215 灰色うさぎと紫うさぎの雨宿り
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いやどう考えても俺のが汚してるから。
[苦笑して、風呂場に置いてある排水溝ネットを手に取った。
そのまま湯を流せば詰まってしまう恐れがあるので、
ネットを湯の中で回してある程度湯を漉してから
流すようにしている。
情事の後片付けも卯田にとっては「いちゃいちゃ」の一環だ。
「湯冷めするなよ」と微笑んで見送った。
卯田は料理人ではあるが、
「愛する人の料理を食べたい」普通の男でもある。
紫亜が自分と食べることを考えて用意してくれることが
とても嬉しい。]
[思春期の頃からの付き合いだから。
家族のように顔をつき合わせることも度々あった。
その頃は、将来に一緒に居ることなんて考えもしなくて
「似ている」ところなんて一つもないと思っていた。
付き合ってみて知る、彼の癖や思考を、
一つ知る度に、「同じだ」と思うようになって。
その度にほんのり嬉しさを噛み締めてしまえば。
昔に頑なに敬遠していたのが勿体ないと思うくらい、
もっと早くに知っていればとも思うけれど。
昔、じゃなくて、今、好きになって欲しい。
「違い]がある箇所も「同じ」箇所も同じ分だけ。]
[汚してしまったのは二人の結果だとは、思うけど。
こういう時に責めずに買って出てくれるところも、
意識しているのかは分からないけれど、
罪悪感を抱えなくていいと思わせてくれる所以。
優しさに甘えて身支度を先に済ませながら、
彼の着替えがあるかもう一度確かめて。
もう一度覗き込んだバスルームで。
意地悪く笑う顔に、言葉が足りなかったことを自覚して、
慌てて手をぶんぶんと振って否定した。]
そう、じゃなくて!
下着、……また汚しちゃうかもだから、
聞いただけですっ、服は着ますっ!
[さすがにはだかで動き回るのは恥ずかしさにも限度がある。
もうっ!と言葉の足らない自分を棚に上げて、
バスルームのドアを閉じた。]
[
同じ気持ち、
似ていく思考、
違う得意分野、
どれも大切にして、「好き」を重ねていく。
紫亜が洗濯や服選びを面倒と思わずに楽しんでくれるように
卯田は掃除や力仕事を任されるのが嬉しい。
罪悪感を抱えないでほしい、とは思っているけれど、
そう感じさせないことを意識して気負っている訳でもない。
相手が好きだからできること、だ。]
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