人狼物語 三日月国


79 【身内】初めてを溟渤の片隅に【R18】

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視点:


飴湯5票

処刑対象:飴湯、結果:成功

[犠牲者リスト]
該当者なし

決着:龍人族の勝利

村の更新日が延長されました。

村の更新日が延長されました。


[なにを?どこに?とは聞かなかった。
 全く、これだからこの恋人は恐ろしい。
 その言葉、あとで後悔すんなよ?と
 眉尻を下げて笑って、離させた。

 熱を持って質量を増すそれを刺激すれば、
 あられもない声がその唇から漏れて落ちる。
 それがどうしようもなく興奮して、
 愛おしくて、もっと、もっと、聞きたくて。
 つい耳に悪戯すれば、予想外にこれまた、
 いい反応が返ってくるから、
 思わず意地悪く口元が緩んだ。

 だけれど、続きは一度、中断。
 謝る雨宮の頭をそっと撫でた。]

 




   謝んないでよ、
   俺、めちゃくちゃ嬉しかったんだから。
   雨宮が、甘えてくれたの。
   ───こうして、触れてるのも。
   

[それに、何も用意してないってことは、
 今日会って、それで急に、欲しくなって
 くれたってことでしょ?と続けると、
 ふ、と微笑みを浮かべる。]



   最高。
   嬉しいし、大歓迎。


[まあ用意があればあったで、嬉しかっただろうし
 結局己は彼といられるなら、触れられるなら、
 ただそれが、幸福なのだ。]

 



[ちゅ、と髪に唇を落として、一歩下がる。
 屹立は萎えてはいなかったから息を吐いて、
 少しでも落ち着かせてから仕舞おうと背を向ける。

 ごくごく、小さな声が響く。
 なくてもいい、なんて誘い文句にぐ、と
 唾を飲み込んで]


    ───だめ


[とはっきり告げる。
 負担がかかるのなんて、目に見えてるし。
 なにより、大事にしたいのだ、本当に。
 だから少しだけ待ってと微笑んで。]

 



[なんとか見た目、違和感のない程度になってから、
 急いで玄関を飛び出した。

 ドラッグストアまでの道のりは間違えない。
 正直そういうコーナーに行くときは迷ったけれど
 見つければ急いで手に取って、レジへと直行。
 やる気のないアルバイトのやる気のない手つきに
 ほんの少し苛立ちを覚えながら、
 袋に放り込んで店を出た。
 どんだけヤりたいんだよ、といわれたって
 仕方ない。でも、さっき欲を無理やり
 抑え込んだのだ。一分一秒でも早く、
 もう一度彼に触れたかった。]

 



[扉を開いて戻れば、彼はまだベッドに
 突っ伏したままだっただろうか。
 もしそうなら、そっとそちらに寄っていく。
 暗い部屋、一歩ずつ確実に歩んで。]


    ───雨宮


[呼びかけて、ベッド脇に座ると、
 優しく髪を梳いた。]


   ………めちゃくちゃ急いで買ってきた


[と肩をすくめ、首筋にキスを落とす。
 顔がこちらに向くならば、ふにゃ、と
 眉尻を下げて安心したように笑って。]
  



   …ムード、なくなったけど
   もういっかい、触ってもいい?


[許可を乞い、得られたならば、
 手に入れたばかりのローションの封を切る。
 ゆっくりベッドに上がって、彼の体の下に
 座り直すと、そのままバックルに手をかけようと。]*
 
  


[ 飾らない、素直で優しい言葉をくれる。
髪を撫でる手も、静かであたたかくて。
頭を撫でられると心底甘やかされているなと思う。

こちらも素直になれてしまうのだから
困ったものだ。


それにしても。
こちらが狼狽えるほどの欲をぎらりと
瞳に湛えたと思えば、へにゃりと崩れた
あどけない相貌に、彼の表情はくるくると代わる。

稚拙な口淫に眉を寄せる一方で、
己の反応に口元に浮かぶのは意地悪な笑みで、

視線が逸らせなくなってしまう。
離れられない、ずっと、もう、  堕ちてる。 ]
 


[ 自暴自棄になっているわけではない。
ただ遠ざかる熱がとても嫌で、
離れる時間が惜しかった、ただそれだけ。

そうだな、浮かぶのは、一秒も離れたくない、とか
そんな今時だれも書かないようなベタな台詞。

そんな感情を紡いで言葉になったのは、
無くてもいい、というものだったけれど、
きっぱりと否定されて。
すこしばかり焦燥感の残る微笑みに胸がぎゅ、と詰まる。

う゛、と唸ってその背をそっと見送った。 ]
 


[ ばたん、と閉まる扉の音。
急に静まる室内。
体を動かせばシーツが擦れて、ざ、と鳴る音が
驚くほど大きく響いた。

十分、くらいだろうか。
この間に、やったこともないくせに、
受け入れる準備をしておくほうがいいのか、
なんて頭をよぎって、

けれどベッドから降りることが出来なくて、焦る。

だんだん冷えていく身体と対照的に
頭の中は破裂しそうで、薄い布団を引っ張って、結局
その中に潜り込むように突っ伏していただけだった。]
 


[ 扉の音が再び聞こえたのは、思っていたより
ずっと、ずっと早かった。]


   ……おかえり


[ 顔を出して、ベッドの横に座る彼の顔をそっと見る。
また、髪が梳かれ、その言葉に目を細めた。]


   めちゃくちゃ、早かったな、


[ 首筋に唇が触れる。 ]
 


[ こちらからも身体を少し伸ばして、
手で頬に触れて、キスをひとつ贈ろうか。
ドラッグストアで真っ昼間から、急いた様子で
買うにはなかなか勇気がいるだろう、
示された愛に、感謝を込めて。

無言で頷けば、またベッドにかかる、重みと熱。
バックルにかかる手に、あいた時間で少し
落ち着きを取り戻した雄に、
あっさり簡単に血液が集まってしまうから。

己も手を伸ばしてその身体に触れる。
一度乱れて、またきちんと整えられた服装は己の為。
それが嬉しくて、けれど自分だけが上半身
露わになっていることに焦れる。

肌が恋しくて、背中から洋服に手を入れて、

脱いでよ、と呟いて。]*
 


[一秒も離れたくない、なんて口に出されていたら
 すぐにでも貪るように口付けてしまっただろう。
 唸られるだけでも、十分に愛おしくて。
 ああもう、本当なら離れたくない。
 だけど、負担はかけたくない、から。

 なるべくはやく、戻りたかった。
 急いで帰ったその部屋の中に、
 雨宮の「おかえり」が響いて、それだけで
 ぎゅうっと心臓が締め付けられて、
 ああもう、好きだ、と叫びたくなる。

 首筋に触れさせた唇。]
 




   ───ごめん。


[一言、謝ったら、今度は彼の方から
 唇に触れて。頬を包んだ手をまた絡めとり、
 手首に、指先にキスを落とした。
 ゆっくりとバックルに手をかけて、
 許可を求めてまた、そこに手を添えれば
 柔らかなそこが硬さを帯びていくのがわかるから
 こくりと唾を飲んで、瞳を見つめた。

 解いた手のひらが、己の体に触れて、
 服の下に潜り込み、背中を撫ぜれば
 ぞくぞく、と腹奥から迫り上がる欲。
 耳元で囁かれたそれに口端を上げれば、
 耳殻を舌先でなぞり。]
 




     ん。───待って。


[と微笑みかければ、ぐっと裾を掴んで引き上げる。
 そのまま脱ぎ捨てれば、ベッド下に落として。]


    これでいい?


