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【人】 武藤景虎冷静におしゃべりは無理……、だったかな。 [それがわかっていたからこそ、“あれ“はオレの前には現れなかったのだろうし。 偽物の柚樹については、美術館の中で柚樹が遭遇していたものと同じだと考えれば、柚樹の説明>>90は納得がいった。 柚樹に好きだと告げた時、同じ気持ちだと答えたすぐ後に、“でもダメだよ“と、恋人にはなれないと言われた理由を思えば、あの時の柚樹が抱えていた思いをそのまま表しているのだろう、とは。 柚樹と付き合ったらオレが変に思われるからとか、そういう。] まあでも、偽物の柚樹には全く心は動かされなかったよ。 [何も心配してなかったと思うけど。 だから、オレの方も似たような感じで自分の深層心理的なものが反映されていたのだろうと思うと、若干聞くのが怖くはあったが、気になってはしまう。 一言目の説明でもう、「は?」とは不機嫌な声が漏れてはしまったが。>>91 やっぱり“あれ“と冷静に話すのは無理だったと思う。] (100) 2023/03/06(Mon) 2:59:57 |
【人】 武藤景虎いや、オレだって素面でもそれくらいは言え……、いや、続けて……。 [愛してると言ってきたからオレじゃないって判断されるのはどうかと思うと反論しようとしたものの、事実なので先を促した。] ああ……、それは確実に言わないかな。 [次に挙げられたことは、柚樹がオレではないと気づいても納得のものだったけど。 柚樹が忘れろと言ってくるようなことも、全部覚えているところはあるし。 なんでもかんでも覚えておこうとするのは、以前繰り返し見ていた“柚樹が最後の一人になる悪夢“のせいだと思う。 あの夢の中で、柚樹が天使にオレの記憶を消して欲しいと願った時、絶対に忘れないと叫んで、仮令神様の力とかで記憶を消されるようなことがあっても、忘れないつもりだった。 だから、“忘れる“ということを無意識下で避けているのかもしれない。 その分、ごっそり記憶を失くしたことのショックは大きかったのだが。] (101) 2023/03/06(Mon) 3:00:21 |
【人】 武藤景虎[その他挙げられたものは、改める気がないか改められる気がしないものばかりだったから、柚樹が改めて欲しいわけではないならそれでいいかと思って。] 中身がある……って自分で言うのすげえアホみたいだな……。 [そんなこと言う奴がオレの理想だったらやだなとは思いつつ、まあ、コンプレックスの最たるものなのは確かだったので。] ん……、でもそれも、柚樹がそんなことないって言ってくれたから、もう気にしてないよ。 [柚樹があれに縋ることは無いとはよく理解できたから、聞いておいてよかったなとは思う。] (102) 2023/03/06(Mon) 3:02:26 |
【人】 武藤景虎お互いにもうあれが出て来ても何の問題もなさそうだとはわかったから、大丈夫。 あ、紅茶ありがと。 [“あれを呼んだのは私かも“と言うのに緩く首を振って、新たにカップに注がれた紅茶に口をつける。] わかった、その必殺技みたいな名前のケーキは帰ったら奢るよ。 [“新エクストラスーパーあまおうショートケーキ“ってどんなんだろうと思いながら、ボウルに入った苺を口に放り込んで。>>93 オレもスーパーモンブランのことは思い出してはいたよ。 その時も、ケーキで手打ちにしてもらったんだった。 あの時初めて柚樹を部屋に呼んだんだったなと懐かしい気持ちになる。 ほんとにケーキ食べに来るだけのつもりだと思ってなかった、と笑って。] ……ありがとな。 [こうして思い出が語れることが嬉しいと改めて実感すれば、謝る代わりにお礼を告げて笑みを返した。]** (103) 2023/03/06(Mon) 3:02:52 |
