人狼物語 三日月国


79 【身内】初めてを溟渤の片隅に【R18】

情報 プロローグ 1日目 2日目 エピローグ 終了 / 最新

視点:


【人】 とある書物



   甘くても
   ちょっと苦くても、

   たいせつな 想い出 ──────

 

(0) 2021/06/20(Sun) 0:00:00

[ がつがつと余裕なく貪り口付ければ、
鼻から抜ける吐息混じりの。
声は低く、甘く。
鼓膜から脳髄を溶かすように響く。

呼吸ごと奪うように弄っていた舌が吸われ、食まれ、
ぞくりと欲が迫り上がる。
混ざり合った唾液を飲み込む彼の喉の動きにさえ
どくんと心臓が激しく鳴いた。
噛みつきたい衝動を、レンジの電子音のせいにして
どうにか押さえて。 ]
 


[ 余裕なんてあるわけない。
余裕あるフリすら出来ない。
二日すらモたない、お前の空気を吸わないと
息ができない、なんて。

見透かされているように撓む目元に負けた気がして
眉間に皺を寄せてちょっと睨む。
熱と欲を携えた瞳では、きっと迫力など
ないだろうけれど。 ]
 


[ 腰に触れていた手がするりと滑らかに動いて
後頭部を包む。
傾げられた首、浮かぶ笑み。
余裕の無い自分を嗤うような表情で囁く熱っぽい声、
おいそれはずるいだろ─── ]


   ─── ん、 ッ……


[ 忘れる筈のない、あの日と同じような
頸動脈にじんと重い圧迫感。
引き寄せる力の強さ。
荒い吐息と、あられのない水音。
飲み込むタイミングを失った唾液は唇から顎へ
伝うだろうか。
それでも離してもらえそうにないなら、
こちらからも整った綺麗な歯列、
裏側から口蓋をも丹念に探る。 ]
 


[ あの日と違うのは、自由を得た己の右手が、
同じように彼の頸に触れること。
柔らかな髪が、指の間を擽ること、
名前を呼ばれると甘い痺れが脊髄から
脳へ駆け上がって、
自分のものじゃないような声が漏れること。


押し付けられ布地越しに感じるお互いの兆し。

酸欠でくらくらしそうなほど繰り返し贈られる
口付けが、ようやく少しずつ落ち着きを取り戻し、
後頭部の掌の力が緩んだ。 ]
 


   ……ッ、は、───


[ 肩で息をしながら唾液を飲み込む。
ゆっくり瞼を開いて見つめればその瞳は
興奮の灯を灯したまま、潤んで、微笑んで。

力の入らない手を彼の頸からそっと動かして、
その唇を親指で拭う。
そのまま自分の唇も拭った。 ]
 


   っ、 なっ……


[ ごちそうさま、とどこか楽しそうに
語尾の上がる言葉に思わず絶句して。
それでも、わずかに離れた身体が惜しくて。]


   ─── わかってるくせに
   Two winsのベーシストは意地が悪りぃ。


[憎まれ口をひとつ。
己の口はぎこちなく動く。]
 


[ 意地っ張りで素直になれないはずの自分が、
珍しく曝け出す本心。
寝不足のまま空きっ腹に煽った鎮痛剤のせいか
下半身で主張する欲望のせいか、

どうにも溢れて止められない想いのせいだろうか。]



   ずっと、先に進みたくて、
   ……前から聞こうと思ってた。

   けど、お前、どうしたい?
   ……その、あー……


[ 言葉に詰まって彼の髪をぐしゃ、と掴んだ。
大事なタイミングでまたピーピーレンジが鳴って、
うるせぇな!と八つ当たりを投げた。]**
 


[唇から溢れて、落ちて、伝う、互いの唾液が
 白い首筋に見えて、ぞくぞくする。
 余裕なんて、ない。
 本当ならこのまま、全てを味わいたい
 そんな欲を抑えて、笑んだ。
 飯を食うと先に言ったのは、彼だから。
 食う気ないだろ、といいたくなるほど、
 熱っぽく応えてくれたことは、まあ、さておいて。

 だって、その親指が唇に触れるだけで。
 拭ったそれで、彼の唇が拭われるだけで
 どきどきして、下腹部に血が集まるのがわかる。
 だけど、理性をなくしたいわけじゃない。
 だから、その身体を離したのだ。

 ごちそうさま、と弾んだ声をなげれば
 不服そうに、憎まれ口が飛んでくる。
 それすらも愛しくて、破顔した。]

 




   ふは、 そう?優しくしてるつもりだけど


[そう、目を細めるのに。
 ぎこちなく続けられる言葉に、簡単に心臓は打って
 目が開いて、一瞬揺れて。
 伸ばした手が、彼の髪に触れて、梳く。]