[首を傾げて、もう一度唇を奪ってしまおう。
 ぐ、とまたひとつ、肩口に力をこめて、
 彼のことをベッドにひき倒せば、
 唇の合わせをノックして、さしこんで、
 そこ口内の甘さに酔おうと、
 深い口づけを繰り返す。]
 





   っ…はぁ、 っ
 


[…もう一回、と告げて呼吸を奪う。
 くちゅ、と唾液のまざる音がこぼれる。
 片耳を軽く塞ぎながら続けて。
 口蓋をなぞり、舌を吸った後、ようやく離す。]


   っふ、 …じゃあ、続き、するな?


[と眉尻を下げてから、今度こそバックルを
 緩めて、デニムを下ろそう。
 そこに熱を感じながら、下着の上から
 先ほど彼がしてくたように口付けて、吸う。
 そのまま吐いて仕舞えば唾液がこぼれて
 彼の下着を濡らした。]

 


[止められないなら、そのまま下着をおろして
 固く熱を持ったそれに触れてみようか。
 まずはここで一度気持ちよくなってほしくて
 数度優しく扱く。
 その熱が徐々に溜まっていくのが分かれば、
 片手で封を切っていたローションの蓋を開いて。
 手のひらに出し、軽く温める。]


   つらかったら、すぐ言って


[と首筋にキスをしながら菊口に塗り込め、
 軽く指先だけ触れさせて。]*

 


[ なにも謝ることなんてないのに。
思えば出会ったころから、変わらない。
己のわがままに、無茶振りに、
眉尻を下げて、けれど笑い声を含んだ声で、
ごめん、と言う。
その声に、ずっとずっと救われてきた。

頬に触れるのが好きな己の指がまた絡め取られ、
そのまま手首、それから指に唇が降る。

何度もそこに贈られた口付けの意味。
込められたロマンチックな真意など知らないけれど
ぞくぞくするほどの欲望と執着が、
晒した剥き出しの急所から血管を通って全身を巡る。

─── 喰われて本望。
 ]
 



    ンっ……


[ 耳朶をぬるりと舌先が伝う。
ぴく、と思わず首を竦めた。
詰めきれなかった吐息が漏れる。

綺麗な笑みとともに脱ぎ捨てられた服が、
ぱさりと音を立てた。
露になる肌に、こく、と喉が鳴る。 ]


   ……ムカつく、いー身体。


[ 唇の端を歪めて持ち上げて。
肩を押されてベッドに沈む。
呼吸が塞がれてしまう前に、
にやりとそんな称賛を。 ]
 



   ……ふ、 は、ッ……


[ 彼の舌を迎えて、腔内を明け渡す。
己から貪ることはしないで、深くなる口付けに酔った。
頬の内側や口蓋をざらりと撫でられれば、
一人で冷えた身体が、即座に熱くなる。
甘い熱の波に浮かされるように、
後頭部に手を入れ柔らかな生え際の髪を弄んだ。]


   っは、……ん、


[ 息継ぎが出来たのは一瞬だけ。
もう一回、と告げられまた呼吸が出来なくなる。
酸素を求めて今度は自分からも舌を伸ばした。
深くなる水音に、うまく吸えない酸素に、
頭がくらくらする。 ]
 


   ─── ッ、う、……ン、


[ 耳を塞がれると荒い吐息や声、
それから唾液が混じり溢れる音、それが全部
頭の中で反響する。
逃げ場のない焦燥感に包まれて、
けれど痺れるほどの興奮に、デニムに阻まれた
下半身が痛い。

ようやく唇が離れ、は、は、と短い息を整える
隙もなく、ベルトに手が掛かる。
分厚い布が開放されて、そこに口付けられれば
背が跳ねた。 ]


   っァッ!? 
   まて、ん、っ、て、ううぅっ!

 


[ 吸われ、暖かい息が吐かれ、下着がじわり濡れる。
きっと彼の唾液のせいだけではない。

下着を脱がせようと触れられた手に、
いまさら羞恥が沸いてほんの少し抵抗するように
自分の手を重ねた。
けれど結局のところ止める事は出来ない。

こもった熱が空気に触れて震える。
優しい手つきで扱かれれば簡単に張り詰める屹立は
先端に滴を滲ませて。 ]
 



   っ、は……ァ……んんぅ!


[ 待ち侘びた刺激がようやく与えられて、
気を抜けばすぐに達してしまいそう。
込み上げる吐精感を飲み込んで抑え込む。

潤滑剤を手にする動きにぎゅっと一度目を閉じて
ゆっくり開いた。
ひたりと後孔にふれたそれは、冷たくは無くて。
わざわざ温められていたことを悟る。
気遣いに驚き嬉しいと思う片隅で、
慣れた様子にちょっと妬いている自分が居て、
我ながら笑ってしまう。 ]
 


[ 告げられる言葉に小さく頷いた。
襞に塗り込まれる滑りに、ぞわりと身体を這うのは
快ではなく、不安と不快。
人に触れられることのない、もちろん自分でも
触ることなどないそこを解される感覚は、

恐怖に似た、背徳感。


声を漏らさないように奥歯を噛み締めて耐える。
腕で顔を覆った。 ]
 


[ とは言え触れているだけで済むなんて思ってない。
長い指が、侵入出来るように身体の力を
抜こうとするのだけれど、
上手く出来ているかはわからない。
代わりに口を開いた。 ]


   だい、じょうぶ、だから、

   お前にされんなら、なんだって、嬉しい─── *

 



[ 我慢してるかと言われれば、否定できず。

  けれども本当はもっと解してから一緒に
  なりたかったのもあるから焦っているとも
  彼は答えたかもしれない。

  次以降は、我慢をしなくなると
  彼は思っている。
  だってもう初めてではないから。     ]


    っ、……ん……


[ 顔が近づき瞳を閉じる彼女が
  ひどく可愛くて、中に入れている指が
  一瞬悪さをしそうになったけれど
  ふと我に帰り、彼はゆっくりと
  その指を抜いていくことになるのだった。

  悪さをする様になるのは多分もっと先。
  彼女が慣れてくれたあとの話。     ]





    っ、ぁ……


[ 動き始めたけれども、彼女の中はまだ
  異質なものを完全には受け入れていなくて
  少し慣れたとはいえ一回一回のストロークが
  ぎこちなさを覚えてしまった。
  
  けれども、彼女の聞かせてくれる声が
  段々と柔らかくなるのと同じように
  中も柔らかく、彼を受け入れてくれ、
  気持ちよさに拍車がかかってきた。     ]






    ………俺色に染まってくれるん?
    嬉しいわぁ…今日から少しずつ、
    俺の好きなこと覚えてくれる?


[ 彼女の些細でもない大切な一言に、
  彼は笑みを浮かべてみせた。
  それは、次回への布石。
  今日はまず
 『大切な人と肌を合わせることが好き』
  を覚えてもらうことで、終わらせようと
  彼はこのとき心に決めて、
  我慢ができなくなってきたので
  徐々に今までよりも腰を動かすスピードが上がり
  彼女に気を止められなくなって気がした。   ]


     そろそろ、きそう……
     俺のこと、受け止めてくれる?


 *


[ 彼が我慢しているともしわかれば
  我慢しないで、と言ってしまったのだろうけれど。
  
  余裕なんてなかった私は、
  我慢しているとか焦っているとか
  そんなことは全くわかっていなかった。 ]
  


[ 時々聞こえてくる吐息から
  潤さんも気持ちいいのかな、なんて考えて
  うれしくなって。
  二人で気持ち良くなることがどれだけ幸せか
  彼が動くたびにその身に刻んでいった。    ]


    好きな、こと?
    潤さんがよろこぶことなら、
    なんでも覚えたい……
    たくさん、おしえて…?

