人狼物語 三日月国


52 【ペアソロRP】<UN>SELFISH【R18G】

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視点:


【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム



( 俺の憎しみは俺だけのものだ。
  この手で選び取り、踏み締めた路に続く者達もまた
  俺を信じるという選択の責を負ったのだから。

  逃げたいのならばとうの昔にそうしている。
  此処に今存在する事こそが決意の証左。 )


  [ 矛盾の内側で鬩ぎ合う ]

     [ 『王』としての答と『人』の本音 ]


   ( 否定するには死以外の退路はなかった。
     故にこそ路は“元より一つ”だったのに……
     これは俺自身の意志だと思い込まなければ
     何処かで折れていたのかも知れなかった。

     そうして……愛する民を焚き付け巻き込んだ。
     何を詫びるにも遅過ぎる。 )


 
(8) 2020/12/01(Tue) 15:41:05

【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム



     では問おう。
 謀反により得た貴様らの領地は
屍の積み重なる燎原より清いのか?


          貴様らの家名は?
   主君に背を向けて金を得る“騎士の誇り”とやらは? 



 [ 当事者ではないにせよ、家名は残り続ける。
   裏切られ、殺され、虐げられた記録が蝕む。
   看板に泥を塗られた過去は深い爪痕を遺す。

       ────だから、一思いに滅ぼした。
           旗を焼き落とし、首を晒した。
           かつての皇帝家がそうされた様に。 ]



 
(10) 2020/12/01(Tue) 15:42:49

【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム




[ 正しさを問う心算も、
  この行いを正当化する意志も無かった。
  自分はヒトである前にそういう“モノ”だから。
  情けも救いも求めてはいない。


  “何故自由を望まなかった”と訊かれれば
  『路は元より一つだった』と答え、

      “何故運命に従う儘生きる”と問われれば
      『これは己が選んだ路だ』と返すだろう。


    強がりを強いられ、弱音を吐けぬ弱み。
    自我とは、意志とは、何処ぞへ往く? ]



 [ 萌芽から矯正を受けて育った『自己』とは、
   果たして真に『自己』と呼べるのだろうか──── ]*



 
(11) 2020/12/01(Tue) 15:45:26
燎原の獅子 ヴィルヘルムは、メモを貼った。
(a0) 2020/12/01(Tue) 16:03:28




            
私を■してくれないか

    
(どうか…………私にあたたかな眠りを)



 

【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム



  
         [ 赤黒く死が積み重なる峠。
           処理の追い付かない死体が
           敵味方問わず一絡げに燃やされる。 ]


 ( 通った後には築かれる炭の山か、
   焔が嘗め尽くした灰の原のみ。
   どう歩いたのかも、どう生き抜いたのかも、
   ある時を境に覚えていられなくなった。 )




 
(45) 2020/12/03(Thu) 0:05:38

【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム





   
( この憎しみが背負わされたものだと言うのなら、

     
沸き起こる悲哀もそう在って欲しかった。 
 )

 
(47) 2020/12/03(Thu) 0:09:49

【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム



[ 山脈の冷気が裾を広げるかの様に、
  焼け爛れた平原の戦場に新雪が降り注いで行く。
  その中に立てられた軍幕の一つに仄かな光が灯り、
  中央に横たえられた寝台の傍に立つ影が一人。 ]


    サー・アルベルタ=フォン=アイゼナハ。
   誓を守り、王の意に添い、逆境にて闘い抜く。

      彼女の務めは此処に終わった。


 [ 別れの言葉を読み上げれば一度だけ振り返り、
   遺体の安置された其の場を後にする。
   爆発と崩落に巻き込まれた彼女の亡骸は、
   戦い続きの兵士達に死に物狂いで捜させたのだった。 ]


 
(48) 2020/12/03(Thu) 0:10:01

【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム



[ 軍幕の外では大勢の臣下や各家の当主が控えていた。
  同じ歳に生まれ、同じ王宮で育った騎士団長が
  皇帝にとってどんな存在であったのかは
  彼等の殆どが理解している。

  おくびにも出さぬ様に振舞ったとしても、
  心情もある程度は窺い知れるもの。
  誰もが彼の言葉を待った。 ]


