人狼物語 三日月国


246 幾星霜のメモワール

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視点:


【人】 薄荷 アンジュ

ここカイザラルック皇国での成人とされる適齢を過ぎたとはいえ、神官様に集められた一同の中には同年代と見られる人はそう多くない。たぶん、みんな自分より年上だ。
この国での滞在の折の注意点はどれも他国へ渡った際には聞く程度のものが多いものの、習わしに則り名を刻まれる経験というのはそう多くないはずで。
だから名を呼ばれ、諸注意と共に説明を受けるべく呼び出されるのは、罪を犯した者か、こうして聖女の祝福を受ける栄誉ある賜物くらいであろう。

「あ、ありがとうございます」

神官様に向けた声は少々緊張気味ではあったものの、説明を受ける前に見知った顔がチラホラいたことに安堵していた。
(4) 2024/01/26(Fri) 22:10:03

【人】 薄荷 アンジュ

一通りの説明を聞き終えた矢先。
口火を切って自己紹介をする者、そして踵を返して教会を背に歩く者。
皇国にあるギルドへの顔出しに自分の露店の準備と色々あれど、そう急ぐものでもない。

「アンジュと言います。薬師をしていて……祭りが開催した際は中央通りの外れで薬の露店も開く予定です。
 同じ縁を得た者同士、ご入用のものがあればお買い得な値段で商品を提供します。
 なにとぞ、なにとぞ」

軽妙な男の自己紹介に乗る形で、ついでにちゃっかり店も宣伝もするのだった。
(5) 2024/01/26(Fri) 22:24:34
「どゆこと〜〜〜!?
 俺様ちゃんさっぱりわかんね!
 誰が味方で誰様ちゃんが敵かも、
 ちゃんと書いておいてよね女神女神〜〜〜」

ていうか見た? あのクールな振る舞い。
教会の端で如何にも何かを知っている、クールな盾役。
こんなもうもうパラディンじゃん。融点58℃のワックスだわ。
ってそれパラディンじゃなくてパラフィンパラフィン!!(爆笑)

「……いやー、こういう内心がバレちゃったら、
 皆からタンクとして頼って貰えないしモテないからね。
 ホントはこんなやつだってバレないようにしないと。
 ホントはこんなやつだってバレないようにしないとね!
 大事なので二回説明しました。誰に?
 おっ! おやっ!? なんだか共鳴してる気がする!」

「キャー! キョメ太さんのエッチ!
 見ないで! 俺様ちゃんの本性!!
 うっそマジで今年はこの役、俺様ちゃんってコトォ?
 ごめんね、存在したら先に謝っとくけど、
 確かにこの祭りでそういう能力持ちって例年いるらしいけど、
 今年は俺様ちゃんでしたー!」

騒々しいテレパシーが送られてくる。

「今、俺様ちゃんは貴方の脳内に直接話しかけています……。
 お互い大変だね。
 でも多分キミの方が俺様ちゃんの
 およそ100倍大変だと思うから頑張って。めげないで」

「うわあっ 何何何!?!?
 すご〜い人懐っこいワンちゃんの心の声がする気がする!!」

テレパシー受信。魔女大喜び。
パッションだけで事態を呑み込んでいます。

「ええと……つまり?あたしはお祭りの中で、
 念話能力が使えるようになっているって訳ですね?

 いいじゃない!そういうの大好き!
 大魔女だからフシギにはなんでも首を突っ込まなきゃ」

現在どこかでは両の人差し指をこめかみに当てて、
嬉しそうにうんうんとしている魔女が見られるという。

「心が筒抜けのあなたも勿論大変よ?
 全然素敵だとは思うけど……隠してるみたいだし。

 ああええっと、改めてあたしは……プリシラ!
 これからどこでも話し相手になってね、能力友達さん!」

「ワンワン! クゥーンクゥーン!
 夜の飼い犬、グノウです。
 ワオ、お相手ちゃんは大魔女ちゃんと来たかー。
 俺様ちゃんに恋という名の魔法を掛けないでくれよ?」

案外ノリでテレパシーが返ってきて、脳内ハイタッチ。

「たぁしかに! 俺様ちゃんバレたの初めてかも!
 魔女ちゃんに、そんな弱みを握られて、魔法を掛けられて、
 使い魔にされちゃうんだ……一日三食と温かい寝床と共に。
 オッケー、俺様ちゃん、独り言でも二人言でも
 心の中じゃ話してないと死ぬ病だから、
 祭りの話でも、コイバナでも、
 ヘイグノウ!って軽いノリでなんでも聞いてきな!
 すみません、よくわかりません。
 俺様ちゃんも、夕日の綺麗さとかに感銘受けて、
 呼吸音多めのポエムとか流しちゃお!」

「ふふ!もー、掛けない掛けない。
 でもそーやって揶揄うようならお呪いしちゃうかもな〜?
 テレパシーで勝手に語尾にワンがついちゃうやつとか」

かけなくともやってくれそうだが。適当言ってる。

「図々しい使い魔はいりませ〜ん。
 それにあたしは現代の素敵な魔女なのだから、
 弱みを利用するような真似はしないつもりです!

 どうせ一日三食と暖かい寝床を与えるなら、
 きちんとあなたのことを知って雇うぐらいがいいわ。
 グノウさんってこう……
 家に置いとくと便利そうなのはそうですしね?」

門番としてはとても優れてると思うし、
加えて何故だか頭を過ぎる一家に一台マシーン。
そういうこともあるかと深く考えずにいつつ。

「そういえばお祭りの事知ってるみたいだったけど、
 前の聖女祭りって、どんな感じだったの?