   ───…うん


[珍しく曝け出された彼の欲に、
 茶化すという選択肢がなかったわけでは
 なかったのだけれど。でも、それは、
 素直に嬉しくて。愛おしい、から。
 言葉の続きを促すようにじっと見つめると、
 半ばしどろもどろになりながら、羞恥を微かに浮かべ
 ゆっくりと選ぶように紡がれる言の葉。
 迷うように、なんていったらいいのかわからない、と
 それだけはあからさまに。

 最後の最後、八つ当たりするみたいに電子レンジに
 怒鳴って締め括る彼に、また、笑んで。]

 




    …おれは、触れられるなら、それで。
    どっちでも。雨宮の好きにしていいよ。
    こんな図体のでかい俺ですけど。


[少しだけ離れた身体をそっとまた寄せて、
 両手を彼の腰に回し、そのまま組む。
 背中を曲げて、窺うように、見上げれば。]
 


[ 細く、柔く、撓む目元。
太い四弦と共にある指が、毛足のぱさついた
己の髪を梳く。
楽器を奏でるような優しい手つきが妙に心地良くて
目を伏せて凭れかかり、そっと頭の重みを預けた。

茶化されるかな、と内心思っていたけれど。
そんなことはなくて、伏せた瞼を持ち上げれば
静かに頷いてこちらを見つめる瞳が、
ほんのすぐ近くで、
やっぱり、綺麗で。 ]
 


[ やり場のない感情を八つ当たりで電子音に
ぶつければ、また穏やかな笑みが降る。


好きにしていい、
なんて。

懸命に紡いだ言葉に、あっさりとそう返されて、
顔が熱くなるのが自分でもわかる。]


   ……優しくは、ねぇな。


[ むぅ、と唇をへの字に結んでそう言えば
またひとつ、距離が近くなった。
背に回された両手が組まれて
己とてさほど小さくはないはずだけれど、
不思議にすっぽりと収まってしまう。

包まれた腕の中、心臓が跳ね回って、痛い。]
 


[ 長い身体を折るように曲げて
下から見上げてくるのは、
広い海のように穏やかな双眸。

瞬きもせずに見下ろし見つめ返せば
出会ったころから変わらない、煌めき。

ガキ臭い己のアップダウンを受け止めてくれる、
いつだって荒んだ心が凪いでいく。

そしてそのたびに、甘えているなぁと思う。


己は彼に、なにを返せているのだろうか、と。
 ]
 



   ……っ、───!


[ 小さく、低く、
色と艶と、甘さと毒と。
いろんなものを含んだ声が、脳を直接嬲る。

ぞく、と背中を震えと汗が伝った。


彼のニーズや欲求を、何より優先したいと思う。
他の人には感じたことのないそんな気持ちが
彼にだけは湧いて溢れて、ブレーキが効かない。

なのにあっさり選択権が手渡されて、息が止まった。]
 



   ……ず、っりぃな、ぁ───


[ 絞り出した言葉に呼応するように身体中が熱い。
きっと赤に染まってしまった顔も耳も、
隠すように彼の胸に押し付けて、伏せた。

窓から、明るい陽が差し込んでいる。
きちんと整えられたベッドを、ちらりと目で追った。]
 


――――――――


    ふふ、やっぱり美味しい、ですね


[ 潤さんが洗い物を終わらせて
  二人でグラスを傾けていると幸せだなあって
  そんな気持ちが溢れてくる。
  すり寄るようにぴったり横にくっついて ]


    潤さん、
大好きです



[ ふわっと笑って言えば
  いつの間にかグラスは空になっていた。 ]**

  


 
[弦よりもずっと細くて、柔らかな髪。
 そのぱさつきさえも、肌を撫でると
 くすぐったくて、心地いい。

 かかった重みに彼の熱を感じて、愛おしさは増す。
 じっと見つめながら、本心として、
 答えを告げれば、その唇がへの字に曲がるから
 かわいらしくて、触れるだけの口づけを。
 そのまま背を折って見上げれば、
 瞬き一つせず、じっと見つめ返してくる瞳。]

 



[もしも、その思考が読めたならば、
 返すものなど、必要ないと告げただろう。
 己とて、彼に与えられてばかりだと、
 そう思っているのに。

 あの日、彼と共に奏でられた音楽。
 同時に知ることができた、己の気持ちと
 今こうして、共に歩んでくれること。
 何もかも、全て、彼がいたから。

 いまだって、この幸せは、己の人生における幸せは
 雨宮、お前がいてこそなんだ、と。]



 


[低く、甘く、問いかけた言葉に、
 彼の息が詰まって、それから、WずるいWと
 紡がれるから、目を細めた。

 そう、俺はずるい。
 ずるくてもいい。ただ、雨宮の欲しいものが
 与えられたら、それがいい。
 もっと依存して、もっと、俺に落ちて。
 離れるなんて、考えられないくらい。

 触れる形なんてどうだっていい。
 彼を、この腕の中に閉じ込められるなら。]
 