         生まれた家へ送り届けてやれ。
     その際、戦から退きたい者はそうして構わん。
     隊列に加わり、安全に帝都までの路を往くが良い。


[ そうして軍議は明日に回された。 ]


 
(49) 2020/12/03(Thu) 0:10:25

【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム



[ 散っていった名も知らぬ駒を幾つ掻き集めても、
  その名と生まれと家族の有無を一つ一つ聞かされても、
  到底将たる其れには及ばない。
  『価値』がではない。意義の有り様がだ。

  陽動の為に割いた二千の兵の命より、
  バルバロスの森に斃れた戦士達より、
  この峠を超える際に失った臣民より、

         彼女は
心の中で
重い存在だった。 ]



[ 彼自身が知る喪失の痛みとは
  彼の瞳が初めて開く前に産褥の床に亡くなった実母、
  既に定められた運命の中で手に掛けた父帝……

   判断を誤って身近な人間を喪う事はなかった。
   故にこそ訃報は失態を確実に物語る。

   そうして男は冬季の撤退を取り止めた。 ]


 
(50) 2020/12/03(Thu) 0:10:48

【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム




( 若き騎士団長を屠ったのは、
  我々の恩師でもある魔術学園の老教師だった。

   本来の領分は名家お抱えの研究者だったからか、
   戦争を機にダンメルス家に戻って来たらしい。 )



 [ 憎かったのは彼そのものではない。
   奪われた物を取り返す事だけが目的だったのに、
   雪を踏み締める脚は次第に感覚を失くし……


      暫しの間、
しきものに躰を委ねる。 ]



 
(52) 2020/12/03(Thu) 0:12:00

【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム



[ この深紅の鎧も、ベルベットの外套も、
  眩いまでの炎を宿す宝剣も、
  その悉くを血に染めながら立ち尽くしていた。

  眼前には見知った顔の男。
  膝をつき、擦り切れた魔導書を手に、
  最後の悪足掻きに置き土産を残そうとしている。

       何を思ったのか、王はつい手を止めた。
       携えた剣を振りあげようとした格好の儘。 ]


 ( ……どう闘っていた?
     どうやってこのホールキープまで来た? 

      そう思った時、足が動かなくなった。
      得体の知れぬモノから自我を取り戻し、
      宿ったのは躊躇だったのだろう。 )




        
(53) 2020/12/03(Thu) 0:12:37

【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム



 [ その掌の雷が爆ぜる前に、
   剣を墓標の如く

           き
            立
             て
              た
               ゜
   鮮血が足許を濡らし、耳障りな音を立てる。
   動かなくなった其れを兵に運ばせた。


   ────何も、返す言葉がなかった。
       つい先程まで何かに身を任せていた者には。 ]



  ( だからこそ決めた。
     この闘いは自分独りになろうとも続けると。 )


 
(56) 2020/12/03(Thu) 0:14:34

【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム




( 足が、身体が重い。
  二度目の遠征に出て既に一年近くが経過している。
  数の有利を覆す為にどれだけ力を使っただろう。
  契約は確実にこの身を蝕んでいる。

    此処で国に戻れば、間違いなく次はない。
    そうなれば誰がこの恥を雪ぐのだ? )



 
(57) 2020/12/03(Thu) 0:14:51

【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム

 

[ 使い鳥はこの所頻繁に本国と送り合っていた。
  兵站の要求や人員の増量、必要物資の買い付けなど
  用途は多岐に渡るが、
  数ある中でも一番大きな報せは男児の誕生であった。 ]


( 帰った処で抱いてやれるかも定かではなく、
  己に似てゆく成長ぶりを見る事も叶わない我が子。

  ならばせめて乱世は俺の代で終わらせよう。
  そして泰平の名君となり、その統治の栄えんことを。 )



[ その為には誇り高き家名と、慕う民草と、
  豊かな国土と、其れを治める貴族が要る。

         故にこの交渉は重要な意味合いを持ち、
         彼が下した決断は────…… ]

 
(60) 2020/12/03(Thu) 0:16:18

【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム





       ( ────あの様な小物を
          生かしておく理由があるのか? )


