81 【身内】三途病院連続殺人事件【R18G】
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| (t0) 2021/07/07(Wed) 21:32:47 |
| 己は昨年の秋ごろに初めてこの村を訪れた。なんとなしに乗った自動車の行き着いた先。次はここに居付くことにしよう。これまでと変わらず軽い気持ちでそう決めた。
己は何故に己が未だこの世にあるのかを知らない。己は気が付けば人々の記憶に己の存在を刷り込むことが出来たし、ちょっとした幻覚を見せることも出来た。他にもけっこう色々とやれる方だと思っている。正直便利だ。
もっぱら、このどうしようもない寂しさを埋める為にそれらを行使している。己の個として残っていたのは“博”という名のみ。姿も覚えていないが、右目の翡翠はいつも変わらない。己はこの目が好きだ。 (@0) 2021/07/07(Wed) 22:02:14 |
| (t1) 2021/07/07(Wed) 22:02:21 |
| (t2) 2021/07/07(Wed) 22:02:35 |
| (t3) 2021/07/07(Wed) 22:24:50 |
「……あはは……なーんちゃって……」
「…………」
「…………………」
メイジは、ひとり手術室にあった椅子に座り込み
膝を抱えて蹲った。
メイジは、ふと顔を上げた。
それは誰かがいるような気がしてそうしたのか
ただなんとなく顔を上げたのか
ただ何もないところを見つめている。
「…………」
「オレさあ、駄菓子屋で働いてるって言ってたじゃん?」
「あれね、ウソなんだ」
「でもねーそういう、子供が喜びそうな
店に行ってみたかったのはホント」
「ほんとは、ちっさい工場でさ、雑用してるんだ。
良いか悪いかっていったらね、悪いと思う。
人使いは荒いし、電話番とかなんて一生したくない。
親父よりはマシだからなんとかやってた
もしかしてオレって親父に感謝すべきかな?」
「君はあんまり外の世界を知らないみたいだったから
オレのせいで夢を壊したくなかったんだ」
「ごめんね、嘘ついて」
つらつらと、懺悔のようなただの独り言だった。
「あと他に嘘ついたことあったかな?」
「……癖になってんだよね。嘘つくの」
「──、──……」
ぶつぶつ、つらつら、独り言を言っている。
「──あ。ミロクさんも解体しないと食べ物なくなっちゃうね」
「せっかく、死んでくれたのに」
| (t4) 2021/07/08(Thu) 21:02:11 |
| 己も己でどれだけ嘘をついてきただろう。この病院に来てからだけでも十指に余るほどだと思う。己を本官と指すだけでも数は増えるのだから。 舌先三寸、二枚舌。己の言葉はきっと羽根よりも軽い。 (@1) 2021/07/08(Thu) 21:03:13 |
| タマオは、「あ。はい、いないです」 通り過ぎざまに言うだけ言った。 (t5) 2021/07/08(Thu) 22:07:12 |
「もう、やらなくていい?」
「やらなくていい?」
「…………最近、人を殺すことばかり考えてた」
| タマオは、「あ、リョウクンお話出来ていて嬉しそう。よかったー」みたいなことを考えた。 (t6) 2021/07/09(Fri) 13:32:43 |
| (t7) 2021/07/09(Fri) 13:33:13 |
刺し殺そうと思った。
──最初は、身を守ろうと刃物を取った。
本当は、話がしたかっただけだった。
けれど、暴力に屈するばかりだった無力な少年に
確実に、急所を狙う力なんてなかった。
逃げるのに十分な傷だったことなんて、気付ける頭脳もない。
父親
ああ、脅威がまだ動いている、息をしている。
また"狼"が牙を剥いて来る。
──次は殺されるかもしれない!
