人狼物語 三日月国


148 霧の夜、惑え酒場のタランテラ

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視点:



[どの話題の合間だったか
どぶろくの話題を出したのよりは後だったと思う

褐色の肌、ターバンの男性の言葉を小耳に挟んだ

 
『戦争で村が焼かれた時』
 ……そわっとした感覚が一瞬項を駆け上る。


アタシは村を焼く大きな“仕事”は請け負ったことはない。
その結果が齎すであろう哀しみに目を瞑り
そう、あえて“仕事”と言おう。

ギョクトの部隊は……もしかしたら…あるのかもしれない。

ギョクトは“陽忍”。
派手で、大きな“仕事”もこなし、各地に名を遺す。
対して“影忍”は名を記さない。

怖れられることも厭わない。
『ギョクト』の部隊が来る
──むしろ、それを聞いて逃げてくれればいい。


しかし、シノビの部隊は国の駒である。
個人の感情は許されない。
“無我”、といえば聞こえはいいが
心を殺すことが是とされる。

母国にとってはギョクトは『英雄』(功績)
敵国にとっては、ギョクトは『大罪人』(悪行)

 
けれどもアタシは知らなかった。
歴史の中に埋もれた
『メルヴェイユの大罪人』の真実を。
まさか自国の中で、そんな汚名を自ら被る、
勇気ある哀しい人がいることを]**


[世の中は広くて大きくて  
 
楽しくて
哀しい
]
  


 [ わるいゆめを みた ]

 



             [ そう信じていたかった。 ]

 


 [ これは 公に知られている

             美しい王女の話である。 ]
 

 
[ ───王様と妃様の間には、
  三人の子どもがおりました。

  二人の王子と、一人の王女。
  
  皆、御二方に似て容姿端麗でありましたが
  王女様は、その中でも特段美しく。

  金糸のような色に絹のように滑らかな髪
  コバルトブルーの海より鮮やかな瞳
  噂伝いではありましたが
  国中が彼女の美しさを知っておりました。 ]
 

 
[ ようやく両手を使い歳を数えるようになったころ
  王女様は剣を選びます。
  自分のことを守る大切な剣。

  選ばれたのは水色の髪が特徴的な
少年
でした。 ]
 

 
[ 夢を捨て、王女様に仕えることになった少年。

  王女様と少年の仲が深まるのには、
  かなりの長い、長い時間がかかりました。

  少年が青年へと成長し
  王女ではなく、一人の少女として
  王女のことを見続けようと決めてから


  時が経ち、指を折り返し数えて、
  王女様12の誕生日を迎えた後のことです。─── ]
 

 
[ ────いつものように、
  青年に甘い笑顔を向けて町へと向かい
  喧騒の中でも美しい花を咲かせていたお忍びの王女様。

  "貴女が振り向く場所へ私がいよう"

  そんな騎士の誓いはあっけなく、
  破り落とされてしまうのです。 ]
 

 
[ どれほど御本人が
  忍びたいと言っていても、一国の王女。
  まさか本当に忍んでいたわけもなく、
  護衛は近衛騎士以外にもおりました。

  安全な環境にいた。
  間違いのない時間だったのです。

  ですが。 ]

 


[ 彼女は騎士たちの前から姿を消しました。 ]

 


[ 王女様の美しさに目が眩んだ賊が、
  禁じられた魔法を使って
  王女様を攫ってしまったのです。

  手がかりはほんのわずか。
  辿れるような魔法に長けた者を
  探すにも時間がかかります。

  悠長にしていたら
  王女様は二度と帰ってこないのではないか?
  そんな不安が、王室中を襲いました。

  突如として消えた王女様。
  王様へ報告に駆けつけたのは、
  彼女の近衛騎士─────では、ありませんでした。

  彼女の近衛騎士も、居なくなっていたのです。
  「 必ず見つけてくる 」

  そう伝えて貰うよう、言い残して。 ]
 


[ ───そうして二人が消え、
  1週間ほど経った頃。
  
  水髪の近衛騎士は、王女様を背負って現れました。

  騎士は確かに、誓いを守ったのです。

  幸い、王女様はずっと気を失っていたのか
  以前とお変わりのない様子で
  また国民達の光となりました。

  王女様を助け出した騎士は、
  その功績を持って罪を免れることにもなったのです ]
 


                  [ 幻想:終 ]**

 ― ■年前 ―

 「じゃあさようなら」



[人生最後に聞いた言葉がそんななんて
 あんまりじゃないか──── ]

 

 
 ……ぁ?


