「　ハツナちゃんって、太陽みたいだよね　」>>0


　　　　そーかな、ありがとう。
　　　


［　いつだって私は笑ってそう返してた。


　

　

　　　


　　

［　いつもは、明るくふるまってるから
　　みんな、私には悩みなんてないだろうって
　　そう思ってるんだろうし、そう振舞ってた。

　　

　　私にだって悩みくらい、あるよ。
　　でもそれは胸に秘めて過ごしてた。

　　　　　　　

　

［　胸に秘めた本音を、吐き出したい日は、
　　いつも屋上に行って、歌を歌ってた。
　　



　　決まって太陽に手を伸ばしながら、口ずさんで。


　　聞くに耐えないってほどじゃないけど
　　誰かに聞かれるのは……恥ずかしいな。

　　

　　

［　そんな私の歌を、
　　君は聴いたこと、あったんだっけ？　］




　　

***

［　人に囲まれてたって
　　惜別ハツナはほんとの意味ではひとりぼっち。
　　そう思ってたから、教室で隅の席にいる
　　君のことは、前から気になってた。

　　



　

［　チャンスが巡ってきたのは
　　移動教室があった日の事。
　　理科の授業で、実験があるから
　　実験室に移動になったんだ。

　　その日は休んでる人が何人かいて。
　　上手く座らないと、四人掛けの広い席に
　　一人で座ることになったりする。

　　上手く座ればいいのに、
　　結局こういうのって、
　　仲良し同士で固まって座るから。

　　

　

　　　ね、ここ座ってもいいかな？

　　

［　君の席の隣に行って、
　　そう聞いた時、君はどんな反応したかな。



　　だって、チャンス、逃したくなかったもん。　］

　　

　　　そういえばさ、来週は遠足だよね。
　　　朝日くんはもうおやつ、買った？

　　　なーんて、気が早すぎるかな。


［　君の隣に座った私は
　　ありきたりの話題を振って。
　　話すチャンス伺ってたくせに、
　　話題の方は実は考えてなかったの、
　　ちょっと笑えちゃうよね。

　　あとはそう……好きなもの聞くとか
　　それくらいしか思いつかなかった。　］**

　

［　同じことばかり繰り返す先生の熱弁に>>17
　　いい加減皆うんざりして、
　　黒板じゃなくて時計ばかり見るようになる時間が
　　四限目だと私は思う。
　　それか、食堂や売店に駆け込むために
　　廊下の方見てるとか。

　　まあ、私は時計や廊下じゃなくて
　　君の方をちらちら見てたわけだけど。



　　

［　四限が終われば、私は色んな子からの誘いを断って
　　お弁当を持って屋上に行った。




　　　聞いてたの？
　　　君なら、邪魔されたなんて思わないよ。

　　　流石に初めて聞かれたあの時は
　　　びっくりしちゃったけど
　　　もう、何度も聞かれてるしね。


［　少し疲れが見える顔で笑って。
　　




　　

　　　お昼、食べよ？
　　　うたってたから余計お腹すいちゃった。

　　　さっきの発音の話、くどかったよねー。


［　なんて、を誘って。
　　この二人だけの時間が、私は大好きなんだ。　］*

　

　　

　　

　　

［　ダメって言われるとか、
　　誰かが座るから、とか言われるのは予想してたけど
　　私の言動を予想されてるとは思わなくて。




　　　アタリだよ、よくわかったね。


［　もしかして朝日くん、エスパー？なんて
　　冗談ぽく笑って、機嫌よさそうに隣に座った。　］

　

［　君は私の言葉を当てて見せたけど
　　私は君の言葉を当てて見せることはできなくて。　］


　　　所用の、腹痛……？


［　遠足にはいかない、って言われて
　　一瞬戸惑ってしまった。


　　ただ、そう―――――。　］

　　

［　遠足にはいかない、で
　　会話は終わってもおかしくなかった。

　　でもどうやら君は私が話しかけたのが
　　不思議みたい？>>25
　　そんなに不思議なこと、あるかな？　］


　　　どうして、って……。
　　　君と話したいから、それだけだよ？

　　　話したい人と話すことに理由っている？


［　まさか、ドッキリとか思われてるとは知らずに。
　　会話が続いたのが嬉しくて、
　　私は言葉を連ねていく。　　］

　

　　　でも、そっかぁ。
　　　君が遠足に来ないなら、
　　　私も頭痛の予定を入れて休んじゃおうかな。


［　この言葉、君にはどう聞こえた？
　　冗談に聞こえちゃうかな。



　　

　　　そうしたら、二人だけの遠足に行けるよ？


［　にこっと笑って紡いだ言葉には
　　裏なんて何もない。ただの私の我満。



　

　　　人が多い場所が嫌になること、
　　　元親君もあるでしょ？

　　　だからここは好きだよ。
　　　元親くんも、そう思わない？


［　屋上に住み着いてた理由は
　　きっと二人とも似てると思う。>>38

　　誰かといても気疲れしてしまうけど。
　　でも、君といるときは違う。
　　

　

　　　ふふ、でもあれで授業終わるなら
　　　それはそれでいいのかも。
　　　聞き流してても別にいっか、って思うし。


［　
　　開いたパンの袋を差し出されて、
　　君の言葉に甘えるように分けてもらって。

　　メロンパン、美味しいなって思うけど
　　君はいつもこれで、栄養大丈夫かなって
　　少し心配だったりする。　］

　
　　　ありがとう、じゃあ私からも、おすそ分け。
　　　好きなの取っていいよ？


［　お弁当箱に入った小さめのおにぎり。
　　ラップに包んであるそれの具は鮭と昆布。


　　

　　

　　

　　






　　

　　

　　

　　促されるままに、携帯の画面を見て。　］


　　　ほんとだ、ラッキーだね。


［　ニコッと笑って、画面から君へと視線を移し。　］


　　　だって、二人の時間、増えるもん。
　　　教室戻ってもうるさいだろうし、
　　　五限は此処にいようよ。

　　

［　君以外に聞いてる人なんていないのに
　　まるで内緒話をするみたいに囁いた。

　　君の返事がどうであれ、
　　昼休みは二人の時間なのは間違いないから。　］


　　　そういえばさ、さっき何考えてたの？
　　　授業中、考え事してるみたいに見えたよ？


［　そんな風に、君の心に触れようとするんだ。
　　恋人のこと、もっと知りたいもん。　］*

　　

***