 マジックアイテムが卸されてるのは耳にしてたけど……
 あっ、聖杯の痣が出てるなら一杯御馳走食べられたり!?」

【人】 薄荷 アンジュ

跳び跳ねる投げキッスに関しては、自身のような子供が向けられるものでも受け止められるものでもなかろうと我関せずの様相。

「商いをしている方もそれなりにいますし、冒険者であれば口を回すのも仕事ですから。報酬の交渉などは多いですし」

低いトーンで短く発するグノウの声に、頷きながら同意を示す。

「薬草……お花……おぉ」

プリシラの言に興味深そうな反応を示していた。
(13) 2024/01/27(Sat) 4:34:15
「クリームパン二つくれる?」

毎度あり!と店仕舞い前の店で受け取った袋を抱えて中央を逸れた路地を歩む。
広場にはまだポツポツと灯りが見えて、こんな裏手でも不安を感じる要素は少ない。
生まれ都合上、もっと治安が悪いところにはいたことがあるし。

「アンジュ……」
 
寒い季節の風を受けていた壁にもたれかかり、
友と呼んでも遜色はない大事な者の名前を呟き息を吐く。

私は盗賊ギルド員の一人娘、
違和感を持ってから、当たり前のことに気づくのは容易で。
私の友はこの世界の住民で、私はこの世界のイレギュラー。

単純で変えようもない事実が項にある痣となって自身に訴えてきている。

【人】 薄荷 アンジュ

「あ、いつもいつもご提供ありがとうございます」

自分を含めた薬師ギルドの者たちは薬草や花を自分で採取したり、詳しい専門家から譲ってもらう、買って仕入れることは珍しくない。
森に住まう魔女であれば尚の事、良い材料として活用できるだろうという信頼もありましょう。

「私も育てる方はあまり得意とは言えませんので……その際はまたお声掛けします」

店を開き、定期的に遠征する傍らで薬を作る都合上、育てる時間は難しいしコストもかかる。
料理人が農家に感謝するのと同じで、しかし興味を示す羨望の眼は変わらずに。
ぎこちなく口許は線を結んだ。
(24) 2024/01/27(Sat) 13:12:15

【人】 薄荷 アンジュ

「ドレス……お食事……ご飯……。オトナって感じがする」

ここではともかく、他所の国ではまだ未成年として扱われる年齢だ。
祝福を受け、こうした祭り煌びやかな服を着て、ちょっとオシャレなお食事とか。
憧れがないわけではないけれど、親睦を深める意図もあるのだろう。

「現に一人は足早に去って行きましたから、咎められることもなさそうなので。自由にして良いのだと思います。
 ご飯に行ったり、お散歩したりしても咎められないかと」

自分以上に緊張と不安の面持ちのファリエへと。自分の方は幾分か和らいできたのでそう語り掛けた。
(25) 2024/01/27(Sat) 13:13:23
何か準備しておくべきだったかと思ったけど、どうしようか考えて結局時間ギリギリになってしまった。
この街はとても治安が良いとはいえ、犯罪がゼロというわけでもない。
祭りに浮かれた人から自衛できるように最低限の装備だけ仕込んで約束した場所へと赴く。
大通りが見えるこの場所は、入国してからずっと感じていた疑念と不安感を拭ってくれるような感覚がした。

「すみません、カリナさん。少々遅くなりました。
 まだ寒いのに、こんな場所で待ち合わせてごめんなさい」

小柄な少女が駆けてくる。自分より少し年上で、先輩で、友人の彼女のもとへ。
ちゃんと会って喋るのは久しい。努めて尾を振る動物のように笑顔を浮かべてあなたを見上げた。

七色に緑のディスプレイが光る。

「置物とかにしておくと俺様ちゃん防犯に役立つよ。
 人が来たらココとか光って威嚇できるし。
 ヒェエ、魔女ホーダイのつもりでいたら、すっごい請求来そう」

顎に太い金属の指をやり。

「そうねぇ、基本祝祭だから"女神の名の下に"って名目ある以上、
 派手に得して稼ぐこともできない反面、
 売り上げ金額が信仰に紐づくせいで、ケッコーな適正価格で、
 詐欺にならないアイテムの売り方してくれること多いからね。
 だから珍しく価格交渉もせずに美味しいもの食べれるぜ!
 俺様ちゃん食道ないけど!
 面白グッズも出るから変な眼鏡とか掛けようぜ魔女ちゃん。
 俺様ちゃん目もないけど!!」

タハー! 祭り楽しむ資格ないじゃん俺様ちゃん!