 
(61) 2020/12/03(Thu) 0:16:36

【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム




 ( 死んで欲しい奴こそ、金で命を買い戻す。 )


[ 穢れた施しは受けぬと心に決め、
  腐り果てた精神を隔絶する為に裏切りを選ぶ。
  招き入れられた城に武器は持ち込まず、
  その代わり……ありったけの“火酒”を振舞おう。

  独断での交渉に走った子爵を守る味方はない。
  僅かな兵のみが控える城内で
  仇敵を一思いに燃やし尽くすのは容易かった。 ]


 
(62) 2020/12/03(Thu) 0:17:10

【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム



[ 燃え盛る階下。
  増設された回廊から大広間を見下ろし……
  其れから床に額を付けた眼前の男に視線を移す。

  この二百年シェーンシュタインを支配してきた子爵は
  肩書きだけ与えられたに過ぎなかったらしい。

         『未来永劫忠誠を誓います』と
          上擦った声で命乞いする様には
          嘲笑だけを降す。 ]



  (  悪意の芽は摘まなければならない。
    いつか玉座に着く息子の敵は全て滅ぼし、
       その上で汚名は返上し
     皇族の立場を確固たるものとする。 

         ……故に。        )


 
(63) 2020/12/03(Thu) 0:17:33

【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム




  ────貴様がこれまで重い税を巻き上げて来たのは
      誰の民だったのだろうな。

( 冷たく言い下した先の、気に食わぬ髭面が歪む。
  懇願が通らぬと知れば歯を剥き出して怒り狂う。
 
  嗚呼、醜く、鼻持ちならぬ、人の子に有るまじき貌。
  そんな唾棄すべき様が“見たかった”。 )



        
[ なれば己は是と思えたから。 ]


 
(64) 2020/12/03(Thu) 0:17:48

【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム

 

         
もっと深く跪け

      
Mehr knie dich, Scheisse!


[ 憎しみの儘に、床を掻く指先を靴底で踏み躙る。
  骨が砕ける音が響く迄、悲鳴と嗚咽が言を封じる迄。 ]



 
(65) 2020/12/03(Thu) 0:18:08

【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム



[ ────薄汚れた腕を掴み、
  片手で軽々と短躯の男を釣り上げれば
  廻廊の手摺から業火が渦巻く階下へと放り出した。]


   貴様の先祖が好き勝手に造り換えたこの場所は、
   いずれ七諸侯が隠し持つ金で再建しよう。

   故に、貴様の手垢と靴底の泥が着いた
   偽りのシェーンシュタインに────価値などない。



      [ 呪われた血に流れる祖先の記憶が
        この場所を懐かしむ事はなかった。

        或いは、感動など既に失くして
        人でなくなってしまったのかも知れない。 ]*


 
(66) 2020/12/03(Thu) 0:18:36
 
[昨日と違い統率の取れた動きで
 二人を取り囲み、行動の自由を奪った。
 担当教員、級友たちは確と認識しながら
 目を逸らし急ぎ支度をして教室から去っていった。
 巻き込まれるのは御免とばかりに。
 声を上げたところで止まるものは一人とて居らぬのだ。]
 

 
[そうして、真昼と転入生と俺、
 俺のかわいい子分たちだけの教室。
 転入生は椅子に座らせ
 両手を後ろで纏めて縛り
 足は片方ずつ椅子の足に縛りつけた。
 暴れたとて数には勝てる筈もない。]


   今日は新入りくんの歓迎会にしよう
   持て成すのは――お前の仕事だ
          得意だよな?


[ぺちぺちと真昼の頬を手の甲で叩く。]
 

 

   ちゃんと持て成せたら
         、、、
   昨日みたくご褒美をやるよ

   けど、出来なかったら――、
   ご褒美は新入りくんに
   あげることにしようかな?


[これはゲームだ。
 性欲を漲らせた子分たちの竿を鎮める役が
 二人のうちどちらになるかを決める道楽。]
 

 

   ここにいる奴らみぃんな
   コイツが筆下ろししたんだ
   今日はいない奴らも、上級生も皆、な
   だから新入りくんは安心して任せて良いぜ?