  


[ ふわっと微笑んで、知らないことを
  もっと教えてもらおうとお願いすれば
  彼の動きははやくなっていく。    ]


    きそ う…?
    うん、受けとめる……
   
    すき、だいすき…!

[ 潤さんの言葉が何を指すのか
  頭ではわかっていないのに、
  体の方はわかっていると言わんばかりに
  蜜を溢れさせて、彼に絡みつく。
 
  目を合わせて、
  この行為も、潤さんのことも
  全部好き、と伝えたくて言葉にしたけれど
  言葉足らずだから伝わったかどうかは
  私にはわからなかった。          ]*
 


[いい身体だと、雨宮は褒めてくれるけれど
 自分ではそうでもないと思っているし、
 別に鍛えてるわけでもない。
 背が高いだけ、雨宮より食ってるから、
 厚みがあるだけの、つまらない身体。

 けれど、彼が褒めてくれるから。]



   ───好きだろ?


[なんて調子に乗った問いかけもしてしまうのだ。
 何度も角度を変え、深さを変えて繰り返す
 口づけに、互いの唾液と呼吸を混ぜ合わせれば
 半ば性急にそのデニムを引き下ろして、
 軽く撫ぜながら、準備を進めていく。
 嬌声が上がるたびに、ずく、と下腹部に
 熱が溜まるのがわかる。]

 


 
[手慣れていると言われたならば、
 気のせいだろうと笑って返す。
 本当に、使うのは初めてなのだ。
 ───とはいえ、繋がりたいと思って、
 その手のサイトで調べていたから。
 ローションは手のひらで温めてから、というのも
 そこで得た知識のひとつだった。

 滑りを塗りこめながら、指を軽く埋める。
 彼が奥歯を噛み締めて耐えているのが
 わかればこまったように眉尻を下げて]
 




   …気持ち悪い?


[と問いかけをした。
 それでも、健気に返ってくる答えに、
 一瞬手を止めて、唇を寄せ、キスをしようと。
 できるならば、口づけを繰り返して、
 歯を強く噛み締めぬよう、解いて。
 その声と表情を見ながら、少しでも、
 快感を拾ってほしいと願いながら。]

 




    っん、 あま、みや、


[合間、吐息まじりに名前を呼ぶ。
 答えの前に塞いで、少しだけ指を進める。
 頑なだったそこも、徐々にほぐれていけば、
 第一関節までを埋めた。

 そのままくちくちと広げるように動かしつつ、
 さらに第二関節も埋めようと奥へ。
 さて、どこだろうか、と探る。
 もちろん、探すのは───前立腺。
 もうすこし奥に進めて。ゆっくり続いた場所に
 彼の背が跳ねるならば、口端を上げて。]
 





    ───ここ、すきなんだ?


[と意地悪く目を細めた。
 否定されようと、肯定されようと、
 そこをぐり、と撫でて。]*

 


[ そんなことないってお前が思ってても。
広い胸板、適度に肉がついて、厚みがあって。
健康的にしっとり水分を含んだ綺麗な肌で。

問いかけに、眉をちょっと上げてにやと笑った。]


   ─── 好きだよ

 


[ ほんとにこんなところに触れられて
解されるなんて、好きな奴にじゃないと
一億もらっても無理だと改めて思った。
張り詰めた全身をぞわぞわと虫が這うように
違和感が絶え間なく伝う。 ]


   …… っ、良く、は、ねぇ、……な、


[ 困ったように眉根を寄せて問いかける瞳に、
顔を覆ったまま答えた。
ちょっと笑ったつもりだったけれど、
上手く出来ていたかは分からない。
それでも己の口から続けて出たのは、
彼の全てを肯定する言葉だった。 ]
 


[ 唇が降る。名前を呼ぶ声。
不快感に耐えて歯を、唇を、噛み締めることが
出来なくなって、身体が震えた。

答える口を塞いで宥めるように贈られる口付けに
神経をぜんぶ委ねられたらいいのに、と思った。

ローションの助けと彼の口付けで、
少しずつ指が埋まっていくのがわかる。
痛みはさほどでもなくて、それでも異物感と
圧迫感が酷い。 ]


   ……ッは、ァッ……


[ 大きく息を繰り返し吐いて、耐える。
苦しい顔は見せたくない。
そう思うのに、いつもはあまりかかない汗が
じっとりと全身に吹き出して、重い。 ]
 


[ ずっ、と深さを増した指が、そこを広げるように動く。
ぐちぐちと鳴る音が、耳を塞ぎたくなるほど卑猥で
頭が焼き切れて溶けてしまいそう。 ]



   っ ぁ゛…ッ!!



[ 探るように蠢く指が、ある一点を掠めて
身体がばん、と跳ねた。
性器を直接刺激されるのとは違う、
脳髄に直接電気を流されたような。 ]
 



   ─── ぅ、あっ、それ、やめ、っんんん!



[ 伸ばしていた膝が曲がる。
後頭部をシーツに押し付けるように背が撓る。
前立腺、という名前も、そこを刺激することも、
調べていく中で知識としてはあった。

けれどこんな、迫り上がるような刺激だとは知らない。
異物感に萎えかけていた雄に
一気に血液が流れ込むなんてことも、知らない。 ]
 



   す、きじゃ、 ッ、 ねぇっ、
   っんん、ううッ─── !


[ ごり、と撫でられるたびに閉じられない口から
声と、飲み込めない唾液が溢れる。

そんなに簡単に見つけられるとも思ってなかった、
得られると思ってもなかった、

過ぎるほど強烈な、これは確かに快感の種類で。

はっ、はっ、と短い息で全身を震わせながら、
どうにかやり過ごそうとした。
ぎり、と、握った拳の中、短いはずの爪が刺さる。 ]
 


[ 眇めた瞳で、縋るように見やった矢川の顔は、
─── 意地悪く笑んでいて。

楽しそうな表情に、一層ぞくりと走る。
恐怖と、快感と、被虐心に似たなにか。 ]


   きっつ、それ……むり、やばい、
   耐えんの、しんどくて、

   ─── お前の、欲しくなる、



[ 譫言みたいに勝手に口をついて出てくる言葉。
声は、熱を帯びて、少し掠れて。 ]*
 


[調子に乗って言ったのに、素直に返されれば
 今度はなんだか照れてしまって、
 困ったように笑いかけた。

 正直、負担をかけている自覚はある。
 間違いなく、苦しめている、自覚は、ある。
 それでも、濁った声をこぼしながらでも、
 息を吐きながら受け入れてくれる様は、
 どうしようもなく愛おしくて。

 はやく、見つけて良くなってほしい。
 苦しみがすこしでも、和らぐように───
 この行為が、彼にとって心地よいものに、
 いい思い出の一つとして、きざまれるように。]

 



[だから、その体が大きく跳ねた時、
 思わずこくりと唾を飲み込み、それから
 ふ、と目を細めて、口端をあげたのだ。
 好きなんだ、と問い掛ければ、否定が返ってくる。
 裏腹に、素直に反応する中は指を
 ぐぐ、と締め付けて、離そうとしない。]


   だけど…中は、よさそうだよ?