[真っ赤になった耳の淵を撫でようと腕を
 ほどきかけたそのとき、彼の喉が震える。
 胸に押しつけられる額。
 半ば懇願するように響いたそれに、
 どく、と心臓が一つ打った。
 微かに、付け足された言葉が空気を震わせる。]


   ───わかった


[萎えるわけない、と言ったところで、
 信じてもらえるか定かではない。
 間違いなく、萎えることはない。
 そんなこと、わかりきっている。
 そうじゃなければ、欲情もしない。

 けれど、続いたそれに、こくりと唾を飲む。]
 




   ───俺は、

   雨宮に触れられるなら、
   どんな形だってうれしいよ。

   ただそれは、雨宮が望んでくれる形がいい。

   …それは、わがままかな。


[そう、あくまで優しく、問いかけて。]

 


[ ずるい、と、駄々っ子のように責めても、
変わらず穏やかに細められる瞳。
焦れて焼けつくほどに、愛しい。

ライブできゃーきゃー言われていることにも
嫉妬してしまうほどに、とっくに堕ちて、
求めているのに。


本当にずるいのは、きっと自分のほう。 ]
 


[ わかった、と言う声と、ほんの少し緩んだ手の隙間。
身体を捩る。
右腕を動かして、己の左肩を掴んだ。
自身を抱いて、まるで肌を隠すように。


極力人目に晒さないようにして過ごしてきた。
傷も、心も。
そういや林間学校で風呂に入ったなと思い出すけれど、
今あの頃より彼はずっと近くて、

だからこそ、怖い。
 ]
 


[ 乙女かよ、頭の中で嘲る声に、
わがままかな、と優しく問いかける声が重なった。
目を見開いて小さく、首を振る。 ]


   ……目が、覚めたら、
   大事なもんが、急になくなってんだ。
   俺は、それが怖い、

   お前もいつか、
   居なくなるんじゃないか、って


   求めて、萎えられたら、ってびびってる。


   ……ずるいのは、俺だな。
 


[ 俯いたまま、訥々と口を動かして紡ぐ本心。
応えるようにとん、とん、と背中に軽い振動。
あくまで優しい声は、形が見えるほど
凄艶でさえあった。 ]


   ─── 俺も、おんなじ。
   けど、いまは、


[ すう、と息を吸い込んだ。
首元のシャツのボタンを、ひとつ、外して
ゆっくり、顔を上げる。 ]
 


[
だ、い、て、く、れ、
 と、

唇だけを動かした。

笑ったつもりだったけど、
きっととても情けなく崩れた表情で。]**
 


[嫉妬の話がでれば、そんなものキリがない、と
 いくつだって挙げることができる。
 林間学校の時のキスだって───
 ああもう、あれはなんか、あのあと
 小っ恥ずかしいからやめよう。
 
 彼の手が触れる、その左肩に、腕に、
 残る傷をきちんと直視したことはない。
 きっと、あまり見られたくないだろうと
 勝手に思っていたし。
 体育の授業の更衣室なんかでも、
 目を逸らしていた。
 ただ、今は、今からは───]

 



[腕の中の彼が、小さく首を横に振る。
 続いていく言葉は、ただ黙って聞いて。
 「ずるいのは俺だな」と一度締められたそれに、
 開きかけた唇はなにも言葉にすることなく、
 そのまま、背中をとんとんと叩いた。

 ずるいのは、俺だよ。
 だって、どうしたって聞きたい。
 心の中では決まってるくせに。
 どっちでもいいって言いながら、本当は
 雨宮のこと、思いっきり抱いて、俺のものに
 してしまいたいっておもってるくせに。
 それを、隠して、それでもなお問いかけるのは、
 彼が選んだと自覚して欲しいから。
 逃げることの、できないように。

 こんな欲を彼が知ったら引かれてしまうかも。
 怖がられてしまうかもしれない。
 だから、口には出さないで。
 あくまで、優しいふりをしてる。

 ほんとに、ずるい。]


 



[だまって、待っているのだ。
 獲物が自らこの腕の中に入ってきてくれるのを。
 いなくならないで?いなくなるわけない。
 離すつもりなど毛頭ない。
 促すように、あやすように、優しく叩く背中。
 ゆっくりと開く唇の動きひとつ、見逃さぬよう。
 取りこぼさないよう、見つめて。
 晒される首筋に、こくりと唾を飲んだ。
 まだだ、まだ、もうすこし。]

 




    ───

 

[もう すこし]

 




[もう少し]




[ もう ]


 





   っ………


[示されたそれに、息をつめて、
 思い切りその首筋に顔を埋めて、口付けて、
 噛み付いてしまいたいのを抑える。
 少しばかり不安を帯びたようなその視線に
 返すのは、優しさを滲ませたそれのはずなのに
 隠しきれていない獰猛さが、熱が、
 瞳の奥から伝わってしまっただろう。

 ぐ、と腰を寄せる。]
 





   ………好きだよ、雨宮


[そう告げて、掬い取るように口づけを。
 優しく、遠慮がちに触れたそれ。
 腰に回していた手を解いて、
 まだ彼自身の身体を抱くその腕を取る。]


   ここじゃなくて、俺に、縋ってよ


[そういって、彼の手を己の首に回させ]


   ベッド、行っていい?