[気づいたら崖の下。
 一体どれ程気を失っていたのか。日が、眩しい気がした。
 ゆっくり体を起こす。]


 生きて……る、のか?


[信じられない、といった風に周りを見渡す。
 胸に受けた筈の傷がない。
 血だまりが己のいる場所に見える。

 体は、おそらく動物に持っていかれたのだろう。この場で見つかる事はなかった。
 もしかしたらその後、人の味を覚えてしまった狼の討伐依頼がギルドに入ったかもしれない。]


 
 ……! 
 アイシャ!



[どうして助かったとか気にするのは後にした。それよりも、何よりも愛娘が危ない。
 あの女は彼女を、娘をどう扱うかなんて
 わかったものじゃない。

 体がやけに軽いのに気づかず。
 その場を飛び出した。]

 

 
[そうだ、薬草を持って帰らなくては。
 急いで崖の上に、
何でもないよう登れたのに疑問をもてなかった。それだけ余裕がなかった。


 先日取った場所になくて、奥深くにもぐって
 木々は冒険者時代の身のこなしでかわした
 魔物が一体も自分の元に来なかったのには僅かに違和感があったが、時間が惜しかった。

 探して、探して探して探して

 時間の経過で起こる筈の空腹も、眠気も
 何も感じないのに気づかない。


 やっとで見つけた時、空がどれだけ色を変えていたとか分からなくて
 
 上手く手に掴めないのにイラついて
 魔法で草を刈り取って、手にした
 その手からすり抜けたのに気づかない。]

 

 
[ どんだけ余裕がなかったのか。
  己の手から全て、すり抜けていたのに
  全く気付かなった馬鹿野郎だった。 ]

 

[それから走った。
 不思議と息は切れなかった。


 走って走って走って走って……]


 おじさん! おばさん!
 悪い! 今帰った!
 アイシャは! アイシャは無事か!?

 変な女剣士は来なかったか?


[いつも通り宿屋に入って
 落ち込むようなおばさんを
 旦那さんが背をさすっていたのを見た。

 彼らは、こっちを見なかった。]


 おい、遅かったの怒ってるのか?
 悪かったよ、ちょっと色々あって

 なあってば!


 


  [ その手は、すり抜けた。 ]

 

 
   ────── あ?



[己の手をまじまじ見る。
 何の変哲もないように、見える
だけの
手。
 もう一度、目の前の夫婦を見る。

 自分の存在に欠片も気付いてない
 彼らは優しいから、無視などする筈がない

 彼らは、通常通りに宿の営業を行っている

 客であろうか。
 誰か、知らない人が通り過ぎた。
 自分の体をすり抜けて。]



 ……待ってくれ


[目の前の世界に、分厚いガラスが張られたかのようだった。
 寒くなんて感じないのに、体が震えた。]

 

 
 
 ────なん、だ、よ……これ


[ふらり、と体がふらついて。
 その場にあった壁すら通り抜けた。]


 ……俺、は 
俺は────



[はた、と気付いて大急ぎで二人で使っていた部屋に走っていった。
 あれからどれだけ日が過ぎていたのだろう
 娘はどうなったのだろう。

 頼むからいて欲しい。
 そんな願いは簡単に打ち砕かれる。]



 アイシャ!!



[宿代を少しでも浮かすために、空いた時は従業員もしていた。アイシャも働いていたのもあって使わせて貰っていた従業員用の日当たりの悪い部屋。]

 

 
[そこで二人で生きていた。
 寒い日は二人で寄り添って眠ったり
 一緒に美味しいレシピを考えたり
 家を買ったら何をしようかって
 そう、最近あげたリボンも喜んでくれて……

 この扉を潜れば
 娘がいつも通りに「お帰りなさい」と
 笑ってくれると信じ
たく
て───── ]

  



[ 声は、返ってこない ]


        [ 二人がいた生活の証すら
             何一つ残っていなかった。  ]

 

 

 ……あ、あ、あ、…………

 ああああああああああああああああああ
 ああああああああああああああああああ




[その慟哭は、誰にも届かない。]