[とすこしばかり意地悪に首を傾げれば、
 もう一度、そこをぐり、と刺激した。
 視界に入った胸の飾りに視線を落とし、
 そっとそれに向かって舌を伸ばせば、
 ちろ、と舐めて。そのまま柔く舌と上唇で食む。

 同時に中をほぐすのは、続けて。
 びくびくと跳ねる体を、しっとりと汗ばむ様子を
 愉しげに見ながら、反応を確かめていれば、
 揺れる視線とかち合った。

 唇が動くのが、見える。]
 




   ───



[譫語みたいに、掠れた声が響く。
 半ば乱れた息遣いに、ぺろりと舌なめずりして、
 飲み込んで、息を深く吐いた。]

 





   …っ…まって、もうすこし解させて。
   …今のまま、挿れたら怪我させそう。


[そう告げて、指をもういっぽん増やす。
 菊口を広げるようにくぱくぱと動かして、
 また、蕾を愛撫していけば、ベッドに着いた手で、
 彼の髪を優しく撫でる。

 なかをほぐす指が気持ちいい。
 内壁の柔らかさ、体温、ぐちゅぐちゅと
 響く水音と、愛しい人の嬌声。
 痛いほど、興奮で猛りに血が集まるのがわかる。

 それでも、もうすこし、もうすこし、と
 指が3本入るようになるまで、我慢して。]
 



[しばらく。
 ぢゅぷ、という音と共に引き抜いた指が、
 水分でふやけて皺になっていた。]


   は、 っ…雨宮、大丈夫…?


[そう柔く微笑みかけて、汗で張り付いた
 彼の髪をそっと避ける。
 勃ち上がった形がわかるほどに、
 大きくなった自身をそっと開放して、息を吐く。]


    ………まだほしいって、
    おもってくれる?


[と笑んで、ゴムの袋を手にとれば、
 封を切る。先端から被せて下ろしていけば、
 すっかり緩みきったそこに、ひたあてて。
 ちゅ、と額にキスをした。]*

 



   ─── だっ、から、そういうこ、と、
   ……ッんんぅ!


[ 身体が勝手に収縮するから、連動して中も
締まるのだろうか。
とにかく自分で意識して締め付けているつもりは
毛頭ないので、首を傾げて愉しげに告げられる言葉に
顔から火が出そうで、それに加えて確実に
ぞくりと欲が走る。

優しく穏やかな中に時折ちらりと顔を覗かせる、
捕食者のそれ。
そんな性癖はないと思っているのに
いとも簡単に煽られる被虐心。

胸の頂を喰まれれば顎が上がる。
身を捩って避けようとすれば、後ろで解し続ける
指の位置が変わってしまうから、
また口から喘ぐような声が漏れた。]
 


[ 中のしこりを刺激され解され、胸まで愛撫され、
さっきまで異物感に萎えそうだった茎は
完全に勃ち上がり、先端からは透明な液体が滲んで
つうと伝い腹を濡らす。

不快感が上書きされていく気はする。
それでも達してしまうまでの快感には至らなくて
中から責めたてられる未経験の刺激に耐えるのは
きつくて、苦しいほど焦れる。

もういい、早く、と思うのに、
それはまだ許されなくて。

今更怪我のひとつくらい増えたって構わねえ、と
口にするより先に中を蠢く指が増えた。 ]
 


[ 増した圧迫感に顔が歪む。
髪を撫でる手つきに呻き声を噛み殺しながら。

どうしても触れたくて彼の下半身に
そっと手を伸ばした。

指が中を解す動きを息を吐いて逃して、
ふり払われなければ震える手で
その張り詰めた猛りを下から撫で摩るように扱こうと。]
 


[ さすがに指が三本になればそんな余裕は
無くなって、少しずつ慣れてきたはずの
圧迫感と異物感に痛みが加わる。 ]


   っい゛…ッ!!─── ぅ、っ


[ 確かにそこに痛みはあるのに性器の先端からは
だらだらと滴が溢れていく。
指が中を這い回るたびにぐぢゅ、と酷く淫猥な水音が
響いて、理性が霞んで視界がぼやける。

どれくらい時間が経ったのか。
もう濡れているのが皮膚なのか、器官なのか、
内臓なのかわからなくなったころ。

音を立てて後孔から指が抜かれた。 ]
 



   ……へー、き、 だい、じょ、……ぶ、


[ 気遣う声に乱れた呼吸の隙間から言葉を絞り出す。
見上げる顔は柔く笑んでいて、
己も唇の端を上げようと努力はした。

前髪を避ける手つきに、それが重く感じるほどに
汗を含んでいるのだと気付く。
いつもは汗をかくことがない、
汗腺がどうにかなっているらしい左側まで
じっとりと濡れて。 ]


   ……ほしい、はやく



[ 張り詰めた屹立に彼がゴムを被せる
わずかな時間も惜しいくらい、
笑って問いかける声に食い気味で重ねた。]
 


[ 後孔にひたりと当てられる猛りの大きさに
息と唾液をこくりと飲み込んだ。
薄い膜を隔てても伝わる熱がずっ、と
押し入れられればひゅ、と喉が鳴いた。
息が詰まる。

指とは比べ物にならない質量が狭い隧道を
こじ開ける感覚。
全身がぞわりと毛羽立った。]



   っ ん゛…ッ!!っ、は……ァ……



[ 後頭部がベッドにめり込む。
咄嗟に動かした右手の甲で口を覆う。
薄い皮膚と骨に、ぎり、と歯を立てた。
動きの鈍い左手の指が、信じられない力で
シーツを握った。 ]*
 



[ どうしようもなく、彼女が愛おしい。
  だから、彼女の可愛い表情を
  頭の中に刻み込んでしまいたかった。
  それもあって、いたくゆっくりだったろう。

  そのお陰で彼女には彼の焦りなども
  そこまで伝わらず、終始彼のペースで
  初体験が終われそうな気さえしてきた。 ]


     なんでも、なんていうたら…
     とんでもないことまで
     美鶴さんに教えてしまいそうやわ…


[ だから、ダメだよなんて余裕のない彼女に
  小さな声で語りかけた。
  勿論、彼に取っては嬉しいけれど
  言った通り、とんでもないことまで
  教えてしまったら彼女という人を
  変えてしまいそうな気さえして。     ]






     あ、かんって…っ……


[ 彼女に大好き、と言われれば
  彼は抑えることを忘れて、
  奥まで突き上げてしまうと
  彼女の腰をぐっと押さえ欲を吐き出していく。

  中が落ち着くまで、荒い呼吸と共に
  彼は彼女の髪を優しく撫でる。
  それは、とても至高の行動にも思われ
  彼が落ち着くとゆっくりと彼女から
  体を離して、眠ってしまう前に
  諸々の処理を先に済ませてしまう。 ]





     タオル持ってくるよ。
     ゆっくり休んでて?


[ ちゅ、っと額に口付けを落とせば
  彼女が眠れるように
  体のローションを取るために
  タオルを濡らして戻ってくるだろう。

  彼女が動けなさそうにするなら
  体を拭いてあげて眠る準備を促した。
  彼とて体力を使ったので
  横に並んでぎゅうっと抱きしめて。  ]


     かわええなぁ……

     ほんまに、すき。
     ありがとう、美鶴さん。


   *


[ ダメだよ、なんて言われても
  とんでもないことの想像がつかないものだから。
  ひどく優しく聞こえる声にゆっくり頷くしか
  できなくて。でも、彼に変えられるのなら
  それも構わないような、そんな気すらするけど。 ]
  



     っふぁ……じゅん、さん…っ?


