148 霧の夜、惑え酒場のタランテラ
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[命もない、魔法も使えない一人の子供が、
目的を果たすためには、ここに居る他なかった。
あれから5年ほど経つ、時が経てば経つほど、
運命的な再会を果たす可能性は低くなる。
正直、焦っている。
でも僕はこの店に運よく相手が来ることを願い、
待ち続ける以外に出来ることはない。
会いたいだけなら、探しに行けばいい。
世界中を探すのは簡単な事ではないけれど、
ただここで待っているよりは、まだ希望がある。
でも厳密に言うと、会う事が目的ではない。
僕が本当に果たしたいのは―――――……。]
[僕だって気付いている。
一寸先は闇。未来はどう転ぶか分からない。
問題の先延ばしをしているだけかもしれない。
運命を変えたはいいが、より悲惨な末路を辿るかもしれない。
知ってしまったからこそ、悲劇が生まれるかもしれない。
占い自体は当たっているのに、
それを伝えることで未来の展開にずれが生じて、
占いが外れてしまったような形になるかもしれない。]
| [困らせてしまっただろうか。 思案する姿にばつが悪く眉を顰める。 声だけは先に聞いていても、 実際会ったのはつい先程。名前も知らないくらいだ。] いきなり考えさせてすみません。 そう、じゃあ"大きなもの"にさせて貰いましょうか。 実際に悩んでいますので。 [続く言葉には首を傾げ] 残念ですが違います、けど近いとも言えるのかな。 逆ですよ。 (40) 2022/05/27(Fri) 23:19:40 |
| (41) 2022/05/27(Fri) 23:19:57 |
| 君 も というからには、 店員さんには逢いたいと思う人が居るのですね。* (42) 2022/05/27(Fri) 23:20:11 |
―
回想:僕たちの船が沈んだ理由
―
[ウルティマ・トゥーレへと向かう途中に、
僕たちは救援信号を出している船を発見した。
近づいて双眼鏡を覗けば、
船の甲板にがりがりに瘦せ細って、
最早服とは言えないぼろぼろの布を纏った青年が、
膝を抱えているのが見えた。
勿論、僕たちは救助に向かった。
父さんをはじめとした乗組員たちが船を移り、
青年に気をとられている隙に、
僕たちの船に待機していた賊が侵入した。]
[初めに人質に取られたのは、僕より幼い乗客の少女。
そして少女を盾にして、人質は増えていった。
当然、僕もその中に含まれた。
「私たちはどうなってもいい。
どうか乗客の命だけは助けて欲しい」
最後まで懇願する父を無視して、
下卑た笑みを浮かべながら、父の首を撥ねる光景を、
僕の瞳はしっかりと映した。
それを皮切りに、大人の男性は乗組員・乗客を問わず、
一人残らず命を刈られた。
僕はもうこの時点で、
後生だからいっそ今すぐ僕も殺して欲しいと思ったよ。
けれど、地獄の宴は終わらなかった。]
[次に狙われたのは女性。
「クルーの皆さんが噂しているのを聞いたの。
貴方がとってもお料理上手だって。
プロのお料理も良いけれど、
貴方の作った料理も食べてみたいわ」
どこかで僕の境遇を知って、
優しく接してくれた乗客の奥さんが……。
「私は途中で下船して、恋人の元へ行くの。
二人暮らしが安定したら、結婚するわ。
ハネムーンで、再会できると良いわね」
幸せを約束されていた筈の、乗客のお姉さんが……。]
[他にも船に乗っていた花は一輪残らず、
海賊どもに踏み荒らされた。
奴らが何をしたのか、子供には分からない。
彼女たちが何をされたのか、子供には分からない。
でも、死んだ方がマシな事をされているだろうことは、
分かってしまった……。]
[こんな所に最高にイイ女など居ようものなら、
どんな酷い目に遭ったことか、子供の僕にも知れたこと。
既にこの世に存在しないものを盗むことは出来ない。
だから僕は心の底から、
母さんが生きていなくて良かったなどと、
罰当たりなこと思ったんだ。]
[希望と愛を乗せていた船から、
幸福は残らず奪われた。
最後に僕たちの船は油を撒かれて火をつけられ、
夕日みたいに沈んでいった。
僕たち女子供は、そのまま海賊のアジトへ拉致された。
最早暴れて抵抗する元気を持つ者も、
泣き叫ぶ元気のある者もいなかった。
アジトには他にも何処かで僕たちのように
拉致されてきたのであろう、
女性や子供たちが沢山いた。]
[そして今度は、僕たちを奴隷として売るために、
船で奴隷市場のある場所へと移動する。
不衛生な船室には、絶望に塗れた子供たちが、
ぎゅうぎゅうに犇めき合っていた。
一日に一度、魚に餌をやるように、
パンくずが僕たちの押し込められた
船室にばら撒かれる。
それをわれ先にと、奪い合いながら貪った。
最早、人としてまともに生きているとは、
到底言えない有様だった。]