[その日から、一人の亡霊は彷徨い続けた。
 アイシャ、アイシャ、と愛娘の名を呼びながら。
 呼び続けながら

 街中を彷徨い、気付けば外に出て
 居る筈もない場所を彷徨い迷い

 彼女の名をただただ呼んだ
 どこを探せばいいのかもわからず
 人間らしい感覚を失った彼は
 人間らしさをどんどん失くして

 ただ妄執一つがその存在の足を進め続けた。]

 

― 半年前 ―

[その日も、小さく
 彼女の名を呼びながら歩いていた

 気力はとうにすり減っていた
 限界なんてとうに超え、それすらも気づけない
 そのままだったらおそらく
 最後に残った己の記憶すらも零した事だろう

 そうして、本当にただ彷徨う亡霊……
 下手をしたら悪霊に堕ちたのだろうか?


 気付いたら、その場にいた。


   霧の夜にだけ開く酒場  ]


 ……酒場、か

 
[その扉は死者を拒まない。
 娘はいないか。それだけを求めて扉を潜った。

     そうして、彼はこの場に辿り着いた。]
 
 

  
[それは、間違いなく幸運だったと思える。
 そうでなければ娘の前に立てるような
 自分でいられなかった。そう思うから。

 ここで飲んで、食って
 知り合いに再会してさ

 人間の感覚を思い出して
 久しぶりに笑えて

 本当に、本当に感謝している。]**  

 

【人】 騎士 ノア


[ なんで、の理由を話してしまえば、
  芋ずる式に全てが曝け出されてしまう。

  大きな嘘をつくのは、苦手だ

  疑問を抱かせた言葉は聞こえていても、
  その問いに答えることはなく。>>1:239 ]



   する気はないんだ…
そっか。

   じゃあ、一緒に楽しく飲んでよ。
   


[ 良いゴースト
  悪いゴースト そんな言葉があるならきっと
  彼は多数の人間にとっては良いゴーストなんだろう。

           僕にとっては、都合が悪い
           都合が悪いからこそ、
           助けられている。 

  内心なんて、届かなくて正解だ。 ]

 
(28) 2022/05/25(Wed) 13:26:21

【人】 騎士 ノア



    ───よく分かったね?
    結婚するんだって


[ どうだったか?>>1:240
  男は更に誤解を招く発言を重ねた。


  結婚するのは仕える姫の方だ。
  もうすぐ16。
  ここよりら少し遠くなる、
  西の国の王子のもとへ
  彼女は嫁いでいく。

  そうなれば、長かった近衛もお役御免。
  魔法国家の王女を貰うというのに
  魔法を嫌う王だというから、
  国に入るには一定の魔力以下
  でなければならないそうだ。


  単に門が狭い国であるのに加えて、
  就労に永住となれば
  魔力の高いこの身には無理難題。 ]

 
(29) 2022/05/25(Wed) 13:26:25

【人】 騎士 ノア


[ 一口ずつ、ワインを舌に乗せていく。

  更に誤解されても、されなくても、
  アルコールの苦味広がり回る舌で
  ぽつぽつとそんな話をしただろう。

  ───それだけなら、別によかったんだ。
  本当の憂いは… ]



   ……こんなんだからさ、現実って厳しいよね。


[ …冒険者を辞めたのも、姫に仕える為だった。


  表情に映る憂いは、
  10年来の喪失の色だけに見えていただろうか。
  見えていたらいいと思う。


  誰にも話してはいけないのだと、
  口固く、閉ざされている。
  だから直接的なことは、何も言えない。


  席に座ったあたりで、一つだけ。
  踏み込む前、
  他愛ない例え話のように軽く、
  質問を飛ばした。 ]
 
 
(30) 2022/05/25(Wed) 13:26:34

【人】 騎士 ノア



   ユスターシュはさ、
   もし、自分の大切な人が一生幸せに過ごせるとしたら

   その為にどんな事でもするのは、
   間違ってると、思う?