「なので気の合う仲間や、美味しさ共有できる子らといっといで。
 コワイお兄さんが出たらいつでもテレパシーで呼ぶんだよ。
 ファイト! なんとかなればいいね! って遠くから応援する。
 魔女ちゃんはでも、今回お花とか売る方なんかな?」

「あなたって案外荒事が得意じゃないんですか?
 魔女放題、踏み倒すつもりでかかってらっしゃいな」

頑丈さをウリにしているけれど、
根はちょっと柔らかいのかしら(オブラート)。
やるときはやってくれると陰ながら信じています。

「よかった。聖女様の手前、阿漕な商売はできないものね。
 食事は最悪お祭り価格と思えばいいとして、
 掘り出し物のアイテムや武具が割高だったら……
 お財布と相談する回数が増えちゃう。よくないわ。

 えー、ギャップっていうのもあるから、
 乗せてみるだけでも面白くなったりするかもよ。
 買ってきたら試しちゃう。物は試し」

もし似合いそうなものがあれば、
話を思い出して買ってきちゃうかもしれない。
食べたものの話だって聞いてくれるならするつもり。

「ん−、完全にお客さんの気分で来ていまーす。
 その気になれば即興でお店は開けるけど。

 ほら、お祭りの時期だけ咲く花とかあるわけじゃなし、
 あたしの商売は別にいつでもいい気がして」

「エエ〜ッやだやだ、荒事を抑え込むのは得意だけど、
 自分が荒事を起こすのは向いてないし、
 嗜虐よりも被虐に興味がある星の下に生まれたから、
 俺様ちゃんカワイコには踏み倒すより
 踏み倒された方が興奮するしさ〜」

これは倫理や信念ではなく性癖の問題です。

「オウイエだったら俺様ちゃんに似合う装飾探すってクエスト
 個人的に依頼しちゃおっかな!
 魔女ちゃんはクエストを受注した」

脳内でズビシ、と両手で指さし。

「このタイミングでしか来ないような冒険者もいるし、
 奇縁が結ばれるかもしれないしね、
 人生一度きりだから悔いなくやらないと、
 何が起こるかわかんないからね!チャオ!」

―――あなたたちが、教会にと集められるその前日の夜。

「 ファリエ 」

聞こえたのはその声だけ。
足音もなければその身体の下に影ひとつ落とさず、聖女はひらりと突然現れた。

変わらぬ光景。空気に揺れる白銀の髪。
それが落ち着く頃、あなたを見てはくすりと微笑むのだ。

「 お祭り たのしみね 、ねえ ファリエ 」

くるくると、本当に楽しそうに、喉を鳴らして。

【人】 薄荷 アンジュ

「私たちは選ばれた立場、と言っても真摯な態度であれば、きっとお許しになられると思います」

慌てている人を見ると途端に冷静になることもある。似たような感じで幾分か緊張が解けた自分は「そうですよ」と続けた。

「あくまで自然に、普段通りにしたら良いかと」
(39) 2024/01/27(Sat) 18:40:02

【人】 薄荷 アンジュ

「私は首や手のように見せやすい場所に痣は出てこなかったですが、出すのは少々恥ずかしいのですけど……隠していても大丈夫なのでしょうか。
 出すようにとは言われてはいませんけど」

着飾るアクセサリー、ワンポイント。
なるほど服飾と合わせると結構至れり尽くせりな縁となっているのだなと考えた。
(40) 2024/01/27(Sat) 18:48:31
「あ……リッカ」

子供たちを寝かしつけ冬の重たい夜を享受していた時だった。
夜空に滴るミルクのような髪が視界を横ぎって目を奪う。

そうだ。女がここまで狼狽える理由は、何も不慣れな場に招かれたことだけ原因ではない。
何年も前から痣が光ったその日まで聞き続けた声。
それはすべての元凶の響きでもあって。

「…………楽しそう。聖女様の為のお祭りだもんね。
 あなたにとっては誕生日のようなものなのかな」

楽しみだ、とすぐ答えられず。
白い息を吐く。歌うように踊るようにはしゃぐ己だけの■■を見る。

【人】 薄荷 アンジュ

「本当に偉い方に出せと言われたなら仕方ありませんけど……なら私も同じようにしておきます。
 少なくともここに集められたということは、同じような痣があるということですから。
 ならば私もその時は声を上げましょう。頼もしい限りです」
(42) 2024/01/27(Sat) 19:35:59
「 たんじょうび?
  …… ふふっ、ううん、関係ないわ 」

また可笑しそうに、笑う声。
どんなに夜が暗くとも、リッカの姿は闇に溶けて消えたりしない。
白い髪に、肌に、衣服が。ぼう、とまるで灯りみたいに浮かんでいる。

「 お祭りは、お祭りだもの。
  たくさんの人が集まって、たくさんのお店が並ぶのよ 」

「 ――― 考えるだけで、とっても たのしい。
  雪も、降らないかしら。 降ったらきっと、とってもきれいね! 」

子どもの声が、子どもらしく。
薄ら細めた瞳は夜空よりもずっと寒々とした、蒼い色で、あなたを映す。

そう思わない? って。

「ただ単に賑やかなお祭りが楽しいの?
 リッカってほんとうにいつまでも子供みたい」

目の前の存在は神秘的。幻のようだけれど夢と消えず確かに其処に居る。
隣で無邪気に笑うあなたを見る目が、孤児院の子供を見るのと同じになったのはいつからだったろう。
幼子でなくなり、少女でなくなり、大人になったファリエ。
あなただけはずっと変わらない。
あなたとの関係性が変わるとすれば、間違いなく己が原因なのだ。

「そうね。お祭りというのは本来そういうものね。
 ここではないどこか知らない世界に迷い込んだようなドキドキ。雪だって世界を彩るイルミネーションになるよ」

底の見えない冷たい瞳を覗き込んだまま、眉尻を下げて微笑んだ。

「私も昔は大好きだったよ」

過去にはふたりで揃いの喜びを分かち合ったものだけれど。
大人になるというのは知ることだ。
例えばどんな楽しい事もいつかは終わるだとか。
例えば祭りの後は物寂しいだとか。