[主催者はビギナーに笑いかけ見守りの姿勢に入る。**]
 

 
[昨日に引き続き偽りのない事実がまた
 無垢な空澄くんの耳孔を穢す。
 彼にはきっと、昨日も今日も
 意味のわからない言葉ばかりだろう。
 僕と君は生きてきた環境が違い過ぎるのだ。]
 

 

   ……僕がうまくできたら
   空澄くんには
   なにもしないでくれるってこと、だよね


[ゲームのルールを噛みしめるように呟くと
 決心したように俯きがちな顔を上げる。
 両脇から押さえられていた腕を振り解き、
 椅子に縛り付けられた彼の元へ歩み寄っていく。]
 

 

   ……何にも考えなくていい
         僕に任せて


[跪き、微笑んで見せると
 衣服に手を掛け、半身が出るように
 最低限衣服を乱していく。**]
 

【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム




 ( 勇敢な人物の死に目には、必ず雨が降る。
   天泣という言葉がある様に────
   餞なのだとすれば其れは、

                 ・・
               実に結構な事だ。 )


 [ また一つ、名家が滅びる。
   主君に背いてまで独立を志した者達の旗が燃える。
   地図から、歴史から……消されていく。

       全ての領民と兵の行く末を賭けて
       決闘を申し込み、そして破れた男。
       その亡骸を雨が濡らしていくのを見据えては
       己が胸の内の向き合っていた。

   惜しい人間を亡くしたものだと、
   この戦争で初めて敵側に抱いた感情。 ]

 
(67) 2020/12/03(Thu) 12:55:55

【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム




 [ 其れでも振り返る為の時間が足りないのは
   残るベストラ家の本拠地が山脈の先、
   堅牢な自然の要塞の中にある故だった。

   21回目の命名日を迎えても、祝う暇もなく。
   葬られた墓も、焼けた城も、総てを春の芽吹きの中へ
   置き去りにして行軍は続く────…… ]


( 兵は休み休み入れ替わるが、己は違う。
  常に前線に立って軍を率いるのは、
  気が狂いそうになる程の熾烈さに身を置くことだ。

    戦場に出ると悪夢を見ずに済むことは、
    血腥い本質ではあるが、幸運とも呼べる。 )


 
(68) 2020/12/03(Thu) 12:56:17

【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム




  [ 人間にとってはこの世こそが地獄であると
     かつて説いたのは何処の誰だったか。 

        そして時は紡がれ
      戦況は刻一刻と姿を変え
      最期の仇を前にして、
 城壁の外ではまたも冷たき秋の雨が降る…… ]

          ・
          ・
          ・



  
(70) 2020/12/03(Thu) 12:57:35

【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム

 


[ ────迸る焔は怒りそのもの。

  向けられた切先に宿る其れは留まる事を知らず、
  溢れ出る程に術者の命を削る。
  業火に照らされる王の面持ちは対照的に冷たく、
  這い蹲る黒衣の男を無感動に見据えていた。>>0:64 ]


    [ 二百年の記憶を得てしても、
      彼等が背いた理由を悟ることは出来ない。
      それ程までに欲は歴史を左右し、
      同時に歴史書を複雑に変えていく。

       戦争の歴史こそが人間の歴史ならば、
       その火種である『欲』とはインキだ。


時と共により深く染み渡り、誰にも消すことは叶わない。 ]


 
(71) 2020/12/03(Thu) 12:58:18

【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム




 貴様らは眠っている幼子も、
 きょうだいも、その妻も殺した。

 唯一落ち延びた我が祖先を錻力の玉座に追いやっては
 囃し立て……嘸かし可笑しかっただろうな。

 俺は貴様と同じ轍は踏まん。
 だがその旗を燃やし、史書から抹消するのは変わらない。


       [ 対峙する王は瞳こそ焔の色であれど、
         声色は何より冷たく悍ましかった。 ]


 
(73) 2020/12/03(Thu) 12:59:22

【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム



 では誰が対価を支払う。天が恵み給うとでも?
 貴様の血肉と首に代えねば、
 我々に残るのは家名だけだ。

 ────貴様らが身勝手に踏み躙り、貶めた家名がな。


       [ 受け継いだ記憶がそうさせるのか、
         微かに声色に怒りが混じる。
         在り方で言えばとうの昔に人間ではなく、
         其れは四年に及ぶ戦で表面化していた。 ]


