人狼物語 三日月国


75 【身内】星仰ぎのギムナジウム【R18G】

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ブラキウム! 今日がお前の命日だ!

【人】 金魚鉢 サルガス

 朝方。食事を作りに来た職員らによって、少年の死体は発見された。
 場はにわかに騒然とし、即座に撤去が行われた。
 朝食の席がいつもどおりひらかれたか、どうなったかは、少年にはわからない。
 その姿を見たものが大人だけであったか、目撃したこどもがいたかも、少年にはわからない。
 それが布石となったか、事件となったかさえ、少年にはわからない。彼はもう、いないのだから。

 けれども見たものが言うには、その胸は大きくはだけられていたという。
 シャツの前を開けたその奥には、包帯の痕だけが残った白い肌が有り。
 鎖骨から胸骨にかけては、厚く透明なガラスが肌の代わりに肉を守っていた。
 その中は一部のあばらが切断され、内臓を避けられ、特殊な液体が筋肉層の代わりに埋め込まれ。

 色を失った心臓が、ガラスの向こうにゆらゆらと浮いていたという。
 それはまるで、ちいさな水槽のなかを泳ぐ、
あかい金魚
のように。
(0) 2021/06/01(Tue) 20:00:35
金魚鉢 サルガスは、メモを貼った。
(a0) 2021/06/01(Tue) 20:00:51

あの部屋に、来る。

この日が来たのを知って。
最初に訪れたのは食堂でも森でもなく、
――ここだった。

大人からの指示を受け、
そして動く子供たちが居た、部屋。
ボードも、何もかも、綺麗に元の位置に戻っていて。
これも、何事もなかったかのようで、少しだけ、震える。

いつも座っていた場所に座り、
裏切者は、静かに、待ち人を待つ。

 いつの時間だっただろう、
 シトゥラがここにたどり着いたとき
 彼の頭には包帯が巻かれており、血がわずかににじんでいる。

 少しぼうっとした表情だったが
 誰かがいるとわかるとしゃんと身を引き締めた。

 朝であったのなら泣くのはまだ早い
 昼以降であったのならもう泣かせてもらった
 
(/*正直時空歪ませるから語らずにいこう。)


「あ、裏切者だぁ〜♡
 ブラキウムとは仲良くやれたかな?
 突然大人の言うことが変わったから大変だったでしょ。
 あの子が確かシェンを呼び戻したんだったっけ、
 ……大人から聞けること断片的すぎて詳しくわかってないや。
 少なくとも今は"裏切らなくて"すむようになっちゃったわけだ」

「浮かない表情は、なくなった? 
裏切者じゃなくなるルヴァ


 セキレイのシトゥラは静かに、そして穏やかに告げる。

 自分を加害者だとも、被害者だとも思っている姿は
 本当にただの子供でしかないのだけれど。
 それをもうすべて知ることができたから、
 気分は複雑で、どことなく晴れている。

「あ、僕が最後ですかぁ〜?
 ……この喋りもうええかァ、肩が凝るんですよね」

 標準的なイントネーションの言葉から、
 普段通りの訛りのあるものへ。

「ご気分いかが? 俺はなんも変わりよらん〜」

 適当に腰掛けながら、手帳を開いた。

 今日のギムナジウムの変化は、
 彼に本当に何も影響を及ぼしていない。

――待ち人は来た。
ブラキウム風にいえば、賭けでもあったわけだが。

「……やあ、セキレイ。
 つくづく、いい性格をしてるな。
 いや、何もかもを知っているような、
 まるで何も知らないような
 ……最初からそんな感じだったな。セキレイは」

小さく息を吐く。
思ったよりも、落ち着いている自分がいる。

「……どうだろう。
 ここで裏切者と呼ばれることがなくても、
 裏切者でなくなることを誰も許してくれないとも思う。
 でも、ただ少なくとも、
 ここが必要だったときよりは、少しだけ気分がいいよ。
 
 セキレイ、あのときキミや赤ずきんが聞いてくれた話に
 一つだけ、最近気づいたことがある」

「こっちも、余り変わりはないかもしれない。
 ……ただ、聞いてもらうにはちょうどいい話はあるよ。
 少しだけ、暇は潰せるかもしれない」

赤ずきんの来訪と共に、
独り言のように、話し始める。

きっと、二人なら、
聞いてくれるだろうという信頼があった。
先を促されるまでもなく、
――訥々と話し始める。

二人の顔を順番に見た。

「……ここのシステムについて知ったとき。
 何もされなかったのはなんでかって、ずっと思ってた。
 俺は、俺なりに考えて、俺に利用価値があるからだって、
 そう思っていた。……そう、思いたかったから。