だから女はあなたほど純粋無垢では居られない。

「ねえ、リッカはお祭りをどう過ごすの?
 何かとびきりの予定があったりする?」

「私は、まだ決めてなくて」

【人】 薄荷 アンジュ

「はい。それもまた聖女様へのお返しとなりましょう。
 同じ選ばれた者同士、一緒に素敵な聖女祭りにしていきましょう、ファリエさん」
(47) 2024/01/27(Sat) 20:24:54
「全然、来てくれるって分かってたし。
 ほら暖かくなる魔石もあるんだよ、名付けてカイロ石」

揺れる火のように光る宝石を取り出し微笑みかけ。

「こちらこそ改まらせちゃったしおあいこってことで。
 あ、お腹空いてたら先に食べちゃう?」

本題を中々口に出せず勿体ぶるように先に紙袋を渡した。

この街に深い思い出があるわけでもない、なのにどうしてか郷愁を感じてしまうのは夢で聞いた幼い聖女の声のせい。
カリナにとってギルドの者たち以外に直近で仲良しなれた同性はあなたぐらいだ。
冒険者をするようになってから何度も会える人など減ってしまって。
だからと嬉しい再会を噛みしめていたいのに、いつもならかっこつけて自慢をするはずの口すら今ばかりは重くなっていた。

「お〜、便利なアイテムですね。火要らずで火傷の心配もありません」

取り出された光る宝石に目が煌々と輝いた。
それじゃあ食べながら、とクリームパンの紙袋を手に取り、一つを取り出した。
もう一個あったけどそれはあなたが食べるのだろうと思い、また紙袋を返した。

「……このパンには目を付けていたんです。やはりアタリでした」

まぐまぐと小さくちぎりながら食べる。
――合間を埋めて、隙間を埋めて、どうしたものかと会話を繋ぎ止める。

少し前の、祭りの準備中。
白昼夢のような心地の中で脳内に響いたのはかの聖女からの神託だった。
同じ痣を持つ者が消えてしまうかもしれない。

あの場にいた者、つまり目の前にいるあなたもそうなるかもしれない。

「……カリナさん、お話したい事とは何でしょうか。
 相談事なら私、力になりますよ」

【人】 薄荷 アンジュ

「私は腹部に浮かんでいます。胸元も服さえあれば隠せるので楽ではありますが、確かに他人に見せるというわけにはいきませんね……。
 痣を隠すという点では需要も少なそうですが……傷隠しにも流用はできそうですね。
 冒険者向けともなれば、彼らは生傷の堪えないお仕事ですから」
(52) 2024/01/27(Sat) 22:29:27
「これ試作品で2日しか保たないからあげるよ」

石と紙袋を交換すればくしゃりと軽い音を立てて抱え持つ。
聞き馴染んだその声を聞いて自分もゆっくりと深呼吸をしながらいつもの調子に戻していった。

「よかった、その審美眼私の探知スキル以上だね」

一呼吸置いてあなたが気遣ってくれるのを感じる。
話さなきゃ、うじうじしているのもらしくない、自分もあなたの力になりたいって言うんだ。

「聖女様の話、昼間にされたでしょ。
 ……私、なんだか他の人より聞こえる言葉が多くてさ。
 定期的にあの痣を持った人達がどんな人なのかわかる  みたい」

この街に来て、鮮明にすべてを思い出したそのとき。
聖女の言葉が頭に入ってきてその意味を理解した後。
一番はじめに聴こえてきたのがあなたのことだった。

「アンジュ。
 あなたにその痣を光らせる力があるって本当?」

それは、転生者にとってはまるで。

「私ね……できたら光らせたく、ないんだ。自分の痣」

【人】 薄荷 アンジュ

「子供の頃にうっかりつけた傷が大人になっても残るのもありますよね。火傷で少々大きな傷を作ったという話もありますし。

 そうですね……いっそ傷を目立たなくさせるために模様つきのシースルーやレースとか。女性向けではありますが、それでもオシャレしたいヒトというのはいると思いまして」
(54) 2024/01/27(Sat) 22:58:46
「本当ですか。ありがとうございます!」

石を貰い、両手にそれを包み込んでから、懐に一度入れた。こうしているだけでも体は温まるって、北国に行った際に教わったから。
いつも勉強していますから。あなたから教わったことや、独自で学んだことも含めて。
冒険者ではあるものの、本職は薬師であり行商の身。小さなことだけどこうした目を養うことは今後に繋がると信じているから。

「……はい」

あなたが語る声は、最初は瞬間的に理解するには難しかったけど少しずつ飲み込めた。
光らせる力があると問われると肯定した。
痣を光らせれば、祭りが終わった後消えるなんてことにならなくなる。
具体的な方法がどんなものかは――直感的に理解していた。聖女様の神託を受けた日から、きっと『そうなのだろう』という確信すら得ていた。
これがあればあの場にいた人を救える。自分にとっての『魔法の薬』なのだと。
けれどあなたは、なぜそれを拒むのか。

「なんで、ですか。元々この街には、その痣が光らなかったら消えてしまうかもしれないって噂があって……でもそれは真実らしいんです!
 理屈や仕組みは分からないですけど、そうなったら嫌です。会えなくなる事になったら私……!
 力に、なりたいんです! 私は助けたいのにどうしてそんなこと……!」

