124 【身内P村】二十四節気の灯守り【R15RP村】
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| [ 騙されたまま刷り込みで慕ってくれるのも いつまでだろうと考えると憂鬱でたまらない。
なんて常日頃考えているのがどうでもよくなるくらいに 今日もわたしの妹はかわいい。 「やだなあ」だって。え、かわい。何…は?
情緒の上下が激し過ぎて時折如何にかなりそうになる。 たまに正気に戻っている証だ。 如何かしているくらいが平常なので。 ]
もちろんよ。だってさみしいじゃない。 あら、「みっともない」だなんて思っているの? それとも誰かに言われた?
[ そうでないのならいいじゃない、って どっちが甘えているのかわからないような 少しすねた声を出してもういちどふわりと抱きしめる。 まだ腕の中にいてくれることを確かめては 今日も安心しながら怯えている。 ] (52) 2022/01/23(Sun) 22:26:03 |
| [ 彼女に贈られたものはなんだってとってある。 お菓子を可愛らしくラッピングしたリボンから ほんの些細な走り書きの伝言のメモまで。
見た目はすっかり止まったけれど わたしの頭は年相応に物忘れが激しいから。 忘れても思い出せるように些細なものでも、なんでも。 贈ってくれた「おそろい」は仕舞い込んで 同じものを探して取り寄せ使うくらいの気持ち悪さだ。
妹を慕う姉の域を、踏み外している自覚はある。
自覚だけあっても改善する気はまるでない。 ならどうするのが正しいのか、なんてわからなくて。
幼い頃のおままごとみたいに どこまでなら許されるか。何なら望んでもらえるか。 もう尋ねることはできないし……
おままごとも人形遊びも知らなかったみたいに ただしい姉としての振る舞いの一般教養は 生まれてこの方、友人の一人も存在しないわたしには 永遠に備わることもないのだろう。 ] (53) 2022/01/23(Sun) 22:27:05 |
| [ 幾つまでも。幾つになっても。 あの小さなピクニックシートの上の ふたりきりの世界だけでよかったのに。
もう随分と変わってしまったことくらいわかる。 目の前で稚い顔をして愛らしく笑う彼女も 抱きしめた体もすっかり大人びて 普段はもうすっかり一人前の女性だ。
もうとっく届かない所に行ってしまったことは もうとっくにわかっているけれど。
二人きりの限られた僅かな時間くらいは 幾つまでも。幾つになっても。 このままでいてほしいと願わずにはいられない。 ] (54) 2022/01/23(Sun) 22:27:56 |
| [ もうちっともか弱くも小さくない手に引かれて 足がもつれそうになるのも忘れてその背を追いかけて 愛おしいこの時間が永遠に続けばいいのにと願う。
わたしの生まれ持った『親愛』の能力で例えば この愛おしさを奪ったとしたら いったい誰から何が奪われるのだろうか。
考えるだけで恐ろしい。
それなりに危険視されているらしいわたしの能力は 本当は完全に役立たずなことに 気付いている誰かはいただろうか。
使い道がないのだ。奪うものが存在していない。 わたしにとって愛するものなんて、 世界中にただひとり、この子しか存在していないから。 ] (55) 2022/01/23(Sun) 22:29:39 |
| [ 何度も参加していい加減理解している。 この会合、雰囲気ばかりは堅苦しいが 余り真面目に参加しなくてもいい。
いや、良い事はないだろうけれど。 問題はない、といったほうが正しいか。 熱心になったところで意味はないというのが 一番しっくりくるかもしれない。
最初の頃は全員に挨拶に回ったりもした 厳密には蛍を担う老人たちが。 けれどひとりで顔を出すようになってからは 必要ないだろうとそれもしていない。
会合に限った話ではない。 灯守りの仕事全体そんな姿勢だ。 こんな人間が灯守りを勤めていて 芒種域のひとびとを気の毒に思いこそすれど 改善しようとは思わない。思えない。 ] (58) 2022/01/23(Sun) 22:39:49 |
| [ 意味がないし、面倒なのだ。 それでも尚、と頑張れるほど立派な人間でもない。 わたしが出来ることを増やしそれらしい権力を 取り戻そうとすると必ずどこかで角が立つ。
しかも向いていないから殆ど成長がない。 そして成長がなくたって問題なく回るのだから 何もしない方がいいなんて甘えた気持ちに拍車がかかる。 あの子の故郷ではあれど、もう旅立った場所で もう新しい故郷を見つけ、定めてしまった。 芒種はあの子が帰ることのない場所だ。 あの子のいない芒種域など、正直心底どうでもよくて モチベーションも地に落ちたままだ。
けれどあの子の自慢の姉のふりをするために 無能なりにそれらしく振舞うくらいはする。 外面だけを無理に取り繕おうとするのだ。 うちの家系は、みんなそう。
そして、何度も参加していい加減理解している。 それらしい顔をして真面目に聞いている振りをするだけで わりと、それらしく見えるのだ。 事実はさておきそうでない態度の人が 大層目立つ事がとても有り難い。 ] (59) 2022/01/23(Sun) 22:40:18 |