ぼろぼろの壁際に寄り掛かる男
刻まれたふたりの子の名と数字。
かつては、幸福の記憶が染みついていたであろうボロ家
恐怖の感情に支配された少年は、牙を剥いた。
……動かなくなるまで、恐怖が、消えるまで。
この手で、首を絞めて、息の根をとめてやった。
もう誰もいない空っぽの空間。
この嵐と共に沈んでいくことを、願った。
| タマオは、 天井の雨漏りを修繕している。 85くらいの技量が必要だ。修理ロール 18 (t8) 2021/07/09(Fri) 20:21:31 |
| タマオは、はちゃめちゃに厳しい感じだったのでそっと床にタライを置いた・・・・・・・・・。 (t9) 2021/07/09(Fri) 20:22:28 |
「…………」
だれかが、傍にいたような気がした。
以前感じた悪寒はない。根拠もない。
ただ彼のことを思い出していたから
そう思い込んだだけかもしれない。
メイジは、ふいに立ち上がって
干されていた"肉"をかき集めて、その場を後にした。
| 「あ」
間の抜けた声がこぼれた。手術台の上のもの、置いたままでいいのかなこれ。
「本人は忙しいだろうしな」
先に見た彼らは、ずいぶんと話に花が咲いていたように思う。水を差す程の用でもないが……。
「とは言え、流石に把握しているか」
危惧をしているのは事情を知らない者に見つかることだが、その可能性を考慮していないわけがない。セナハラは抜かりない方の部類だ。当然、教えているはずだ。
その上でこの状態で置かれているのだから、彼をこの状態にした者には問題ないと判断されたのだろう。 (@2) 2021/07/10(Sat) 16:08:39 |
| (t10) 2021/07/10(Sat) 16:09:11 |
これは、誰かが遺体を見る少し前の手術室──
メイジは壁際に座り込んだまま動かない男と
結構な時間、寄り添っていた。
悲しみに暮れていたのか、動く気力がなかったからか。
「やっぱ起きないや」
当然だ。己の手で殺したのだから。
やがてそれにも飽きたのか、気だるそうに立ち上がり
ずるずると遺体を手術室の中央まで引きずっていた。
「………重い」
持ち上げて、仰向けに手術台に寝かせた。
だらりと投げ出された手を胸の前で合わせる。
「………………重たいよ」
消え入りそうな、忌々しげな声が
腐敗臭のただよう手術室にむなしく響いた。
メイジは、用事がある時以外は、ずっと手術室にいる。
手術台の上でずっと、突っ伏して
返事も帰ってこない抜け殻に話し続けていた。
少年は死後の世界があるなんて知るはずもない。
……だからこそ、友達にも嘘を吐き続けた。
なにも知らないままでいてほしかった。
「セナさん、雨と風弱まってきたんだ
……もうすぐ帰れるかな。助けなんてくるのかな」
「セナさんがいなかったら
……誰がオレを助けてくれるの……?」
そうして呟く背中は、ただの小さな子供のようだった。
「……あはは……もうそんな子供みたいなこと
言ってられないよな……。
もうひとりだ、オレ。家族はみんな死んじゃったり
出ていったり、いなくなっちゃったから」
「自分でやったんだ」
実の父親も、──優しい父親がいたらと夢見た人のことも。
「最後、なんて言おうとしたのかな」
ふいに思い出す。考えてもわかるはずもない。
メイジには何も見えない、聞こえない。
だから、ずっと目の前の遺体だけを見つめている。
「死んだら、どこにいくのかな」
「やっぱ地獄かな? 悪いことしたもんね」
「楽になれないかもね」
「オレのこと、実はどっかで見てんのかな
……それはそれで、いやだな」
「オレも死んだらおなじとこ行けるかな
悪いことしたからさ」
思い浮かんだ言葉を脈絡もなくぽつぽつ。
| タマオは、工具箱を片手に点検をして回っている。修理はもう要らないかもしれない。 (t11) 2021/07/11(Sun) 16:26:16 |
「頭から焼きついて離れないんだ」
バラバラになっていく手足や、開かれる胸、鮮血
赤黒い内臓、砕かれる骨──頭だけになった、人間の姿が。
人を刺して、肉を切る、感触が──
この手で、脈打っていた鼓動を止める瞬間が。
忘れろ、と言われたことは覚えている。
忘れられる日なんて、来るだろうかと今は思う。
胸が痛い、頭が痛い、とうの昔に治ったはずの傷が疼く
メイジは、よく怪我をする少年だった。
| タマオは、己は死んでいるが、生きていると言えると考えている。 (t12) 2021/07/11(Sun) 19:53:03 |
| (t13) 2021/07/11(Sun) 19:55:45 |
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