えー?と肩を竦めるように。
そう笑った聖女は、気分を害したというよりは「だって子どもだもん」とでも言いたげな。

確かにあなたの前にいて、声を届けて。
だけど確かに実像ではない、不可思議な聖女。
その証拠に、聖女はあなたの視覚と聴覚を借りるだけ。
触れることはない。すり抜けたことなら、幾らでもあったろうが。

"昔は"、とその言葉にも微笑みは変わらない。
では"今は"?―――聖女がその質問を紡ぐことはなかった。
……聞く必要もないと、この時判断したから。

冷たい色の瞳はあなたを映したまま。
そんな様子であると言うのに、続いた問いに、無垢にきょとんと瞬きして。


「 とびきりの 、よてい?
  …… ううん 、ないわ。 ない。
………… ない…… けれど 」

思案の仕草に、またほの光る髪が揺れる。
冬だというのに聖女の衣服は袖もなく、すらりと細い腕は露出したままだ。

そんな白い左腕で口許に手を運んで。
ほんの少し、小首を傾げたりして。


「 ――― ふふ 」


そんな様子が、また、笑みに変わる。

「 とびきりの予定は 、ないけれど。
  じゃあ、ファリエがわたしの
  とびきりの予定に なってほしいわ 」

いつもの無邪気そうな声。
けれど、このときほんの少し、その笑顔に含むようなものがあったことにあなたが気付いたかどうか。


  「 ――― ねえ ファリエ。
    わたしと お祭りに行きましょう ? 」


聖女からあなたへ。本当に簡単な、"デート"のご提案。

【人】 薄荷 アンジュ

>>60 エリー

「おぉ、さすが手が早い。
 植物を模した形であれは目立ちにくく、柄としても楽しめるので良さそうですね」

じっとモノクロで描かれたデザイン案を見ながらこくこくと頷いた。
(61) 2024/01/28(Sun) 1:50:01
「あはは。なんて虐め甲斐のないワンちゃん。
 ま、あたしは結構荒事が得意な方だから、
 コワイお兄さんが出たら呼んでくれればこっちが向かうわ」

こう見えて腕相撲強いんだから。
一般人範疇の相手ならどうとでもできちゃう。

「ちゃららーん。報酬は喜んでもらえたらそれでいいかな。

 正に今あたし達が奇縁で結ばれてるようなものだし、
 ええ、悔いは残らないようにってのは同感ですっ!
 やりたいこと何でも試しちゃうつもりでいるからね。

 グノウさんも、表立って言いにくいことがあれば、
 遠慮せずこっちに伝えてもらってもいいよ。
 叶えられることも、いくつかあるかもしれないし!」

「大袈裟、でも需要はあるかな」

ここも雪は積もるのだろうか、寒さはもっと厳しくなるのだろうか。
昔からちょっと風邪っぴきだったから、一人ぼっちにされても魔法や道具の扱いは嫌でも慣れることになったんだっけ。
一人でもこなせる様に、昔のあなたのような駆け出しを応援できるようになった自分をこれでも自慢に思ってる。愛想の悪さは治らなかったけどね。

いつからか辺りにデータのような英数字が見えはじめるようになった。
皆の視界と擦り合わせていくうちにそれが本来この世界では見えない数値として存在していることを知って。

それでもあなた達と出会った日々がゲームの世界だと、
今までの日常が非日常だと、気づいたのは本当に最近のこと。

「噂……は知らなかったわ。
 でも消えてしまうのは、そうね」

本来この世界に生きるものにとっての視点がひしひしと伝わる。
消えてしまう、もう一度繰り返しても違和感のある言い方だった。

「その通りなんだと思う。
 痣がこのままだったら私はこの世界からいなくなる。
 ……他の人も私と同じかどうかはわからないけれど、きっと」

女神の言う理に触れないだろうか、声は震えたが痛みは訪れなかった。
あなたには正直に話したい。それでも禁を破るのは怖いしあなたに天罰が狙うのも嫌だったから、言葉選びは慎重になっていた。

「アンジュの気持ちを踏みにじりたいんじゃない。
 私だって会えなくなるなんて嫌だよ!」

「だけど、……私はここに居たらだめなの」
  
「この世界から消えないといけないの」

それは死にたいという諦念でもなく。
世界の外へ行きたいという願望でもなく。
どこか切実な祈りのようにあなたへと伝えられた。

「温かい宝石なんて、実用性もあるしすごく良さそうですね。より詰めることができたら冬場は儲かりそうです」

女性的な感性よりも商人的な感性が先に出てしまうのは、良くも悪くも後者の技能が伸びた影響か。
南国育ち故に寒さは少々苦手なものの、旅をするようになってからはあまり気にならなくなっていた。

――自分を含むこの世界の住人の多数は、きっと転生者の認識する『ステータス』を理解できない。
ただ何となく『こういう分野が得意』という一種の適性検査のようなものだと思っている。
それに従うも従わないも個人の自由だ。人生とはボードゲームのように効率的にあるものではない。
このようにして一人一人に人生があり、傷を作れば痛がり、不運に見舞われればこの世を去る。
件の『噂』はふわっとしているけど、ただならない事だというのは幼げな頭でも理解できていた。
我々にとっては不運で、彼女たちにとっては幸運だとしても。