[ 合わさった視線>>1:240

  恐らく僕が向けていたのは、
  狂気にも近いようなある種の
熱情


  それを感じ取られたかは、分からないが

            彼が守るべきもののために
            理不尽な死を経験したのなら


   この迷いの答えに近づけるのかもしれないと。 ]

 
(31) 2022/05/25(Wed) 13:26:42

【人】 騎士 ノア



   …だよね。


[ 踏み出した足は、底へ着く。

  未練。
  強い思いを抱えたまま死んだから、
  こうしてこの世に居るのだろうか。

  深く考えをまとめる前に、
  願いを聞くチャンスは訪れた。>>1:241 ]
 
(32) 2022/05/25(Wed) 13:26:46

【人】 騎士 ノア



   聞くよ。…話してほしい。

   まだ、仕えの身だから…
   すぐに叶えられることかは、
   聞いてみないと、わからないけど

   ───
僕は何も断らない

   それが生き方で、守るべき信念だ
   約束するよ。

 
(33) 2022/05/25(Wed) 13:26:49

【人】 騎士 ノア


[ 幼い頃から続けてきた生き方。
  まして知人の頼みとあれば
  聞かない、という選択肢はない。

             それも生きる理由になるのなら

            
  真っ直ぐに夢を見ていた頃からは
  
せた瞳になってしまったかもしれない

  ただ、根底に棲む心だけは
  変わっていないと 逸らさずに目を見つめ返した ]**
  
(34) 2022/05/25(Wed) 13:26:52
騎士 ノアは、メモを貼った。
(a7) 2022/05/25(Wed) 21:13:40

騎士 ノアは、メモを貼った。
(a8) 2022/05/25(Wed) 21:13:54

― ここまでのこと ―

戦争が終わり、育ての故郷へ戻るとそこは瓦礫の山だった。
人は誰もおらず、既に捨てられてから大分経っていたのか、辺り一面の草原の若草が村を覆い始めていた。

とはいえ、近くの中都市で、あの辺りの村はほぼ全て壊滅状態で打ち捨てられていると聞いていたので、そこまでの驚きもなかった。
また、自分もほかの国でそんな村々を見ていたので、こんな風になっているかなあ、という想像のぎりぎり範囲内に収まっていた。
その日は、誰も居なくなった村で、一晩を過ごし、村で亡くなったであろう皆の冥福を祈るつもりだった。

そしてその夜。
自分は彼らの姿を見たのだ。
恐らく亡くなったその時の姿のまま、その場所に佇む彼らの姿を。

ぼんやりと光る彼らは、何とも酷い姿をしていた。
しかし、彼らのことは近くの街では話題にすらなっていなかった。
そもそも崩壊した後にまでわざわざ訪れる者はほぼ居ないような僻地の村だったし、怖いもの見たさの肝試しにしても、戦後の今、こんなところに来なくても人がたくさん死んだ場所は腐るほどあった。

そして、慌てて村に残るぼんやりとした影を見て周っていた中に、彼女の姿があった。
彼女は誰かに乱暴された後に死んだらしい。
酷いあざの残る顔に顔を近づけると、見開いたままの目で呟く声は、「石…」だった。

心当たりがあった。
旅の行商人から買って、彼女にあげた、緑色の輝く石。
彼女の瞼だけでも閉じようとしたが、手は空を切って彼女の顔には触れる事ができなかった。



   
「貴方は明日外出しない方がいいでしょう。

    
何故なら、命を落としてしまうからです。」


  

   

   
「貴方が住んでいる国は三日後に
びるでしょう。」


  

その後も足繁く村に通った。

わかったのは、まず、彼らは昼間も地味に見えていること。
ただ、光らない分夜よりぼんやりとし、さらに侵食してくる草に紛れて大分見えにくい。

そして、放っておいただけで姿を消す者もいること。
例えば村の大婆さん。
婆さんも足が悪く、家の中で、ほぼ焼けこげて死んでしまったようだが、自分が村に来てから半年くらいの後、ふと姿を見せなくなった。

あとは、恐らく亡くなった者全員がゴーストになっているわけではないこと。
皆の様相を見るに、恐らく自分が死ぬと悟ってから、実際に死ぬまでが長かった者がゴーストになっているように見受けられた。

そんな風に村を訪れ続けながら、自分は「石」を探していた。
恐らく村を破壊した敵兵に持ち去られた、輝く石。
全く、砂浜から特定の砂粒1つを探すような話だ。
しかし、そんなことも、たまには実現することがあるものだ。

ある港町の小さな質屋で、まさにあの石を自分は見つけた。
値段は、自分が行商人から買ったときの10倍近くにもなっており、持ち合わせは全く足りなかった。
さらに、じっとその石を見て居た自分に店主の老人が言う事には、その石は既に質流れしており、早ければ翌日にも海の向こうに運ぶ予定だということだった。

