人狼物語 三日月国


7 【R18】鈴蘭の村:外伝6〜カフェリコリス〜【RP半再演ペア】

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  ( あまりに可愛らしい名前過ぎるけど )

[ その声に応えるように鳴いてやった。

 喋れたら良かったのに
 クーはその言葉に鳴くこともしなかった ]

  ( そうだな。もし話せていたのなら
    早くあんな奴捨てろって言えたな )

[ 主と子供二人に対して思う想いはあれど
 なんだかんだ主を捨てられないクーにも
 名付け親である彼の不幸を願ってはおらず
 思わず、そんな呟きを浮かべたのだった ]*


[ まるで、海の底に沈むような夢を見ていた ]




[ 息をする。

 その度に口許からは泡が溢れて
 遮られた視界は真っ暗闇のまま
 そこへ、其処へ、底へと沈んでいく。

 陽の光すら曖昧な世界。
 切り取られた一部分で息をする。

 揺らめく波の中に白く透き通った何かが映った。
 人の腕だと気づき、払った。

 きらきらと光る金糸雀の髪。
 海の中にいようと頭に響く鈴の音 ]



[ 目を覚まして ]


[ 誰かの声がよく聞こえる。

 無性に叫びたくなって息をする。
 唇から漏れるのは泡が二つ。
 身を捩りたくなる痛みが突き刺す。
 目を抉り取ろうとしても力が入らない。

 何から覚めろというのだろう。
 分からない。解らない。判らない。
 答えなど出ないまま、息が詰まる ]


  ( ここじゃ、息なんて出来ないから )

[ 首を締めて心臓を貫いて呼吸を止めた。

 誰かが悲しむような声が聞こえた ]*

  ―翌日―

[ 狼は少年が起きる頃には傍に控えていた
 念入りに隠されてしまった風貌に
 狼は不思議そうに首をかしげる。

 彼が服装を変えようと狼の眸には
 彼は彼として映っていたからだった。

 腹が空くかどうかに対する反応は
 同意するように短く吠えただろう。
 主がいようといまいと朝だろうと夜だろうと
 彼に従い歩く眷属の姿は特に変わりなく映るはずだ ]


[ 少年が歩く道筋を辿るように狼はついていく。
 少年が開けた空き部屋は沢山ある。
 どれもがちぐはぐな部屋だっただろう。

 ぬいぐるみが沢山用意されていたり
 キャンバスに塗りたくられた絵だったり
 ナイフが引き出しにこっそり忍ばれていたり
 性別やその子の性格を表したような室内だった筈だ。

 ニクスを模したのだろうか、
 幼い子供の落書きだってある。
 ニクスは相変わらず変わらぬ笑みを浮かべている。
 はたは誰かに向けて綴られた手紙もあった。
 羊皮紙に綴られた文字にはこのように書かれていた。

 ごめんなさい、やっぱり私には出来ない

 差出人は書かれていなかったが、
 何か水滴が滲んだ痕跡も残っていただろう ]


[ 書籍が多く置いてある室内では、
 吸血鬼のあり方や、殺し方、特性。
 そんなものの纏めだってあったし、
 聖水なんか用意してある部屋まであった。

 しかしどの子供も結局実行には至らず
 最終的に謝罪の言葉を残していた。

 書籍の中に日記が一つ混じっていたのを
 気づいただろうか。
 書籍の中に記されている事は他愛のない日々。
 背表紙に残っていた名前は、セレスと綴られていた ]*


[ 日が暮れる前の時間ならば、
 男は寝室の中で眠りについている。
 陽の光を許さない暗い部屋の中で瞼を閉じている。

 死んでいるかのようにしかし細く長い息を続けている。

 もし日が落ちて夜が始まれば男は散策をしている。
 庭園にいる少年にも聞こえるような
 ピアノの旋律が彼にあてがった部屋から
 流れているのが耳に届くかもしれない ]*

  ―日記―

[ これからあの城で奉仕しなさいだって。

 シスターはその為に私に様々な事を教えたわ。
 炊事に、洗濯に、読み書きに、歌に、
 それからどうしてか、ナイフの扱いも。

 私が一番優秀だから選ばれたんだって。
 だけど私知ってるわ。
 あのお城には人の血を吸う悪い吸血鬼がいるんだって。

 私が選ばれたのも私が一番かけっこが早いから。
 きっとそうに違いないと思うの。
 だから私があのお城に行って悪い吸血鬼を倒して
 みんなが安心して暮らせるように頑張るわ。