[ 余裕のなさそうな声が聞こえて
  今までより深く突き上げられた気がして
  ひときわ大きく中が収縮するのを感じ取った。
  
それはきっと、大好きな人の精を

  
受けとめようと、搾り取ろうとする動きで。


  彼を受けとめる、の意味がはっきりと
  わかっていないまま彼のほうを見れば
  髪を撫でられる心地よさに目を細めて。   ]
  


[ 持ってくる、と言われて任せるのも…と
  起き上がろうと体を起こしてみようとしたけれど、
  初めての体験は思った以上に体力を
  消耗していたみたい。彼が戻ってくるまで
  動かずにそのままだったから
  彼に体を拭いてもらうことになった。
  
……タオルが擦れただけで

  
少し声を漏らしていたのは…聞かれてたのかな。


  ぎゅうっと抱きしめられて
  終わったらまた少し恥ずかしくなって ]


    だから可愛くはっ…!
    ずるい、潤さんずるいです!
    忙しそうなのになんでそんな体鍛えて…
    それに恥ずかしいって言ったのに…
    私の貧相な胸触ったって、仕方ないじゃないですか!

    
いじわる、いじわるー!

    
でも……

  


[ 小さい声で、彼の腕の中で
  言えなかった抗議を
  
自身のコンプレックスも織り交ぜて

  目いっぱい言って、それでも彼への想いが
  変わるとかそんなことではなかったから。
  最後の一言を言い終えた時、
  私は耳まで赤く染まっていたんじゃないかと思う。

  彼がどう反応したか、全部聞く前に
  私は眠りに落ちてしまうことになる。  ]*
    



[ 時間をかけて、彼は彼女を変える。

  彼がしてほしいことを覚えてもらいたいから。
  けれども、それは普段の状態から
  少し変わるからこそ可愛いのであって
  普段から性懲りもない状態に変われば
  それは彼の望む姿でもなんでもない。

  味を占めたと彼女の体が覚えなければ
  それこそが大正解の道だと、
  彼はどことなく思っている。      ]


     …成長著しいわぁ。


[ 恍惚のため息を落とさずにはいられない。
  髪を撫でられている彼女が
  ひどく可愛くて、彼は口元が緩んでいた。
  この部屋に入ってきた時よりも
  彼女の表情も緩んでいる気がして
  少しでも彼女が慣れてくれたことを実感する。 ]






     そんな声出してたら、
     意地悪したくなるわぁ……ダメだよ?


[ タオルで体を拭いていると聞こえる、
  彼女の甘い名残のある声。
  ふっと笑いながら、体を拭き終われば
  彼は彼女の愛のあるクレームを
  腕の中に収めることにした。

  彼女の胸が貧相だとか、正直どうでもいい。

  鍛えてるのは、彼が甘いものを食べるから。
  スーツを買い直さなくていいように
  最低限でやっているだけなので、
  くすくす笑いが込み上げてしまった。   ]

     そんなこと言われてもなぁ……
     かわええなぁ……


[ クレームを彼に叩きつけたのち、
  彼女は深い眠りの中に落ちてしまった。
  彼の返事は、彼女の耳元にこっそりと。 ]





[ それでも、まだ彼は知らない。

  彼が朝食やお弁当を作ってあげ始めることで
  2人の間に見えることのない壁ができてしまうことに。
  それを乗り越えなければ、
  本当の意味で恋人にはなれいないことに。

  今はただ、彼女の寝顔を見つめて眠りにつくだけ。 ]*





[今更怪我が増えたって、なんて言われれば、
 きっと中を抉る指は余計に執拗になっただろう。
 誰にも傷つけさせたくない。
 それがたとえ、雨宮本人であっても。
 傷も、なにもかもすべてが愛おしいけれど
 それでも、これ以上傷つけるのは絶対に嫌で。
 丁寧に、丁寧に、愛撫を繰り返しただろう。
 
 震える手が伸びるのが見える。
 無理を強いているのはわかっているから、
 彼のしたいようにさせてあげようと
 それを止めることはしなかったけれど。
 それでもその手のひらが痛むほどに
 勃ち上がった雄を撫であげれば、
 簡単に腰が震え、喉奥から呻きに似た声が
 響いて伝って、息を短く吐いた。
 このまま引き抜いて、思い切り貫いて、
 腰を打ちつけてしまいたい!と叫ぶ本能を
 なんとか理性で押さえつけて、
 そこが指3本のみこむまで、繰り返した。]
 


[くた、と体をベッドに預ける雨宮を
 見下ろして、声をかけた。
 しっとりと吸い付くように濡れた彼の肌を
 手のひらで触れるのが心地いい。
 どうしようもないほどの支配欲と
 嗜虐心を押さえ込みながら、怖がらせないよう
 優しく尋ねたつもりだったのに。

 彼の答えが、響いた瞬間、]



  っ  は、


[理性が焼き切れるような心地がした。
 だめだ、 だめだ、怖がらせてしまう。
 痛みをかんじさせたくない。]

 


[腰を、つかむ。
 やさしく、やさしくしないと、でも、
 はやくほしいって、雨宮が望んだんだ、
 そう頭の中にこだまする声を、眉間に寄せた皺で
 何とか振り払って、息を深く吐く。

 ───けれど、抗いきれなかった。]



   っ!はぁッ……!


[優しくゆっくり挿入するつもりだったのに、
 腰は中を勢いよく抉ってしまう。
 薄い膜越しにでもわかる熱と、やわやわと
 収縮し、己のものを包み刺激する肉壁に、
 ふる、と体が打ち震えた。]



   ゃ ッ…ばいっ…!


[背を丸めるようにぐ、と耐えて、また息を吐く。
 掠れたうめきが喉奥からこぼれた。]
 





   ぁ、 まみや、


[名前を呼ぶと、彼がぐ、とその手の甲を
 噛むのが見えたから、その手をはがして、
 シーツに縫い付けて、無理やり唇を塞いだ。
 ガチッと歯が当たったのが、殴られたような
 感覚にも思えて、切れた理性が少し戻る。]


    はぁっ…ン、ごめ、ん おれっ…


[ぐ、と抉ったままのそれを、引き抜くことは
 しないまま、至近距離で見つめる。]
 




    …雨宮、 ッ…
    痛いなら、 苦しいなら、
    俺に、思いっきり爪立ててもいいから、
    噛んでも、いいから、っ
    っはぁ…っ自分だけで、耐えんな、っ…


[そう眉を下げれば、今度はもう一度、
 優しく唇を振らせる。
 ちゅぷ、と音を立てて離し、すこし腰を引いた。]


    …っ…おれにも、教えて、
    雨宮が受け止めてくれてる、痛み、


[な?と首を傾げたら、なんだか泣きそうになって。
 目の前が少し滲むのがわかった。]*

 


[ 指の力が、変わった、と思った。

どんなにもういいと伝えても、
慈しむように宥めるように穏やかさを失わなかった
手が、荒々しく、腰を掴む。
深く吐き出された息に視線を上げれば、
苦しげに寄せられた眉。

どしたの、と、口を開きかけた瞬間。 ]



   っぅぅ!、 ─── …… !!



[ ガツン、と一気に襲う衝撃。
一瞬、目の前が明滅した。 ]
 

 

   ああああ゛……、っ う、あ……ッ!