[いつしか狭い船室内で、しきりに咳をする子供が出てきた。
人数はどんどん増えていき、死者も出始める。
海賊は子供がこと切れているのを確認すると、
面倒くさそうに船室の外へ運んでいった。
まともに葬ってくれるような連中じゃない。
船外へと子供たちの屍は投げ捨てられていたのだろう。
当然医者が診ることなどありえないから、
これは僕の推測だけれど、
あれは恐らく肺結核だったのだと思う。
生きているだけで満身創痍な子供たちに、
病は翼を開く様に軽やかに蔓延した。
当然僕も、同じ病気を患った。]
[高熱に、止まらない咳、血痰……。
最初はすし詰めだった船室内に、
ぽつりぽつりと穴が開いていく。
「助けて」と、声にならない叫びをあげた時、
僕の瞳が捉えたのは、幸せだったころの幻。
助けて欲しいのは、皆の方だったと思う。
僕は今の今まで、のうのうと生きてしまった。]
[高熱で痛む節々に無理をさせ伸ばした手は、
何も掴むことなく沈んでいった。
を叶えることもできず、
を守ることもできず、
に一矢報いることもできなかった。
悪寒で震える体に、熱に浮かされ燃える憎悪。]
[その最期は、さながら沈んでいった僕達の船の様だった。**]
私が行動を起こして、もし未来が変わっていたならば
セシリーが、生きている未来があるならば。
一つの国が混乱に陥っていたかもしれない。
二人が幸せになる未来
が招くのは
大勢が不幸になる未来
。
私は、選んでしまったの。
未来を変えないことを。
| [遠く離れてしまった人なのか、 もしくは既に亡くなってしまった人なのか。 彼の言葉 >>55に思案する。 ゴーストとなったからには一度死を経験している身 何か並々ならぬ思いでもあるのだろうか。 ここで死者の想像はしたものの、 俺の悩みに関する人物があまりにも濃すぎて 考えが別の方向にいってしまったのは もし後に気付く事があれば顔を赤くして 空に逃げたくなるものだ。] (93) 2022/05/29(Sun) 5:35:34 |
| ( "そちらの世界"とは……!?一体何ですか!? ) (94) 2022/05/29(Sun) 5:35:53 |
| いえ、それは……それだけは 勘弁願いたいです 。 仰る通り、肝に銘じておきます。 心当たりがあるのなら、 貴方のほうは、その"誰か"に逢えると良いですね。 内情は知りませんが、貴方自身が忘れなければ いつか、があるかもしれませんし。 (95) 2022/05/29(Sun) 5:36:49 |
| [ゴースト事情も知らずに、 軽い返答をしてしまったかと内心謝罪もしつつ。] はい、ありがとうございます。 料理どれも堪能しています。 [仕事に戻る彼の背をぼんやりと見送り、 その通りだと小さくため息をはいた。 店内は人とゴーストが入り混じる奇妙な光景。 不思議と居心地が良いような、 そのまま何処かに迷い込んでしまいそうな。 ちょうど料理を運んで来てくれた 少年の満面の笑みに応える。 >>2:139 これも霧の夜にしか出逢えない特別な味わい。] (96) 2022/05/29(Sun) 5:37:09 |
セシリーが殺されたと聞かされた時
私は涙を
流さなかった。
流せなかった。
絶望に心が麻痺したから、とかならよかったのに。
どこか、受け入れてしまった私のせいで
私は泣けなかったの。
セシリーはもういない。
何処にも、いない。
目をそむけたくなるほどの
残酷な現実。
涙ひとつ見せず。
その時、教えてくれた兵士に向かって
微かに
笑
いさえした私は、
間違っても妹になんて見えなかっただろう。
泣いたのは夢の中でだけ。
[生きている間に、終ぞ叶えることが出来なかった。
―――
復讐
を果たすことが出来る。]
[この五年ほどの間、
憎い奴らの顔を忘れることはひと時もなかった。
全員しっかり覚えている。
……残念ながら、未だ巡り会えてはいないんだけどね。
僕が知る限りお客様たちは、基本良い人ばかり。
それが世界中の善人比率が高いということの証左なら、
それはそれで良い事だとも思うけれど。
流石に僕も良い人相手に悪さをすることはしないよ?
あんな死を遂げたからこそ、
良い人が理不尽に不幸な目に合うのは、大嫌いだし。]
[復讐は何も生まないとはよく言ったもので。
確かに生まない。
僕が悪党の魂をその身から引き抜けば、
悪党から生まれる筈だった被害者も
生まれなくなる
。
だからといって、自分の行いを正当化するつもりはない。
命を奪う事は、例え相手がどんな人間であろうと、
それが正しいなんてことは、決してあり得ないと思う。]
[運命の再会を果たし、
内心で
「ここで会ったが百年目」
なんて
ほくそ笑む日はきっと来る。
それが僕の持つ、強くて暗い願望。]
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