【人】 田中 天美は、食えんでかわいそうにのお。 [からからとした笑いの軽さと振る舞いは、何度となく繰り返した軽口のひとつだと察するに容易い。本心から哀れんでいる訳もない。 飯も食うし眠りもする、大太刀を振るうだけの力はあるがそれも常人で手の届く範囲。化けもしなければ宙に浮けもしないし空を操れもしない。老いも死にもしない以外はただの人間だ。 違いはそれ“だけ”だが、人においては決定的な差だ。生まれた地を、妻子を、真っ当な一生を手放さざるを得ない差だ。老いぬ所為で一所に留まることもかなわず、放浪を余儀なくされ、そして何より死を許されない。 深江がどれほどまで終わりを希ったものか。長命といえど命に限りある化生では分かってやれない。多くの死を見て別れを知る立場は同じでも、やがては死ぬ狐とは違う] (104) 2023/03/06(Mon) 3:14:04 |
【人】 田中 天美[そも、人喰いの化け狐と、それを討ちにきた退治屋が最初の関係だ。紛れもなく敵であったが、いくら食い破ろうが裂こうが物ともせず大太刀を振るい、息の根を止めようとする姿の異常さに気付いた時、剥き出していた牙を収めて代わりに声を掛けたのが、次の関係に至るきっかけ。 生きるには肉であれ生気であれ人を喰らう必要がある自分と、いずれも喰らったところで無限に再生する不死。山に入る人も減り、狩りに難儀していた時分に深江の存在はあまりにも都合が良かった。代わりに他の人間を食ってはならないという約束も有って無いに等しい条件だ。ただ傍にいりゃいいだけなのだから。 互いに利があると見込んで成った関係だ。数奇にも三桁を超えても破綻せず、そして自らが終わりを迎える瞬間まで続くのだろうという予感がある。 今更他の道を選ぶ気も、別の誰かを伴って生きる気も起きやしない。それを人は惰性と呼ぶのかもしれないし、執着と呼ぶのかもしれないし、もっと他の名をあてるのかもしれない。無論、そんなの自分たちにとってはどうでもいいことだ] (105) 2023/03/06(Mon) 3:14:41 |
【人】 田中 天美[どうしたって違う生き物で全てを理解できずとも、こうして縁あって共に生きている。 それ以上でも以下でもない。 唯一無二と過ごす現在に安穏とした満足を得ていることだけが事実だった] (106) 2023/03/06(Mon) 3:15:06 |
【人】 田中 天美んじゃ具考えなきゃの。 いや巻きたすぎか??? 餅は明日バーベキューの時んでも焼くかあ。 砂糖醤油作って……きなこもええな。小屋行ったら無いかの。 魚は次だなあ。 貝はあるし煮付けにでもして具にせんか? [コテージの橙の明かりに照らされながら、色んな匂いが混じり合うキッチンで、やいのやいのと騒いで笑う。 貝の煮付けの甘ったるそうな醤油、きんぴらの味付けに使ったごま油の香り、炊けたばかりの飯の仄かな甘さ。フライパンで作った卵焼きはちょいと歪だが香ばしそうなきつね色で美味かろう。おむすびの具も何種か作って海苔で包み、できたおかずと一緒に弁当へぎゅっと詰め込めば完成だ。沸かした茶を水筒に移してる間に、リュックの荷詰めは深江が済ませたようで、明かりを受け取ると経つ準備は終い] (107) 2023/03/06(Mon) 3:15:36 |
【人】 田中 天美[肌を撫でる夜気は心地よい涼しさを連れてくる。じぃいと羽を鳴らす虫の音、ひょうひょうと細く鳴く鳥の声、葉土を踏みしめる音と二人の会話が夜に混じり合う] うっかりコケても知らんぞお。 [実際のところ夜目は利く。この程度の山なら明かりなど持たずとも影に足を取られることもない。それでも繋いだ手の先には暗闇を覗けない男がいるのだから、先導して照らしてやらねばなるまい。 まあ、気配を読める人間でもあるから、心配なんてものはしてないが] (108) 2023/03/06(Mon) 3:15:57 |