 
(75) 2020/12/03(Thu) 13:00:14

【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム




 死者は蘇らない。これは生者への報酬だ。
 再びの栄光を示し、その忠誠が報われたと証明する為の。

         ・・・
       [ 誰もがお前の死を望むと言わんばかりに
         鋭い言葉を用いて言い切る。
         国の為、一族の為、家名の為。 ]



 [ 此処まで殺めて来た。これ程迄に死なせた。
   墓標が生者にとっての罪や喪失になるからこそ、
  
           “後戻りなど出来はしない”。 ]


 
(77) 2020/12/03(Thu) 13:01:18

【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム




 奥方の命は保証してやる。
 精々西の大陸で慎ましく暮らすが良い。
 全てを失った時、命に価値など無いと分かる。

        [ 見え透いた問いには答えない。が、
          僅かに覗かせたのは生き様への価値観。
          まるで自分が“そう”在るかの様に。 ]


 
(79) 2020/12/03(Thu) 13:02:16
 


[ 四年と七ヶ月。
  古き地図の姿を取り戻す為に費やした年月。
  それだけ長く戦っていれば、
  心がゆっくりと拉げていくのが嫌でも分かる。

  人は人を殺める為に自らの心を殺し、
  其れを定めと割り切るほどに擦り切れていく。
  自分は戦う為に生まれたのだと背追い込めば尚更に。

  自分を忘れて仕舞いそうな時こそ
  あの
小瓶
の存在を思い出しては
 
約束
の在処を想う。 ]


       ( 今なら解る。苦しみとは痛みでなく、
         傍に立つ者が盤上から降り
         二度と戻らないという喪失感だと。 )


 

【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム



 [ ────だが、最期の仇を前にして火は揺らがない。
       降り頻る雨に掻き消されることもない。 ]



[ むしろ落ち着き払った様子で言葉を受け止め、
  やがて静かに唇を開いた。
  配下達が掲げる篝火の明かりが近付く。 ]


     ……“我 Wilhelm von Arenberg、
        テリウスの指導者にしてブラバントの王。
        家名の誇りに懸け、獅子の御旗の許に”



   “汝、Judas von Bestlaに死刑を言い渡す”。


( 吐き出せば、重荷は自然と消えた。
  而してArrynに然うした様に、首を落とすだけ。 )



 
(81) 2020/12/03(Thu) 13:03:54

【人】 征伐者 ヴィルヘルム



 [ 使い鳥に終戦の報せと行き先を託し、
   たった一羽、籠から高く送り出す。

   もう暗号を用いる必要も、
   撃墜される心配をする必要もない。
   筆は軽く、迷うことなく進み────


              “待っている”

          そんな一言で締め括られた。 ]


 
(83) 2020/12/03(Thu) 13:07:39

【人】 征伐者 ヴィルヘルム




 [ 誰かが訊いた。
   契約の果たされる時は来たか、と。 ]


        ( ────否、未だだ。
          報せを国に持ち帰る迄。
          得た物の処遇と治め方を決める迄。
          全て『王』の役割よ。 )

 [ 声は脳裏で囁いた。
   城に戻れば必ず命を貰う、と。 ]
 

 
(84) 2020/12/03(Thu) 13:07:56

【人】 征伐者 ヴィルヘルム




 [ 悪夢は完全に消え去り、
   一人の脳が抱えるには重すぎる二百年の記憶は
   眠る度に少しずつ薄れて往くのだった。

   三週間に及ぶ帰郷の中で誰かの名が消える。
   今では古き当主の名が思い出せない。 ]



[ 幼い頃から夢の中で継承し、植え付けられて来た記憶が
  抜け落ちれば、何も知らない子供に戻って行くかの様。

  充たされず、飢えと渇きに支配された獣の如く
  思考を占めていた
悪はその名残もなく。 ]


 ( 其の憎しみが誰の物であったのか、

      影も形もなければ確かめる術もない。
               ……そんなものだ。 )


 
(85) 2020/12/03(Thu) 13:08:17

【人】 征伐者 ヴィルヘルム

 