「それなら私が……」

自分ならば救う手立てがある。消えることを許容しないことだってできる。
でもあなたは否定しながら、されど人生を諦めたというわけでもなく。
自分とは違う方向を見ているような気がした。一体何が見えているのか自分には分からない。

「……出来る限り、私はあなたの意志を尊重したい。希死念慮や破滅願望……とは違う気がしますけど。
 それに今すぐこの場でどうこうなんて手段は私もとりたくありません。なので今は不問にします。
 きっと気が動転しているだけなんだと思いますし……カリナさんは私の大事な友人ですから。
 何をしてでも私が救います」

それに、他の選ばれた人たちも同様ならば、救わなければならない。
自分は薬師だから。命をつないで助けるのが仕事だから。

【人】 薄荷 アンジュ

>>64 エリー
「はい。色々貰いに来る方は多いのですが、外傷で大きいのだと火傷、裂傷で駈け込んで来る方もいらっしゃいます。
 あとは解毒薬に頭痛薬、お腹の薬と内側から効能のあるものが殆どですけれど。
 一般の方以外にも冒険者を相手にすることも多いので、だんだん見慣れて来ています」
(74) 2024/01/28(Sun) 12:34:15

【人】 薄荷 アンジュ

「嗚呼そうだ。痣といえば――私も特に気にはしていませんでしたが――何か痣を通して痛みがあったり違和感がいつでもあれば仰ってくださいね。
 鎮痛薬くらいなら出せますし……症例としても気になるので」
(75) 2024/01/28(Sun) 12:36:41

【人】 薄荷 アンジュ

>>78 エリー
「なんと魅力的なご提案。よろしければ是非お願いします。
 多方面での評価を得られれば私としても助かるので……ご紹介する形で繁盛できればお互いに良いこと尽くめですね。
 エリーさんは良き人柄、良き商人です。よろしくお願いしたいです」
(79) 2024/01/28(Sun) 15:25:09
祭りの賑わいで隠された裏側。
聖女の祝福を賜った証である聖杯の形の痣を、静かに撫ぜる。

「聖女様のお気に入りになるのは大変だね」

他の参加者にも現れた痣を光らせ、祝福をより強いものとする。
それが聖女から自分たちに与えられた密命だ。

「……そっちはどうかな?やりきれそう?」

【人】 薄荷 アンジュ

>>81 ロキ
「お、おぉぉ。聖女様に賜りし証を侮辱するような意図は無かったのですが。
 診たことのない作用が現れると流石に気になるサガと申しますか……」

意地悪なロキの声にぷるぷると瞠目して委縮した。

「だからこそ気になるもの、なので。
 ……はい、その時は是非いらしてください。それ以外のことでも何かあれば相談に乗りますので」
(87) 2024/01/28(Sun) 17:58:23

【人】 薄荷 アンジュ

>>82 エリー
差し出された手を握って返した。商談成立の握手の瞬間はちょっとだけ息を呑む。

「分かりました。入用のお薬も教えていただければ見繕います。
 お時間がある時でしたらいつでもご案内しますので……といってもここでは露店形式ではありますが」

ちゃんとした土地と店を持って構えるのは、資金も何もかもが足りない。
とはいえ店先にならば多様な薬を置いているから、来ていただく方が都合が良かったりもするけれど。

「物はともかく人を見る目は……これから鍛えることにします」

 素材の品質を見極めるために目を肥やしたけど、悪人にのせられたことは今まで無かったから。
 そうならないように気を付けたいものだ。
(88) 2024/01/28(Sun) 17:58:39
「言うと思った」

あなたの体に触れようと手を伸ばしても空を切るばかりで。
あなたの心に触れようと言葉を尽くしても木霊するばかりで。
虚像をすり抜ける刺すような冷気を感じているのはきっと私だけ。
ひとつ。またひとつ。
一緒に居れば居るほどにすれ違うような気がした。
そのどれもが劇的なひとつでなくとも、積み重なって隔たりを生み。
そうして何者も入る隙の無かった筈の距離は、一人分よりも広い空虚が占有してしまった。


それでもか細い糸を切らないで居るのは、あなたと二人きりの時間が女にとって孤独のどん底だったから。
あなたは世界で祀られる聖女だけれど、私の世界はあなただけだった。


──思う。
あなたと私は『ずっと一緒』だと祈った言葉は置き去りにしてきて良かったのだろうか。
なんて。帰るのを望んでいるのは私の方なのにね。

「一緒に?リッカってそういうことできるの?」

無邪気な言葉に大きく首を傾げた。
毎度のことながら今回は更に突拍子もない。
時間だとか、他人の目だとか、そもそも何をすれば良いのか。
疑問は尽きない。
だからだろう。また"いつもの"だと先入観が本当に無邪気か判別させなかった。

「はあ……私が考えることじゃないよね。
 リッカだったら何でもアリなんだろうし。
 いいよ。一緒に行こう」

疑問を隅に置けばあっさりと了承。
誘いそのものは断るつもりは無かった、というよりは諦めていた。
無意識にまるで頭を撫でるかのように持ち上がりかけた腕が止まってだらんと垂れた。
たとえ相手が正真正銘の聖女でも子供のお願いには弱いのがファリエという女だった。

【人】 薄荷 アンジュ

>>91 エリー
「勿論です。こっそり教えていただければ問題ないので。
 そうですね……まだ祭り開始まで日数はありますから……明日適当なタイミングで来て頂いた方が良いかと。
 薬屋はそれほど人が来ることはないと思いますけど、本格的に始まる前にしておきたいので」

