人狼物語 三日月国


52 【ペアソロRP】<UN>SELFISH【R18G】

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【人】 アーレンベルクの書  



 魔道を志す者にとっては
 切っても切れない関係である魔力源。
 その量は生まれ持った素質に左右されると言われ、
 血統により多少の偏りはあるものの完全な遺伝はしない。

 手っ取り早く得る方法は“相手を殺害する”事。
 人を統べる王は高名な魔術師であればあるほど、
 その豊富な魔力を狙われるのが常だった。

 この世界における革命に慈悲や妥協は有り得ず、
 統治を誤れば地図上に命を散らすのが乱世の定め。


     其れでも人々は支配者を求める。
   群れを率いる完全な王を打ち立てては崇め、
      自らの神であるかの様に慕う。 

       故に王は更なる力を欲し、
     より上質な器を作り上げる為に
 残忍で凄惨な世襲制度から脱却出来ない儘でいた。


 
(38) 2020/11/29(Sun) 2:26:05

【人】 アーレンベルクの書  

 

 代替りは指折りの忠臣を証人とし
 王宮の庭園にて執り行われる事となった。

 若獅子が国土に入って間もないその日、
 彼の護衛役にして騎士団長であるサー・アルベルタが
 嚴めしい両手剣を抱えて庭園へと降る。

 崩御の瞬間まで正当な皇帝である父は、
 跪かなければ頭を垂れることもない。

 その上で斬首用の得物を選んだのには、
 罪人でなくとも安らかな慈悲を与えるという意図が
 含まれている────という説が一般的だ。

 
(40) 2020/11/29(Sun) 2:27:06

【人】 アーレンベルクの書  



 実母の鮮血を被って生まれ落ちた皇子は、
 実父の血を浴びると同時に『王』と成った。

 先帝の崩御を告げる鐘が町中に響き渡り、
 道を往く誰もが足を止め、王宮へ向けて祈った。
 誇り高き国民は皆、返り咲く時を待ち侘びている。

 両腕に預けられた首を棺桶にその手で納め、
 拾い上げた剣を大地に突き立てて
 彼は皇帝として初めの命令を降す────


(46) 2020/11/29(Sun) 2:31:02

【人】 アーレンベルクの書  



  帝国歴720年 風の月8日

 先帝ヘルマンの“急逝”は周辺諸国にも伝わったが、
 同時期に起こった帝都からの中央軍出兵は
 公国領において大混乱を引き起こした。

 平原に居城を構える公国諸侯アリン家は
 充分な武器と人手を揃える暇もなく戦争に突入する。

 後の世に『獅子戦役』と謳われる闘いの幕開けであった。*

(48) 2020/11/29(Sun) 2:32:30

【人】 『ブラバント戦記』  



 アズール平原の豊かな穀倉地帯に軍靴が響き渡る。
 二万の軍勢を率いた新皇帝は無人の大地を瞬く間に駆け、
 アリン家の構える居城へと迫った。

 展開された公国側の兵は軒並み猛者と呼べるものではなく、
 優秀な騎士団の前には為す術もない。
 新兵を前線に立たせて稼いだ時間を用いて、
 アリン家当主ジョセフは籠城作戦を企てていた。

 帝都から遠乗りで一週間足らずの平原に位置する城は
 強固ではあるが、安全に脱出する手段がない。
 諸侯からの応援と補給を絶たれた彼等が
 喉元に喰い付かれるのは時間の問題だった────……


(66) 2020/11/29(Sun) 17:13:43

【人】 『ブラバント戦記』  



 赤く揺らめく

 アーレンベルクの御旗に画かれる獅子が抱くもの。

 夜の闇に新星の如く猛火が上がる度、
 各地で人々は武器を取り、軍勢に加わった。
 彼等はシェーンシュタインの雨以降、
 滅ぼされた主君に与していた者共として領土を奪われ
 国土の隅に追いやられたかつての戦士の末裔だった。

 簒奪者を討ち滅ぼす焔を合図とするかの様に、
 軍勢はより長大な列を成す。

 今こそ新たな名君に剣を預け、雪辱を期す時。


(68) 2020/11/29(Sun) 17:14:55

【人】 『ブラバント戦記』  



『要塞を落とすには、敵の三倍の兵が要る』
 高名な指揮官の言葉通りの戦力は帝国にはない。
 各地で蜂起した戦士達を加えても尚、足りなかった。

 跳ね上げられた橋、固く閉ざされた門。
 静止の命令を受けた兵士達が沈黙を守る中、
 分厚い人並みを割いて一頭の騎馬が前に出る。

 腰に提げた剣を抜き、彼は号んだ。


 
(69) 2020/11/29(Sun) 17:15:13

【人】 『ブラバント戦記』  




      
Ein
Arenberg
zahlt immer seine Schulden

   ────『 獅子は必ず借りを返す 』



    集いし者全てが声を揃えて繰り返した時、
    濠の対岸に降り注いだのは赤い

    祖先を虚ろなる王へと変えた夜宴の意趣返し。


 
(71) 2020/11/29(Sun) 17:16:29

【人】 『ブラバント戦記』  



 包囲突破作戦の折、アリン公は
 最後の一人となる覚悟で戦い抜いたと云う。
 物量で上回っていた彼の敗因を分析する学者らは
 奇襲、準備期間、地理……と様々な要因を挙げるが、