どうですか、今ならその値札の値段でもお売りしますよ、という老人の頭を咄嗟に棚に並んでいた青銅の像で殴った。
老人は無言で床に倒れ、そのまま動くことはなかった。
自分は石を掴み、店から出ると、そのまま足早に町を去った。
今に至るまであの港町の近くにすら戻ったことはない。

何も考えずに、ひたすら歩いて、馬車に乗って、また歩き続けて、故郷の村へと向かった。
まるで戦争の時のような気分だった。
けれども、もう戦後だということも分かっていた。
もう、戦時のルールは失われた場所で、自分がしてしまったことも自覚していた。

そして村に着いたその日の夜、「石」を彼女に捧げた。
彼女の投げ出された腕のある空間に、掌に置くように石を持ち上げた。

次の瞬間、ぼんやりと光る彼女の周りに穏やかな風が吹き、次の時には生きていた頃そのままの彼女がそこに立っていた。
顔の痣も、破れた衣服もきれいに治っている。
彼女は自分に鮮やかに微笑んだ。
そして一瞬のうちにその姿は掻き消えた。
後には崩れた壁だけが残り、少しの後石が崩れた煉瓦の床に落ちた。

石はその近くに埋めた。
石はもう、彼女との美しい思い出だけを思い出すものではなくなってしまっていたからだ。
埋めた後、振り返って村を見回した。
まだいくつもの、ぼんやりと光る影が、点々と散っていた。

あれから村に残る彼らの話を聞き出して、いろんな場所を巡って、また村に戻ってを繰り返して、もう何年が経っているだろうか。

今となっては自分の村は近場で売られる地図にすら載っていない。
しかし、最初に訪れた時と比べれば大分暗くなった夜の故郷の村を訪れるとき、自分には一抹の寂しさと共に満足感も生まれるのだった。**

 
 
  外出すると命を落とすなら、
  外出を避ければいい。
  命と天秤にかけても避けられない外出なら、
  もう腹を括るしかないですね……。

  占いが外れて、外出しなくても死んでしまったら、
  それはもうどうしようもない事でしょう。
  占い師に文句を言うのは筋違いです。
 
 

 
 
  住んでいる国があと三日で滅びるなら……。
  その三日で安全な場所に
  避難することが出来るかもしれませんし、
  出来なかったとしても、
  人生最後の三日間を大切にできる。
  占いが外れて滅びなかったら、ラッキーじゃないですか。
 
 

 
 
 
  でも、僕は船と共に溺死したわけではないんです。

       船が沈んだその後に、―――病死しました。

 
 
 

 
 
  船が沈んだ後に、
  「貴方はこれから死にますよ」って占われていたら、
  僕はほっとして、
  命を運命に委ねることができたと思います。
  少しは苦しみも、和らいだのではないかと。

  あの時、命を落としたのは、
  運命がくれたなけなしの慈悲だと思っていますから……。

 
 

 
[高熱によって生じた悪寒に体を震わせ、
 口内は血痰で鉄の味がした。
 病魔に侵された肺では、まともな呼吸もままならず、
 永遠に止まらないのではないかと思う程に、咳が出た。

                  


           海で
まれ、
               海で
ち、
                   海で
んだ。


 けれど僕が最期に乗った船は、夢と愛を乗せた船ではなく、
 絶望だけを積み込んだ船だった。]

 


[ あの話の真実は1つ。
  姫は賊に攫われたこと。


            嘘が1つ。
            騎士が姫を救い出したこと。 ]
 


[ ほんの僅かに、手が届かず。
  耳障りな嗤い声と共に
  私の目の前で彼女は攫われた。


  …追わなければ。
  首を飛ばされるだけでは済まないなんて
  罪と罰の行く末など今はどうだっていい
 
  守ると誓った
  己の意思で、その日まで命を全うすると

  嫌いだった
  嫌いになんてなりきれなかった
  一番近くで6年もの間、見てきたんだ

  失いたくない
  守らなければ
  助けなければ
  駆られる衝動の正体を僕は知らない まま。 ]

 


[ 薄い魔力の痕跡
  途中、途中、途切れ
  迷いながらも、追いきった。

  暗雲立ち込める趣味の悪い敵のアジト
  まさかダンジョンの中層部から
  通じているだなんて。


  一歩を踏み出す度に
  ざり、と土の軋む音がする。 ]