[ 熱い、焼けた鉄杭を打ち込まれたよう。
ぎち、と内壁が軋んで、背が撓る。
悲鳴じみた声が汚い濁点を混ぜて喉から押し出されて
咄嗟に手で口を塞いだ。

内臓が押し上げられているような気がする。
胃と共に肺まで圧迫されて、空気が全部出ていって、
呼吸すらままならない。

顎が上がって、大きく見開いた目から
生理的な涙が一筋だけ堰を越えるのがわかったけれど
拭うことも出来なくて、
手を外したらまた声が暴れそうで。
はくはくと唇が震えて、全身から汗が吹き出した。 ]
 


[ やばい、と掠れた呻き声に、ちからを
抜こうとするのだけれど、抜き方がわからない。

あれ、呼吸ってどうやるんだっけ、
そんなことが頭をよぎって、ちかちかと目の前が眩む。]


   ────── 、



[ 自分のものじゃなくなったような神経が、
どこか遠くで、己の名を呼ぶ声を、拾った。

みっともない声を抑えるための枷が剥がされて、
シーツに縫いつけられて。

がち、と口腔に固い音と鈍い痛み。
それが飛びそうな意識を繋いだ。 ]
 


[ 唇の感覚。
錆びた鉄の味、いつかの記憶。

ほんの少し、呼吸ができる。
ぼやけていた視界のピントがクリアになって、
睫毛が触れそうなほど近くに、


          ────── 嗚呼。 ]



   ……、ッは、  あ、やまんな、って、

 


[ 犬のような短い呼吸の合間に、言葉を紡ぐ。
自分だけで耐えるな、と、
そう告げられた言葉に、

穿たれた下半身よりも心臓が痛かった。

合わさる唇は、また優しさを取り戻していて。 ]



   ん ぅ、っ ぅ゛…ッ!!



[ 引かれる腰に内側の粘膜を擦られる。
言いようのない刺激にまた弓のように
身体を撓らせながらも、視線はその表情を捉えて
離さない。

いまにも泣きそうに、弛む瞳。
それを見た瞬間、全身を掻きむしりたくなるほど
湧き上がってきたのは、痛みでも、不快でもなくて、


─── ただ、愛しくて。 ]
 



   ……、なくなよー、


[ 絡められた指に、ぎゅっと力を込めた。
少しだけ、きり、と爪を立ててやって、笑う。
瞬きをしたらまた頬を滴が伝った。 ]



   ……や、だよ、 …… お前だって、
   もう、 ッん、 痛い、だろ、───
 


[ みしみしと音を立てるように
軋む身体を無視して、へらりと笑う。


お前が居なかったら、おれの人生なんて
とっくに耐えられてなかったんだよ。
]
 

 

  
    成長……?


[ なんだかとても満足そうな顔をしている
  潤さんが言っている意味は、
  やっぱりわかっていないのだけれど。

  彼と一緒になるのは幸せだったし
  今度は痛くないのかな、なんて思えば
  次の機会がいつかな、とか考えてしまう。 ]
  



    ぅ……ダメって言われてもっ…


[ 人に拭いてもらうのは自分でするのと
  感覚が違うというか。
  それとも散々触られたから過敏になってるのか。
  
  抱きしめられた後の精一杯の抗議は
  潤さんにとっては些細なものだったのか
  笑われてしまってむぅっと頬を膨らませた。

  
こんなに慣れてるなら潤さんはもっと

  
きれいな人とかスタイルのいい人とか

  
料理が上手な人とか大人な女性と

  
付き合ってきたに違いないって

  
そこまで思考が巡りかけて


  
彼から言われるかわいい、が一瞬揺らぐような


  
そんな気持ちには蓋をするように

  目を閉じればそのまま眠りの中へ。
  疲れていたからぐっすり眠って
  朝もなかなか起きなかったと思うけれど
  私が起きた頃には潤さんは起きてたのかな。 ]
  


[ 好きな人をもっと知りたい。
  好きな人のことを知るたびに
  好きな人の傍に長くいるほど

  自分には出来ないことが当たり前にできるって
  その事実を突きつけられた私は、
  勝手に壁を作って、
  燻っている思いを知られないように、と。

  何かを選ぶときだって
  潤さんがしたいようにしよう、なんて
  自分の選択に自信がないのを
  滲ませるような言動をするようになって

  それが潤さんを不安にさせているとも
  大切なものを失うまでずっと、知らないまま。 ]*

    


[苦しいのは雨宮のはずなのに、謝んな、と
 こんなときまで気遣ってくれる。
 でも、どうしたって、なにより、愛しくて。
 更にぐ、と押し込みたくなる本能を止め、
 分かち合ってほしいと懇願した。

 共にあれることがこんなにうれしい。
 こんなに、愛おしい。
 どうか彼の中に、今この瞬間が、
 W苦しかったことWではなくW幸せWと
 刻まれますようにと願いながら。

 もっと、共有して。
 何もかも知りたい。
 なにもかも、教えてほしい。

 どうしようもないほどぐちゃぐちゃな感情の
 着地点はどうしたって、幸福であることは
 確かなのに。痛みを共有して、同時に
 この気持ちも、共有してほしくて。

 ぎゅ、と力を込められた指。
 泣くなよ、なんて笑いながら爪が立てられた
 それに、唇を結んで。]
 





   泣い、 てねぇッ…


[と返して鼻を啜った。]


   無理させてんの、わかってるしっ…
   おれ、大事にしたかった、のにっ

  

[更に無理させた、とこぼすと、
 彼の眉尻は下がっただろうか。

 お前だって痛いだろ、と気遣うその言葉に、
 ぐわ、と腹奥から迫り上がる愛おしさ。]
 




   おれ、は痛くねえ、っ………
   今めちゃくちゃ、幸せ、で、


[特別、だった。誰よりも。何よりも。
 誰の特別にもなりたくなくて。
 誰の記憶にも、残りたくなくて。
 言い訳して誤魔化して、逃げてきた日々に。
 お前が、現れたから。
 教えてくれたんだ。なにもかも。
 それで、与えてくれたんだよ。

 ───俺がほしかった、唯一を。]



[そう、微笑みかける。
 緩く腰を動かした。負担をかけない程度に。
 すると、小さく聞こえるのだ。
 また、体が震えて、脳が揺さぶられる。
 唾を飲み込んで、息を吐いた。]


   痛かったら、苦しかったら、すぐ、言って


[と半ば懇願するように伝え、浅く突く。
 薄く開いた唇を柔く重ねて、何度も、
 何度も離しては重ねて、粘膜を擦り合わせ
 もう一度、浅く、雨宮のいいところ目掛けて。]


  ぁっ…まみや、 ッきもち、 ぃッ?


[数度擦ればそう問いかけて、薄くまぶたを開く。
 その表情がすこしでも、快楽に緩んで
 いますようにと願いながら。]*

 



   わーかっ、た、って


[ がちがちに力が入って強ばる身体が
ほんの少しゆるむ。
泣いてねぇって鼻啜ってんじゃん、と思ったけど
口には出さなかった。
というかこちらの顔こそ涙だか汗だか涎だか
わからないものでぐちゃぐちゃで。
それでも胸がじんと熱くて、込み上げる愛しさを
笑いに変えて、くす、と口角を持ち上げた。 ]


   ……っ、まぁ、 無理はッ、
   してねぇっつったら、あれだけど、……ッは、
 


[ 絞り出すように口から溢れ落ちてくる懺悔に、
これ以上ないほど眉尻が下がった。 ]


   ─── わかってる、
   大事にされてるの、じゅーぶん、
   ……伝わってる、から


[ そっと、囁いて。
爪を立てて握った手を動かして解いて、
下からやっぱりその頬に触れた。
体感したことのない愛しさで、爆発しそうで。 ]
 



   そっか、
   
─── うん。



[ その上、痛くねぇ、幸せだと、
震えるような声で告げられて。
心臓が痛くて、鼻の奥に熱いものを感じて
何か言ったら完全に声が震えそうで、
ただ頷きだけを返した。
なのに堪えきれずに己の視界も歪み出すから。]


