人狼物語 三日月国


147 【ペアソロRP】万緑のみぎり【R18G】

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[私には最早怒る権利も、そうする気力もありませんでした。

思い出の殆どを失い、
母親を無残な姿に変えられ、父親に裏切られた記憶だけが鮮明な今や
蘇らせる愛情も無いのです。

私に残されたものは彼らではなく、
彼らを天に還さず我が子の側に留めていた悪魔であることに
今尚、変わりはありませんでした。

湧き上がったものはきっと、ただただ純粋な絶望なのでしょう。]



[母親と二人、見渡す限りの緑の中で

それは、生きたまま身を砕かれ喰われていく痛みに襲われる前
最期の正気が思い出させた記憶。

最早音でしかない叫びが口から漏れ続けるのと裏腹、
どこまでも穏やかな光景。

やはり、悪魔の仔と化した私は彼女の声を忘れたままで────*]

―― 翌日/学園にて ――

[ それは、いつものように授業を終えて
 図書館へ立ち寄ろうと考えていたときのこと。 ]

『アウローラさん』
『……ちょっと、いいかしら?』


 あ……。


[ 突然話しかけられて、言葉に詰まった。 ]


 ……マティルダ様。



『話があるの。
 貴方たちに関する、大事なことよ。

 一先ず、わたくしと一緒に来て下さらないかしら?
 人払いはすませてあるから、安心して』


 えっと……、…はい。わかりました。
 
 
[ ……いろいろ、思うところはある。

 さっき、彼女は『貴方たち』と言っていた。
 それはつまり…わたしだけではなく、
 彼のことも既に把握しているということだろう。

 嫌な予感はする。
 けれど…とりあえずわたしのほうに選択権はない。
 いつのまにか強く握りしめていた掌を
 緩く開いて息を吐く。
 そうして、彼女に促されるまま、踏み入れたのは。
 学園内にある小さな礼拝堂。 ]

[ 人気のない、だけど手入れの行き届いた礼拝堂の中を
 ステンドグラスから差し込む淡く色づいた光が照らしている。
その中の一席に優雅に腰掛けると、
こちらにも座るようにと、傍らの席を手で指し示す。 ]


『単刀直入にいうわ。
 …貴女、転生者なのでしょう?』

 …っ。


[ 席に座るのとほぼ同時に言われた言葉。
 覚悟はしていたはずなのに、
 反射的に身構えてしまった。
 それが表情にも出ていたのだろう。
 こちらを安心させるようにと
 彼女の表情を柔らかくなるのがわかった。 ]


『そんなに緊張しないでほしいわ。
 何もとって食べようというわけではないもの。
 ……ただ。
 いいえ、寧ろといったほうがいいかもしれないわ』


[ そういうのと同時に、彼女が深々と頭を下げる。
 戸惑うわたしの言葉を遮るようにして、彼女は言葉を続けた。]


 えっと…。

『ごめんなさい』


[ 彼女の艶やかに色づいた唇から発されたのは
 わたしとしては意外な言葉だった。]

『わたくし、貴女も転生者だと思わなかったの』

『だから』

『貴女に、わたくしの代わりになってもらおうと思っていた』

……!

[ ――…そうして、彼女は言葉を続ける。

 自分もわたしと同じ転生者であること。
 何れ、自分が闇の精霊に取り憑かれ
 破滅の道を歩むであろうことを悟った彼女は
 そうならないために攻略対象の不幸な過去を変え、
 彼らの愛と信頼を得た。

 だけど、それだけでは本当に
 運命を書き替えられたかはわからない。

 何れ、わたし…『本来の物語の主人公』が出てくれば
 書き換えた物語は修正されてしまうかもしれない。
 そしてそうなったとき、自身の破滅は
 避けられない運命になってしまうかもしれない。 ]

[ マティルダの…彼女の前世は、
 嘗ての「私」以上にこのゲームに詳しかった。

 『夜明け告げるは星の唄』の、少なくとも本編には
 登場人物全員が救済されるルートは存在しない。
 本来の物語上で、悪役であるマティルダが、救われることはない。

 いつだって、彼女は孤立し自身の心の中に闇を育て、
 そしてラスボスである闇の精霊を此の地に召喚し、
 愛する王子や世界を危機に陥れる。

  ……だから、彼女は。
 主人公わたし物語の悪役マティルダ
 『物語の役割』そのものを入れ替えようとした。
 『攻略対象の彼らを癒し愛される公爵令嬢』と
 『嫉妬心から嫌がらせをし、
  やがて孤立して破滅の道を辿る
  平民出身だけど特別な女の子』へ。
  そう、シナリオを書き換えた。