[と断りをいれて、できるならば、そのまま
 抱えるように膝下に手を差し入れ、持ち上げよう。]
 




   あ、思ったより重いかも、


[苦笑して、それでも決して落とさないように
 ベッドの方へと向かって、皺一つないそこに
 そっとその身体を下ろせばそのまま、
 己も覆い被さる。

 彼の視界が、全て満たされるように。
 額をつけて覗き込み。]


    ……


[黙って見つめた後、ゆっくりと瞼を伏せ、
 近づけていく。けして、閉じてしまわぬよう。
 さっきの口づけをもう一度思い起こさせるように
 優しく触れたあと、その下唇を食み、
 柔く噛んで、引っ張って、離した。
 じっと、見つめて。] 
 





  ───優しくできるよう、努力するな


[そう告げて微笑めば、貪るような、口づけを。]*

 
 

──────


     ホント、美味しいな……
     美鶴さんの顔を見ながら、
     飲んでるからだろうね。

[ ふっと笑って、彼も少し彼女に近づき
  体を密着させてみた。
  ガリガリではなかったので、
  程よくふんわりとしていたような気がする。
  そんなときに、聞こえた彼女の告白。

  流石に、不意打ちが過ぎたのか
  彼も少しだけ顔を赤くした。       ]







     なんや、美鶴さんから言ってもらえると…
     心があったまる感じがあるわぁ……


[ そんなことを言って、
  中身のないグラスをテーブルに置き、
  彼は彼女の唇に軽く自分のそれを重ねた。
  彼女の反応を見るために、
  何度か、瞳を交わらせてはゆっくりと。
  彼女が嫌がらなければ、
  彼女のグラスをテーブルに置いて
  もっと体を密着させようとした。    ]*







    潤さんと一緒だからですね!
    同じこと考えてたの嬉しいなあ……


[ 程よくアルコールが回って
  酔っ払いというほどじゃないけど、
  なんとなくいい気分で。
  密着すれば温かい気持ちになる。 ]

  



    ……?潤さん顔赤い…
    あ、もう酔っちゃったんですかー?


[ 嬉しそうにしてる潤さんを見てると
  私まで嬉しくなって、
  でも、顔が赤くなっている理由まで分からなくて
  酔ったのかな?なんて。
  
  呑気に聞いていると軽く唇が重ねられて
  一瞬、潤さんと目が合う。 
  恥ずかしくてぎゅうっと目を閉じて
  それを受け入れていた。

  空になったグラスはいつの間にか
  潤さんがテーブルに置いてくれた。 ]

  


[ くっつくのは好きだから
  潤さんの意図が分かれば、彼の膝に乗って
  抱きついた。重くないかな、
  と一瞬心配したけれど、彼はどう思ったのかな。 ]


    特等席、ですね……?

 *
 


[ 幼な子をあやすような、とん、とん、と
優しい刺激が一定のリズムで背中に続く。

万が一、伸ばした手を拒絶された時の
恐怖にびびって、
心を守るための防御壁が欲しくて、

彼に選ばせようとした。
気持ちなんて、とっくに決まってて、
惚れてるって自覚したときから、



そうだよ、己はこんなにも臆病で。
 ]
 


[ だから、ほんとはぜんぶ、
実はお前の思惑通りで、

己が自分で選び取るように、
言い訳出来ないように、
後戻りする逃げ道を作らないように、

そう、仕向けたって言うなら。
その胸の内が、聞けたなら。

俺は、心の底から笑って、
礼を言うんだ。 ]

 


[ だいてくれ、と、
無音の声は、届いたみたいで
矢川が息を詰めたのがわかった。
おずおずと窺い見た己が捉えた彼の瞳は、
いつもと変わらない優しさを湛えているように
思えたけれど。 ]


   ─── ……、


[ 見逃すわけない。
そこにぎらりと一瞬、走った熱の塊を。
獲物を狩る、獣の如き鋭い眼光を。]
 


[ ぐ、と寄せられる腰。
聞こえるんじゃないかと思うほど激しく打つ鼓動。
頭と顔と、下腹部は焼けるみたいに熱くて、
手足の末端は冷たくて。


嗚呼、喰われる。


─── や、違う。



[ 好きだよ、と告げてくれる唇がまた、触れる。
掬い上げるように優しく遠慮がちな口付けに、
ほんの少し、笑んだ。 ]
 


[ 肩に爪を立てていた腕がゆるり解かれて、
導かれた先は彼の首。]


   聞かなくていい、って……


[ 母親が整えてくれたベッドに、多少の罪悪感を
感じながら答えれば、ふわと浮く己の身体。]