| [ 真面目な顔をして全体を見ているようで その実妹しか見ていない視線が 時折妹と重なるたび、心の内でガッツポーズをきめつつ それらしい相槌や思わせぶりな笑顔で 応援していたりそれでいいと促すような ほんの一瞬の細やかな反応を返す。
むしろ内容なんてろくに聞かずそれだけしていた視線が 唯一逸れた場面があった。
じい。 じいいいいいい。 じいいいいいいいいいいいいいいいいいい。
真っ白で滑らかなちょっとよくわからない形状に 釘付けになる妹の横顔込みで 獲物を狙う獣か何かのような眼差しで つついて凹ませたくなる質感の魅惑のボディを見つめる。
特に理由もなく踏み潰したい。叶うなら。 妹が悲しむのでしないけれど。
いつもさりげなく袋小路に追い込もうとしても わりと素早くて逃げられ通しのちいさな姿を 見とれる妹に気付かれぬよう妹よりもほんの数秒短く ねっとり、じっとりと、見つめたりした。
なお会合の内容は当然ながら、殆ど頭に入っていない。 *] (60) 2022/01/23(Sun) 22:42:34 |
── 中央域の苦労人 ──
今、すこしお時間よろしいかしら?
[ 最初の一言はいつだってそんな
当たり障りのない言葉と他所行きの微笑。 ]
[ 休憩の時間を狙いすましたように声をかけたのは
彼が中央の勤務に慣れ始めた頃だったかもしれないし
わたしが芒種を継いで幾らか
落ち着いた頃だったかもしれない。
ふと目に付いた、条件に当てはまったのが彼だった。
それ以外の理由は特にない。多分。 ]
ご結婚もご婚約も今はされていないと聞いたのだけれど
今のところはご予定もない、ということで間違いはない?
他にお付き合いされている方や
好意を寄せる相手はいらっしゃる?
もしもね、もしも問題がなければ………
すこし、つきあってほしいの、わたしに。
[ いないことは周りに確認したものの
当人の心の内まで備に知ることができたとは思わない。
だからこその確認だったが
まるで尋問のような語り口だったかもしれない。
何につきあえばいいか、問われて間違いに気付いた。
言い回しとして間違いはないが、
間違ってもいないだけで正解でもないと。 ]
あらやだわ、言い方がいけなかったかしら。
訂正するわ。
ねぇ、天乃さん。
付き合って欲しいの、わたしと。
こいびととして。
[ 大人しい顔をして、落ち着いた声色で
頬に手を当て気持ちばかりの恥じらう真似事をしてみせて。
彼に一番最初に持ち込んだ面倒事は、たしかそんな話。 ]
| [ あの頃はただ任された仕事だけを 裏方として全うしているような 影の薄い男だったと記憶している。 それがちょうど良かった。
今となっては他領域の灯守りたちに囲まれて それが本人の望むところかは定かではないが いい意味で、随分と愛されているように見えたから。
声もかけず、遠目に眺めるだけにとどめておく。 もし目が合うことがあれば揶揄う意味を込めて 艶っぽい視線の一つでも送ってやっただろうけれど。 *] (61) 2022/01/23(Sun) 22:53:21 |
| (a27) 2022/01/23(Sun) 23:01:51 |
[パパは、私の知らないことをなんでも知っていた。
ママは、私の出来ないことがなんでも出来た。
お姉ちゃんが現れるまで身近な大人が
両親かご近所のおばさんくらいしか居なかったから、
『大人』はみんなそうなのだと思っていた。
だからお姉ちゃんは、幼かった私にとって
『めずらしい大人』だった。
お姉ちゃんは、おままごとで
『お料理』を食べるふりをするんじゃなく
その『お料理』をきっかけにお話をしてくれた。
ママを真似してどんなに『おいしいお料理』を作っても
『本当のごはんみたいには食べられない』のは
子どもの私もちゃんと理解していたから、
お姉ちゃんが話してくれる色々なお話が
楽しくて、わくわくして、大好きだった。
パパはいつだって私より先に私の気持ちを察そうとして
パパの考える最善を尽くそうとしてくれて、
それはそれで優しかったと思っている。
けれど、『ぱぱの役』を担ったお姉ちゃんは
私の気持ちをひとつひとつ根気強く尋ねて、
私自身も上手く言葉にできなかったような私の望みを
丁寧に紐解いてから形にしようとしてくれた。]
[空を映したような虹色のピクニックシートの上で
ほとんど休みなく毎日のように生み出される
"ぱぱ"と"まま"とぬいぐるみたちとの物語は、
最初は確かに両親の真似事だったけど
そのうちに私達ふたりしか知らない新しい物語になって
それがとても楽しかったのを憶えている。
お姉ちゃんが、ごっこ遊びじゃなく現実に
代理を担っていたことを
幼い私はまだ知らなかった。
お姉ちゃんが一体何者なのか、さえも。]
[何の疑問も抱かずに目の前のものを素直に吸収しては
模倣と反復、少しの創造を繰り返していた幼少期は、
やがて身近にあるもの全てに疑問を抱く
いわゆるなぜなぜ期へと突入する。
どうして空は青いの?