                 …けて、



[ 遠く
  微かに耳が拾いあげたのは、
  か細い女の子の声。

  ぷつり、と 慎重の糸が切れて落ちる。

  うだうだとしている暇はない
  考えを纏めるより先に、
  声の聞こえた方へ駆け出した。

                  愚かだった。 ]


[ 辿り着いた部屋に居たのは
  賊のリーダーらしき男
  縛られて床に転がされている主

    姫様と幾分も歳の違わないだろう
    二人の少女 2人とも違う国の姫だ


  認識するまでの数瞬の間に
  
一人の少女の首が持ち上げられる
 ]
 


[ 目が合った。
  にぃ、とリーダーらしき男が 嗤う。

  石より冷たい、非道へ堕ちた者の眼。

  ───動けない
  逸らすことも 閉じることも出来ない


  悲鳴が 耳をつんざいた。 ]

 


[ ─────赤。赤。赤。赤。
赤。


  少女の
い服を穢し 
  床に滴り落ちて広がっていく

  視界の全てを埋めつくした。


  僕の顔を見た瞬間に、刺したのだ。

  けたけたと厭らしい嗤いが、響き渡る。 ]


  「 ────お勤めご苦労!
    よくやったね、君が一番乗りだ!


    ほら、そっちの子だよ
    返してやんな、わりと優秀な騎士さんにさ 」


[ …何を言っているのか
  分からなかった。  一番乗り?
  
  困惑の収まらないうちに、
  下っ端らしき男が姫を…ヴィオラを、
  連れて 返してきた。

  酷く怯え 震える身体を抱き締めて
  欠けてしまいそうなほどギリ、と
  歯を食いしばって未だ嗤う男を見る。 ]

 



    ………一体、何が目的なんだ


  
[ 犠牲となった一人の少女の
亡骸
を前に
  呟けたのはそんな一言だけ。
  

            遊んでいたのだという。

  三国の王女を攫って、
  誰が一番に助けに来るか、と。


  もう帰っていいと言う男に、
  逃がすかと食いかかりたい気はあった

  …訓練された騎士を欺くほどの魔法の使い手
  ヴィオラを守りながら
  この数を相手にするのは、…無理だ。
  逃がしてもらうしか、選択肢は無い。 ]

 



   ……その子は、どうするつもりだ



[ ──それでも、生きているもう一人を
  見捨てて帰るだなんて そんなことは出来ないと


  男を睨みつけた。

  男は変わらず、嗤っていた。 ]

 



 「  殺すよ?

    当たり前だよね
    騎士くんが無能なのがいけないんだからさ
    この子の騎士は来てないんだ。

    …なぁに、その目。文句でもあるの?
    なら、君のお姫様

  この子の為に  犠牲にする? 」


 


[ 絶望の二択
  主に奪われた生存。

  …事の顛末だけを記す。
  少女は二人共生き残ったが、
  騎士の活躍によるものではない。


  一人の少女が
  その身を差し出すことによって、見逃された。


  私はまた、何も出来なかった。 ]

 


[ その日から 王女は毎夜 
  悪夢に魘されるようになった

  魘されても大丈夫だという彼女を
  見ていられなかった。


  私は王に全てを話した。
  年若い少女が 身体を犠牲にすることを止められなかった
  自分の力ではどう足掻いても 誰かが死んでいた

  それでも
  命を持っても償いきれないことをしたのだ、と。

  王は言った。 ]
 


  「 ──…忘れさせなさい。

    増える罪は 私も共に背負おう 」



[ 人の記憶を操る禁術。

  王女を蝕む破瓜の記憶を奪った。
  彼女の数年の記憶までも、犠牲にして。

  …それより現在に至るまで
  僕は 奪った記憶による悪夢を 見続けている。 ]

 


[ 吐くような痛み 胸を突き刺す下卑た視線


  許して  


      ゆるして


    赦して



           
ころして。
 


  声が頭の中を木霊する

  返してしまえば きっとこの
痛み
は消える
  返せるはずがない 
  それが
で 彼女の幸せになるのなら ]

 


         [ 自由になりたい

  
         
幸せでいて欲しい


  なら もう
  抱えて死ぬしか、ないじゃないか ]


 [  開かない扉に縋り着いた昼
    誰にも話すことの出来ない記憶

    相反する悩みの答えは
    未だ 見つかっていない。  ]**

 



  命と天秤にかけても避けられない外出。

   
そう、セシリーだってわかっていたはずだ。

   
予想なんて、いくらでもつけられたはずだ。


          
覚悟の上だった、というの?
    