   …… かーわい。


[ 誤魔化すように、戯けて付け足した。 ]
 


[ 大丈夫だと伝えたのに、穿つ動きはごく浅くて。
懇願するような声に、とりあえず小さく頷いた。

正直に言えばここで快感を拾うことがすぐに
出来るかと聞かれれば答えに困る。
それでも何度も重ねられる唇、弄る粘膜に
ぞくぞくと高められるそれはたしかに、
不快だけでなくて、悦を含んでいて。

おまけに浅いところにある一点、
さっき教えられたばかりの前立腺をごり、と
抉られれば簡単に身体が跳ねてしまう。]
 



   ……ッふ、ァッ……ぁ゛っ……


[ 淫猥な水音と、は、は、と息も絶え絶えな
自分の呼吸の音と、矢川の声が重なる。
心臓は聞いたことがないくらい激しい音を
打ち鳴らして、自分じゃないみたいな
そうだな、聞くに耐えない甘い声が
喉から込み上げる。 ]


   …… や、ば、 ッ、 それ、っうんん、
   
きもち、い、───

 


[ ぎゅっと閉じた瞼を開ければ、同じように
薄く開いた瞼の下。
俺の、なによりすきな瞳が、そこにあって。
どく、と吐精感が込み上げるのがわかった。 ]



   ……ッは、お前、は、ァッ……
   どう、よ、  っん、う゛ぁっ……、



[ 縋るように頬に触れた手の親指でその形の良い
唇を撫でる。
ひっかけるように、ぐいと引っ張って引き寄せて
そのまま口付けた。 ]



   やばいおれ、も、なんか、めちゃくちゃ
   
しあわせだなって、おもってる ───

 

 


[ 奥まで抉られれば圧迫感とそれなりの痛みに
唸りながら悶える。
ぶわ、と全身が毛羽立って、けれど
萎えることのない熱はどんどん昂っていく。]



   っ、は ……や、かわ、……
   ちょっと、おれ、もう、ッんんぅ───



[ シーツを握ったまま固まっていた左の手が、
ぎこちない動きでその背を追った。
熱の先端には白が交じって、たらたらと竿を
伝って涎のように溢れて。

一緒にイキたい、と譫言のように繰り返し呟く。
それが叶えられたかどうか、
とにかく彼の動きが激しくなったなら、
限界まで背は撓った。
嫌だよといったくせに、結局彼の背中に
微かな傷痕を残して、どく、と白濁液を溢す。

一瞬息が詰まって、ばちんと視界が白く爆ぜた。 ]*
 


[色んな感情が綯い交ぜになって、まとまらずに
 結局何度でも同じところに着地するのはきっと、
 彼のことを愛しているからだと思いながら。
 頬に触れた手があたたかくて、だから、
 今のこの心情を言葉にしたのだ。
 ふざけるように、茶化すように落とされた
 「可愛い」に困ったように眉尻を下げ、
 涙目の彼を見下ろしながら、その眦に口付けた。

 可愛いのは雨宮の方だ。
 ───いや、かっこいいのも雨宮だな。
 そんなふうに思いながら額をくっつけて、
 愛の言葉を紡ぎ、微笑んだ。

 返ってくる。すぐに。

 それが、うれしくて。
 付け足された感謝に、首を軽く横に振った。
 俺も、伝えたいけれど、そうだな───
 それは、あとで。
 きちんと、伝えるから。]

 


[ゆっくりと抽送をはじめる。
 傷つけないよう、痛みが勝らないよう、
 気をつけながら、その快楽を引き出すように。
 問いかけをすれば、甘い声と共に
 気持ちいい、と返ってくるから、
 ぶわ、と下腹の奥が疼くのがわかった。
 嬉しい。愛しい。

 もっと、感じてほしい。]


    んッ…ぅんっ…おれも、っおれ、も
    きもち、ぃ、ッ雨宮ン、なか、やばいっ


[今すぐ吐き出してしまいたいと叫ぶ
 本能をまた宥めて、それでも抗えないそれは
 だんだんと腰の動きを強く、大きくしていく。]

 





   はっ…は っあま ッみやッ

   好き、 ッすき、っだよ、ッ


[愛の言葉を繰り返していれば、
 彼の親指が、何かを確かめるように
 唇をなぞるから、ちゅ、と吸った。
 ぐい、と引かれた頭。そのまま唇が合わされば、
 どうしようもない幸福感に満ちて、
 こちらからも貪るように口内を味わった。

 口づけの合間、聞こえた言葉に、
 ゆるみきった笑みを向けて。
 答えの代わりにもう一度キスを。]
 



[中の締め付けが強くなっていく。
 短く息を吐きながら、皮膚と皮膚のぶつかる音と
 粘度のある液体が絡み、泡立つような音が
 響く部屋の中で、絶頂が近いことを悟る。]


   うんッ…ぅ、ンっは、 はっ

   おれ、もっ ッ出そ、 ぅッ


[こくこくと頷いて、背に回った手に
 眉を寄せて見つめ返せば。]



   いっしょに、 イこ、っ


[と耳元で吐息混じり、囁きかけて、
 彼が達した直後、薄い膜越しに中へと
 勢いよく精を放った。
 腰がびく、と跳ねる。]
 




    ぁ、 まみや、 っ…


[そう呼びかけて、そっと体を起こすけれど
 彼の意識はあっただろうか。
 腹に白いものが散っているのが見えれば、
 ほ、と息を吐いて、額に口づけを落とす。

 ………にしても、前を触る余裕はなかった。
 つまり───]



   中で、 イった…?


[そう口に出して確かめれば、
 喜びが溢れて、愛おしさに拍車がかかって。

 柔く笑みを浮かべてから、じっと見つめ]
 


[ 幾度も幾度も繰り返し贈られる愛の言葉に
同じものを返したいのに、きもちいい、中がやばい、
なんて煽ることを言うから、
口から言葉になるのは惚けたような、

「おれも、」だけ。

本来なら排泄のための器官で、繋がりを求める。
愉悦を拾う。

抱いて欲しいと強請ったのも、
抱かれる自分を受け入れたのも。
全てはきっと、ただ、単純に、


ひとつに、なりたかったんだ。
 ]
 


[ 触られていない屹立がびくついて、
堪えるためにぎゅっと締めるように力を込める。
だんだんと余裕が消えて、大きくなる抽送。
荒々しいそれさえ、愛しくて。

耳元で、吐息混じりの声が、脳を嬲って。
己の視界が白く飛ぶ直前。

熱い精が、どくりとはきだされるのを感じて、
矢川が達したのがわかった。 ]
 


[ 遠のきかけた意識が、名を呼ばれてふっと戻る。
睫毛が震える。 ]


   ……ッは、   は───、



[ 大きく息を吐いた。
とんでもない疲労感と脱力感が、
額に落とされた唇で幸福感に上書きされて。

ぐた、と体をベッドに預けて、見れば腹の上には
己が吐き出した欲が生々しく残る。
まじかよ、と呟けば追い討ちをかけるように
わざわざ、口に出して確認なんてするから。

慌ててまた手で顔を覆った。 ]
 



   ……はじめてヤって、後ろだけで、
   触んねぇでイケるとか、

   おれは自分の才能が怖ぇえ……



[ や、お前が上手いのか手慣れてんのか、と
誤魔化すようにふざけてそう付け足して、笑った。

声なんてとっくに掠れていて、身体中べたべたで、
きっとみっともない姿をじっと見つめる矢川の顔は
溢れ出す喜びを隠そうともしないで、柔く笑んでいて。


そっと落とされた感謝に
こちらも表情を綻ばせて。 ]
 



[ と、がらっがらになった声で、

精一杯の感謝と、愛を贈ろうか。 ]
 


[ それにしてもひどい有様に、
とりあえず体を起こそうとして身を捩り、 ]



   ─── い゛ッ、……で、………



[ 全身に走る痛みに呻いてベッドに倒れ込むように
逆戻り。
力を入れ過ぎていた身体は軋むし、
口も唇も喉までかさついて痛いし、
酸欠なのか頭はくらくらするし、

おまけに人には言えないところもやばい。

起き上がることを諦めて。
彼は近くにいるだろうか。 ]
 



   ……からだ、うごかねぇ、から、
   たばこ、とって……


[ 思っていたよりずっと甘ったるい声が出た。

そばに来てくれたなら、ふと顔を上げる。
そのまま露な首元の、真正面めがけて
齧り付くように口付けた。
ぢゅ、と音をたてて離せば、
上手く紅い花が咲いただろうか。

独占欲の、証。 ]



   そういえば、ライブっていつだった?