こうして店同士の繋がりがあれば、エリーの店や商品を買うことも相応にあるかもしれない。
持ちつ持たれつとはかくあるべきだ。

「頼りになりますね。未熟な身ですがそうならないようにしたいところですが……本当に困った悪人と契約を交わしてしまったら頼らせていただきます」」
(94) 2024/01/28(Sun) 19:48:27

【人】 薄荷 アンジュ

>>92 >>93 ロキ
「……? はい」

首を傾げていると、あなたの身体がすぐ傍にあった。
小さな足が瞬間的に後ずさろうとして……囁かれた声に停止する。

「……うわさ、ですか」

どこか引っかかりを覚えて肩を窄めた。
困惑を浮かばせてあなたの眼を見ていた。
(96) 2024/01/28(Sun) 19:55:37

あなたの前に姿を見せるようになって幾年。
無邪気に振る舞い笑う聖女。
けれど、その手を求めたことはない。

今も同じ。
1度持ち上がりかけたその手に疑問を抱くこともなく。
ただあなたがその提案を
受けて
くれたこと。
それがどうにも嬉しいようで、やんわりと目を細めている。


―――この世界をつくりあげた聖女。
望めば何だってできる。
 だけど、ただひとつだけは叶わない。


きっと造作もないのだろう。
あなたが誰にも不審に思われないように、ともに祭りに参加するのなんて。
決して夜しか姿を見せることのできない聖女ではないのだ。

ではどうしていつも夜にしか姿を見せないのかなんて。
その答えを知るのもまた、この聖女当人だけ。

 


「 …… ファリエ 」

「 絶対 、やくそくよ ? 」


鈴の鳴るような声がいう。
だからと絡めるための指が持ち上がるでもなかった。
そんなものを絡めずとも、交わしてしまえばそれは約束に変わりない。
……そしてあなたは、この約束に応じてくれると思っている。
"デート"を承諾してくれたのと、同じように。



「魔女ちゃん頼りになるぅ。番犬お役御免だぁ」

もうこうなったら三頭身くらいに自分を改造して、
使い魔とかマスコットポジション狙っていくしかねえ!

「表立って言いにくいこと。
 ねえ、魔女ちゃん、生活音と思考から判断して、
 もしかしたらだけど今、
 早速誰かとデート始めようとしてない?」

【人】 薄荷 アンジュ

>>99 エリー
「分かりました。でしたら……商業通りにカフェがあるので、そちらでも良いでしょうか。場所はここから――」

そう続けてカフェの場所をあなたに伝えた。

「信用も資金も足りていない若輩ではありますが……そう言って頂けるのは嬉しいです。私は良い先輩に恵まれました。
 期待して貰えるくらいには、頑張りたいです」
(101) 2024/01/28(Sun) 21:54:02
女にとってそれは然程特別ではない。
特別な関係だからこそ、普通。
まだ変わらないでいる部分はあなたの望む言葉を紡ぐことができた。
紡がれた細い糸が結び目をつくる。

「うん。約束よ」

もう腕を上げることもない。
簡単な提案は簡単な口約束で済ませた。
まるで念押しのような言葉にも聞こえて違和感を覚えつつも。
女は聖女とともに祭りを楽しむこととなった。

教会に呼び出された日に、祝福を受けた者たちの中で女は思い巡らせていた。
果たして彼女には望みというものがあるのだろうか。
女は望みがあった。
時間とともに変化しつつも、望みをあなたに投影してきた。
世界にそれができるにはあなたしか居なかったから。
人間らしく自分勝手に傍に居た女は、あなたに感謝する気持ちも皆無じゃない。

あなたの考えを問うた事は今まで無かった。
一方でいつもこうして密やかにパズルを組み立てるような時間で代替する。
どうして己のところにだけ現れるのか。
信仰心に篤い者は他にも数えきれないほど居る筈。
全能の聖女の気まぐれなのか。
それとも満たされる何かを求めているのか。
ちっぽけな人間の尺度でしか図れない女にとっては、そんな思考も堂々巡りになるばかり。
約束の日まで結局いつものように、まあいいかと不揃いのパズルを放り出して終わった。

「あっはは、まさか!
 ちょっと遊びに出かけるだけだよ。
 別にお互いに何も本気じゃないでしょうし」

「……それと……もしおませな妖精でばがめをするようなら、
 今からでも強めに引っ叩きに行くけど?」

生活音と思考ってどこまでわかっちゃうのかな?
揶揄されることよりそっちが気になる乙女心。

「ヒェ!! 嘘です親し気に出て行った感じ見てました。
 実際通信してる内容しか聞こえてきませんが、
 念のため俺様ちゃんオフラインモードに移行します!
 魔女ちゃんSir!」

直接打撃が飛んでくる距離ではないのに、
この身体になってから久しく感じたことない看破到来。
来世は蛙かもしれない。蛙化男子。

「ま、こっちもデート中だからお互い様だし、
 明日には俺様ちゃんバラバラに分解されてるかもしれないから。
 その時は組み立てよろしくって言いたくて」

そのとき二人で組み立ててくれたら早いなって。

【人】 薄荷 アンジュ

>>102 エリー
「ありがとうございます。あ、朝から待っていただかなくても大丈夫ですけど……ああでも、露天への案内やお薬の事を考えたら早い方がいいので、朝の方が合理的かも。うん……それでお願いできれば」