   ッ、う、おい、待っ───


[ 所謂お姫様抱っこ、で抱え上げられて焦って、
抵抗しようとしたけれど。
長い腕。
あたたかい胸。
一層強くなる彼の匂いに、くらりと脳が揺れた。]
 



   ……当たり前だよ、誰と比べてんの。


[ 思ったより重い、と苦笑する声に。
恥ずかしいやらいたたまれないやらで、
胸元に埋めた頭をぐりぐりと押し付けた。

広くもない部屋、長い足でほんの数歩。
なんの衝撃もなく、大切なものを扱うような手つきで
ベッドに下される。
覆い被さる彼の額が、己のそれと合わさって。
視界の全てが、矢川で埋まる。
逸らすこともできない。 ]


   …… 、ん、ッう、───


[ 下唇が食まれて、歯が立てられて、
びく、と背中が僅かに跳ねた。 ]
 


[ 優しくする、と微笑みのあと、
貪るような口付けが降る。
いつも穏やかな彼の、どこにこんな情熱が
隠れていたのだろうかと思うほど、

熱くて、激しくて、堪らない。
息ができなくて、頭がくらくらする。

求められるまま、舌を絡めて、なぞって、
吸って、口内を愛でて。]
 


[ 自由が利く手を動かして、彼の髪から
耳、頬、首筋と、縋るように撫で下ろしていく。

数ミリの布でさえ焦ったくて邪魔で
脱がそうとするけれど、
片手だから上手くいくだろうか。

口内を弄る舌に嬲られて、
吐息混じりの声と、飲み込めない唾液を溢れさせながら
肩、背中、脇腹と熱っぽく触れて、

拒まれないなら、その下。

布地越しの熱に触れたくて手を伸ばす。 ]
 



[なんだって、聞きたくなってしまう。
 いちいちの反応が愛おしくて。
 もっと、自覚して欲しくて。
 触れているのは俺で、これから、もっと深く、
 互いを愛し合うってことを。

 皺一つないベッドはきっと、彼の母が
 カレーを置いていったと同時に洗濯して、
 綺麗に整えたのだろうとわかっている。
 それを、今から彼を抱いて、汚す。
 背徳感と罪悪感があって
 それでいて、どうしようもなく興奮した。]


   ───想像の中の雨宮かな?


[誰と、なんて憎まれ口に、当たり前のように
 こたえれば、くすくす笑った。
 生憎、こんな状況でのお姫様抱っこで、
 比べる人などいないし、比べようもない。
 優しくする、と言ったのに、結局こんなふうに
 貪ってしまうのは、緩急をつけなければ
 往なせないような気がしたから。]

 


[呼吸すらすべて飲み込むくらい、深く口付けたら
 彼の手が髪に触れる。そのまま身体を滑り落ちて
 行くのがくすぐったくて、心地よくて。
 そのまま、ベルトのバックルへとかかるのが
 わかる。触れられればぴく、と反応した。
 薄く開いた瞼。まつ毛の隙間から覗けば、
 ふ、と鼻から息を吐いて、わざと音を立てて
 ぢゅ、と吸って離す。]



   ──脱がしてくれんの…?


[落とした声は、自分が思っていたよりずっと
 湿って、熱っぽかった。
 問いかけに、返ってくる言葉に、
 こくりと喉を鳴らして唾を飲む。
 ぐぐ、と猛りに血液が集まるのがわかる。
 熱い。下腹部から痺れるみたいに、脳が揺れる。]

 




   っ…煽んな、


[ふーっと吐いて、溢れてしまいそうになる欲を
 なんとか止めて、額に触れるだけの口づけを。]


   まじで、優しくできなくなるから。

   …はじめてだからさ、優しくしたいんだって。
   

[な?と諭すように首を傾げて、
 彼の手を潰してしまわぬよう、腰を上げたまま、
 背を丸めてその首筋に唇を落とす。
 ふう、と吐いた息がそこにかかれば、
 ぺろりと舐めて、軽く噛む。
 喉仏が上下するのが見えれば、そこも舐めて。]

 



[片手でシャツをはだけさせてしまおうと、
 数個外れたボタンの続きを解いていく。
 彼の手が雄に触れるたびに、硬さも、
 衝動も増していく。

 ぐ、とおもわずその手に擦るように腰を動かした。]


    っ……ふ、



[眉根が寄る。だめだ、落ち着け。
 すっかり晒された肌に、一度身体を起こせば、
 見下ろして、息を吐く。
 白くて綺麗な肌に、シャツの隙間から、
 いまだ、生々しく残る傷跡が見える。]
 





   ………さわっていい?