[ にんまりと笑って。
彼のバンドメンバーや、ファンの表情を想像しながら。
情事のあとにはちょっと不似合いな、
そんなことを口にした。 ]*
 

【人】 雨宮 健斗

─── ある日のバルコニー


[ 洗濯が終わったことを知らせる電子音に
重たい腰を持ち上げる。
今日は天気がいい。
乾燥機じゃなくて、バルコニーに干すことにした。

とは言え片手だと洗濯はほんとにやりづらい。
風に煽られてばさばさとはためく洗濯物に
四苦八苦しながら、どうにか作業を終えれば
ふう、と息を吐いて、タバコに火をつける。

心地よい風に目を細めていたから全然気づかなくて。

突然聞こえた、おつかれー、と言う間延びした声に
びくっ!と身体が跳ねた。 ]
 
(0) 2021/06/30(Wed) 18:11:11

【人】 雨宮 健斗


[ 声のした方をみれば、隣室の。
同じ大学の、なんの因果か同じピアノ科の、
二個上の先輩。

顔だけみりゃまぁまぁ美人なのに、
口を開けば場末のスナックのママみたいな
ハスキーボイス。

おまけにちんこついてんじゃねぇかなと思うくらい
男みたいな性格でさばさばしてて、
言いたいことはなんだって歯に衣着せず
ずばずば言ってしまうこの先輩のことは、
実はそんなに嫌いじゃない。

ちなみに念のため言っておくけど、
もちろんそういう目で見たことは
誓って
一度もない。 ]
 
(1) 2021/06/30(Wed) 18:13:06

【人】 雨宮 健斗



   ─── びびった、
   つーかなんちゅうかっこしてんすか。


[ 黒のキャミソールにグレーのショートパンツ。
たぶん、ノーブラ。

冷めた目で一瞥して、そのまま目を逸らす。
裸足で、タバコ咥えてバルコニーに凭れている横顔は
整っていて、黙ってりゃ綺麗なのになとは思った。 ]



   「 やだー雨宮が視姦してくるー。」



[ するかよバカ!と突っ込んだら、ぶは、と
大口を開けて笑われた。 ]
 
(2) 2021/06/30(Wed) 18:14:38

【人】 雨宮 健斗



   「……しってる、あんた彼氏いるもんね。
    あの、背の高い、かわいい子。 」



[ ぎろ、と視線だけで制して深く煙を吸い込んだ。
ジジ、と燻る音がして、煙草の先端に緋色が走る。 ]



   ……やらねぇっすよ。



[ 彼女のほうは見ずにそう告げる。 ]
 
(3) 2021/06/30(Wed) 18:15:50

【人】 雨宮 健斗



   「 ッぶはははは! 惚気てんじゃねーよ。」


[ 爆笑しながら室外機の上にぴょん、と
飛び乗った先輩が胡座をかいた。
長い髪を心底うざったそうにかきあげて、
ベタ惚れじゃん、と愉しそうに呟くのが聞こえる。
甘ったるい香水の匂いがふわ、と風に乗って。

は、と目を伏せて、紫煙を緩く吐き出した。
風に吹かれて、白が細く棚引いて消える。 ]
 
(4) 2021/06/30(Wed) 18:16:36

【人】 雨宮 健斗



   「…… ね、一回だけ、
    ためしに手ェ出してみてい


[ ころすぞ、と食い気味に被せた声は
結構ドスの効いたものになった。

ぶはははは、とまた、決して上品ではないけれど
人の良い高笑いが響く。

冗談に決まってんじゃんこっわ、と
けらけら笑いながら肩を竦める彼女が、
ふ、と挑むみたいな視線をこちらに寄越す。

今度は逸らさずに、つられて笑いそうになる表情を
ちょっと引き締めて受け止めれば、
にやりとその口元が妖艶に歪んだ。 ]
 
(5) 2021/06/30(Wed) 18:17:37

【人】 雨宮 健斗



   「 ……あんたさぁ、せっかく防音室が
    あんだからそっちでヤんなよね。」


[ んなっ、と言いかけて空気を吸い込んだ喉が
気道を狭めてひゅっ、と鳴く。
息が詰まる。
げぇっほ、っと咳き込んで暫し。
カラカラ笑う声が続く。
涙目になった顔を上げればバルコニーから室内へ
ひらひら手を振りながら消えていく背中が見えて。 ]


   ……こっわ、女まじでこえぇ……


[ と唸った。 ]
 
(6) 2021/06/30(Wed) 18:18:36

【人】 雨宮 健斗


[ つーかバカか!ピアノの前でやれるか!
おまけに床がコンクリート打ちっぱなしだわ!と、
負け惜しみのように閉まった扉に向けて言い放って、
タバコを灰皿にぎゅ、と押し付けた。

この話を矢川にしたらどんな顔するかな、と
一瞬考えて、ぶは、と吹き出した。

ばたばたと、洗い立てのシーツが
風に吹かれていい音を立てた。 ]**
 
(7) 2021/06/30(Wed) 18:20:24


[くたりとベッドに身を預ける様子が見えたら、
 ふ、と柔く笑って肌に張り付いた髪を
 そっと避ける。
 ベッドサイドのティッシュをとって、渡した。]


   俺のテクニックは…残念ながら
   そんなに高くないから、雨宮の才能かな?
   
 
[とくすくす笑って、ガラガラになった声を
 いたわらねばと、その喉に口付けた。
 ゆっくりと体を起こそうとした彼が、
 濁った声で唸るから、その体勢が崩れた
 瞬間手を伸ばして受け止めようとする。
 受け止めようと、した。]

 



[───それは、叶わなかったけれど。]



    大丈夫、雨宮



[無理をさせたと自覚はあったものの、
 本当にかなり負担をかけたのだと彼の様子を
 見ていたら、よくわかる。]



    ───うん


[今はとにかく、いうことを聞いてあげよう、と
 腰を上げてタバコの方へとむかう。
 ついでに「冷蔵庫あけるよ」と断ってから
 扉を開いて、ペットボトルを一本取り出した。
 タバコと一緒に持ってわたしたら、
 そのまま彼の足元に座った。]
 



 

  はい、これ──ッ



[瞬間、その体がぐい、とこちらに寄って。 
 首筋に唇が触れてぴり、とした痛みが走った。

 リップ音とともに外れた唇に、
 ふ、と眉尻を下げる。]


   …悪戯。


[といたずらっ子の頭をくしゃ、と混ぜる。
 話を逸らそうとする彼に目を細め
 それからそっと引き寄せて。]