女の雰囲気がまた変わった。
いや,変わったと言うよりも─── ]


 何と呼べばいいかな?
 魔術師の方。


[ なるほどと得心しながら、男の顔に薄笑みが戻る。]*

 


  「ロジェ・ド・メーストル
   好きに呼んでくれ給え
   話をしよう。お茶でも飲みながら」


[男は名乗る。
 そしてパチンと指をひとつ鳴らした。
 床に倒れる大男の姿がなくなり、その代わりに、
 ティーテーブル1脚にチェア3脚が現れる。
 地下牢の中に異質な空間が出来上がった。]
 

 
[チェアに腰を下ろすと声を上げ
 マリエルにお茶の支度をするよう命じる。
 辺りにいるようなら彼女は指示に従い運んでくる。
 上から重ね掛けされようと
 一度土地に踏み入れ支配を受けたものが
 魔術師の手から完全に逃れることは叶わない。]


  「彼女の淹れる紅茶は美味しいんだってね
   貴公も試したのかな、ジュダスくん」


[どうぞ席にと勧めるが無理強いはしない。
 「私の……」とブツブツ呟く婚約者には自身の隣の席を勧め
 悩む様子もありつつ大人しく座るのを見届けた。*]
 

 
 それで?
 メーストルが何か用ですか。


[ 薄笑みを浮かべたままの男は少し呆れたように言葉を口にした。勝手に踏み入って好き勝手を始める魔術師に不快感がないこともなかったが、それよりも何しに来たのか知るべきだった。]


 おっと先に言っておきますが、
 私の眼も少々特殊でして。
 
 幻惑の類は無駄ですよ。


[ ディスイリュージョン
幻惑の類を無効にする魔眼。生来の視力の低さはこの魔眼の副作用でもある。そのため、ジャンヌの持つその眼に比べれば出来損ないと言えないこともないが。]

[ 男は首を横に振る。]


 いいえ、茶を嗜む趣味はないので。
 私の分は結構です。
 

[ 男は茶を辞し、勧められた席に着くこともない。
元より座っていた無機質な椅子に腰を下ろしたまま。]


 何か言いたいことがあって出てきたのでしょう?


[ ブツブツと何事かを呟く女には一瞥もくれない。
意志を持たない人形に用はないのだ。]*

 
[ジャンヌは青い宝石が気になって仕方がないが
 魔術師の言葉に渋々従うしかなかった。
 彼女の知る世で最も恐ろしい男が目の前に二人もいて
 それぞれの出方が読めないものだから。

 だがいつでも宝石を狙っていた。
 持つ男に隙がないのを理解しているからこそ
 飛び出したい本能を抑え漁夫の利も狙わねばならない。

 そうやって鉄球二つを引き摺ってきた娘の隣で
 魔術師は人の良さそうな顔で笑っている。]


  「アポ無しで失礼したね。
   へえ、貴公も面白い眼をお持ちなのだね」


[領地を踏むことが術の発動条件であり
 話をしにきたので個別にかける気もなかったが
 興味深そうに色の濃い眼鏡の奥を見つめた。]
 

 

  「それに僕を知っているなんて凄いじゃないか」


[こんな大陸の反対側に住む人間にまで
 自分の使う術の種類が知られているのは
 魔術師にとって恥ずべきことだ。
 悟らせないからこそ何百年と実際の土地を用いた
 陣取りゲームで遊び続けていられるのだから。
 だが商人の情報収集能力の高さを素直に賞賛した。
 幻惑を打ち消す瞳といい、良い素材だ。]
 

 

  「だそうだ、マリエル。
   お茶は二人分で頼むよ」


[こんなに美味しいのに勿体ないね。
 そう言って一人だけ紅茶を優雅に味わう。
 コットンが余計な渋みを吸着しまろやかにしてくれる。
 この淹れ方が最高なんだよと
 階上に戻っていくマリエルに声を掛けた。]
 

 

  「そうだね、言いたい事は幾つかある」


[カップをソーサーの上に置いた。]


  「先ずは貴公に感謝を。
   調査のために使いを送ってくれたろう。
   それで彼女の居場所が掴めた。
   お陰で時間が短縮できたよ、感謝している」


[一度支配した者の目と耳は自由に借りられる。
 同時に数千人並行処理をすることもあるが
 街を飛び出した娘の行方は離れれば離れるほど
 掴むのが困難だった、それに関する礼を述べた。
 女の寿命は短いからという理由であるが。]
 

 

  「それから契約書の内容。
   あれには見つけても価値をつけないまま、
   或いは報告をしないまま期限を迎える、など
   貴公が自動的に勝利を得る手が幾つか使えたが
   貴公はそれをしなかった。
   ゲーム性を楽しむ心が垣間見えた気がするね。
   あれはよかった、なかなか見ものだったよ」


[本題にはまだ入らず。
 手を軽く叩いて賞賛した。*]
 

[ 実に魔術師らしい物の捉え方だった。
だが、その勘違いを正してやる理由はない。]


 なるほど。
 大した魔術師ですね。


[ 如何に魔術的なラインが繋がっていたとしても、その支配を及ぼすには並大抵の力では足りない。故に、古代魔術はギアスという方法を使った。術師の力を常に使わずとも縛り付ける方法を。それが例の契約書だ。
魔術が万能であるならこの世を支配しているのは剣ではなく魔術なのだ。
故に、この魔術師の限界も見える。]


 それで?


[ 長い前口上に興味はない。]

[ 男は魔術師を見る。
おそらく幻惑の類、打ち消そうと思えばいつでもできる。
そうでないというなら、この場で殺してしまえばいい。

そして男は女を見ない。
興味を失ったかのように、まるでここに居ることすら忘れたように。

そこ視線も、薄笑みも魔術師に向けられている。
この場、この対話は男と魔術師だけのものだった。]*

 
[ありがとう、と軽く流し、
 うん、と頷き魔術師は続ける。
 契約の内容は互いに肝心なところが
 守られていないと指摘する。]


  「一個質問したかったんだよね。
   、、、、、、、、、、、、、
   見つかってるものを見つけるって
   一体どうやるの? ってね。

   契約の不履行はそちらもだよ」


[そもそも片側が確実に負けることのない誓約では。
 制約内容も制約の存在も聞かされておらぬ契約では。
 そんなもの効果もたかが知れていると続ける。
 事実、その言葉を聞いた娘は魂を縛る鎖が
 解けるまでいかずとも拘束が弱まるのを感じた。
 人の心を惑わす術を使うのが魔術師なのだ。]
 

 
[魔術師の姿自体は幻惑の類ではない。
 魂に魔力と怨嗟が絡み付き
 可視できるまでに折り重なる集合体。
 消滅させることは可能だろう。
 ただ魂はここにひとつだけではない。]
 

 
[男同士のやり取りの間に女は、
 自分への意識がないことに気が付いた。
 そっと裸足のまま光源を遮らないよう移動する。
 ジュダスに近づいたと思ったとき
 手枷からぶら下がる鎖が
 何かにぶつかりカチャリと音を立てた。]


  ……!


[地を蹴って青い宝石に手を伸ばしながら飛び込んだ。*]
 

 
 
とまれ



[ それは古代魔術に使われていた失われた言葉≠セった。
男の言葉と同時に女の体には百の手がその体を戒め、同時にその魂を痛みが襲う。]