[ ────祝賀に飲み交わす兵達の宴から抜け出して、
      砦の暖かな寝室に戻る。
      従者に火を焚かせ、灯りを付け、机に向かう。 ]


 [ “もう下がって良い”と告げれば、
   目的のものを執筆する為に羽根ペンへと手を伸ばす。

     相続に関しての取り決め、領主の割り当て、
     功績を立てた者への褒賞、戦死者の弔い、
     やるべき事は山ほどある。そして……


 真実を知らぬ息子に宛て、最期の言葉をしたためようと。 ]



          ( 何も浮かばないのは
            疲労の仕業であって欲しい。 )


 
(86) 2020/12/03(Thu) 13:08:50

【人】 征伐者 ヴィルヘルム

 

 [ 考える内に時間は徒らに過ぎ、
   窓の外を見遣れば宴の気配も殆ど消えていた。

   秋の終わりの長い雨は月の見えぬ晩を一層冷たく、
   憂鬱なものに変える。 ]


[ 黄金のゴブレットに葡萄酒を注ぐ。
  遺書の為にも多少は“馬鹿”になった方が良いだろうと。

        薬は既に不要であるから、
        代わりにシナモンを加えて温める。
        甘く芳醇な味わいが喉を満たした。 ]



 [ 再び筆を手にしては溜息を吐いた。
   背凭れに頭を預け、時折寝室の天井を仰ぐ。
   揺れる髪には古びた紙紐。誰かが遺した依代。

    彼女の生存を知らせた最も古い手紙の代わり。 ]*

 
(87) 2020/12/03(Thu) 13:09:11
 

 [ 幸福な未来を棄てた事で、
   家族の存在が大切なものの中から消えた。

   熾烈な闘争によって
   唯一の幼馴染の命が失われていった。

   民も、美しき国土も、愛しい筈の息子も、
   死を前にすれば口惜しさばかりを覚える。 ]



( 一つ、また一つと燃え落ちる様にして消え。
   其れでも未だ“大切なもの”として此処に在るのは、 )


 




 [ 幕引きを控える者同士、獣達の運命は引かれ逢う。 ]
    [ 誰も通れぬ程────狭き路を征け。 ]


 



[鉤爪で傷つけぬように包み込んだ、案外弱々しい背中は
傷だらけの冷たい身体を抱き寄せた時と重なってしまう。

    トロイメライを振り返っただけ。
    ただの自分のエゴイズム。
    だけれど、彼はそれを拒みもしなかったから、
    ……血濡れた手を、縋るように伸ばしたのだ。]

(よく切れる刃物など、復讐では都合の良い獲物なのに。
 遂にそれを使わずにしまっておいたのは、
 ……
約束
を果たす最後まで
 絶対に他者の血で汚したくなかったからなのか。)


 



[元より安らかな死など約束されない身であった。
抗うことを辞めてしまえば己は真のひとでなしとなり、全てを破壊し尽くすのみの血に飢えた化け物と成り果てる。

   有象無象に興味がなければ
   己のことだってどうだって良かったのだ…今までは。


何もかも壊す前から自分自身で手放してしまえば苦痛なんて湧かない筈だと信じていた癖に、結局あるのは変わらない地獄だ。]


(自分の道を決めた、たったひとつの人間性が
 今度こそ手放しはせぬと握りしめた──唯一無二。)


 



[歯車を自ら狂わせた者同士、
 噛み合ってしまうのは必然の道理。]
   
[借りものの命なら、使い込んで返せ。]

     [幕引きくらいは───望んだ通りの結末を。]

 

【人】 征伐者 ヴィルヘルム




 ( 冷たい戦乱が心さえ凍らせていたかのように、
   凝り固まった情緒は言葉として表すことが出来ない。
   揺れる暖炉の炎にもう一つ薪を加えて、
   再び机に向かおうとした時だった。 )



[ ────使い鳥の嘴とするには大きい、
      硬質的な音色が部屋に反響した。>>99
      天候が雹に変わった様子でもない。

       敵襲など有り得ない立地と高さだ。
       加えて周囲は砦に収容し切れない人員が
       軍幕を張っているものだから。


  思い当たる前にナイトガウンの裾を翻し、
  窓辺へ駆け寄った。
  見れば薄闇の中に濡羽色の魚鱗めいたものが光っている。

  思わず框に手をかけて、一息に頂点まで押し上げた。 ]