どうして夕やけは赤いの?
どうしてお花が枯れると木の実ができるの?
どうして土にお水を混ぜると固まるの?
どうしてアメンボはお水の上を歩けるの?
世界のありとあらゆる物事が不思議で仕方ない。
最たる謎に包まれていたのは他ならぬお姉ちゃんだった。
どうしてお姉ちゃんは、
まつりにやさしくしてくれるの?
どうしてお姉ちゃんは、
まつりのおねがいを何でも叶えてくれるの?
どうして、『行かないで』は叶えてくれないの?
どうして、どうして、
『行ってきます』じゃなくて
『また遊びに来ます』なの?]
おねえちゃんは、
まつりのほんとのおねえちゃんなんだよね……?
どうしてずっといっしょにいられないの?
どうしてどこかにいっちゃうの?
パパも、まいにち、どこかにいっちゃうの。
なんにちもあえないときもあるの。
おしごとだ、っていってた。
おねえちゃんもおしごとなの?
どんなおしごとなの?
[お姉ちゃんがどんな想いで私に付き合って
どんな想いで私の質問を聴いていたか、知らない。]
おしごと、たいへん?
あのね、パパもママも、かたをとんとんってしたら
よろこんでくれるの。
とってもらくになるんだって。
おねえちゃんも、
とんとんってしたらげんきになれるかな?
[今にも泣き出しそうな笑顔で
私の絵を受け取ってくれたお姉ちゃんが、
どうしてそんな表情をしたのか、知らない。
幼い頃から貰い続けている抱えきれない程の愛情に
感謝の気持ちを返せている気は
大人になった今でも全然していない。
けれど、
お姉ちゃんがどうしたら心から喜んでくれるのかは
ずっと、ずっと、今も考え続けている。]**
["
それ
"を、消してあげるべきなのか迷ったこともあった。]
[現小満の能力は稀有な方であると言え、直接人に作用するものだ。
悪意を持てば簡単に他人を害することができ、他の
雨水や大雪のような
そうした能力持ちが受けてきたように奇異の目に晒され人から遠ざかっても何らおかしくないもの。
それが巷で天使などと呼ばれ
(本当に本質にそぐわぬ字だ)
疎まれることなく平穏に暮らせていたのは、ひとえに運が良かったことと、本人にまるで悪用する気がなかったのが幸いしたのか。
いや、誰しも能力に苦しんだ者は、悪用のつもりなどなかっただろう。だから苦しむ。
人を根本から変えてしまいかねない力を持った灯守りは、その力の影響範囲をごく狭くすることで律してきた。
悲しみを取り除くこと。
穏やかな日常を返すこと。
心が充分に癒えたら、預かった記憶を戻すこと。
それで充分だ。それ以上は手に余る。]
[記憶を操ることが出来るということは、他人の記憶に触れることが出来る。
何があったかを知ることができ、それらが形成された根幹を知ることが出来る。
だから、新たに"処暑"となった彼女が語らなくとも、喪われた"処暑"との間にどのような関係
があったのか、知っている。
とはいえあまり好まれる行為ではないというのも当然わかっているから、日頃無断独断でそのような行いはほとんどしない。
数十年の先の未来で、己の蛍となる少女に向かって同じことをするのだが。
けれど、今にも消え入りそうな灯りが目について、身体が勝手に動いていた。もし能力の暴走を事故と呼ぶなら、これはそうと見て差し支えないものだろう。
そして、すべてを知り、迷い――結果、何もしなかった。
]
[夕来は、死んでしまった。
彼女は、灯守りになってしまった。
喪われた処暑に対して悔やんでも悔やみきれぬ感情を抱えているものもいる。
罰された蛍も存在する。
それは付け焼き刃の処世術で変わる現実ではなく、その深い悲しみを彼女から拭おうものなら、今の彼女のすべてが揺らぎかねない。
そしてあまりにも部外者でしかない小満の灯守りが何事か手を出して癒えることとも思えなかった。