[己の雄にかけられたままの彼の右手を
 そっととって、合わせて絡め、
 シーツに縫いとめて仕舞えば、
 じっと見つめて。

 許可が降りるならば、その肩にかかったままの
 布をそっと、差し込んだ手のひらで
 取っ払ってしまおう。

 目の前にある、彼の過去。
 それをじっと見つめて、彼が何か言う前に、
 優しく、唇を落とした。]*

 


   ばっ、───


[ ぎらついた欲を見せたかと思えば、
くすくす笑って聞いたこっちが
恥ずかしくなるようなことを言う。

何言ってんだ、と呻りながら、
完全に顔が赤に染まっていくのが止められない。
貧相な身体だと思われていたようなら
おあいにくさま、とでも嗤ってやりたいところ
だけれど、どうにも耳の端まで熱いので
さあ格好がつくかどうか。 ]
 


[ 昔からやることに追われるとどうしても
食事は疎かになるタチだし
痛みを抑える薬の量が増えれば食欲はなくなるし、
そもそも一人暮らしで料理はめんどくさい。
痩せたかと問われればきっとそうなのだ。

それでもどうにかちょっとでも身体を鍛えているのは
現実的にピアノを弾く体力は必要だから、
という理由ももちろんあるけれど。

隣に居る彼の、嫌味なほど整った、
むかつくそのスタイルに。
並べはしなくても見劣りしたくないという、
男のメンツとプライド。

ともあれそれを行っているのが
人気のジムではなくて病院のリハビリ室、
というのがいまいちしまらないところではある。]
 


[ そこに居ることを確かめるように、
身体の線を伝い撫で下ろした己の手が、
ベルトのバックルに触れた。

カチャ、と鳴る金属音に震えるほどの興奮を覚える。
ぢゅ、と淫らな水音とともに離れた唇から
落ちてきた矢川の声は熱を含んでしっとりと湿って、
ぞくぞくするほどえろいなと思った。 ]


   ……ん、脱がしてぇ、けど、
   片手だと、焦ったい、な───


[ かくいう己も、自分の声とは思えないような
甘えた声が出てしまう。
なんつー声、と自分で照れた顔を隠すために
こくりと唾を飲み込んで動く彼の喉を、
噛み付くように唇で食んだ。
どうにかバックルを緩めることに成功したなら、
そっと触れた手の下。
増した質量が感じられて、に、と自然に
口角が上がってしまう。 ]
 



   煽って、ねぇ……


[ 思いがけず焦ったような声と、
ふー、と大きく吐き出す息。
優しい、声。
欲を抑えこもうとしているのがわかる。
ああ、この顔、好きだな、と思って。

な、と傾げた首に、ふいと顔を背けた。 ]


   優しく、されんのは、
   ……いろいろ、恥ずいんだよ、
   察しろ……つかとりあえず電気……
 


[ のしかかることをしないで、空間を保ったままの
彼の気遣いが苦しいほど愛しい。
初心な乙女みたいなセリフを己が口にする日が
まさかくるとは、と内心呻きながら
電気を消してくれるよう頼んだけれど、
聞いてもらえただろうか。

……ダメな気はする、だって、
聴こえているはずなのに彼がすることといえば
首筋に唇をおとして、歯が立てたりするのだから。]


   ───ッ ンっ……


[ 今己がしたことを返されて、喉仏も舐められて、
下顎が震えた。

声が漏れる。 ]
 


[ 長い指が、シャツのボタンにかかる。
覚悟は決めているし、信じてもいるけれど、
体には力が入ってしまう。

緩んだベルトの隙間に手を差し入れて、
下着の上から猛りに触れた。
擦り付けるように腰が動く。
その動きに合わせるように、根元から
柔らかく握り先端に向かって擦り上げれば、
矢川の吐息が漏れて耳に届く。
脳が痺れる。

もっと、と思うのに。
身体を起こした彼が、右手を絡め取ってしまう。
熱に浮かされた顔で不服そうに見上げれば、
じっと見つめ返されて。 ]
 



   ……いい、けど。
   マジで、萎えんなよ。


[ 強がる声が、やっぱりかすかに揺れた。
母親が、いそいそと洗濯して替えていった
白いシーツに、己の手が縫い止められて。

露になった、上半身。
あちこち残る傷は、格闘家じゃあるまいし
勲章などではなくただのコンプレックス。

多感な時期に卑屈さを会得するのに充分な。]
 


[ 現実を携えてたしかに残る。
なんだかんだで人生に
不思議なアクセントをつける深く古い傷。

左腕の肘の上から、手首の近くまで
ミミズのように走る手術痕、引き攣れる皮膚。
そこに、唇が落とされて、声が出る。]


   ……ッは、っ……


[ 視界がぼやけた。
じんわりと滲んでいた汗が滴になって
顳顬を流れて落ちる。

焦燥感で、背中が撓った。 ]*
 



    一緒のこと考えてたとか…
    なんや、ええなぁそういうの。


[ 一緒のこと、と言われると
  どうしてもそこを復唱してしまった彼。
  ほろよいの彼女とゼロ距離になれば
  そっと腰に手を回してみた。
  やっぱり、細くて、女性だなと思わさられる。 ]






     ん、いや……酔ってへんよ。
     ……でも、美鶴さんに酔い始めたかも。


[ 顔が赤くなったことは分からなかったけれど
  体温が上がって気がしたので、
  彼女をみて、頭の中が彼女だけになっていった。
  そして好き、という告白。
  だからこその、この体温上昇。

  唇が重なって、離れていく。
  ただそれだけのことなのに、
  彼女とするとこんなにも血の巡りが
  早くなっていくのは、もっと距離を縮めたいから? ]






     かわええなぁ……もっと、触るよ?