 
(105) 2020/12/03(Thu) 22:07:18

【人】 征伐者 ヴィルヘルム

 

[ すると破れた布切れと不規則な黒鱗に覆われた脚が、
  それに続いてヒトの輪郭を保った顔が視界に現れる。

    血溜まりの如く濁った
であっても、
    一度目の当たりにした其の姿を忘れる筈もなく。


  吹き込む風に混じる死の匂いは、
  彼女が長い長い闘争に身を置いていた事を悟らせた。 ]


            リヴァイ、お前……
          今晩はまだ三日月の筈────

 
[ 言い切る前に其れは窓の下枠に脚を掛け、
  濡れそぼつ身のまま飛び込んで来た。

   寛いだ衣装では一人分の質量以外に抗うものはなく、
   衝突した威力に押されるままに後ろ向きに倒れ込んだ。
   古びた絨毯から鈍い音が鳴る。 ]

 
(106) 2020/12/03(Thu) 22:08:08

【人】 征伐者 ヴィルヘルム

 

[ 振動と共に全身へ打ち広がる様な鈍痛。
  痛みには慣れてきたが、頭の中が揺れたまま治まらない。

  深い瞬きを繰り返して定まらない視界を確かめるが、
  一向に効果は出ない。

  言うべき事も、迎える言葉も、募る話も、
  沢山あった筈なのに。
  瞼の裏に文字通り星が散る有り様では、
  “ああ”と短く肯定を返すのが精一杯だった。 ]


 [ その実、狭義的な“無事”とは言い難く。
   命を酷使したお陰で身体は重い上に、
   受けた矢傷は今も包帯の内側で疼いている。

         取引の『刻限』が迫る身体は、
         不可逆で緩やかな衰弱の途中に在る。 ]



 [ 分厚い生地に冷たい雫が染み渡る。
   背へ控えめに回る腕があれば体温は尚更混ざり合い、
   腕を広げて迎え入れようとした中途半端な格好のまま
   疲労困憊への追い打ちとなった眩暈と戦っていた。 ]*

 
(108) 2020/12/03(Thu) 22:09:53

【人】 征伐者 ヴィルヘルム



 『他の国家の如何なる法もこの地では無効。
  敵意を持たない対象への攻撃は許可しない』

 [ いつか戦争が始まる前に敷いた則。
   其れは実質的には彼女を保護する為の決まり事で。
   獅子の御旗は定めた獲物以外には靡かない。

   ────たとえ国際的な指名手配であったとしても。 ]



[ どれ程冷たく過酷な闘争であったとしても、
  生命の証明は、体温と鼓動は変わりなく其処にある。

  本来なら死に至る運命を幾度となく捻じ曲げ、
  “違和感の無い程度”に書き換えられた筋書きは
  何もかもが悪魔の筋書き通りであるが、
  同時に約束を確実に守る動因となった。


      床に落ちた黒髪を受けたばかりの雨粒が伝う。
      揺れる度に張り付いては触れたものを
      しっとりと濡らして行くのが擽ったい。>>109 ]

 
(114) 2020/12/04(Fri) 2:14:03

【人】 征伐者 ヴィルヘルム

 

[ 碌に身動きの取れないまま放り出されれば、
  自ずと暖炉の火に近づく事になる。>>110
  気付けば窓はいつの間に閉められていて、
  寝室は暖かな空気と橙色の光に満たされつつあった。 ]


    四年闘って無傷で済む戦士が居ると思うのか……?
    だとしたら其奴の度胸を疑った方が良かろうに。


[ 結局、再会して初めてのまともな返答は
  いつかの日にも似た憎まれ口になってしまう。
      回り始めた思考は傷の手当だとか、祝杯だとか、
      先程浴びた湯を従者に沸かし直させる事だとか、

  ────考えたその全ては再び何処かへ葬られた。 ]