 ……でも、違ったみたいだ。
 俺は多分……あの時大人に『何かをされている』んだ。
 でなければ、基本欺き、不意打ちを重ねてきた俺の両手に、
 こんなに、細かい傷痕がある理由にならない」

袖をめくり。シトゥラに見せた袖の下の細かい傷を晒す。
それは、数回の争いや抵抗なんかでは説明できないほど、
無数の疵だった。

「今も、そこで何をされたのか、分からないでいる。
 ……『おれさま』がずっと、俺には分からないように、
 そこの記憶だけをずっと隠し続けていたんだろう」

遠くを見るような眼をする。

「『俺』は……ずっと、子供の『おれさま』を、
 手を汚せる『俺』が守ってやっていたんだと思ってた。
 でも、違ったんだ、俺はずっと前から。
 本当に傷つくことから、守られていた。
 ずっと……子供の、臆病な、あの日から泣いてるはずの、
 ……おれさまが守くれていたたんだ。
 そしてそれは、今も……」

今も、その記憶には、封が掛けられていて。
弱い、弱いはずだったルヴァが。
泣きそうな顔をして、でも自分は団長だと歪な棒を持ち。
必死に、こちらを遠ざけようとしている。

俺が傷つかないように。
俺が、迷わないように。

ルヴァが、ルヴァでいられるように。

二人を、見た。
小さく、笑った、
誰にも見せたことがない種類の少年の、困った笑い顔だった。

「俺は、誰かに、守られてばっかりだな。
 ……シトゥラ、レヴァティ。君たちにも、だ。

 ……そしてこれは君たちにしか、伝えられない。
 できれば、他の誰にも、伝えずに生きていきたい。
 いつか来る、終わりに怯えながら。

 それが……俺が、
 共犯者だったキミたちに伝える、『願い』だよ」

真っすぐに、二人にだけ、伝えた。
この願いが、叶えばいいなという、祈りを込めて。

「大人みたいにかしこまりたくないし、
 仲良くったって……この治療までの道を
 辛いものにするかはあなたたちだったでしょ。
 裏切者いい子だもん」

 人の情や、愛。存在していることは知っている。
 何かはできないのだろうかと少しだけ期待はしていたり。

「ん〜正解。
 知りきってると思っていた世界があってさ
 同時に見なくていいよ〜って言葉を鵜呑みにしすぎていた。

 ちなみに俺はやっぱり"まだ"ここでは
 年上ぶるの嫌だなぁって気持ち
 卒業したくないなぁ、大人になりたいけど」

 いいよ聞かせてぇと笑う。
 そんな姿は知ってしまったあと変わらなかった頃には戻れない
 幸せの時間は消えて待つのは先の見えない未来だ

 うなずきながらルヴァの『願い』を聞けば、
 レヴァティの方を一度見やった。
 
でも手帳持ってるとあんまり視線合わせてくれないんだよな

 ルヴァが話し始めれば、ルヴァに視線を向けていた。
 さしものレヴァティも、決意をもって語られるような
 話を聞く時は、何となくそうすることもある。

「黙ったまんま? ええよぉ。
 釘刺してんは正解や思う〜、俺どっちでも困らんけんね」

 いつか誰かに聞かれることがあったなら、
 今ルヴァにお願いされていなければ、
 レヴァティは何も気にせずに言っていたことだろう。

 
まだ聞いているかもしれない誰かさんも、
きっとルヴァのお願い聞いてくれるでしょう。


「んー、守られてばかりってこともないと思うけどなァ。
 あ、でも守ってくれる人を守れちょるかって言うたら
 イコールやないんはそう〜」

 シトゥラに視線を返せば、あとはまた手帳を眺め出す。

「守りたい人を守っていけるとええですね、
 なりたい大人になれるとええですね。
 俺は応援しよるよ、ルヴァ」

>>セキレイ
>>赤ずきん

「いい子か。そうだね。シトゥラ。
 ……自分が子供だって、よくわかったよ。
 そうかな、だったら……俺も少し救われるよ、レヴァティ。
 ……ありがとう、話を聞いてくれて」