[ 見つめていると、彼女がもっと近づいて
  膝に乗ってきたのだが、
  片腕で彼女の背中を支え、
  宣言をすると、もう片方の手が
  彼女の服の中へと入っていく。
  腹部を優しく撫でながら、
  徐々に胸部へと向かう手の感触に
  彼女の反応はどんなものだっただろうか。

  そして、密接して鼻に伝わる香りは
  彼女がシャワーを浴びた後の香り。
  だから、くんくんと首筋で
  もっと香りを嗅いでしまった。      ]


    美鶴さんだけの、特等席……
    いらっしゃい、おひいさん。*





[ 改めて復唱されると
  恥ずかしいこと言っちゃったな、と
  元々ほろ酔いで赤くなっていた顔が
  さらに赤くなっていく。     
  
  腰に手を回されて
  少し寄りかかるような姿勢に。
  好きな人に包み込まれてるみたいで、
  なんだか気分が良かった。 ]
  



    えっ…!?

[ 私に、なんて言われて驚きを隠せない。
  確かに潤さんはそんなにお酒に弱くないから
  簡単に酔わないのかもしれないけれど……

  触れた場所から伝わってくる体温が
  いつもより高い気がした。
  こんなに近くに、好きな人がいて
  もう十分近いな、なんて目の前の人とは
  違うことを考えていたとは気づかない。 ]

  



    かわいくはっ…!
    ひゃっ……じゅん、さん……?
    くすぐった、い…!


[ 膝に乗ると背中を支えてもらえて
  心地よさに目を細めていたのもつかの間、
  潤さんの手が服の中へ入っていく。
  優しく撫でられていてもくすぐったくて
  でもどこかそれとは違うような気もして声が止まらない。
  胸の方へと手が伸びているのがわかれば、 ]


    っあ、だめ、だめっ…!
    はずかし、いからぁっ!

  


[ ほとんど膨らんでいない胸が
  コンプレックスで恥ずかしくて仕方ないから
  必死で潤さんの手をつかんで止めようとしたけれど。
  間に合わないならびくっと反応してしまうことになる。

  首筋を嗅がれて、首に伝わる吐息とか
  微かな刺激も拾ってしまって、
  恥ずかしくて仕方ない。
  それでも聞こえてくる彼の言葉に少し首をかしげた。 ]


    おひい、さん……?

 *



[ 彼女が言った言葉を復唱すると
  彼女の頬の赤らみが更に濃くなったような。
  それは、りんごよりも赤くて
  アメリカンチェリーのように
  濃いもののようにも見えた。

  噛み付いて食べてしまいたくなったけれど
  彼女には優しくしてあげたいので
  そっと唇をあてるだけにした。      ]






    くすぐったい?
    ふは、ほんと可愛い……


[ 腹部の方から手を這わせていると
  可愛い反応が見られてしまって、
  彼の血の巡りが良くなっていく。
  
  恥ずかしがっている彼女のことは
  少しだけ無視して、
  緩やかな膨らみを隠している下着に
  指を入れ込めば、頂を優しく撫で。
  まだ未発達のその場所は未知の領域だったかも。  ]






    もー少し、声抑えよかぁ……

    ……俺の、お姫様?


[ おひいさんという言葉に首を傾げる
  可愛い彼女に、東京の言葉で
  改めて囁いてあげる。

  もし彼女が声を我慢できないと
  いうのであれば、
  服を脱がせてしまう前に
  この場所から彼女を連れて
  街の中へと出ていかなければいけない。 ]


     美鶴さん、これから…
     もっと触るけど、我慢できる?


   *



    は、ふぅ…だ、って……

    ふぁあああっ! な、に……?


[ 恥ずかしくて、止めようとしている私には
  お構いなしに胸を触られて、
  未知の感覚に思わず大きく声をあげてしまった。
  くすぐったい、じゃない…ぞくっとするような
  感覚に体を震わせて、ささやかな抗議を。   ]

  

    

    じゅんさん、が……
    さわる、からっ!


[ お姫様、と言われてようやく意味を理解した。
  そんなんじゃない、とふるふる首を振って
  否定して、でもそう言われるのが嬉しいのも確かで
  状況も相まって何を考えてるのか
  自分でもよくわからなくなっていく。

  自分の思考さえわからなくなっているのに
  潤さんの問いかけの意図がわかるはずもなく。
  その意図は掴めないまま、正直に答えるのみ。  ]


    もっと……?
む、むり、です……



 * 
 



    だって、なんかあった?