 最大の理由は“相手が悪かった事”に尽きた。

 居城の広間にて捕えられた当主ジョセフは
 死の間際まで皇帝を避難し続けた。

 『宣戦布告を行わなかった卑怯者』
 『青二才なんぞに命乞いはしない』
 『貴様の様な男は卑しき魔物同然』……


(98) 2020/11/30(Mon) 9:20:59

【人】 『ブラバント戦記』  



 アリン家滅亡の報せは公国諸侯にとって
 十分過ぎる事実上の脅迫になっただけでなく、
 其の衝撃性から遠方に至るまで知れ渡っては
 異常な求心力によって各地の統治環境を狂わせた。

 文字通りの火と血の雨を降らせた闘い振りは噂になり、
 真の王の訪れを信じた人々が領土に溢れる。
 彼をテリウス大陸全土の王と謳う者さえ居た。

 アリン家が納めていた集落は『解放』されたが、
 新皇帝は略奪や徴収を決して許可しなかった。


 
(102) 2020/11/30(Mon) 9:23:33

【人】 『ブラバント戦記』  

 

 緑樹の葉が落ちる頃には国に戻り冬に備える。
 冬支度をし、暫くの平穏に息をつく事が出来るのは、
 この国の深く積もる雪の功績でもあった。

 同時に敵には充分な時間を与える事になる。
 次の攻撃はこれまでの様には行かないだろうと、
 世論も議会も721年度の計画を慎重に練っていた。


 侵攻を恐れた近隣諸国から舞い込む無数の交渉。
 金品や栄誉にまるで興味を示さない帝に、
 女ならばと実の娘を投げて寄越そうとする王族。

 仇ですらない彼等の憂慮は的外れであったが、
 皇帝はいつしか供物として捧げられた女達の中から
 一人を選んで妃として迎えた。

 
(104) 2020/11/30(Mon) 9:24:33


 七年に及ぶ研究の甲斐あって、
 遂に帝に献上が叶う出来栄えの秘薬が生まれた。
 芥子、麻……その他様々な原料を混ぜ合わせたこの品を
『夜の翳り』と呼ぶ事にする。

 凱旋されてからというもの、
 陛下は不調続きであらせられる。
 戦により経済が活性化したのは良い兆候だが……

 既に冬が訪れたが、城下では流行病の報せが出ている。
 万が一にも陛下が罹患でもなされたら大変な事だ。
 よく眠られる様に我々が手を尽くさねばならない。

 赤子の頃から陛下を密かに見守って来たが、
 少年にして既に不眠症を患われていた。
 あれは恐らく……根本的な解決まで至るには
 国中の解呪師を掻き集めても不可能なのだろう。
 そういった類のものだ。





 我らが王は真実を見抜く力に長けておられる。

 先日も仰せつかった通りに議員を問い詰めた所、
 やはり公国に金を握らされた工作員だった。
 これで投獄された政治犯は三桁に及ぶ。

 陛下曰く、解っていて泳がせたとの事だが
 そう顔を合わせる訳でもない議会の連中を
 如何にして見極めているのだろうか。

 旧い付き合いであるあの学匠であれば、
 何か秘密を知っているのかも知れないが。

 下手に探れば次に飛ぶのは私の首かも知れない。
 私は粛々と裏切り者を裁くだけだ。





 先日毛布をお届けに寝室へ向かった所、
 夕餉がまだですが既にお休みになられている様でした。
 しかし微動だにされなかったので不審に思い、
 近付くとどうやら呼吸をしていないのです。

 まるで毒を含んだかの様に……息を詰まらせて。

 わたくしは慌てて揺り起こしてしまいましたが、
 陛下はお気付きになると感謝を述べられました。
 曰く、ここの所ずっと眠りの質が悪いのだとか……

 前の廊下を通る際にも、何やら呻くような声が
 部屋の中から聞こえた気もします。
 やはり戦争が陛下を変えてしまったのでしょうか?