彼らが耳を傾けてくれるだけで、
今の自分にとっては、随分と救われる話だ。

……きっと、彼らにはもうここでは会えない。
万が一、ここで会うことがあっても、
きっとお互いの立場は今と違うだろう。
これから、毎日きっと食堂で顔を見るのに。
それでももう、『会える』気がしなかった。

『ここでの彼ら』のことを知りたいと思うその気持ちも、
全てこの部屋に置いていこうと思う。
罪と、罰だけを。それぞれの分だけ懐に抱いたまま。

「……この傷はきっと瘡蓋になって、傷跡になって、
 それがいつか、過去を忘れられない楔になるから、
 その時に、また……二人に会いに行くよ」

少しだけ笑い。
親指にそれぞれ歯を立てて血をにじませて、
二つの親指を前に差しだした。

「それまで。少しだけ、さよならを」

((*'▽')!!!!! 見た 多分偶然)

「……言いふらしたのはレヴァティのことを魔術師にかな。
 まあ大丈夫かなぁ〜。
 魔術師もボクたちの明確な味方で、ずっと傍にいる
 協力する前に連れて行かれちゃっただけで」

 ああ、もしその考えを聞いていたら
 真っ先にこの大人を頼る甘ちゃんの鳥はこう告げていただろう。
 ………ルヴァがきたければこの部屋、大人に借りるのに


 今のルヴァはけじめをつけたいのだろうか。
 いつまでも狼ごっこを続けられる仲ではないのは確かだが
 彼なりに縁を持ち続けてくれるのならばそれに乗ろうか。
 いつまでも裏切者達を見守りたい気持ちは変わらない。

「お菓子の次はティーパーティ?
 赤ずきん、ワインやパンに飽きたら紅茶はどうかなぁ。
 セキレイはその頃にはクルミぐらい食めるようになっているさ。
 時計うさぎも女王もここには居ないけど、
 裏切者だけが集まるお茶会に誘う甘い言葉はいつでも囁こう。

 新しい口説き文句が欲しいかい?
 
 最初からボクは裏切者達の味方、
 あなたを守れていたのならそれだけで満足だ」

 何もできなかった、が何かができていたにかわった。
 それはまごうことなくルヴァのおかげだ。
 多分この大きな実績は伝わっていないのだろうが、
 ちゃんと話せる日は遠くない

 小さく口を開いて親指に歯を当てる。
 少し慣れない仕草で皮をちぎれば血が出てきて、痛みを感じた。
 やっぱりこっちのほうがいたい。

「いつもいるよ、赤ずきんに、矛盾を抱えた裏切者達。
 あなた達が居られる場所をボクは作り続る」

 差し出された裏切者の指に、
 血のにじんだセキレイの指を重ねた

 ほんの軽く、どういたしましてを投げていた。
 
ルヴァのその考えを聞いていたのなら、

 
別に『会える』んだけどなァ、と呟いていたことだろう。


「お茶会? 悪くないんやないですかァ〜?
 時計うさぎも女王も居らんくても、別に構いやしないでしょ。
 俺ら、彼女らとお茶会をしたいんと違いますけんね」

 手帳を置いて、二人と同じように親指の腹を喰い破って。

「君らとなら血の盃でのお茶会でも構いませんよ。
 まァお菓子とお紅茶の方がええですけどね〜」

 レヴァティもまた、指を重ねた。

「いいな……お茶会。
 それは、なんていうか、素敵な口説き文句だ……。
 茶菓子よりも、かなり甘いし、口に合うよ。
 その時は帽子被って来ようかな」

少年の顔で笑った。 
合わせられた指の疵も、
いつかは塞がり、刻まれた一つの傷跡になる。
でもそうやって積み重ねてきた罪の上にしか、
自分は生きることが出来ないから。

誰かから与えられた優しさの分まで、
もう少しだけ苦しんでみようと思った。
同じく傷を受けることを躊躇わない人と共に。

その手指が、離される。
自分から、静かに離した。

「……じゃあね。二人とも。
 またここ(ギムナジウム)で、同じ星の下で」

自分たちの今の繋がりは、それでいい。
共に歩くことは出来なくても、
同じ星を仰ぎ見ることくらいの絆は、
持っていけると思うから。

一回だけ礼をして、部屋を去っていった。

「ほいほ〜い、それじゃあまたいつかの未来でなァ〜」

 離れた温度に名残惜しさも特に感じず。
 最初にここに来た時よりも随分と背筋が伸びた少年を、
 ひらと手を振って見送った。

「あ、しばらく本めくり辛いかも」

 血を舐めとって、そんなどうでもいいことを呟いていた。

「……レヴァティー」

 ルヴァが立ち去った後、残った人影にはなしかける。

「ボクとはお茶会してくれるぅ……?
 裏切者が戻ってくるまで。月に1度ぐらい。
 もっと注文つけてイイならねぇ〜
 卒業しても寂しいからどこに居るか教えて欲しい。