【人】 田中 天美ああ。 最近じゃあ、一等かもしれんの。 [深江が天を仰いで足取りが緩んだのに合わせ、同じように空を見上げた。木々の空隙を冴え冴えと星が瞬いている。 思わず見惚れて足を止めるほどの豊かな情緒は持ち合わせていないが、美しさだけは分かち合える。いいものだと共感し、それでいて更に奥へと進んで行く] しかし、天辺となるとどんぐらいかかるもんかの。 適当なとこで弁当広げてもええかもしれんな。 [そんな会話を交わして暫く、開けた一帯を見かけて足を止めた。 人の手で十分手入れされているようで、地表を覆って陽光を遮る木々をいくらか間伐したのか、雑草や蔓が雑多に生い茂ることもなく、陽光に照らされて緑に包まれている。 近くの切り株も芽吹いており、あちこちに小さく花も咲いていた] (109) 2023/03/06(Mon) 3:16:12 |
【人】 田中 天美お、ここらでどうだ? 弁当も冷めきるよりよかろ。 うん、昼に来ても悪くなさそうなとこだの。 [休憩には丁度いい箇所を見つけ、一旦ここで弁当を広げることに決めた。どっしと地面に座ってあぐらをかき、持っていた懐中電灯のボタンをぽちと押す。行きの道で深江に教えられたが、先が消える代わりに持ち手全体が光ってランタン代わりになる機能付きのやつらしい。便利なもんもあるもんだ。 互いの間に置き、はようとリュックから出すよう促しつつ、どちらともなく空を仰いだ] (110) 2023/03/06(Mon) 3:16:29 |
【人】 田中 天美……ああ。 [盆いっぱいの銀砂を撒き散らかしたかのような星々が、夜に燦めいている。 それは先の一等を素直に上回る景色に違いなく、ただ嘆息した]* (111) 2023/03/06(Mon) 3:16:46 |
【人】 黒崎柚樹["ひとめ?ふため?惚れ"だったとは、聞いている。 美術館へと向かうバスに乗る前。 同じ研究室に所属して半年後、初めてまともに雑談らしい雑談をしたあの時。 笑った私を"かわいい"と思って、もっと笑ってるところを見たいと思ったんだって。 武藤を疑うわけではないけれど、でもあの時の私はまだ男としか見られていなかったのだから、そういうものかなと不思議には思っていた。 このキャンプに来て、私を女と認識していない"あの時の武藤"と沢山おしゃべりして。 女と知っても知らなくても武藤は良い奴で、優しくて、楽しくて。 性別を知って、これは女の子に対する"好き"だったんだ、と気付いた風なのがあちこち見てとれてしまったのは、きっと自惚れではないと思う。] ……うん。それは、そうと思う。 [武藤の言葉 >>99 には、だから私も頷いた。 性別を知って、さして不思議とも思っていない風だったし、むしろとても腑に落ちた風な言動になったのもそういうことなのだろうし。] (112) 2023/03/06(Mon) 6:45:45 |
【人】 黒崎柚樹私のこと忘れちゃってても、男だと思ってても、武藤のこと、好きだなあ……って、思ったよ。 [だから武藤の記憶がこのまま戻らなくても、この武藤ともう一回日々を重ねていくのでも良いやとは、覚悟決めつつあった、とまで言ったら、表情を曇らせてしまうかな。言ったけど。] ………………。 [あ、やっぱり、偽の自分にも嫉妬、するんだ。するんですね。 不機嫌になったり怒ったりした武藤が漏らす「は?」 >>100 が繰り出され、やっぱり"あれ"と会話の成立とかは望めないことだったんだねと肩を竦める。 "忘れる"ことに対して、武藤がそこまで脅迫観念レベルに私のことを覚えていようとしているとまでは知らぬまま、でも本当に、武藤は私のちょっとした言動や出来事を覚えているから、そんな彼が「嫌なことは忘れろ」と告げてくるのは何よりの違和感だったかもしれない。 色々全部、"あれ"の言ってくることは薄っぺらかったよと頷いて。] こうすれば"好かれるオレ"のできあがり!って感じで。 ものすごく、うさんくさかった……。 [思い返しながら、渋いみかんを口にした時みたいな顔になってしまう。ああ美味しいミルクティーで口直ししよう、と立ち上がり。] (113) 2023/03/06(Mon) 6:46:18 |
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