 

[ 透明な薬をワインに一滴落とし込み、呷る。
  真夜中に目覚めたのは悪夢の所為。
  野営中の軍幕では見る事がまるでなかった故に、
  煉獄に墜ちる夢はやけに生々しく、耐え難かった。


      身を灼く痛みに目を見開いた時、夢は醒める。
      荊に抱かれ、氷海に沈められ、雷に打たれ、
      刺客に刺され、謀反人の弩に貫かれ……
      舞台と場面を変え、死の瞬間を繰り返す。 ]



( そんな夜が続き、ふと思い立って手を伸ばしたのが
  遣い鴉の鉤爪に括られていた髪紐だったのは……

  あの報せが、直筆で示した俺の存命が、
  確りと届いている安心感に浸りたかったからなのか。 )


 

 

[ 眠る度果てしない苦痛に苛まれるか、
  夢も見ないほどの深い眠りへ無防備に落ちるかの繰り返し。

  悪夢が仇を滅ぼせと戦火に追い立てる中、
  名も知らぬ感情が日に日に募っていった。 ]



  ( 何故、逢いたいと思うのか。
    何故、顔を合わせて言葉を交わしたいと思うのか。
    戦の経過を聞き、話す訳でもあるまいに。

    どう表すべきかも見当が付かぬ苛立ちばかり。
    より長いと感じる様になった夜を如何にせん…… )



 


[ 淡く酔いが廻ると共に、瞼が降りてゆく。
  呼吸は深く長く、次第に規則性を得て
  月が傾けば同じ様に意識も揺らいでいった。

  効用の強すぎる薬に頼り続ける訳にもいかず、
  健康上の問題で使用を控える夜もあった。
  そんな日な伸びた襟足を留めていた金の髪飾りを外し、
  代わりに薄い色の髪紐を緩く結んで眠る。


  彼が得たことも無ければ、口に出したことも無く
  蓋をされた儘、言葉に出せないその願いの形は、 ]


 

 



    Ich habe Angst, allein zu sein,
    also schaue ich zum
Nachthimmel
und suche dich


 [ 此処へ来て、────どうか息を吹き込んで欲しい。 ]*


 



[最初からそうするべきだと自分から決めていた癖に、実行すればするほどに愛したかったものたちが指の隙間から滑り落ちていく。
他の誰かの手に渡るのを良しとはせずに、奪って、壊して、捨ておいて。
この手は見えない血に染まり、酷く汚れているような錯覚さえ覚える。

  
あの愚か者たちも、自分も、命を狩っている。

  
それ自体に最早何の感情も湧かず仕舞いだ。

  
ならば同類同士なのではないか。

  
既に自分も人の皮を被った化け物になっていないか。


日に日に下がっていく自身の体温と、満月が来るたびにやってくる飢えは年月を経るごとに平凡だった筈の精神をすり減らす。現実逃避をするように、対獣化薬の摂取量も増えた。
苦い良薬を飲み干しても尚追い詰められる焦燥感に、とうとう注射器にまで手を伸ばす様はまるで麻薬中毒者のようだった。]


[肉体全体に広がる倦怠感と、酷い頭痛。思わずシーツを掴めば、思い出したくも無い殺戮の感触が蘇って嘔吐した。
確かに理性はある筈なのに、自分ではないものに支配されている感覚に思わず何もかも投げ出して狂ってしまいたくなる。

衝動的な感情を引き留める枷のように握りしめるのは、いつかに貰った約束の短剣。]


 



[傷だらけに咲く
の散り際を喰らって手折り、]
   [優しく吹く校舎の
に背を向けて、]
         [溶けかけの
を浄化し、踏みにじる。]


[最早何も残っていないと思い込んでいた、穢れた掌に寄す処の如く残っていたもの。
終焉の果てに消え去る筈だった化け物を繋ぎとめたのは───今も昔も変わらない、奥深くで燃える
のように。]



[縋りつくように胸の中に抱え込めば、温度などしない筈なのに胸の中にほのかな熱を感じた気がして自然と瞼が落ちていく。
泥のような、深い闇の中にたった一人で落ちていく感覚は恐怖しか湧き出てこなかったのに、この時だけは何故だか酷く安息感を覚えていたのは何故だろう。…………分からない。]

 



[重みを増していく痛みの中に引っかかるように、芽生えていくのは不安感。
甘味を採りすぎる傾向にあった誰かを気にして小言を言うのと似たようなものだ。いつの日か受け取った無事の報せは随分と昔のことのように思えていた。

  傷を負ってはいないだろうか。病に伏してはいないだろうか。
  他のだれかに首を狩られてはいないだろうか。
  ……煉獄のような世界で、息苦しくしていないだろうか。

どこか大袈裟にも捉えられる心配性は、母親のそれと酷似している。
彼女に残った微かな情が、夜空に願うように疼いていた。
届く筈もない癖に、遥か向こうへ───言葉にならない思いが唇から零れ落ちる。]

 

 




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