[ 可愛い抵抗に撫でる指を止められない。
  少しずつ、硬さを帯びてきているのだが
  彼女の声の方は収まることを知らない。
  
  耳元で囁いていたら
  もっと小さな抗議があったことだろう。
  それも可愛くて弄る手が止まらなくなる。 ]






    触られるのあかんかぁ……
 
  
[ 彼女の弁明が聞こえ、無理、という言葉まで
  耳に入れば彼は手を止めた。
  うーんと考えて、彼女のことを見つめる。  ]



     よし、美鶴さんお出かけしよ。


[ とはいってもおめかしなんて必要なくて
  荷物を持ってタクシーを呼んで乗り込んだ。
  そして目指すは多分彼女が言ったことのない
  愛し合うための宿場街の近く。

  別に彼も慣れているとかではないけれど
  彼女が声を我慢しなくていいような
  スペースが欲しかった。          ]




──────


    さーて…すごいなぁ。


[ 今回入った部屋は、
  ベッドにレースのカーテンがあった。
  彼女を寝かせてしまえば、
  誰にも見られることはないけれど
  カーテンを広げて外界の視覚的情報を
  減らしてしまおうとした。
  押し倒して、緊張しているであろう彼女に
  何度か唇を重ね、ほぐせたら良いのだけれど。 ]


      好きだよ、美鶴さん。


  *


[ 潤さんは胸を触る手を止めてはくれなくて
  しかもどこか楽しそう。
  私はさっきから恥ずかしい声をあげて
  潤さんの顔をまともに見れないくらいなのに。

  ようやく手が止まって、
  乱れた息を整えてようとすれば見つめられて。 ]
  



    
……どこ、に?



[ 返答を貰えても貰えなくても
  潤さんに連れられるままついていけば
  おのずと答えはわかるわけで、
  何度も目をしばたたかせて、戸惑いを隠せない。
  だって、こんなところ来たことないから。   ]

  

 ――――――


    潤さん、私……

[ 潤さんを見上げるような体勢になって
  眉を下げて不安げに声をかける。
  カーテンのせいでより二人しかいないと
  強く実感してしまって、
  胸の鼓動がはやくなっていくのが分かった。

  唇が重なっても簡単に緊張はとけてくれない。 ]


    私、こういうこと、初めて、で……
    嫌じゃないけど、全然知らなくて

            
こんな私じゃ……。

  


[ 小さい声で、それでも目を合わせることも
  できなくて、顔を背けて。

  相手が私が未経験だと察しているかもなんて
  思いもせず、面倒だとか思われないかな、って
  無知から来る不安も含めて彼にこぼせば、
  きゅっと自分の手を握りしめた。        ]*
  




[ 彼女が彼の方を見てくれなくても
  そんなに嫌でもなくて、寧ろ初々しさに
  胸がときめきを覚えていた。

  それは、多分彼が手慣れた女性たちと
  付き合っていたせいかもしれないけれど
  がめつい人よりも、こうやって
  素直に反応してくれる人が愛くるしく
  思えてしまったのである。        ]






     俺のこと、もっと知ってもらう場所?


[ なんて言って、タクシーの中で
  彼女と手を握り指を絡めていた。
  これから、結婚まで視野に入れている人だから
  彼としてももっと全部を知って欲しくて。
  だから、到着して戸惑いを隠せない彼女が
  ひどく可愛いなと思ってしまった。

  大丈夫、と彼女に声をかけて
  部屋まで行けば彼女は少しでも驚いてくれたか。 ]





──────


    ん?………


[ 唇が離れてから聞こえる彼女の本音。

  黙って聞いていたけれど、
  死ぬほど可愛いなと襲いそうになった。
  よく抑えた理性。
  よく耐えたなお前、と褒めなければ。

  彼は口元を押さえて、
  うんうん、とニヤつきを隠すように
  軽く頷きを見せた。           ]






    かわええおひいさん。
    初めてなら朝が来る前に、
    ぐっすり眠れるように
    沢山可愛がってあげる。

    ……だから、俺のことを見て?


[ よしよし、と口元を押さえていた手で
  彼女の髪を撫でれば、了承を待ち
  初めてならば下手なことをするまいと
  服を脱ぐことをうながしてみようか。  ]*





[ タクシーの中で指を絡めるように
  手を握ってもらって
  温かさに少しだけ落ち着いた気がして。

  部屋につけば、レースのカーテンがついた
  ベッドが目に入ってきて、
  目を丸くして、言葉を失っていたと思う。 ]
 

 ―――――


[ 潤さんは黙って聞いてくれた。
  私はずっと横を向いて彼の方を見れずにいたから
  どんな表情だったのかは知る由もないけれど。
  
  髪を撫でられて、潤さんの方を見ても
  やっぱり恥ずかしくて視線はどこか定まらない。 ]