 [ 漸く平常に戻りつつある視野が最初に捉えたのは
   揺れる火に照らされ浮かび上がる女の肢体。
   末梢や頬、背と尾を除いてヒトの形を既に取り戻し、
   この身を覆い隠す形で寝台に膝を乗り上げていた。 ]

 
(115) 2020/12/04(Fri) 2:14:44

【人】 征伐者 ヴィルヘルム

 
[ 艷めく鱗と同じ色合いをした髪が首筋に描く線が、
  宗教画じみた非現実的さを孕んでいたものだから。 ]



  ────おい、 …………

       
     ( 今、“月に頼らず”と言ったか? )



[ その行動に異を唱えようとしていた唇を閉ざした。
  壊れ物を扱うかの様に触れた掌は恐ろしいほど冷たく、
  同時に零された言葉は最早意味を成してはいない。>>111

    安堵の意味を思考し、
    手繰り寄せた結論は酷く苦しいものだった。 ]


( 温かな家庭で得られる幸福の選択肢を蹴り、
  同胞も、名誉も、故国も、居場所でさえも投げ捨てた。

     お前が自ら望んで獣に身を窶す程に、
     この
約束
は重かったのか。 )



 [ 中和されるかのように肌は冷えて行くと言うのに、
   長き戦に凍り付いていた情緒は溶け出し始める。 ]

 
(116) 2020/12/04(Fri) 2:16:09

【人】 征伐者 ヴィルヘルム




( 立場が異なるからこそ、
  同情は叶っても共感は出来ぬ。

  だが、憐れみに混じる喜びに似たこの感情は何だ?
  ……奴は血に染まるのが喜ばしい、
  これまでの復讐相手とはまるで違う筈なのに。 )


       [ ────不理解。空白感。
         掴み所のない感情の出処を知らないのは
         彼が精神的充足と共にある『恋』を
         経た過去がまるでないからだった。 ]


 
(117) 2020/12/04(Fri) 2:20:56

【人】 征伐者 ヴィルヘルム

 



         ( ────嗚呼、だとしても。 )

(118) 2020/12/04(Fri) 2:21:45

【人】 征伐者 ヴィルヘルム



 
守るべき平民

[ 唯の田舎娘にそこまでさせる程の呪いを投げ掛けた。
  互いに律し、戒め合ったこの運命は
  漸く終局に差し掛かろうとしている。 

   戦を終えれば、心を奮い立たせる理由も
   慈悲や情けを殺して埋める必要もなく。
   奇運に振り回され続けた少女のこれまでを思えば、 ]

       
■かな■り

 ( せめて安らぎを、と思わずには居られまい。 )



 [ いつかの様に凭れ掛かる身体を受け止めて、
   “今度は”紛れも無く自らの意志で華奢な背に腕を回した。
   体長の半分はあろうかという尾が
   応えるように巻き付けば、体温は更に奪われる。>>112 ]

 
(119) 2020/12/04(Fri) 2:21:55

【人】 征伐者 ヴィルヘルム



[ 微かな震えが起こるのも厭わずに、
  唯々凍え切った身を温めようときつく抱き締めた。

  濡れて張り付いた衣服の残骸など投げ捨てて、
  人と獣の合間に在り、倒錯的ですらある肉体の
  薄い肩をさすっては、髪を梳いて退かしてやる。 ]



   ……幾ら祝賀とは言え、女など頼んでおらんわ。
       
( お前はもう“物”から脱却したのだから )



 [ ずっと前に教わった抱き締め合う事の喜びを実践し、
   やはりと言うべきか、突っ慳貪に吐き捨てたのは
   彼なりの“逢いたかった”の感情表現だった。 ]


 
(120) 2020/12/04(Fri) 2:22:19

【人】 征伐者 ヴィルヘルム




[ 縛り付けられて来た心が、愛されなかった子供が、
  本当は心の中で何を求めていたのか。

  其れを表現する術を持たない儘触れ合って、
  名前も知らない“与え与えられる喜び”に溺れていく。

  枷の外れた心は二十余年未知だった領域に踏み入っても
  もう、どんな恐怖を覚えることもなかった。

  ……総ては雨の降り頻る、長い夜の秘め事の中に。 ]*


 
(121) 2020/12/04(Fri) 2:23:48