 金貨一枚。
 シスターが私にくれた大きすぎるお小遣い。
 どうしてかは判らないけどお守りとして
 隠すなら誰にも見つからない部屋にしないと。

  ―日記 2頁目―

[ 今日、びっくりしたことがあるの。

 吸血鬼と呼ばれた人にはじめてあったんだけど
 あの人、赤ん坊のリリーよりも何も知らなかったわ。
 私の姿を見ても追い出そうとして
 全然手を出してこなかったから全部話したの。

 そうしたら困った顔をしていたから
 とりあえずお腹が空いた事を伝えたの。
 その後どうなったと思う?
 薔薇の花を私に送ってきたの。

 人は薔薇なんて食べないわって伝えたら
 すっごくすっごくビックリしたみたい。
 仕方がないから薔薇の花で作った紅茶を淹れて
 二人と一匹に用意したら驚いていたわ。
 でも狼って紅茶を飲めないのね。
 その点だけは、反省。

  ―日記 3頁目―

[ 結局泊まっちゃった。
 大きくて広い部屋は私が今まで見たことのないくらい
 立派でお姫様が眠る部屋みたいだった。

 落ち着かなくなってそれからあの人を尋ねたのだけど
 揺すっても頬を叩いても全然起きないの。
 吸血鬼が夜にしか起きられないのは本当みたい。
 仕方がないから夜まで待っていたら眠っていたみたい。

 起きたら彼がそばにいたわ。
 帰れって言われたからもう一度私の目的を話したの。
 世話役は間に合っていると聞いたけれど
 私は私で代表として訪れているから
 何も出来ずに帰るのは困るって伝えたの。


[ そうしたら彼は鋭い歯を見せてきたの。
 狼よりも細くて固そうな牙だったわ。

 とても恐ろしいものには思えたけれど
 この人自身は相変わらず怖くなかったから
 逃げ出さない私を見て不思議に首をかしげてたわ。

 卿が覚めたなんて失礼な事を言うから
 なんとなく腹が立って長い足を蹴ったけど
 そういえば彼の名前を知らなかったから聞いたの。

 名前なんてないって言うから、考えたわ。
 そうしたらぴったりの名前があったから
 今度から私は彼をそう呼ぶことにした。

 ニクスって。セレス、私の名前とぴったりだもの。
 夜と月って素敵よね ]**

 
[ 森の影が伸びる頃合いまで、
  思考に沈む間の手は余計な薔薇の芽を摘み、
  荒れを緩やかに押し留めようと従事していた。

  陽は白い肌を赤く焼く。
  それに気付かない程に幾度も繰り返す思考は、
  子供部屋に残された痕跡のいくつかを中心としている。

  忍ばされたナイフを片付けなかった理由。>>$50
  見逃されたのか、残されたのか、
  描かれた絵の笑顔の意味とその心情も。

  涙の滲む羊皮紙には息を詰まらせた。
  これを見たのだろうか、彼は。
  見たうえで彼は子供たちに望み続けたのだろうか ]
 

  
   ……痛いな


[ ひりひりと痛む焼けた肌を、
  土に汚れた指でゆるりと撫でて息を吐く。

  連なる謝罪の言葉から響く重なる彼への想いは、
  この古城の主の過去に繋がる扉のひとつなのだろう。
  けれど殺し方やその手段を目に見えて残したままなのは、
  意図的だとしてもそこに残された痕跡まではどうなのか。

  なにより聞き憶えのある名が示された、
  何気ない日々が綴られたあの日記の存在は……? ]
 


[ 考えても答えを持つのは夜の名を持つ彼だけで、>>$56
  その名を名乗った彼を思い出し、唇をきつく噛み締める。

  そこまで繋がれば己の鈍い頭でも理解はできた。
  明らかに同じ村の出だろう奉仕を仕込まれた女の子。
  似た名前と、彼女だけが持たされた金貨のお守り。

  愛されるべき子供の行方はここで、
  ここはその女の子と、夜の怪物の居場所だったのだろう ]
 

 
   ……要らないね、これ。


[ 聖水の瓶は中を捨てて空にして。
  ピアノの音色が響いて顔を上げるも、
  陽に焼けてしまった鼻の頭がひりりと痛んで。

  また唇を噛んで痛みを誤魔化し、
  土を払って立ち上がれば狼が小さく鳴いた。
  ずっと傍にいてくれたらしい律義さに、
  そっと微笑んで大丈夫、とだけ唇の動きで囁いた ]
 



[ ひとりには、なれてるから ]


 

 
[ 食堂で手を洗って、
  空腹を今更思い出し林檎を一つ手に取った。

  森を探して食料を得る時間は思考に奪われ、
  麺麭を焼くにはもう陽は落ちて、
  焼きあがるまではお腹が持ちそうにもない。

  それに、音色が途絶える前に。
  裸足と違って乾いた音を響かせて、 
  ピアノに誘われ部屋へと戻り扉を叩く。

  与えられた部屋なのに客人のように。 
  誰かのための部屋だったここに慣れてはいけないと、
  檻を課した無意識を発露しているのには気付かずに ]
 


