[『悪魔』が『恋人』を愛していた理由は、
完璧な彼/彼女が健気で美しかったから。
不完全ゆえの完璧さを孕む様は魅力的で、
蠱惑的で、いっそ無理やり自分のものにすることも
考えなかった訳ではない。
けれど、
考えてもそれは絶対にしなかっただろう。
『恋人』は今のままが一番"自分好み"であったからだ。
彼/彼女がその地獄をおくっていたのもその一因だろう。
その ぎりぎりで、壊れそうで、儚く、
それでも完璧であろうとする姿が
『悪魔』は何よりも好きだった。
愛していた。
勿論その心内の全てを知っていたわけではないが
『悪魔』は『恋人』が自分に靡かないだろう所も、
好ましいと思う箇所だ。
壊れたら取り返しのないものを
つついて遊ぶ。
それは『愚者』を殺した時の感情に似ていた。]