 最初から全てを作り直すのではなく、
 予め存在した運命の通りに、物語を紡ぎ直す。
 そのほうが万が一があったときに、
 予測と修正がしやすいから。

 ……そんな、理由で。 
 彼女はわたしに
 『悪役としての役割』を押しつけたのだという。]

[ わたしから嫌がらせを受けているように
 攻略対象や周囲の人間たちに見せかけて。

 わたしに関して良くない噂を広めて。
 教師たちにも同じように手を回して、
 そうして、わたしの周囲から人がいなくなるよう仕向けた。

 わたしが、光の魔力を持っていることで 
 他の人たちが迂闊に手を出せなくなることも見越したうえで。

 そうして、わたしが本来の彼女と同じように
 孤独と絶望から世界の破滅を願うよう仕向けたのだと
 そうして、闇の精霊ラスボスごとわたしを倒して、
 ゲームの結末通りの大団円…犠牲を極力少なくした、
 最大多数の幸福を、描こうとした。 ]


 …。


[ 言葉に詰まる。
 それはつまり、この学園でのわたしが経験した全ては 
 彼女によって仕組まれていたということで。 ] 


 …どうして、

[ ―――…今、そんなことをわたしに教えるのか?

 此方の呟きに、彼女は続けた。

 …最初に感じた違和感は、
 星燈祭の後にわたしを見かけたときのこと。

 本来のゲームならあの時点でマティルダは
 闇に取り憑かれて、半ば自我を失い
 ただただ、周囲の人間たちへの嫌悪を深める
 そういう 生き物ニンゲン になっているはずで。
 わたしもきっと同じようになっているはずだと
 彼女は考えていたらしい。

 ……でも、あの夜の後に廊下ですれ違ったわたしは
 それまでと何も変わらないように見えたのだと。

 そうして、彼女は考えた。
 アウローラもまた、自分と同じ転生者なのではないか、
 特別な存在なのではないか、と。
 だから、闇に取り憑かれることもなく、
 正気を保てているのではないか、と。 ]

[ 彼女は……悪役令嬢マティルダはわたしにいう。
 主人公アウローラを物語の犠牲にしようとしたのは
 自分と同じ転生者だと知らなかったから。
 知っていたら、わたしを
 自身の物語の生贄にしようとはしなかった、と。
 だから……『ごめんなさい』と。 ]
 
 
 …。
 
 
[ そう言って涙を零しながら頭を下げる彼女に、
 なんていったら、わからなかったけれど。

 それ以上に、彼女が続けた話には
 更に言葉を失うことになった。 ]

[ 物語の進行は止められない。
 最初にこの物語を書き換えたマティルダにさえも。

 近く、攻略対象たちによる断罪イベントが発生する。
 それによって物語の悪役わたしは裁かれる。
 大切なことは真実ではなく、誰かが悪役として裁かれ、
 そして悪役を皆で滅ぼして大団円。
 そこまでの、道筋なのだと。

 ―――…よって、生贄が出ることは避けられない。
 大団円ハッピーエンドは皆が望むものだから。
 誰にも、止めることはできない。 ]


 『だから、ね。貴女をその生贄から外すことにしたの』

 『筋書きはこう』

『闇の精霊に取り憑かれた平民の女の子を助けるために、
 王子や公爵令嬢たちは皆で協力して闇の精霊を倒しました。
 そして、闇の精霊に囚われていた女の子を助け出し、
 みんなでハッピーエンドをむかえました。
 めでたし、めでたし…ね』


[ 切れ長の瞳に真珠のような涙を煌めかせながら、
 華やかな笑顔で、艶やかな唇で
 彼女が口にした物語は、
 わたしにはとても堪え難いものだった。 ]

 

 …アルカード……!!
 