   おはよう、ニクスさま。


[ 顔を覗かせ、唇だけが覗く格好で“笑う”。

  左手にはぴかぴかの赤い林檎がひとつ、
  右手には棘を払った薔薇一輪を挿したグラスがひとつ。

  ピアノの傍には寄らず薔薇を飾るために、
  窓辺に寄ってそこにグラスをことりと置いてから ]
 


   お部屋をたくさん見て回ったんだ。
   あなたのことを描いた絵も、手紙も、ナイフも、
   残していたのはわざとだったりする……?
 
 
[ 問い掛けは直球で、
  けれど言葉遊びのように答えを期待するでもなく。

  フードを脱ぎ顔を覗かせ小首を傾いで見せながら、
  外套の内側に入れていたコインを掌に乗せ差し出した。
  
  あの子のお守り。
  知らなかったのならこれを持つに相応しいのは、
  己なんかではなく、彼の方だろう ]
  


  月の落とし物を拾ったから、夜に返すね。
 

[ 月というには黄金のそれは、陽のようだったけれど ]*

 
 
─       ─



[ この時からさらに数ヶ月前のこと。

 俺は初めて舞台で主役の座を得た。
 
実際はダブル主演で、単独の主役では無いのだが。


 それでも、俺にとっては念願の念願。
 入団してから一年も経たぬ間の電撃展開である。

 主役を勝ち得たことも嬉しかったが、
 何より努力が認められたことが嬉しかった。

 だが、一部古参の先輩達の中には、反対や反発もあった。
 実際、数年在席しながら主役未経験者も珍しく無い。
 客観的に見れば、面白くないことは理解出来る。

 目に見えて風当たりも強くなり、嫌がらせも発生したが
 当の俺は練習で忙しく、構う余裕すら無かった。
 この辺りのメンタルは強かったのだろう。]
 

 

 
「聞いてくれ! 次の舞台で主役に決まったんだ!
   ○月○日だが、予定が無ければ是非来いよ。どうだ?」
 



[ リーへの報告の電話は、顔が見えずとも
 声が喜びを隠せていなかった。
 むしろ隠すことなど出来ようか。
 
 だが生憎、日程が長期出張か何かと重なっていたらしい。
 是非来て貰いたかったが、流石に仕方が無い。
 なら次は来いよ、と何事も無く電話を切ったのだが。
 

 
 
[ ──この先起こる現実を、たとえ後に知るとはいえ
     友が直接見なかったことは……

                   果たして幸か、不幸か。]

  
 

 
[ そして、舞台当日。

 ──立っているのも辛い。
   身体が熱い。苦しい。
   気をつけば意識が持っていかれそうだ。


 数日前から、体調が優れていない自覚はあった。 
 恐らく練習のし過ぎから来る過労、睡眠不足。 
 抵抗力の弱った体を病は見逃さない。

 完全な体調管理ミス。
 端役ならまだしも、代役は存在しない。
 自己責任、前に進むしか無い。

 やがて、幕が開くが──]
 

 
[ 当時の事は覚えていない。
 いや、心の奥底に封印したから記憶に無い。

 記憶にあるのは、始まって間もなく
 舞台の中央で意識が途切れたこと。
 観客のざわめき、同僚が駆け寄ってきたこと。
 怒号も聞こえた気がする。
 
 そのまま病院に運び込まれ、全てを知ったのは数日後。


   ──俺のせいで舞台は中断、続行不可能となったこと。] 
 

 
[ 団長は優しい人だった。
 体調管理が出来なかったことに注意はしても、
 責めることはしなかった。
 
 
──しばらくは受け入れられなかった。
   己の犯したことの重大さを。
   自ら、役者人生に泥を塗ってしまったことを。


 順風満帆、失敗しらずの人生を送ってきたからこそ
 現実を受け止められなかった。
 己のしでかした事の大きさを。

 そして、間もなく暇を貰い逃げるように姿を眩ました。
 団長には事前に告げておいたが、驚く程あっさり許可は出た。

 「分かった。だが、条件として連絡先を教えてくれ。
  また必要があれば、呼ぶかもだからな」とだけ告げて。


 思えば団長には可愛がってもらえていたのだろう。
 この後も「使わなくなったから」と
 様々な物品が贈りつけられてくることになる。
 同封された手紙は怖くて読めなかったが、捨てることも出来ず
 しばらくは棚の奥に封印することにした。

           
──こうして、俺の役者人生は、
             一度幕を下ろすこととなった。]*