冗談だろうとは思ってもそう真面目に返してしまう。大人相手というのもあるけど、礼節あってこそ商人たるものだから。
そこへ真面目な考えに接続してしまうのもユーモアがない、と自認している。

「は、はい。なにとぞ、よしなに!」
(103) 2024/01/29(Mon) 1:28:59
「滅多な冗談言うものじゃありません!
 びっくりしちゃったでしょ〜?
 魔女のプライベートは素敵な秘密が多いんですよ」

まるで春麗かな調子。
それでも萎凋の力を扱う魔女となれば、
寒気を送り込むことなど容易い。のかもしれない。

「えっ、分解されちゃうの?
 野暮用で古代文明や遺跡のこと学んでるとはいえ、
 例えばオートマタとかのことはちんぷんかんぷんよ?」

単純な仕組みだといいけど。
専門は植物なのに何だか金属っぽい頼み事が舞い込むこと。

「……こんなこと言ってるのに、私を救ってくれるの?」

大事な友の目的は痣を光らすことではなく救うこと。

「ごめん、正直仲違いするのが怖かったから。
 そんな風に言われると、やっぱ嬉しい。
 言ってることぐちゃぐちゃだよね」

その意思を汲むには私は自分の意思を曲げられず、
否定し拒絶するにはあなたの心が酷く純粋に見えてしまっている。

「私は……」

私が救ってほしいのは。
本来此処に居るべきだった子。

一先ず大きく息を吸ってから片手をあなたに伸ばしてその手に触れようとする。

「皆が私と同じかはわからないけど。
 似たようなことを考える人はいるかもしれない。
 むしろ、救いの言葉を無視して攻撃してくる人がいるかもしれない」

「だからその……情報、共有とか。
 出来る限りで、私もあなたの救いの手助けをさせてほしいの。
 痣が光らせる覚悟は今の自分にはないけれど、一人で頑張らせるのも嫌。
 ……虫がいいかな……?」


くすり、と。
笑んだ聖女は、くるり。その身を翻す。


「 ――― ほんとうに たのしみ! 」


無邪気そうな声が鳴って。
次の時にはすう、と空気に溶け入るように消えてゆく。
本当にあっという間に、
その姿はその場からいなくなっていた。




「 またね 、ファリエ 」


姿なきまま、その声だけがあなたの耳へと届く。
それを最後に、聖女の気配はどこからも消えてしまっていた。

夜更けの街。
凍えそうな冷たい夜だけれど、この日雪は降らなかった。
ただ、寝入る子どもたちから、すやすやと小さな寝息の音だけが聞こえているようだった。

「カリナさんは別に、たぶん……悪いことをしているわけではないでしょうから」

何か理由があってそう言っている。
勢いだけじゃなくて、何かがあるからそう口にしている。
言えないけど抱え込んでいるものがあるのは伝わった。

――勿論、神託を戴いたからには使命は果たさねばならない。
少しだけ、自分勝手な順序を付けるだけ。
気落ちする彼女の手が自分の手に触れられた。
あなたよりも色濃い手は未熟で細いはずなのに、あなたの手は自分よりも小さく見えた気がした。

「……それは、そうですね。何かがあって荒事になっては私に勝ち目はありませんから。
 あの中には戦闘に慣れた人もいますから、カリナさんの言う通り情報が欲しいです」

あなたを利用する形になるけど、願ったりかなったりだった。
一人でも多くの情報提供者がいれば救う人がより増やせる。
――それは一方的で、優位なものだけど。

「そんなことはありません。お力を貸してくれるのなら百人力です」

あなたに触れられた手にゆっくりと自分の手を添えて、小さく微笑んだ。

「えー、でもカワイイ女の子とテレパシー繋がってさー、
 二人の秘密共有してぇとかなったら、
 俺様ちゃんも男の子としては
 期待していい場面だって思ったんだけどなー。
 おかしいなーフラグどこだろう」

ワンチャンあると思ったんだけどなーワンチャンだけに。
オーケーオーケー、そういえば"魔女"という生き物は"秘匿"で強くなるんだっけか。

「いや、今のとこ大丈夫だった。
 むしろこっちがバラバラにしちゃうかも。
 オートマタはちんぷんかんぷんでも、
 人間については多少理解あるから
 バラバラにしても治せたりしちゃう? 魔女ちゃん」

今相談されてることを一番荒っぽく解決しようとしたら、
目の前に居る"彼"、バラバラになっちゃう事態なんだよなー。

「ないない、詩人の唄の聞きすぎですよ。
 テレパシーができるからといって、
 相手が秘密を守る保証なんてないじゃない。

 お花に内緒話する方がよっぽどいいわ!
 或いは、もっと好感度が上がったらどうかしら」

今はあからさまにノーチャンらしい。
秘め事、お呪い。魔女がそういった類に強いのは違いなく、
頗る呑気そうに見えて、魔女の自称は伊達じゃない。

もしかしてもう荒事に巻き込まれてる?

 ……生き物ならまだ手に負えるかもですけど、
 人間がバラバラになったとき必要なのは、
 魔女の手じゃなくて聖職者たちの祈りだと思うわ」

蘇生にしろ葬送にしろ、だ。

「間に合うならすぐ向かうけど、大丈夫かな。
 できればあまり無茶しないでほしいのだけれど……」