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【人】 空腹な迷い人 レックス[ 門の向こうに無数の 紅い蝶 が舞っている。それは、やがて人の形になる。 煌めく 金糸の髪 透き通った 海色の瞳 蘇芳に染まったドレスに、 黄金の刺繍 ゆったりとした豪奢なドレスを、 ふわりと揺らして、美しい魔女は、――現れた。 魔女は、優雅に微笑んで、ただ待っている。 おもちゃ "ゲーム"の駒が、その手に収まるのを。] …………僕が、僕のまま帰れたらいいな [ カツンと一歩。 扉の向こうに、踏み出せば、 ゆっくりと扉は締まっていく。 扉が完全に閉まる前に、 少しだけ名残惜しくて、振り返った。] (22) 2020/09/15(Tue) 21:43:39 |
【人】 空腹な迷い人 レックス――――さようなら、 [ 血生臭くない、穏やかな世界とはお別れだ。 最後に浮かべた微笑みは、少しだけ寂しさが滲んだ。**] (23) 2020/09/15(Tue) 21:43:41 |
【人】 橋本 雅治[散々泣いて、ちゃんと話して。 「その先」へ進む第一歩を踏み出す前に。] ………………お腹空かない? [どんな時でも腹は減る。 例え死にたがりの腹であっても。 ぐぎゅるる……と盛大に鳴った腹を 両手でぎゅっと押さえ付けながら 俺はおずおずと「恋人」に尋ねるのだった。]* (24) 2020/09/15(Tue) 22:42:02 |
【人】 環 由人[ 大きな音が響く。 目を丸くしてそちらを見ると、 両手で彼がぎゅっと腹を押さえるから。 ふは、とまた昼間みたいに噴き出して、 そのままくつくつ肩を震わせた。] うん、晩飯食おう [ と頷いて、客室へ運んでもらえるよう フロントに連絡を入れようか。 それが来るまでの間、せっかくだから 準備されていた浴衣に袖を通して、 褞袍を羽織る。] (25) 2020/09/16(Wed) 0:02:16 |
【人】 環 由人露天風呂もあるらしいし… 楽しみだな。 [ と微笑んで。 運ばれてきた食事に舌鼓を打つのだ。 先付けから始まるコースと別に、 一品料理として、今が旬の 鮭児が食べられるというから少し値は 張るけれど、せっかくだし、と注文した。 半冷凍で運ばれてきたそれは、 生臭さはまったくなく、 口に入れるととろけるような舌触りで、 日本酒によく合う。 なるほど、はじめにきいた評判に違わず、 海の幸の溢れる夕食は絶品だった。 ───が。] (26) 2020/09/16(Wed) 0:02:37 |
【人】 環 由人温泉…… [ そう、温泉に入る予定だったのだ。 だったのだ、けれど─── 酒をしっかり飲んでしまったものだから ちょっとさすがに今すぐ入るのは 体によくない気がする。 客室にも温泉が付いているらしいから、 そこで済ませるか…と思案して。] (27) 2020/09/16(Wed) 0:02:57 |
【人】 環 由人…ちょっと、休んでからにする。 温泉、行って来なよ。 [ と彼には促して、 己は一度、和室仕様の低めのベッドに 座って、しばし休憩をとろうか。]* (28) 2020/09/16(Wed) 0:03:16 |
【人】 やる気のないアルバイト でゅーーすあしひきの 山路越えむと する君を 心に持ちて 安けくもなし あなたが辛く険しい道を行こうとしていると 私は気が気ではありません (29) 2020/09/16(Wed) 8:47:55 |
【人】 やる気のないアルバイト でゅーーす[個室から出てきた男が、カウンターの上に 空になった皿をからん、と置いた。 アルバイトは、爬虫類じみた縦長の瞳孔で 調子の悪そうだった客の顔をじっと見つめると ふしゅる、と息を吐いた。] 具合、良くなったんなら良いッスけど…… [ちゃんとナポリタンの皿は空になっている。 一介のアルバイトに、それでも彼の体に残る 疲労や病気を見抜く力も無ければ ここに引き止める権利も何も無い。] (30) 2020/09/16(Wed) 8:48:14 |
【人】 やる気のないアルバイト でゅーーす[だけどこのアルバイト風情に対して 行儀よく差し出された手には、 ちょっと照れ笑いを浮かべたけれど……] 会えないかもってことは 会えるかもってことっショ。 [訳アリっぽいお客さんだったから 多分アルバイトが想像するよりずっと この言葉と握手の意味は重いのかもしれない。 薄い手を握り返して、男は 彼に言える台詞をなにか考えだそうとして ─────結局、やめた。 彼がここで出会った本が 何か彼の道を照らしてくれるか 或いは彼の気持ちに寄り添ってくれる 誰かとの出会いに期待をするか。 言える事など、何も無いのだ。] (31) 2020/09/16(Wed) 8:48:36 |