 ……ボクは卒業してもこのギムナジウムにいる。
 レヴァティはどこにいくの」

「んー? とりあえずお茶会はええですよ〜」

 あっさりとした了承。それから、少し渋って。

「卒業後の話、俺はしたくないんけど……まぁこの際ええか」

 ルヘナに聞かれている可能性を考えたが、
 図書室で話した時とも随分前提が変わった。


「俺は卒業したら"幽霊"になりますよ。
 外には行きません。ここ以外に行きよらん」

 
レヴァティは、ここにいるのは苦しいけれど、外の出ても

 
大人がこわいままだから、外に行けないなとも思っています。


「やけんセキレイがここに居りよるんなら、
 結構な数お茶会出来ますよ。
 それこそ、団長さんが卒業するくらいになってもね〜」

「幽霊ってなあにぃ……?」

 なんか少し物騒な呼び方のような、奇妙な感覚を覚える。
 ここ以外に行かない理由もほかにありそうだが
 すぐにはわからなかった。

「進学しないの。ボクはできるだけここにいて、あー……
 できる限りのことをするつもりなんだけどぉ」

 あー……と、過去の話を思い出す。
 もしかして彼が大人にされてきたことは
 嫌なことだったのでは無いか。
 自分の頭の狭さが今となっては恨めしい。
 だが真実を知った今は何か他の者が見える気がした

「良くない状況続いていたりするぅ?
 ボクも、レヴァティより酷くはないけど
 すぐに終わらんこと多いから…」

「俺別に身体弱くはないんですよぉ、むしろ多分丈夫な方」

 "風邪"は引くけどね、付け足して言った。


「18を超えてもここにいて、でもみんなの前には出ないんです。
 いる歳と違うくなりますけんね。
 こっそり歩くのはするかなァ、図書館にも行きますよ」


「あとは何かありますか?」

 

「………なんでそんなのが」

 圧倒的にふせられた情報に、
 "親切"な彼から告げられているヒント。

 普段は風邪なんて引かない。
 これ以上話したくはない。
 みんなの前に出ない、こと。

「……、レヴァティ忘れないで。
 何も期待しなくていい、ボクは今日の裏切り者たちのために生きる。ルヴァだけじゃない、レヴァティの願いも叶える。
 大人たちが手出しをできない、
 ……みんなが辛い思いをできるだけしないギムナジウムを作る。
 それが僕の夢、……そしてやらなきゃいけない事だ。
 たくさん助けてくれたお礼、じゃないけど。

 ボクが
風邪を引かせないように
頼むことぐらいならできるから」

「え? あァ、そう」

「……期待しないで待っちょりますよ。
 夢、叶えられるとええですねセキレイ」

「願いなんて俺にはないから、
 その分を余所に使いよったらええですよ。
 お礼されるようなこともそんなないですし」

「まぁ、忘れたいことは忘れておきますね
 忘れんて置かれてることは忘れません」

「……赤ずきんの願いの権利は
 セキレイが貰っていいっていうこと?

 
そう。わかった。


 時間はかかる、それでも大人に潰させたりはしない」

 ここで学んだことは目の前の男が親切であることと、
 害がなければ本当にすんなりと頼み事を聞いてくれること。
 甘えたの自分にぴったりで、
 どうして彼がこうなったのか知らないことがもどかしい。

 話したくないことだけしかわからない、それなら
 これから知っていくしかない。
 そして、幸せになってほしい

「赤ずきんの願いができたら、
 大人なんかじゃなくてセキレイに返せと言いに来てくれ。

 ボクは、……やると決めたら何でもできる。
 たくさん教えてくれてありがとう。
 セキレイは壊れきっているけど、
 俺は無事だったのはあなた達のおかげだよ」

 『それではまた、お茶会で』
 そう告げればホワイトボードに次回お茶会の日程を書き、
 ペンをおいた

 




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