[ 反射的に礼拝堂を飛び出そうとした
 その手を白い繊手が掴む。
 見た目に反したその力の強さに、
 反射的に其方を振り向けば。 ]

[ ―――…彼女は、微笑っていた。


 悪意なんて欠片もない、純粋に善意に満ちた
 きっと誰もが美しいと形容するだろう笑顔。


 だけど、その笑顔は
 『わたし』を必要としていない笑顔だった。

 わたしの意志も、願いも、選択も、
 なにひとつ、尊重するつもりのない笑顔だった。
 ……それが当たり前であるかのように。 ]


 『どこへいくの?』
 『大丈夫。
 貴女を捕らえている闇の精霊を倒すために
 皆、力を合わせて戦ってくれているはずよ。』

 『貴女も知っているでしょう?
 王子様方もわたくしの義弟も、皆とても強いわ。
 わたくしと一緒にいれば、皆、貴女を守ってくれる。
 貴女を受け入れて、大事にしてくれるわ。大丈夫』

『この戦いが終わったら、学園の人たちにも
 きちんと説明しないといけないわね』

『闇の精霊はわたくしたちが倒しました。
 皆安心して、アウローラさんとも仲良くしてね…って』
 


 ……っ!!?

[ 「肌が粟立つ」という言葉を、
 今、この瞬間ほど感じたことはなかった。 ]


 はなして…ッ
 離してください!!
 わたしは、わたしは……!!

[ 言いながら掴まれた手を振りほどこうとしたときだった。
 ――…パチンッ、と強く何かに弾かれるような感覚と同時に、
 マティルダの手が離れた。

 それを確認するのと同時に、わたしは礼拝堂の扉から
 外へと一目散に駆け出した。 ]


[ 迷う暇なんてない。
 彼は、アルカードは無事だろうか? ]
  

 アルカード……!


[ マティルダは言っていた。
 闇の精霊アルカードを倒すために戦っていると。

 彼が強いことはわたしだって知っている。
 だけど、胸騒ぎがするのを止められない。

 だって、彼がどれほど強くて恐ろしい災厄であったとしても。
 ―――ラスボスは必ず封印されてしまうのだから。

 どうか無事でと、内心で祈りながら
 誰もいない、図書館までの道程を駆け抜ける。 ]*

―― 図書館 ――

[そろそろ、娘の授業が終わる頃かと
室内に据え置かれた柱時計を一瞥する。

ん、と軽く伸びをして立ち上がろうとしたときだった。]

 ……鼠がいるらしいな?
 それもずいぶん、毛艶のいい鼠が数匹…っと。

[言葉を紡ぎ終わるより先に、炎が我の鼻先を掠める。
幸い、蔵書たちに火の粉がかかるより先に消えたが。


我が領域で、このような暴虐を成すとは許しがたい。]



 中世の詩人に曰く、
「本を焼く者は何れ人を焼くようになる」
 知っているか、人の子の、それも王たらんとするものよ。


[我を取り囲もうとする人の子の影。
見覚えのある顔のうち、小さな炎の矢を此方の鼻先に掠めた
金髪の鼠にそう声をかける。
此れは確か、此の国の双子の王子の片割れであったか。]


(此れが何れ王となる国か……。
 あの娘、本当に見る目がないな)


[呆れ半分、ため息を吐く。

それはともかく。
この鼠共は我が気配を辿って此処へやってきたということか。]


 去れ。人の子らよ。
 何故此処を訪れたかは知らぬが
 今退くならばあの娘に免じて慈悲をくれてやる。


[此方の呼びかけに応じることなく。
深いな金属の音と共に剣戟が我が周囲を舞った]


 ―――…は。
 全く、愚か者め……ッ


[鼠共の剣を伸ばした触手で捕らえるのと同時、
その剣を触手の表面から流れる酸で腐食させていく。

そのまま、触手を伝わせて奴らを軛き殺そうとしたところで
娘の声が聞こえた。
どうやらあちらでも何か良くない動きがあったらしい]


 ……ふん。


[何やら不快なことが続く。
とりあえず目の前の不愉快な連中を皆殺しにしてやりたいが
今は、娘の許へ駆けつけるのが先決だ。

ゆらり、足元の影を揺らめかせて。
そのままとぷん、と水面に沈むようにして
影にその身を潜らせる。

鼠共の前から姿を消したところで、影の中から娘の気配を探った。
そうして地上に視える"光”を捉えれば、其方へと身を運ぶ。]



 ―――娘よ、無事か?