【人】 やる気のないアルバイト でゅーーす俺は、デュース。 ……万引きの罰として働いてるだけの つまんねえアルバイトッスよ。 [人の形だろうが、無かろうが 己がここにいる理由は大したことじゃない。 ……まあ喰われては敵わないのだが 人ならざる者達の手が、しゅるり、と解け レックスの手は扉にかかる。] (32) 2020/09/16(Wed) 8:49:13 |
【人】 やる気のないアルバイト でゅーーす[こんなの、ただのおまじないだ。 効力の程は知らないし 強大な魔女の力の前には ちり紙程の力もないだろう。 ─────それでも。] 『鬼滅の刃』終わっちまったし 『チェンソーマン』も終わりそうだし…… でもまあ、『HUNTER × HUNTER』の 暗黒大陸編がとりま完結するまで 俺、ここにいると思うんで。 [またのご来店、お待ちしております。 人喰い鬼の寂しげな顔に、 スキュラはゆらりと尾を揺らした。]* (34) 2020/09/16(Wed) 8:55:15 |
【人】 橋本 雅治[盛大に鳴った腹の虫を笑われたものだから 何か言い返してやろうと思ったのに 運ばれてきた料理を前にしたら もう全部どうでもよくなった。 とろりと濃厚な揚げ出し豆腐から始まって 貝殻ごとホタテの半身を焼いたものとか、 大ぶりな蟹のしゃぶしゃぶとか…… いつもの食卓に出て来ないようなご馳走を前に 野暮なことを考えちゃいけない。 由人が頼んだ一品料理で 何やら凍った刺身が運ばれてきたときには 流石にびっくりしたけれど!] ルイベ、っていうんだ。 [仲居さんの説明に、しげしげとそれを眺めて。 お土産屋でよく見かけるルイベ漬けとは違って 味付もなければ、イクラもない。] (35) 2020/09/16(Wed) 14:38:56 |
【人】 橋本 雅治「炙って召し上がる方もいるんですよ」 [なんて、仲居さんから教わってみたら 行儀が悪いけど、しゃぶしゃぶ用のコンロの火で 脂ののった皮の辺りを軽く炙って食べてみる。 溶けた脂の甘味に、少し香ばしさが加わって…… うふふ、と笑いがこぼれてしまった。] これは……お酒が進んじゃうやつだ。 [口の中に残る甘みを熱燗で流し込んで 次の一枚は凍ったまま食べてみて。 逃げるように飲むお酒と違って 好きな人と楽しく飲むお酒って こんなに楽しいんだ、って。 ついつい、次に控えるイベントのことも忘れて 盃を空けてしまうのだった。] (36) 2020/09/16(Wed) 14:39:14 |
【人】 橋本 雅治……え、温泉、行かないの? [酒気で赤らんだ頬のまま、俺は由人を振り返る。 北の海鮮と美酒とですっかり上機嫌な俺は このまま由人と湯に浸かれるものだと思っていたから 思い切り口をとがらせてしまうだろう。] 男湯だよ、男湯?! 合法的に無料で男の裸見れるんだよ? イェイイェイヲウヲウパーティーじゃん! [回らない呂律のまま行ったら パーティー会場で門前払いなのだけれど。 それでも尚も「行こうよぉ」って、 ベッドに腰かけた恋人の手を引いて 酔っ払いは甘えた声を出す。 けど、この堅実な恋人が動かないと知れば パーティーへの興味も失せて。] (37) 2020/09/16(Wed) 14:39:30 |
【人】 橋本 雅治……じゃ、俺もいかない。 [由人のベッドにどさり、と腰を下ろすと ぶすくれた顔のまま体を横たえてしまうのだ。 "ママ"の姿は何処へやら。 完全に質の悪い、幼児のような酔っ払い。 ご機嫌斜めのように見えるかもしれないけれど 初めて、素のままを曝け出せる相手ができたことに 嬉しくて嬉しくてご機嫌なのだから、面倒くさい そしてこの面倒くさい酔っ払いは、 お堅い恋人が隙を見せたら 柔らかなベッドの上へと引きずり込む気満々でいる。]* (38) 2020/09/16(Wed) 14:48:46 |
【人】 環 由人[ ここまでの馳走を家で振る舞うことはない。 いつだって、お互いの口に入るのは、 その日のW余り物Wばかりだったから。 だけど、その喜びようをみていると、 せめて誕生日くらいはこれくらい いいものを準備しようかな、 なんて気持ちにだんだんなってくる。 前は心ばかりのケーキを一切れ、ずつ、 だったし、次の誕生日はきっと。] (39) 2020/09/16(Wed) 19:25:13 |
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