  


  続く彼の身の上話を、私は聞いていた。
  確かに、事前に船が沈むと伝えられていたら
  そもそも乗らないって選択だってあったかもしれない。
  

  でも、同時に思ってしまう。
  それは先延ばしに過ぎないかもしれない。とか。

  運命を覆した結果
  更に大きな災厄が待っているのかもしれない、とか。

  知らない方が幸せだった可能性とか。
  どこまでも考えすぎてしまう。

  変えた結果もたらされるものと
  変えない結果を天秤にかけようとしてしまう。
 

 
── 続・あの日の話   ──


[崖から足を滑らせ落ちた行商人一行の一人を
 救助しようと現場に向かった俺は、
 無事に目当ての人物を見つけた。
 それは女性のように見えた。

 長いブロンドの髪。
 遠くから見てもわかりそうな濃い目のメイク。
 大き目のネックレス、腕輪に指輪などの装飾品。

 酒場の女性が着るような深紅のドレス。
 
胸元が大胆に開いたそれからは

 
逞しい胸板が見える。

 
肩を出したそのスタイルは、

 
よく見ると結構な幅があるように思う。

 
首元に目を移す。

 
なかなかの太さに喉仏が見えるような。


 
いや、これは────…… 

 

 
(…………男性か?)

 

 
「ああ騎士様っ!助けにきてくれたのね!
 あたし、すっごく怖かったの……。」



[口を開く。低音が響く。
あ、これ男性だな。

 アリアから降り立ち、近くに駆け寄る。]


  もう大丈夫ですよ。
  怪我は無いですか?
  ……いえ、足を負傷しているようですね。
  痛みはどうでしょうか。とりあえずは応急処置を。

  仲間の皆さんは無事なので安心して下さい。
  さぁ、ここから上がりましょう。
  天馬に乗って一緒に───……
 

 
[少し、考えた。
 目の前の人物は男性だと思われるが、
 服装や口調はどちらかというと女性寄りである。

 ならば女性対応をするべきなのか?
 そして相手は足を怪我している。
 踏み台化ではなく担ぎ上げるべきだろう。
 触って、持ち上げ良いものかと伺いを立てる。]


 
「えっえっ……それじゃあ、あたし……
 
お姫様抱っこして貰うのが夢だったの!

 

 
[俺は夢を叶えた。
 重くない?との問いかけに
 
羽のように軽いですよ
、と答えながら
 岩のような重さを体験した。
 寒くはないですか、と外套をかけて渡した。
 落ちてしまわないように、彼女(?)を俺の体に
 しっかりと紐で縛り付けた。
 対応は何も間違えていなかった筈だ。

 
間違えては、いなかったのだが。



  念のため、後ろからもしっかりと
  私に掴まっていて下さい。

  …………っ!?
  いえ、あの、そこまで強く抱きつかれると
  鎧が割れてしまうので、もう少しソフトに……。
 

 
「あたしの名前はロザリンド。
 ねぇ白馬の騎士様、貴方の名前を教えてくれる?」

 

 
[ロザリンドは情報通だった。
 次の日には家に御礼の手紙が届いた。
 それに返事をして、そこで終わる縁の筈だったのに。]


「エアハート様って、
 お父様が騎士でお母様が商人なんですって?
 まるであたし達の関係みたいですね♡
 馴れ初めってどうだったんですか?
 もしかしてあたし達みたいな運命的な出会いだったかも。」


(何故、親の事を知っている)



「エアハート様がアリアちゃんと一緒に食べられるように
 人参のスコーンを作りました♡
 あたしの事をもっと好きになってくれるようにって
 おまじないをかけたので是非食べて下さいね。」



      
("もっと"とは??食べ物は粗末にしませんが

             
呪文の効果は無かったようです)

 

 
[じわじわと、攻め込んでくる。
 ついに家にまでやってくるようになった。
 "俺は恩人なだけ"そう言い聞かせて対応していたが、
 同時に何か身の危険を感じていた。

 ────そしてついに来た。]


「エアハート様、あたし……
 そろそろちゃんとした関係を持ちたいんです。
 本当はエアハート様の方から
 切り出して欲しかったのだけど
 
どうか、あたしとお付き合いして下さい。