彼女に対しては何もできない、と悟り。
そして付け焼き刃の処世術と薄っぺらな笑顔ばかりを身に付けた男は真に彼女に寄り添えもしない。
そういったのに向いているのは、他にもっともっといたから。]
[それきり小満は、処暑に対しては見守るばかりだ。
あれほど誰にでも笑いかけ輪に入り話題に首を突っ込み酒を酌み交わしする小満が、ひとり居る処暑に対しては、積極的に動かない。
違和感を覚えるものはいたろうか。いたかもしれないが、指摘されてもはぐらかす。
数十年それを重ねてきた。
今もなお、処暑は人の輪から一歩引いたところに居続けている。
ただ昔よりは落ち着いているように思うのは気のせいではないだろう。
僥倖、と内心、静かに笑うだけ*]
――回想:月夜、金色の領域にて
[ 処暑の領域を訊ねたのは
随分と久し振りのことのように思えた
処暑の恵みから離れて 少し。
その夜、処暑の領域を再び訊ねたのは
米の美味しさに感動したことも本音だとも
それ以外の感情が無かったといえば嘘になるだろう。
少しばかりの懐かしさを遠くに感じ
朝までこの景色を見ていようかと思っていた。
けれど処暑は こんな時間の来訪者を律儀に出迎えてくれた ]
[ 冬至の領域より 其の時ばかりは暗い領域
けれど夜目は利く性質であるからして
其の世は 収穫するには十分な光があった ]
……。
…………。
…………………。
[ 処暑が見守る中で見つめる稲穂達
踏み入り かき分けど稲。引っこぬいて 其の根を見て
時に千切れた其処を見つめ 空へ数度振って ]
処暑、…お米はどこですか?
[ 見当たらぬ米に 処暑を見た ]
[ 初めて実感した。
恵んでくれる様々なものに
ぽいと気紛れのようにくれた処暑の米にも
大変な汗や何かが滲んでいるらしいことを。
この時 傍観を決め込む処暑に頭を下げ
再び米を恵んでもらう事が出来なかったら
其の時、おむすびさえも作る事は叶わなかった。
米というものを甘く見ていた事を 認めざるを得なかった ]
ー パーティー会場の外 ー
[小満、天乃との会話を終え、外の空気を吸いながら、ゆっくりと考える]
[大先輩ともいえる灯守りの眼には、自分はどう映ったのだろうか。……少なくとも、悪くはなさそうだが]
[目の前の大先輩に、助言
や励ましを受けたことも思い出した。……どうにも大先輩は、自分とは比べ物にならないくらい肝が太かったようだが]
[ 何はともあれ、ご飯をたいた
米にさえなっていればお手の物だった
風呂にもこだわりはあるが 米炊きにも自信はある ]
おむすびは 具をいれるのも醍醐味です。
私は鮭や唐揚げが好きですが
あなたは何が好きですか?
……とはいえ。
処暑の米はそのままも美味
今日はおしおのおむすびにしましょう
[ 手近な台の上に立てば すいすいとおむすび作り。
ほかほかあつあつのごはんを ふっくらやわらかさんかくに ]
……コーネリアに任せて、私は最後まで寝ていたら。
彼女、どんな顔するんでしょうね?
[大先輩の助言を実行した時の彼女の顔は、浮かびそうで、浮かんでこない*
[ あたたかいお茶を添えて
まっしろなおむすびをのせたお皿を差し出そう ]
すっかり朝ごはんの時間でした
遅くなりましたが――どうぞ
こちら おむすびです。
[ 具もなければ海苔も無い
お米のあじと ほのかな塩の甘み
ただそれだけの、さんかくおむすび ]
[ ――見ていた
差し出したおむすびを
差し出された処暑のことを
伸ばす其の手
喉を通る、ひとかけらの行方
こぼれるひとつぶ ひとつも漏らす事の無いように
彼女が言葉をこぼさぬのならば
己は何をこぼすこともなく ただ少しの間、見守るのみ ]
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