[娘の身を搔き抱くようにして人の身を顕現させる。
そして取り巻くようにして、触手めいた影を周囲に揺らめかせた。
それはさながら、威嚇する異形の群れ。

――人の子からすれば、化け物以外の何者でもないその姿は、
さながら神話の再現。
囚われの姫を攫わんとする、異形の怪物に視えたかもしれない]*

[優しげな表情で下腹部を擦る様子に、彼の言う擽ったさが伝搬する心地がする。愛おしいと呼ぶには、生々しい肉欲を伴う感情を引き出されてしまいそうな気配がして、咄嗟に意識を逸らした。

……腹が痛いと言われているのに、自分は何を考えているんだ]


 ……、まあ。あまり擦らないような粘膜だからね。
 それを長い間弄られて違和感が残ってるんだろう。


[眠りに落ちる前の私がそうしたように、彼の言葉に甘ったるい返事を重ねたいのに。冷静な自分に咎められ、彼が慈しみ撫でる場所をただ眺めていた。

私の知らないところで、可愛い表現を彼が試行錯誤する度に、言い表し難い引っ掛かりはあったが。それが何なのかまでは分からない。
可愛げない本音すら「可愛く」言ってのける──私の思い込みか、過去の印象から来るギャップか。違和感と呼ぶには些細なもので、猫被りや気遣いの類だと想像するには今の彼を知らな過ぎる]

 
 ……ありがとう。頑張ってくれて。


[自惚れた台詞だと他人事のように思いながら、彼の手に重ねて、もしくは先程まで触れていた場所をするりと撫でて摩る。思い返せば、必要な潤滑すら足さないで交わった。摩擦の名残であろう存在感を今更労うような手付きで触れた]

[──自分が知り得る限りの情報は、一通り伝えた。

普段と変わりない表情でいながら、得体の知れない緊張感に何処か居心地悪さすら感じる。説明の義務は果たした。この監禁は合意の上だ。そんな言質を取りたい故の言動に思えて、自己嫌悪に陥る。

「信じるよ」と言ってくれた彼に微笑んでみせた。
求めていた肯定的な台詞を得たはずだが、疲労のような安堵が重い。私は彼に何を言って欲しかったのだろう]


 ……君が大人しく監禁されるとは思わなかった。
 嫌われて当然、という気持ちではいたよ。

 でも、……そうだな。
 もしこの病院が無かったら、私の家か……、
 足が付かないように何処かへ連れてくだろうね。


[悪魔の甘言めいた勧誘が、監禁のハードルを下げたのは確かだ。罪はいつか裁かれるし、そうされるべきで。だからこそ犯罪者になれば、いつか彼と引き離される未来を覚悟する。夢はいつか覚めるものだ。

けれど「今」が手に入るなら、詐欺でも構わない。
そう思っている自分の優先順位は明らかだった。

あの病院で入院生活を続けさせていれば、また彼が危うい言動をすれば、遅かれ早かれ彼を攫う選択をするのは想像に難くない。彼の両親の性質を知っていても、自分行いが身内に迷惑を掛けると分かっていても、結局は……]

[行き先が私の家なら、彼に同行する必要がある。
外出許可を出した未来を想像しようとして、……頭の中がぐちゃぐちゃに乱れて考えられなくなる。紙屑を両手で丸めて捨てるみたいに思考を放り出しておきながら、そんな身勝手な内心を気取られたくなくて考えているふりをする。

彼の願望は叶えたい。
興味を持ってもらえたなら喜ぶべきだ。

彼の言葉を疑いたい訳ではない。
私自身が錨になれるかもしれない、希望も抱いてはいるが]

 
 ──……、……あぁ。そのうち、な。


[具体的な条件を設けず、曖昧にしたまま約束する]

[転落防止の手すりの向こう側に、立っている彼の姿。
風が吹いたら夜に呑まれてしまいそうな危うい背中。

飛び降りなくても、すでに記憶に焼き付いている。


恐怖が見せる思い込みという名の幻覚が彼を殺す。

窓が開いていれば、そこから彼は落ちようとするし
外に連れ出したら、彼は突然車道に飛び出そうとする。

そんな想像し得る「もしも」を無数に想像する]